Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
上 下
203 / 469

第203話

しおりを挟む
 鈍重な機体が回避を選択した。 つまりは追い込めている。

 ――このまま押し切る!
 
 フィールドの再展開までは攻撃が通るはずだと判断したヨシナリはブースターを全開に噴かして突撃。
 距離を一気に詰める。 この間合いならエネルギーキャノンも使えない。
 まんまるはただでやられるつもりはないらしく。 突撃銃を器用に連射しながら高度を上げる。

 下げずに上げたのは自分の機体が鈍重かつ大型なので障害物を利用するといった真似ができないからだろう。 ヨシナリは実弾を連射しながら弾切れと同時にエネルギー弾に切り替えて射撃。
 放った一撃はまんまるの機体の肩を撃ち抜く。 

 ――通った。 

 このまま畳みかけると更に肉薄。 まんまるは近づけまいとマガジン交換しながら突撃銃を連射するが、鈍重な機体が仇となり、上手くホロスコープを捉えられない。
 砲戦をメインとしているだけあって旋回が遅いので、機体の周囲を回るように接近すれば比較的、安全に距離を詰められる。

 ――そろそろか。

 距離を詰め切らずにブレードが届く距離に入る前に急上昇。 
 同時にまんまるのフィールドが再展開される。 砲は使う気配はない。
 完全に息切れしているようで、エネルギーに余裕がなさそうだ。 今の所は自分のペースに持ち込めているが、相手は格上である以上は何をしてくるか分からない。

 絶対に油断はしない。 ヨシナリは眼を閉じて思い返す。
 以前に行ったふわわとの一戦を。 あの時、勝利を確信して押し切ろうとした。
 その結果、ドローという拾えた勝ちを取りこぼすといった結果に終わったのだ。

 今、思い出しても自分の浅はかさに対して怒り狂いそうになる。
 だから、相手が完全にくたばるまで油断はしない。 ヨシナリは全ての意識を敵機に向ける。
 フィールドは再展開しているが、可能になって慌てて広げたのならそこまで回復はしていないはずだ。 実弾を連射、弾切れ、予備のマガジンなし。

 エネルギー弾に切り替えて再度射撃。 フィールドを破壊、攻めずに急降下。
 相手の突撃銃がヨシナリのさっきまでいた空間を薙ぎ払う。
 タイミングが合ってきた。 集中、集中。 相手の一挙手一投足に気を配り、意識の焦点を絞れ。
 どんな些細な挙動も見逃すな。 エネルギー弾のチャージが必要になったと同時にアノマリーを投げ捨ててブレードを抜く。 狙いはコックピット部分、いくら重装甲でも継ぎ目を狙えばどうにでもなる。

 まんまるも突撃銃では捉えきれないと判断したのか腕に内蔵したブレードを展開。
 振らずに突きを放つ。 闇雲に振っても当たらないと判断した結果だろう。
 ギリギリまで引き付けてからの一撃はまだ勝負を捨てていない証だ。

 だが、機動性ではホロスコープの方が上。 ヨシナリは刺突を躱して懐へ。
 この距離なら防御も何もない。 必殺の距離と言えるが――
 仕掛ける直前に横方向に噴かしてまんまるの機体の背後へ旋回。 一瞬、遅れてまんまるの機体から何かが飛び出した。 恐らくは使い捨ての散弾砲か何かだろう。

 重装甲の巨体であるという事は武装を積める余地があるという事だ。
 
 「な、なんで――」
 
 躱されると思っていなかったのかまんまるが驚きの声を上げる。
 これがあるから上位のプレイヤーは怖い。 以前に高い授業料を払った甲斐があったとヨシナリはまんまるの機体の背後――うなじの辺りにブレードを突き立ててその首を落とした。

 ここまでされると流石に万策が尽きたのか滅茶苦茶に両腕を振り回し、どうにかヨシナリを振り払おうとしたがもう遅い。 拳銃を抜くと頭があった場所――内部構造が剥き出しになった場所に向けて連射。 弾が切れるまで銃弾を叩きこんだ。

 いかに重装甲のプリンシパリティでも内部へのダメージには脆く、致命的な損傷を及ぼした。
 機体のあちこちで小規模な爆発が起こり、やがて機体の中心が僅かに膨らんだと同時に爆散。
 残骸が辺りに撒き散らされたのを見てヨシナリは大きく息を吐いて少しだけ肩の力を抜いた。

 「結構、きついなこれ」

 一対一だからこそできた戦い方だが、意識の焦点を絞ると完全に周囲への警戒が出来なくなるので個人戦以外では使えない。 やはり意識と視野は広く深くだ。
 ふわわはどうなったかなと視線を向けると変わらずに膠着状態だった。

