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第163話
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「二人で行くのか? 戦力が要るなら俺も――」
「いや、マジでボスだった場合、直ぐに逃げるかやり過ごすから人数は少ない方が良い。 お前はふわわさんと一緒に待っててくれ」
「撃破は視野に入れてないのか?」
ヨシナリは小さく肩を竦める。
「このサイズ見てみろよ。 通常火力じゃまず無理だ。 完全初見だからまずは情報収集から初めて、可能であれば撃破を狙うって方針になる」
「本命は二ヶ月後の復刻って事か」
「あぁ、運営は明らかに一度でクリアさせる気はなさそうだからな。 可能であれば鼻っ柱を圧し折ってやりたいところではあるがマジな話、俺は無理だと思ってる」
最初からランカーの投入が許可されている時点で無理だろうと半ば確信していた。
要はランカー投入を前提とした難易度なのだ。 低ランクのプレイヤーが生き残るのは非常にむずかしいと言わざるを得ない。 クリアを諦めた訳ではないが、負ける事を視野に入れて可能な限りの情報を集める事で意味のある敗北とするべきだ。 ヨシナリはそう考えていた。
「なるほど、まだ始まってもいないのに嫌な予感しかしねーのはすげえよ」
「そうだな。 取り敢えず、お前の調子を戻さないとな。 模擬戦、もう一回行くか?」
「おう、頼むぜ」
会話を切り上げて模擬戦の続きを行うべく二人は立ち上がった。
時間が経つのは早いものでマルメルの調整を行っていたらあっという間に当日となった。
その間、ふわわは顔を見せなかったが――
「お久しぶり~。 戻ってくるの遅くなってごめんね~」
「お久しぶりです。 正直、間に合わないのかと思いましたよ」
「ウチも正直、ヤバいなーって思ってたんだけど何とか間に合ってよかったよ~。 休んでた分、頑張るからよろしく!」
随分と久しぶりに三人が揃い。 戦力面では万全の状態でイベント戦に臨む事になった。
今回は全プレイヤーが開始と同時に一斉参戦可能となるので即座に乗り込もうと考えている者達は全員、スタンバイ状態だ。
「まずは『栄光』とその同盟ユニオンと合流します。 後は全体の方針に従う形で行動する感じですが、行動自体は足を引っ張らなければ好きにしていいとの事なので無理に指示を仰ぐ必要はありません。 必要に応じて自己判断で行動してください」
「最低限の足並みは揃えるけど後は好きにしてええって事?」
「そういう事です。 『栄光』の面子は一枚岩かもしれませんがそれ以外は基本的に寄せ集めです。 高度な連携が取れるとは思っていないでしょう。 だから、無難に味方の邪魔をしない事だけを考えておけば特に問題はありません」
「で、ヨシナリ君は調べものしてから合流なんだよね?」
「いえ、合流してから別行動ですね。 ステージの状態も分からないので状況を見てからになります。 場合によっては偵察はなしにするのも視野に入れています」
「分かった。 んじゃあそろそろみたいだし、皆で生き残れるようにがんばろー!」
ふわわがそう締めるとウインドウに開始までのカウントダウンが開始される。
「この時間が一番緊張するぜ」
「それ分かるー」
マルメルの言葉にふわわが同意し、ヨシナリは苦笑。
さぁ、二回目の大規模イベントだ。 マルメル達には負けるかもと日和った事を言っていたが、当然ながら勝ちに行くつもりでいる。 ホロスコープの強化も進み、ヨシナリ自身のプレイヤースキルも大きく向上した。 少なくとも前回よりは戦えるはずだ。
――勝つ。
深く息をして意識を切り替える。 カウントが残り五秒を切った。
三、二、一、ゼロ。 イベント開始。
視界が切り替わり慣れ親しんだホロスコープのコックピットが表示される。
目の前にはマルメルとふわわの機体。 耳に飛び込んできたのは振動音だ。
どうやら自分達の機体はコンテナか何かに格納されており、現在移動中らしい。
ウインドウがポップアップ。 目標惑星のマップとヨシナリ達の現在地が表示される。
それによると現在地は惑星の近くで、いま移動しているのは輸送用のシャトルのようだ。
振動は大気圏へ突入した事によるものらしい。 激しい揺れが収まったと同時にシャトルの上部が解放。 立ち上がると未知の惑星の風景が視界一杯に広がる。
