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第169話
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「うわ、ただのステージギミックじゃないのか……」
ヴルトムがエネルギーライフルで太刀魚に似たエネミーを撃ち抜いて破壊。
彼に肉薄しようとするフグ型エネミーをヨシナリがアノマリーで片端から撃ち落とす。
「流石、援護があると助かるよ」
「っつっても焼け石に水ですけどね。 見た感じ『栄光』の上位とウチのメンバーが見当たらないですけど知りません?」
「あぁ、上位のランカーと命知らずはとっくに敵の群れを掻き分けて中に入ったよ。 俺達はここで雑魚の処理をしつつ退路の確保だ」
つまりふわわとマルメルは内部に突入したようだ。
マルメルはともかくふわわは行きたがるだろうなとは思っていたので驚きは少ない。
通信の範囲外なのでどうなっているのかは不明だが、ステータスは表示されているので生きてはいるようだ。
「入ってからどれぐらい経ってるんですか?」
「ちょっと前だな。 三十分ぐらいだと思――痛ってぇなこの野郎!」
レーザー攻撃で肩を撃ち抜かれたヴルトムが吠えながら撃ち返す。
言葉とは裏腹にヴルトムの機体の損傷は軽い。 レーザーをもう一度ヴルトムに撃ち込もうとするエネミーをヨシナリが即座に仕留める。
「対レーザー装甲ですか?」
「いや、コーティング剤。 そこそこ高いの使ったから割と防いでくれるけど、何発も喰らうと剥げてくるけどね」
耐光学兵器用の装甲、コーティング剤は販売はされているが非常に高価なので大抵の場合は後者を使用する物が多い。 前者は確かに光学兵器に対して高い防御効果を期待できるが、重量の割には実体弾への耐弾性能が低く損傷した状態では効果が落ちるといった使い辛さがあって採用率はあまり高くない。
なるほどとヨシナリは戦場に視線を向けるとさっきヴルトムに撃ち込んだエネミーは途中に残骸で見かけた頭部部分が透けている機種だった。 透明部分の内部に浮いている二つの球体が発光しレーザーを照射しているらしく、暗いこの戦場では良く目立つ。 他のエネミー同様胴体部分は実弾に非常に強いが頭部のレーザー照射部分はそこまでではないようで撃破だけなら他の機種に比べれば比較的ではあるが容易といえる。
「それにしても何なんですかねあの透明な奴」
あんな異様な魚は見た事がなかったのでヨシナリは思わずそう呟く。
「俺も詳しくは知らないけど、デメニギスっていう深海魚らしい」
「あぁ、そうなんですね。 じゃあさっきからウザい太刀魚みたいな奴は?」
「はっきりしないけどトカゲハダカじゃねーかってさ。 ヨシナリさんと同じ事を言ってる奴もいたから太刀魚でもそこまで外れてないと思う」
ヴルトムは冷却中なのか蒸気を噴き出しているエネルギーライフルを腰にマウントすると大型の機関銃を取り出してデメニギス型相手に銃弾をばら撒く。
「――で、ヨシナリさんはどうする? 仲間を追いかけたいなら突入の援護ぐらいはするけど?」
非常に魅力的な提案だったが、単騎で突入してもあまり意味がないので小さく首を振る。
「いや、この状況で単独行動は碌な事にならないと思うんで俺もここで戦いますよ」
「助かるよ。 この乱戦でフグを減らしてくれるのは本当にありがたい」
「上手に使えば爆発に敵を巻き込んでダメージを与えられるので使い方次第ですけどね」
ヨシナリは味方に被害が出ない位置にいるフグ型を次々と撃ち抜いて爆破していく。
エネミーが全体的に頑丈なので爆発に巻き込んでも撃破まで追い込めないのは面倒だが、味方の被害軽減には大きく寄与していると思うのでとにかく狙っていく。
本音を言えばあの要塞の中がどうなっているのか気になっているし、行ってみたいとも思っている。
だが、単騎での無力さはここに辿り着くまでに散々味わってきたので、ここは味方の支援に徹する事にしたのだ。 そこでふとヨシナリは内心で首を傾げた。
――あれ? もしかして俺って少し人恋しくなってここに残ったのか?
