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第168話
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まず考えるべきなのはここで何があったかだ。 襲撃された事は間違いない。
当初の予定では『栄光』が中心となって声をかけたユニオンが集結。
ここを橋頭保として近い位置にある基地を攻略する流れのはずだった。
その為、ヨシナリが戻ってきた時、必ず人が居るはずだったのだが御覧の有様。
奇襲を受けたのか哨戒機を刺激した結果なのかは不明だが、襲われた結果ハンガーや格納庫を兼ねたシャトルが全て破壊されたので拠点を構える意味がなくなってしまった。
指揮を執っていたカナタは頭を悩ませただろうなとヨシナリは勝手に彼女の様子を想像する。
後はそこまで深く考える必要はない。 拠点としての価値が失われた以上、ここに留まる意味もないので恐らくは襲撃を退けた後に生き残りを引き連れて近くの基地を襲いに行ったのだろう。 つまりは最初に仕掛ける予定だった敵拠点に行った可能性は高い。
「……はぁ」
命からがら逃げ帰ってきたというのにこれかと精神的な疲労がどっかりと肩にのしかかる。
愚痴っても仕方がなく、敵地で孤立は非常に不味いので早々に味方との合流を目指すべきだ。
ヨシナリは心なしか重たくなったような気がする足取りで先へと進む。
当初、仕掛ける予定としていた敵の基地らしき施設は拠点から北に約百キロメートル地点。
さっさと行くかと黙々と走っていたが途中、自分の推測は正しかったと確信を深めた。
何故なら進路のあちこちにエネミーやトルーパーの残骸が転がっているからだ。
道中、定期的に襲われていたようで、進めば進むほどのその数が増えていく。
念の為にと残骸を調べると基地を襲撃したのと同じ系統の個体も居れば例のフグ型もいた。
どれもこれも銃弾が装甲の表面で止まっており、エネルギー系の武装で仕留められたものばかりだ。
この過酷な環境へ適応した結果なのかもしれないが、実体弾がほぼ効かないのは厳しい。
使用するにしても相当量を撃ち込むか、光学兵器で穴を開けるなりして内部部分を露出させた上でないと通りが悪そうだった。 それが一種類や二種類だけなら問題はないのだが、全てに対して効果が薄いのはやりすぎなのではないだろうか? これではエネルギー系の兵器を装備できない低ランクの機体だと碌に活躍できないまま沈んでしまう。
相変わらずプレイヤーの事を無視した難易度だ。
もしかするとゲームデザインの時点で難易度は決定していて、碌に改善しないままリリースしているのだろうか? これを怠慢と取るか一貫しているととるか判断に迷うところだが――
そんな事を考えていると遠くで風の音に混ざり何かが聞こえる。
耳を澄ませば爆発音や衝撃音、明らかに戦闘の物と思われるそれを聞いたヨシナリは機体を加速させつつ周囲を確認。 小高い丘のような地形を見つけたのでそちらへと回り込んで上る。
とにかく戦場を俯瞰したかったからだ。 目的地に着いたヨシナリの目に最初に飛び込んできたのは巨大な建造物だった。 真っ黒な建物で窓もなく複数の高層ビルを繋ぎ合わせたようなデザインだったが、表面に何もない為、施設というよりは防壁の類に見えてしまう。
ざっと見た限り侵入できそうな横穴はなし、視線を落とすと巨大なゲートのような物が大きく口を開けており、そこでは大勢のプレイヤー達が猛攻を仕掛けていた。
対するエネミーはプレイヤー達の侵入を阻むべく、防衛に徹している。 ヨシナリはすっとアノマリーを構えて敵を確認。 残骸になっているのを見た個体ばかりだった。
まずは蛇のように長いエネミー。
最初は太刀魚ではないかと思ったが、その凶悪な面相がそれを否定する。 恐らく深海魚の類だろう。
巨大な口に頑丈そうな歯を持っており、トルーパーの装甲を容易く噛み砕いていた。
しかも巻き付いてから頭から齧り付くといった手段を取るので捕まってしまうとどうにもならない。 そして予想通り耐弾性能は非常に高く、実弾兵器を喰らって体勢こそ崩しているがダメージ自体は少ないようだ。 突撃銃のフルオート射撃を喰らっても平然と突っ込んでいく辺り危険すぎる。
