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第196話
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カナタとの話を終えたツェツィーリエは「栄光」のユニオンホームを出るとそこには一体のアバターが待っていた。 小柄な少女のような見た目でピンク色の髪が目を引く。
「待ってろって言ってなかったと思うけど?」
「あたしが愛しのおねーたまを置いて帰る訳ないじゃないないですかー」
プレイヤーネーム『ポンポン』ユニオン『豹変』のメンバーでBランクプレイヤーだ。
ツェツィーリエは苦笑して歩き出し、ポンポンもそれに続く。
「で? 『栄光』の面子はどうだった?」
「いい感じでしたよ。 そこそこの奴も結構居たんで組むんだったら及第点ってとこですね」
カナタと話し合っている裏でユニオンメンバー同士での交流試合を行っていたのだが、ポンポンの口振りだと勝ちはしたようだ。
「後、ここだといいけど面と向かって点数付けるの止めなさいよ」
「勿論、おねーたま達の前でしか言いませんよー」
本当かしらと思いながらもそれならいいと話を続ける。
ポンポンはとにかく他人に点数を付けるのが好きな娘で、自分を100点としてそれを基準に他のプレイヤーを評価しているのだ。
「まぁ、いいわ。 『栄光』の主力と戦ったんでしょ? 詳細を聞かせて」
あまり褒められた行いではないが、ツェツィーリエがそれを許容しているのはポンポンの観察眼の精度が高いからだ。
「えーとまずはツガルってプレイヤー。 一番目立つ奴ですねー。 使用フレームはノーマルのキマイラタイプ。 目立ってるのは周囲のヘイトを集める為にわざとやってるので自分の役割は前に出る事って割り切ってる感じはいいですね。 フォローに入るのも上手いです。 特に変形を使っての変則軌道はかなり巧みで、初見で見切るのはちょい厳しいっす。 それでニャーコがあいつにやられました。 射撃、格闘、機動どれをとってもバランスが良いので個人的には悪くないっす。 90点!」
「確か個人ランクはBだったと思うけどエンジェルタイプじゃないのね」
「キマイラにこだわってる感じでしたね。 まぁ、エンジェルタイプってエネルギー系に偏るから総合力は上がりますけど弱点もできるからその辺を嫌がったんじゃないですか?」
特に推進装置がエネルギーウイングに依存する形になるので燃費が悪くなることもあってキマイラタイプとはかなり勝手が変わる。
それにパーツのグレードを上げれば充分にB以上でも戦えるので機種変更せずにいるプレイヤーは多い。
「次にセンドウ。 この女が一番ヤベー奴でしたね。 狙撃や周囲の地形を利用してのトラップ、武器隠し、ウチの主力が終盤まで捕まえられなかったので立ち回りも含めてかなり上手かったです。 反面、中距離より手前のレンジは不得意なのか極端に接近されるのを嫌がってました。 最初は誘ってんのかと思いましたが、マジで嫌がってました。 個人的にはそこはマイナスっす。 120点!」
「結構、評価高いわね」
「忖度はしないんで。 機体をキマイラパンテラにしてるのも機動力を活かした攪乱より、距離を置く事を念頭に置いている感じもあんまりよくなかったです。 それがなかったら150点ぐらい付けてたと思いますねー」
「ふーん? 確か四対四でやったのよね? 後の二人は?」
「ぶっちゃけ大した事なかったっす。 イワモトってのは典型的な盾持ちタンク。 それ以上でも以下でもないっすね。 役割に徹している点は評価してます。 50点。 ステルスのクロスボウ使いは味方の苦戦ですぐ動揺するから論外っすね。 機体と操縦技能よりもメンタルを鍛えた方が良いっす。 35点」
特にツガルとセンドウはBランクでもかなりの上澄みなのでそう遠くない内にAランクに上がってきそうな雰囲気があるとポンポンは付け加えた。
「『栄光』って数は居ますけど平均値はあんまり高くない感じっすねー」
「そう。 ――あぁ、そう言えば聞いてなかったけど肝心のカナタはどんな感じ?」
ポンポンは少しだけ迷うように沈黙。
「直接、戦ってないんで暫定的な点数で良ければ」
ツェツィーリエは小さく頷いて先を促す。