一面氷に覆われた常闇の世界。 太陽から離れすぎているので光が届かないのだ。
風はかなり強いが思っていたほどではない。 ぐるりと見回すと広大な未知の自然の中に違和感が見える。 人工の光だ。 距離はかなりあるが複数あるのが見て取れる。
それとは別に自分達のシャトルとは別のシャトルがあちこちから降下している姿が見えた。
他のプレイヤーも続々と降下を始めているようだ。
「うはー、すっげえー」
「ほんまやねぇ。 すっごい眺め!」
未知の光景にはしゃぐ二人を尻目にヨシナリはマップを確認し、現在地と合流地点、それと目標である大暗斑の位置を確認。
「少し距離があるな。 二人とも、降下地点と合流場所が離れてるからそろそろ降りよう」
「もうちょっとこの風景を楽しみたかったけど仕方ないな」
「オッケー」
「先導するから遅れないように」
ヨシナリはそのままシャトルから飛び出し可能な限り高度を落として移動。
二人の機体も後に続く。 合流地点に向かっている途中に地面が小さく揺れ、遠くから爆発音や銃声が響き始めた。 血の気が多いプレイヤーが早速始めたようだ。
それで勝てるならヨシナリとしては文句は欠片もないが、大丈夫かなといった気持ちにはなった。
今回は完全な敵地と言う事もあってセンサーの感度を全開にし、些細な変化にも気を配りつつ移動。
氷の大地を這うように飛行し、目標地点を真っすぐに目指す。
数十分ほどの移動を経て徐々に目的地が見えて来た。
遠目にも分かる程の数のトルーパーが集まっていたので合流は問題なくできそうだ。
「ってか移動に結構時間かかったな。 流石惑星丸ごとってだけあって広いわ」
ヨシナリはそうだなと返しながらあちこちを転戦するのは現実的ではないと確信した。
最初の印象通り、イベント中に仕掛けられる基地は一つか二つ。 恐らくそれが一人当たりのノルマといった所だろう。
こちらに気が付いたのか一部の機体が迎えるべく接近してくる。
ツガルとフカヤだ。 ツガルに至っては手を振っていた。
ヨシナリはその様子に小さく笑って手を振り返す。
「おーっす。 無事合流できたな! 今日はよろしく頼むぜ」
いつもの調子のツガルと小さく会釈するフカヤにヨシナリもよろしくお願いしますと返した。
「いや、マジでボスだった場合、直ぐに逃げるかやり過ごすから人数は少ない方が良い。 お前はふわわさんと一緒に待っててくれ」
「撃破は視野に入れてないのか?」
ヨシナリは小さく肩を竦める。
「このサイズ見てみろよ。 通常火力じゃまず無理だ。 完全初見だからまずは情報収集から初めて、可能であれば撃破を狙うって方針になる」
「本命は二ヶ月後の復刻って事か」
「あぁ、運営は明らかに一度でクリアさせる気はなさそうだからな。 可能であれば鼻っ柱を圧し折ってやりたいところではあるがマジな話、俺は無理だと思ってる」
最初からランカーの投入が許可されている時点で無理だろうと半ば確信していた。
要はランカー投入を前提とした難易度なのだ。 低ランクのプレイヤーが生き残るのは非常にむずかしいと言わざるを得ない。 クリアを諦めた訳ではないが、負ける事を視野に入れて可能な限りの情報を集める事で意味のある敗北とするべきだ。 ヨシナリはそう考えていた。
「なるほど、まだ始まってもいないのに嫌な予感しかしねーのはすげえよ」
「そうだな。 取り敢えず、お前の調子を戻さないとな。 模擬戦、もう一回行くか?」
「おう、頼むぜ」
会話を切り上げて模擬戦の続きを行うべく二人は立ち上がった。
時間が経つのは早いものでマルメルの調整を行っていたらあっという間に当日となった。
その間、ふわわは顔を見せなかったが――
「お久しぶり~。 戻ってくるの遅くなってごめんね~」
「お久しぶりです。 正直、間に合わないのかと思いましたよ」
「ウチも正直、ヤバいなーって思ってたんだけど何とか間に合ってよかったよ~。 休んでた分、頑張るからよろしく!」
随分と久しぶりに三人が揃い。 戦力面では万全の状態でイベント戦に臨む事になった。
今回は全プレイヤーが開始と同時に一斉参戦可能となるので即座に乗り込もうと考えている者達は全員、スタンバイ状態だ。
「まずは『栄光』とその同盟ユニオンと合流します。 後は全体の方針に従う形で行動する感じですが、行動自体は足を引っ張らなければ好きにしていいとの事なので無理に指示を仰ぐ必要はありません。 必要に応じて自己判断で行動してください」
