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第187話

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 「そういえばこのゲームのサーバー分けってエリア単位だったか?」 
 「らしいな。 でかい所だと二から三分割されてるって聞いたことがある」

 ヨシナリ達が生活しているのは旧日本と呼ばれた土地で正式名称は「ジャパンエリア」と呼称されており、エリア内では日本地区の方が通りが良い。 ICpwのサーバー分けは住んでいるエリアで決まるので、日本地区在住のプレイヤーは皆同じサーバーでプレイするしているはずだった。

 「イベントの間隔とか他のサーバーと一緒って事になるのかな?」 
 「いや、大規模戦に関してはクリアしたら復刻はされないらしいからサーバーによっては別のイベント戦をやってるんじゃないか?」
 「へぇ、やっぱりプレイ人口が違うとイベントの進捗も変わってくるんだろうな」
 「『アメリカ地区』とか『中国地区』とかだったらクリア率ヤバそうだけどな」
 
 特にイベント戦ではプレイ人口と総戦力がイコールなのだ。
 多ければ多いほどに有利に事が運べる上、ハイランカーが生まれやすい。
 正確な情報は制限されているらしく他所のサーバーの進捗は不明だが、大きな所は数歩先は行っているだろう。 

 「そんなだったら他所のサーバーから助っ人を募りてぇな。 前のイベントとか相当しんどかったし、海の向こうにいるプレイヤーの戦いを見てみてぇよ」
 「だな。 どんなのが居るのかは興味あるな」

 そんな話をしていると目的地の会場へと到着した。 巨大高層ビルの一階ホール。
 受付に入場許可を貰って中に入ると大量のアバターが居た。 その数に圧倒されたのかマルメルは小さく仰け反る。

 「うお、すげぇ。 五、六千はいるな。 一か所でこれなら全部の会場を合わせたら大半のプレイヤーはくるんじゃないか?」
 「あちこちに会場を用意してるっていっても後で録画を期間限定で流すみたいだから来ない奴も多いってさ」

 会場の隅には複数のワープポータルが用意されており、別の会場へと移動する事ができるようになっている。 恐らく知り合いと一緒に参加したいなら自由に移動しろ言う事なのだろう。
 ツガルやヴルトムが居れば合流してもいいかなと思っていたが、見た感じいなかったので無理に探す必要もないだろうと近くにあった席に着く。

 しばらく待っているとユニオン『思金神』のメンバーが用意された壇上に上がる。

 「皆様本日はお集まり頂きありがとうございます。 今回は我々の敗北ではありましたが、次回は必ず勝利したいと思います。 その為にこれまでの得た情報を共有し、対策を練る事で勝利を目指しましょう」
 
 その言葉に各々頷いたりそうだと声を上げたりしていた。
 
 「では早速ですが我々が得たイベント戦の詳細をお伝えしたいと思います」

 思金神のプレイヤーは事前に纏めていた資料を読み上げ始めた。


 侵攻戦イベント。 勝利条件は敵の支配下にある惑星に存在する全拠点の制圧。
 敗北条件はプレイヤーの全滅。 途中参加は可能だが、撃破された場合はリスポーン不可。
 参戦時は降下用のシャトルからスタート。 初期位置はユニオン単位で固めて配置されるらしく、シャトルに収まる数なら一機でメンバー全員の機体が搭載される形で配置される。

 ただ、シャトルの出現位置自体は恐らくランダムになるのでどの辺りに出るのかは不明。
 降下時に敵による妨害は受けないので地表に降りるまでは比較的安全と思われる。
 降下後、シャトルは機体の整備設備を兼ねているので可能であるなら確保する事が望ましい。

 次に惑星の環境。 形状、大きさから恐らくは第八惑星『ネプトゥヌス』がモデルと思われる。
 ただ、本物はガス惑星なのでまともな地表が存在しない点から何から何まで同じではない。
 全体的に薄暗く、吹雪と風による轟音で視界が非常に悪い。 同時に周囲の音も風でかき消される上、センサーの感度も低下する。 その為、高感度のセンサーシステムの搭載を強く推奨。 加えて低温なので静止していると機体の凍結を招く場合もあるので低出力の機体だと意図的に放熱しないと行動に支障が出る。 要は低出力の機体との相性が良くない環境という訳だ。

 ――まさに持ち物検査だな。

 ここまで聞いてヨシナリが抱いた感想だ。 
 最低でもⅡ型で使用する水準のセンサーシステムがないと比喩ではなく何も見えないし聞こえない。 
 Ⅰ型だと十数メートルが限度だろう。 そうなると味方からはぐれると即座に遭難する。 環境だけでこれなのだ。 初心者や低ランクのプレイヤーには敷居が高すぎる。

 そんな事を考えていると次はエネミーについての話へと移行した。
 
 エネミーについて。 
 ウインドウに作成された画像が表示される。 どうやら記憶を頼りに作成されたらしい。
 まずは細長い特徴的に見た目をしたエネミー。 トカゲハダカ型と呼称されている。
 
 攻撃手段は噛みつきと巻き付いての拘束。 基本的に接近させなければ脅威度は低いが、見た目に寄らず非常に硬いので実体弾の通りが悪い。 楽に撃破したいならエネルギー兵器の使用を推奨。
 弱点は頭部、特にエラと口の中は脆いので引き付けて頭部の切断を狙うか実弾を口の中に叩き込む手段も有効。 ただ、数が多いのであまり褒められた手段ではない。

 次に頭部が透明なこれまた特徴的なエネミー。 デメニギス型。
 頭部の透明部分は液体のようなもので満たされており、中を眼球が二つ浮いている。
 その二つがレーザーの発射装置のようでそこから最大二本のレーザー攻撃を行う。

 幸いにもステージの環境の所為で離れればエネルギー兵器は大きく減衰するらしく、ある程度離れた位置だと当たっても機体表面を焼かれる程度で済む。 それでも近すぎればあっさりと切断されるので早期の撃破が推奨される。 攻撃の予兆としては頭部の発光。
 
 非常に良く目立つので光り方で発射のタイミングはある程度読める。 トカゲハダカ型と同様に胴体部分は非常に硬く実体弾の通りは悪いが、頭部はその限りではなくこちらは実弾が通るので撃破は比較的ではあるが容易。 

 次にフグ型。 基本的にフィールドのあちこちを巡回している歩哨のような役割を与えられていると思われる。 発見されると赤く発光し、味方を呼ぶ。 
 撃破しても残骸が赤く発光して他のエネミーが寄って来るので可能であるなら無視する事を推奨。
 
 攻撃手段は突撃後の自爆のみなので接近させないような立ち回りが必要。
 
 ――あぶねぇ。

 あの時、安易に撃破していたら敵が寄ってきていたのか。
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