「500点以上ですね。 ジェネシスフレームの時点で戦い方はある程度、完成されてるんで相手の得意レンジだと同ランク帯でないと話になりないと思います」
「ならあたしは?」
ポンポンはぎくりと固まって沈黙。
「……お、怒らないですか?」
「怒らないから言いなさいな」
「な、750点」
「ならラーガスは?」
「…………怒らないですか?」
「忖度なしで言わなかったら怒る」
ポンポンは大きな溜息を吐いて肩を落とした。
「2000点以上。 ぶっちゃけ今のおねーたまじゃどう頑張っても無理です」
「以上って言うのは?」
「採点の基準は前のイベントでの立ち回りなんですけどあいつ全然本気じゃなかったんで正確な数字は無理っす!」
「戦い方の詳細」
「――あー、はっきり言って化け物っす。 機体のスペックもそうですけどプレイヤースキルがぶっ飛んでます。 戦い方自体は割とシンプルなんですよ。 機動力に物を言わせての突撃からのブレードに躱されたらエネルギーガン。 問題はその機動力なんですけど、あいつエネルギーウイング六基も積んでて、しかもアレってエンジェルタイプの奴より高出力の化け物推進装置なんで普通に使ってたら秒でガス欠になるゴミのはずなのに小型の化け物ジェネレーターを馬鹿みたいに積んで賄ってます。 何回、強化プランを実行したのか想像もつかないっす」
強化プランというのはAランク以上が使用できる装備、機体のオーダーメイドシステムだ。
ハイランカーは機体の完成度を高める為にシステムに更なる強化を依頼する事が可能となる。
当然ながら使用には莫大なPが必要だ。 Aランクのプレイヤーでも平均、二回から三回だ。
機体、武装、センサー系。 四回以上行えるプレイヤーは相当稼いでいるといえる。
ちなみにツェツィーリエは三回だ。
「で、一番ヤベーのはあのバカみたいな推進力をコントロールできてる事ですね。 イベントで直角に曲がってるの見た時、思わず二度見しました。 もっとヤベーのはあれで二基しかまともに使ってない所ですね。 多分、本気になったら六基全部使うんでしょうけど人間のスペックであの機体のポテンシャル引き出せるとはとてもじゃないけど思えないっす」
「……でも、システムはプレイヤーの能力を最大限に活かす装備を提案するのよね」
「…………人間じゃねーっす。 おねーたま、勝つのは諦めましょう」
「待ってろって言ってなかったと思うけど?」
「あたしが愛しのおねーたまを置いて帰る訳ないじゃないないですかー」
プレイヤーネーム『ポンポン』ユニオン『豹変』のメンバーでBランクプレイヤーだ。
ツェツィーリエは苦笑して歩き出し、ポンポンもそれに続く。
「で? 『栄光』の面子はどうだった?」
「いい感じでしたよ。 そこそこの奴も結構居たんで組むんだったら及第点ってとこですね」
カナタと話し合っている裏でユニオンメンバー同士での交流試合を行っていたのだが、ポンポンの口振りだと勝ちはしたようだ。
「後、ここだといいけど面と向かって点数付けるの止めなさいよ」
「勿論、おねーたま達の前でしか言いませんよー」
本当かしらと思いながらもそれならいいと話を続ける。
ポンポンはとにかく他人に点数を付けるのが好きな娘で、自分を100点としてそれを基準に他のプレイヤーを評価しているのだ。
「まぁ、いいわ。 『栄光』の主力と戦ったんでしょ? 詳細を聞かせて」
あまり褒められた行いではないが、ツェツィーリエがそれを許容しているのはポンポンの観察眼の精度が高いからだ。
「えーとまずはツガルってプレイヤー。 一番目立つ奴ですねー。 使用フレームはノーマルのキマイラタイプ。 目立ってるのは周囲のヘイトを集める為にわざとやってるので自分の役割は前に出る事って割り切ってる感じはいいですね。 フォローに入るのも上手いです。 特に変形を使っての変則軌道はかなり巧みで、初見で見切るのはちょい厳しいっす。 それでニャーコがあいつにやられました。 射撃、格闘、機動どれをとってもバランスが良いので個人的には悪くないっす。 90点!」
「確か個人ランクはBだったと思うけどエンジェルタイプじゃないのね」
「キマイラにこだわってる感じでしたね。 まぁ、エンジェルタイプってエネルギー系に偏るから総合力は上がりますけど弱点もできるからその辺を嫌がったんじゃないですか?」