「最低限の足並みは揃えるけど後は好きにしてええって事?」
「そういう事です。 『栄光』の面子は一枚岩かもしれませんがそれ以外は基本的に寄せ集めです。 高度な連携が取れるとは思っていないでしょう。 だから、無難に味方の邪魔をしない事だけを考えておけば特に問題はありません」
「で、ヨシナリ君は調べものしてから合流なんだよね?」
「いえ、合流してから別行動ですね。 ステージの状態も分からないので状況を見てからになります。 場合によっては偵察はなしにするのも視野に入れています」
「分かった。 んじゃあそろそろみたいだし、皆で生き残れるようにがんばろー!」
ふわわがそう締めるとウインドウに開始までのカウントダウンが開始される。
「この時間が一番緊張するぜ」
「それ分かるー」
マルメルの言葉にふわわが同意し、ヨシナリは苦笑。
さぁ、二回目の大規模イベントだ。 マルメル達には負けるかもと日和った事を言っていたが、当然ながら勝ちに行くつもりでいる。 ホロスコープの強化も進み、ヨシナリ自身のプレイヤースキルも大きく向上した。 少なくとも前回よりは戦えるはずだ。
――勝つ。
深く息をして意識を切り替える。 カウントが残り五秒を切った。
三、二、一、ゼロ。 イベント開始。
視界が切り替わり慣れ親しんだホロスコープのコックピットが表示される。
目の前にはマルメルとふわわの機体。 耳に飛び込んできたのは振動音だ。
どうやら自分達の機体はコンテナか何かに格納されており、現在移動中らしい。
ウインドウがポップアップ。 目標惑星のマップとヨシナリ達の現在地が表示される。
それによると現在地は惑星の近くで、いま移動しているのは輸送用のシャトルのようだ。
振動は大気圏へ突入した事によるものらしい。 激しい揺れが収まったと同時にシャトルの上部が解放。 立ち上がると未知の惑星の風景が視界一杯に広がる。
一面氷に覆われた常闇の世界。 太陽から離れすぎているので光が届かないのだ。
風はかなり強いが思っていたほどではない。 ぐるりと見回すと広大な未知の自然の中に違和感が見える。 人工の光だ。 距離はかなりあるが複数あるのが見て取れる。
それとは別に自分達のシャトルとは別のシャトルがあちこちから降下している姿が見えた。
他のプレイヤーも続々と降下を始めているようだ。
「うはー、すっげえー」
「ほんまやねぇ。 すっごい眺め!」
未知の光景にはしゃぐ二人を尻目にヨシナリはマップを確認し、現在地と合流地点、それと目標である大暗斑の位置を確認。
「少し距離があるな。 二人とも、降下地点と合流場所が離れてるからそろそろ降りよう」
「もうちょっとこの風景を楽しみたかったけど仕方ないな」
「オッケー」
「先導するから遅れないように」
ヨシナリはそのままシャトルから飛び出し可能な限り高度を落として移動。
二人の機体も後に続く。 合流地点に向かっている途中に地面が小さく揺れ、遠くから爆発音や銃声が響き始めた。 血の気が多いプレイヤーが早速始めたようだ。
それで勝てるならヨシナリとしては文句は欠片もないが、大丈夫かなといった気持ちにはなった。
今回は完全な敵地と言う事もあってセンサーの感度を全開にし、些細な変化にも気を配りつつ移動。
氷の大地を這うように飛行し、目標地点を真っすぐに目指す。
数十分ほどの移動を経て徐々に目的地が見えて来た。
遠目にも分かる程の数のトルーパーが集まっていたので合流は問題なくできそうだ。
「ってか移動に結構時間かかったな。 流石惑星丸ごとってだけあって広いわ」
ヨシナリはそうだなと返しながらあちこちを転戦するのは現実的ではないと確信した。
最初の印象通り、イベント中に仕掛けられる基地は一つか二つ。 恐らくそれが一人当たりのノルマといった所だろう。
こちらに気が付いたのか一部の機体が迎えるべく接近してくる。
ツガルとフカヤだ。 ツガルに至っては手を振っていた。
ヨシナリはその様子に小さく笑って手を振り返す。
「おーっす。 無事合流できたな! 今日はよろしく頼むぜ」
いつもの調子のツガルと小さく会釈するフカヤにヨシナリもよろしくお願いしますと返した。
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