一人孤独に見知らぬ大地を黙々と進む事に気が滅入りそうになっていた事もあって否定はできなかった。
「うはは、流石敵の拠点、いくらでも出てくるね~」
そんな呑気な事を言いながらふわわが敵を片端から切り刻んでいく。
「だったら突っ込み過ぎないでください。 こっちは実弾がメインなんですからあんまり効果的な援護ができないんですよ!」
マルメルは叫びながら彼女に近づくエネミーに銃弾を叩きこみ続ける。
現在地は不明。 敵の拠点内部である事だけははっきりしているが降りたり登ったりを繰り返している内に現在地が良く分からなくなっていた。
分かれ道が多く味方と何度も分断され、気が付けばマルメルとふわわは同じように分断された味方二十機程とこの広くて暗い基地内を当てもなく進んでいたのだ。
ふわわは久しぶりのログインのお陰かテンションが非常に高く、積極的に敵を刈り取って回っていた。
彼女の戦い方はエネミー相手には有効でトカゲハダカ型を瞬時に切り刻む。
エネルギー系のダガーではなく普通の実体刃で切り刻めているのはさっぱり理解できなかったが、ふわわは曰く装甲の継ぎ目を狙えば簡単に解体できるとの事。
意味が分からないが、実際に仕留められているので彼女にしか見えない何かがあるのかもしれない。
デメニギス型がレーザーのチャージを始めたのでマルメルはしゃらくさいと銃弾をばら撒いて片端から撃破。 こちらは頭部のレーザー照射機構を狙えば簡単に仕留められるので自分はデメニギス型に集中するべきかもしれない。
次々と敵を破壊しているが、マルメルは言いようのないやり難さを感じていた。
突っ込んでいくふわわに着いていく事もそうだが、ヨシナリが居ない事が大きい。
居なくなってから考えるとヨシナリはユニオンのトップとして有能だったんだなと思ってしまう。
少なくともあのふわわの手綱をしっかりと握っていた点からも明らかだ。
自分ではとてもではないが真似できない。 それに技量面でも随分と差を付けられた事も少しだけ引っかかっていた。 テストの点が悪く、一か月空ける事になったのだがその一か月の大きさをここ数日で痛感する。 模擬戦でヨシナリと戦ったのだが、機体のチューンアップも進んでおり、戦い方もより最適化されていた。 お陰で数十戦行ったがマルメルが勝てたのはなんと二回だ。
ヴルトムがエネルギーライフルで太刀魚に似たエネミーを撃ち抜いて破壊。
彼に肉薄しようとするフグ型エネミーをヨシナリがアノマリーで片端から撃ち落とす。
「流石、援護があると助かるよ」
「っつっても焼け石に水ですけどね。 見た感じ『栄光』の上位とウチのメンバーが見当たらないですけど知りません?」
「あぁ、上位のランカーと命知らずはとっくに敵の群れを掻き分けて中に入ったよ。 俺達はここで雑魚の処理をしつつ退路の確保だ」
つまりふわわとマルメルは内部に突入したようだ。
マルメルはともかくふわわは行きたがるだろうなとは思っていたので驚きは少ない。
通信の範囲外なのでどうなっているのかは不明だが、ステータスは表示されているので生きてはいるようだ。
「入ってからどれぐらい経ってるんですか?」
「ちょっと前だな。 三十分ぐらいだと思――痛ってぇなこの野郎!」
レーザー攻撃で肩を撃ち抜かれたヴルトムが吠えながら撃ち返す。
言葉とは裏腹にヴルトムの機体の損傷は軽い。 レーザーをもう一度ヴルトムに撃ち込もうとするエネミーをヨシナリが即座に仕留める。
「対レーザー装甲ですか?」
「いや、コーティング剤。 そこそこ高いの使ったから割と防いでくれるけど、何発も喰らうと剥げてくるけどね」
耐光学兵器用の装甲、コーティング剤は販売はされているが非常に高価なので大抵の場合は後者を使用する物が多い。 前者は確かに光学兵器に対して高い防御効果を期待できるが、重量の割には実体弾への耐弾性能が低く損傷した状態では効果が落ちるといった使い辛さがあって採用率はあまり高くない。
なるほどとヨシナリは戦場に視線を向けるとさっきヴルトムに撃ち込んだエネミーは途中に残骸で見かけた頭部部分が透けている機種だった。 透明部分の内部に浮いている二つの球体が発光しレーザーを照射しているらしく、暗いこの戦場では良く目立つ。 他のエネミー同様胴体部分は実弾に非常に強いが頭部のレーザー照射部分はそこまでではないようで撃破だけなら他の機種に比べれば比較的ではあるが容易といえる。