特に推進装置がエネルギーウイングに依存する形になるので燃費が悪くなることもあってキマイラタイプとはかなり勝手が変わる。
それにパーツのグレードを上げれば充分にB以上でも戦えるので機種変更せずにいるプレイヤーは多い。
「次にセンドウ。 この女が一番ヤベー奴でしたね。 狙撃や周囲の地形を利用してのトラップ、武器隠し、ウチの主力が終盤まで捕まえられなかったので立ち回りも含めてかなり上手かったです。 反面、中距離より手前のレンジは不得意なのか極端に接近されるのを嫌がってました。 最初は誘ってんのかと思いましたが、マジで嫌がってました。 個人的にはそこはマイナスっす。 120点!」
「結構、評価高いわね」
「忖度はしないんで。 機体をキマイラパンテラにしてるのも機動力を活かした攪乱より、距離を置く事を念頭に置いている感じもあんまりよくなかったです。 それがなかったら150点ぐらい付けてたと思いますねー」
「ふーん? 確か四対四でやったのよね? 後の二人は?」
「ぶっちゃけ大した事なかったっす。 イワモトってのは典型的な盾持ちタンク。 それ以上でも以下でもないっすね。 役割に徹している点は評価してます。 50点。 ステルスのクロスボウ使いは味方の苦戦ですぐ動揺するから論外っすね。 機体と操縦技能よりもメンタルを鍛えた方が良いっす。 35点」
特にツガルとセンドウはBランクでもかなりの上澄みなのでそう遠くない内にAランクに上がってきそうな雰囲気があるとポンポンは付け加えた。
「『栄光』って数は居ますけど平均値はあんまり高くない感じっすねー」
「そう。 ――あぁ、そう言えば聞いてなかったけど肝心のカナタはどんな感じ?」
ポンポンは少しだけ迷うように沈黙。
「直接、戦ってないんで暫定的な点数で良ければ」
ツェツィーリエは小さく頷いて先を促す。
「500点以上ですね。 ジェネシスフレームの時点で戦い方はある程度、完成されてるんで相手の得意レンジだと同ランク帯でないと話になりないと思います」
「ならあたしは?」
ポンポンはぎくりと固まって沈黙。
「……お、怒らないですか?」
「怒らないから言いなさいな」
「な、750点」
「ならラーガスは?」
「…………怒らないですか?」
「忖度なしで言わなかったら怒る」
ポンポンは大きな溜息を吐いて肩を落とした。
「2000点以上。 ぶっちゃけ今のおねーたまじゃどう頑張っても無理です」
「以上って言うのは?」
「採点の基準は前のイベントでの立ち回りなんですけどあいつ全然本気じゃなかったんで正確な数字は無理っす!」
「戦い方の詳細」
「――あー、はっきり言って化け物っす。 機体のスペックもそうですけどプレイヤースキルがぶっ飛んでます。 戦い方自体は割とシンプルなんですよ。 機動力に物を言わせての突撃からのブレードに躱されたらエネルギーガン。 問題はその機動力なんですけど、あいつエネルギーウイング六基も積んでて、しかもアレってエンジェルタイプの奴より高出力の化け物推進装置なんで普通に使ってたら秒でガス欠になるゴミのはずなのに小型の化け物ジェネレーターを馬鹿みたいに積んで賄ってます。 何回、強化プランを実行したのか想像もつかないっす」
強化プランというのはAランク以上が使用できる装備、機体のオーダーメイドシステムだ。
ハイランカーは機体の完成度を高める為にシステムに更なる強化を依頼する事が可能となる。
当然ながら使用には莫大なPが必要だ。 Aランクのプレイヤーでも平均、二回から三回だ。
機体、武装、センサー系。 四回以上行えるプレイヤーは相当稼いでいるといえる。
ちなみにツェツィーリエは三回だ。
「で、一番ヤベーのはあのバカみたいな推進力をコントロールできてる事ですね。 イベントで直角に曲がってるの見た時、思わず二度見しました。 もっとヤベーのはあれで二基しかまともに使ってない所ですね。 多分、本気になったら六基全部使うんでしょうけど人間のスペックであの機体のポテンシャル引き出せるとはとてもじゃないけど思えないっす」
「……でも、システムはプレイヤーの能力を最大限に活かす装備を提案するのよね」
「…………人間じゃねーっす。 おねーたま、勝つのは諦めましょう」
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