次に目立つのは頭部の一部がガラスケースのように透明になっており、目玉のような物が浮いているエネミーだ。 透過部分が発光し、レーザーを発射していた。
とんでもなく厄介な攻撃だが、初見でも分かる欠点がある。 距離による減衰だ。
どうも中距離で使用する代物らしく、一定以上離れた相手には当てても装甲の表面を焼くだけで切断までは至っていない。 こちらも例によって耐弾性能は高いが頭部のレーザー発射機構はそうでもないのか実弾であっさりと破壊されていた。 最後はフグだ。
銃弾を弾きながら凄まじいスピードでトルーパーに肉薄し体当たり。
そして自爆して道連れという非常に厄介な攻撃を繰り出してくる。 これも実弾兵器の通りが悪い。
指揮官らしき固体などはいないので雑魚はこの三種類と判断していいだろう。
取り合えず狙うべきははっきりした。 フグだ。
アノマリーの弾をエネルギーへ変更して発射。 射抜かれたフグは他のエネミーを巻き込んで派手に爆発する。 太刀魚もどき、レーザー持ちは潰した所で焼け石に水なので派手に爆発するフグを積極的に狙って味方の被害を減らしつつ、敵の体勢を崩す方向で行くべきだ。
ヨシナリの存在に気が付いた味方機の一部が手を振っているので小さく振り返して狙撃を続ける。
『ヨシナリさんか。 無事だったんだな』
近くまで来たので通信が可能になってようだ。 相手はヴルトム。
戦場の真ん中で高出力のレーザー砲で敵を薙ぎ払っていた。
「そっちも無事で安心しましたよ。 拠点に戻ったらあの有様だったのでこっちに行っただろうなと当たりを付けたんですが正解で良かったです」
「あの後、滅茶苦茶大変だったんだよ。 フグみたいな敵を倒したら周囲のエネミーが一気に集まってきて慌てて迎撃したんだけど、補給の要だったシャトルは全部壊されちまってもう攻めるしかないって話になってね」
――あぁ、やっぱりあのフグみたいな奴は倒すと不味いタイプだったか。
「で、今に至っている訳だけど、そっちはどうだったんだ? 大暗斑の調査、どうだった?」
「予想通り――いや、予想以上にヤバかったですよ。 大暗斑はエネミーが起こしている嵐で中にバカでかい奴がいます。 命からがら逃げて来たんですが俺以外はやられてしまいましたよ」
当初の予定では『栄光』が中心となって声をかけたユニオンが集結。
ここを橋頭保として近い位置にある基地を攻略する流れのはずだった。
その為、ヨシナリが戻ってきた時、必ず人が居るはずだったのだが御覧の有様。
奇襲を受けたのか哨戒機を刺激した結果なのかは不明だが、襲われた結果ハンガーや格納庫を兼ねたシャトルが全て破壊されたので拠点を構える意味がなくなってしまった。
指揮を執っていたカナタは頭を悩ませただろうなとヨシナリは勝手に彼女の様子を想像する。
後はそこまで深く考える必要はない。 拠点としての価値が失われた以上、ここに留まる意味もないので恐らくは襲撃を退けた後に生き残りを引き連れて近くの基地を襲いに行ったのだろう。 つまりは最初に仕掛ける予定だった敵拠点に行った可能性は高い。
「……はぁ」
命からがら逃げ帰ってきたというのにこれかと精神的な疲労がどっかりと肩にのしかかる。
愚痴っても仕方がなく、敵地で孤立は非常に不味いので早々に味方との合流を目指すべきだ。
ヨシナリは心なしか重たくなったような気がする足取りで先へと進む。
当初、仕掛ける予定としていた敵の基地らしき施設は拠点から北に約百キロメートル地点。
さっさと行くかと黙々と走っていたが途中、自分の推測は正しかったと確信を深めた。
何故なら進路のあちこちにエネミーやトルーパーの残骸が転がっているからだ。
道中、定期的に襲われていたようで、進めば進むほどのその数が増えていく。
念の為にと残骸を調べると基地を襲撃したのと同じ系統の個体も居れば例のフグ型もいた。
どれもこれも銃弾が装甲の表面で止まっており、エネルギー系の武装で仕留められたものばかりだ。
この過酷な環境へ適応した結果なのかもしれないが、実体弾がほぼ効かないのは厳しい。
使用するにしても相当量を撃ち込むか、光学兵器で穴を開けるなりして内部部分を露出させた上でないと通りが悪そうだった。 それが一種類や二種類だけなら問題はないのだが、全てに対して効果が薄いのはやりすぎなのではないだろうか? これではエネルギー系の兵器を装備できない低ランクの機体だと碌に活躍できないまま沈んでしまう。