 ポンポンはふわわと付かず離れすぎずの距離を保ち、ふわわはどうにか武器の間合いに捉えようと追いかける。 

 ――まぁ、それももう終わりだが。

 ヨシナリは投げ捨てたアノマリーを拾い、動作する事を確認するとおもむろに構える。
 無理に当てなくていいので楽なものだ。 そんな事を考えながら狙いを付けて発射した。

 
 「――ふぁ!?」

 ポンポンは唐突に飛んできたエネルギー弾を回避。
 どこから飛んできたと確認するとヨシナリがいつの間にかフリーになっていた。
 なんでだよとまんまるの位置を確認しようとしたが、ステータスがロスト――つまり撃墜扱いになっていたのだ。 逃げ回る事に集中していて全く見ていなかった。

 「何やられてんだよバカぁぁ! 減点んんんん!!」
 「お友達は残念やったねぇ?」

 思わず叫ぶと、ふわわが下から斬りかかって来るのを急旋回で躱す。 回避と同時に下降、高度を上げられなくなった。
 下手に上げるとヨシナリの狙撃が飛んでくる。 地上を避けていたのはふわわから逃げる為だというのに……。 本来、エンジェルタイプはソルジャータイプの完全上位互換だ。

 機動力、旋回性、全てにおいて上回っていると断言できるが、相手がふわわで地形が入り組んでいた場合はその限りではない。 何故なら――
 ふわわの機体はビルを蹴ってピンボールのようにあちこちを跳ね回りながら向かってくるのだ。

 お陰で照準が碌に合わせられず、動きが読み辛い。
 その上、速いと地上に留まっているといい事が一つもなかった。
 だからこそ地上での戦闘を避けて空中に逃げる形で距離を取っていたのだが、それもできない。

 ――負ける? あたしらが?

 確かに格下と見ていた面はあったが、それ以上に負けるとどれだけ不味いのかも理解していたので本気で潰しに行ったのだ。
 ――にもかかわらずニャーコが瞬殺され、まんまるは正面から負けた。

 Fランクのソルジャータイプ使いに。 信じられない。 信じたくなかった。
 ポンポンは焦りと驚愕が混ざり、濁った思考でどうすればいいと自問するがそれが良くなかったようだ。 不意に飛んできた狙撃でエネルギーウイングを撃ち抜かれたからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

死んだ一人の少女と死んだ一人の少年は幸せを知る。

タユタ
SF
これは私が中学生の頃、初めて書いた小説なので日本語もおかしければ内容もよく分からない所が多く至らない点ばかりですが、どうぞ読んでみてください。あなたの考えに少しでもアイデアを足せますように。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

地球連邦軍様、異世界へようこそ

ライラック豪砲
SF
巨大な一つの大陸の他は陸地の存在しない世界。  その大陸を統べるルーリアト帝国の第三皇女グーシュ。 21世紀初頭にトラックに轢かれ、気が付いたら22世紀でサイボーグになっていた元サラリーマンの一木弘和。 地球連邦軍異世界派遣軍のルーリアト帝国への来訪により出会った二人が、この世界に大きな変革を引き起こす! SF×ファンタジーの壮大な物語、開幕。 第一章 グーシュは十八歳の帝国第三皇女。 好奇心旺盛で民や兵にも気さくに接するため、民衆からは慕われているが主流派からは疎まれていた。 グーシュはある日、国境に来た存在しない筈の大陸外の使節団への大使に立候補する。 主流派に睨まれかねない危険な行為だが、未知への探求心に胸踊らせるグーシュはお付きの騎士ミルシャと共に使節団が滞在するルニ子爵領へと赴く。 しかしその道中で、思わぬ事態が起こる。 第二章 西暦2165年。 21世紀初頭から交通事故で昏睡していた一木弘和はサイボーグとして蘇生。 体の代金を払うため地球連邦軍異世界派遣軍に入り、アンドロイド兵士達の指揮官として働いていた。 そして新しく配属された第049艦隊の一員として、一木はグーシュの暮らす惑星ワーヒドに赴く。 しかし美少女型アンドロイドの参謀や部下に振り回され、上官のサーレハ大将は何やら企んでいる様子。 一般人の一木は必死に奮闘するが……。 第三章~ そして、両者の交流が始まる……。 小説家になろうで連載中の作品の微修正版になります。 最新話が見たい方は、小説家になろうで先行して公開しておりますので、そちらをご覧ください。

銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ

マサノブ
SF
日本が地球の盟主となった世界に 宇宙から強力な侵略者が攻めてきた、 此は一隻の宇宙戦艦がやがて銀河の英雄戦艦と 呼ばれる迄の奇跡の物語である。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

処理中です...