「それにしても何なんですかねあの透明な奴」
あんな異様な魚は見た事がなかったのでヨシナリは思わずそう呟く。
「俺も詳しくは知らないけど、デメニギスっていう深海魚らしい」
「あぁ、そうなんですね。 じゃあさっきからウザい太刀魚みたいな奴は?」
「はっきりしないけどトカゲハダカじゃねーかってさ。 ヨシナリさんと同じ事を言ってる奴もいたから太刀魚でもそこまで外れてないと思う」
ヴルトムは冷却中なのか蒸気を噴き出しているエネルギーライフルを腰にマウントすると大型の機関銃を取り出してデメニギス型相手に銃弾をばら撒く。
「――で、ヨシナリさんはどうする? 仲間を追いかけたいなら突入の援護ぐらいはするけど?」
非常に魅力的な提案だったが、単騎で突入してもあまり意味がないので小さく首を振る。
「いや、この状況で単独行動は碌な事にならないと思うんで俺もここで戦いますよ」
「助かるよ。 この乱戦でフグを減らしてくれるのは本当にありがたい」
「上手に使えば爆発に敵を巻き込んでダメージを与えられるので使い方次第ですけどね」
ヨシナリは味方に被害が出ない位置にいるフグ型を次々と撃ち抜いて爆破していく。
エネミーが全体的に頑丈なので爆発に巻き込んでも撃破まで追い込めないのは面倒だが、味方の被害軽減には大きく寄与していると思うのでとにかく狙っていく。
本音を言えばあの要塞の中がどうなっているのか気になっているし、行ってみたいとも思っている。
だが、単騎での無力さはここに辿り着くまでに散々味わってきたので、ここは味方の支援に徹する事にしたのだ。 そこでふとヨシナリは内心で首を傾げた。
――あれ? もしかして俺って少し人恋しくなってここに残ったのか?
一人孤独に見知らぬ大地を黙々と進む事に気が滅入りそうになっていた事もあって否定はできなかった。
「うはは、流石敵の拠点、いくらでも出てくるね~」
そんな呑気な事を言いながらふわわが敵を片端から切り刻んでいく。
「だったら突っ込み過ぎないでください。 こっちは実弾がメインなんですからあんまり効果的な援護ができないんですよ!」
マルメルは叫びながら彼女に近づくエネミーに銃弾を叩きこみ続ける。
現在地は不明。 敵の拠点内部である事だけははっきりしているが降りたり登ったりを繰り返している内に現在地が良く分からなくなっていた。
分かれ道が多く味方と何度も分断され、気が付けばマルメルとふわわは同じように分断された味方二十機程とこの広くて暗い基地内を当てもなく進んでいたのだ。
ふわわは久しぶりのログインのお陰かテンションが非常に高く、積極的に敵を刈り取って回っていた。
彼女の戦い方はエネミー相手には有効でトカゲハダカ型を瞬時に切り刻む。
エネルギー系のダガーではなく普通の実体刃で切り刻めているのはさっぱり理解できなかったが、ふわわは曰く装甲の継ぎ目を狙えば簡単に解体できるとの事。
意味が分からないが、実際に仕留められているので彼女にしか見えない何かがあるのかもしれない。
デメニギス型がレーザーのチャージを始めたのでマルメルはしゃらくさいと銃弾をばら撒いて片端から撃破。 こちらは頭部のレーザー照射機構を狙えば簡単に仕留められるので自分はデメニギス型に集中するべきかもしれない。
次々と敵を破壊しているが、マルメルは言いようのないやり難さを感じていた。
突っ込んでいくふわわに着いていく事もそうだが、ヨシナリが居ない事が大きい。
居なくなってから考えるとヨシナリはユニオンのトップとして有能だったんだなと思ってしまう。
少なくともあのふわわの手綱をしっかりと握っていた点からも明らかだ。
自分ではとてもではないが真似できない。 それに技量面でも随分と差を付けられた事も少しだけ引っかかっていた。 テストの点が悪く、一か月空ける事になったのだがその一か月の大きさをここ数日で痛感する。 模擬戦でヨシナリと戦ったのだが、機体のチューンアップも進んでおり、戦い方もより最適化されていた。 お陰で数十戦行ったがマルメルが勝てたのはなんと二回だ。
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