相変わらずプレイヤーの事を無視した難易度だ。
もしかするとゲームデザインの時点で難易度は決定していて、碌に改善しないままリリースしているのだろうか? これを怠慢と取るか一貫しているととるか判断に迷うところだが――
そんな事を考えていると遠くで風の音に混ざり何かが聞こえる。
耳を澄ませば爆発音や衝撃音、明らかに戦闘の物と思われるそれを聞いたヨシナリは機体を加速させつつ周囲を確認。 小高い丘のような地形を見つけたのでそちらへと回り込んで上る。
とにかく戦場を俯瞰したかったからだ。 目的地に着いたヨシナリの目に最初に飛び込んできたのは巨大な建造物だった。 真っ黒な建物で窓もなく複数の高層ビルを繋ぎ合わせたようなデザインだったが、表面に何もない為、施設というよりは防壁の類に見えてしまう。
ざっと見た限り侵入できそうな横穴はなし、視線を落とすと巨大なゲートのような物が大きく口を開けており、そこでは大勢のプレイヤー達が猛攻を仕掛けていた。
対するエネミーはプレイヤー達の侵入を阻むべく、防衛に徹している。 ヨシナリはすっとアノマリーを構えて敵を確認。 残骸になっているのを見た個体ばかりだった。
まずは蛇のように長いエネミー。
最初は太刀魚ではないかと思ったが、その凶悪な面相がそれを否定する。 恐らく深海魚の類だろう。
巨大な口に頑丈そうな歯を持っており、トルーパーの装甲を容易く噛み砕いていた。
しかも巻き付いてから頭から齧り付くといった手段を取るので捕まってしまうとどうにもならない。 そして予想通り耐弾性能は非常に高く、実弾兵器を喰らって体勢こそ崩しているがダメージ自体は少ないようだ。 突撃銃のフルオート射撃を喰らっても平然と突っ込んでいく辺り危険すぎる。
次に目立つのは頭部の一部がガラスケースのように透明になっており、目玉のような物が浮いているエネミーだ。 透過部分が発光し、レーザーを発射していた。
とんでもなく厄介な攻撃だが、初見でも分かる欠点がある。 距離による減衰だ。
どうも中距離で使用する代物らしく、一定以上離れた相手には当てても装甲の表面を焼くだけで切断までは至っていない。 こちらも例によって耐弾性能は高いが頭部のレーザー発射機構はそうでもないのか実弾であっさりと破壊されていた。 最後はフグだ。
銃弾を弾きながら凄まじいスピードでトルーパーに肉薄し体当たり。
そして自爆して道連れという非常に厄介な攻撃を繰り出してくる。 これも実弾兵器の通りが悪い。
指揮官らしき固体などはいないので雑魚はこの三種類と判断していいだろう。
取り合えず狙うべきははっきりした。 フグだ。
アノマリーの弾をエネルギーへ変更して発射。 射抜かれたフグは他のエネミーを巻き込んで派手に爆発する。 太刀魚もどき、レーザー持ちは潰した所で焼け石に水なので派手に爆発するフグを積極的に狙って味方の被害を減らしつつ、敵の体勢を崩す方向で行くべきだ。
ヨシナリの存在に気が付いた味方機の一部が手を振っているので小さく振り返して狙撃を続ける。
『ヨシナリさんか。 無事だったんだな』
近くまで来たので通信が可能になってようだ。 相手はヴルトム。
戦場の真ん中で高出力のレーザー砲で敵を薙ぎ払っていた。
「そっちも無事で安心しましたよ。 拠点に戻ったらあの有様だったのでこっちに行っただろうなと当たりを付けたんですが正解で良かったです」
「あの後、滅茶苦茶大変だったんだよ。 フグみたいな敵を倒したら周囲のエネミーが一気に集まってきて慌てて迎撃したんだけど、補給の要だったシャトルは全部壊されちまってもう攻めるしかないって話になってね」
――あぁ、やっぱりあのフグみたいな奴は倒すと不味いタイプだったか。
「で、今に至っている訳だけど、そっちはどうだったんだ? 大暗斑の調査、どうだった?」
「予想通り――いや、予想以上にヤバかったですよ。 大暗斑はエネミーが起こしている嵐で中にバカでかい奴がいます。 命からがら逃げて来たんですが俺以外はやられてしまいましたよ」
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