Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第162話

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 すげえなと口には出しつつもマルメルは内心で非常に焦っていた。
 一か月のブランク。 ある程度の差は出るのは仕方がない。
 そう思っていたのだが、ヨシナリという友人は見ていない間に凄まじい進化を遂げていたようだ。

 イベントまで三日もないこの状況で今の彼にできる事はない。 
 目に見えて強くなったヨシナリですら今のままでは次のイベントは厳しいと言っているのだ。
 今の自分は大丈夫なのだろうか? そんな不安が浮かんでくる。
 
 「そういえばふわわさんは?」
 「用事の方は一応、目途が立ったけど当日までは動けないってさ」
 「社会人っぽいし俺達よりも大変そうだ」
 「ま、その辺をあんまり詮索するのはNGで。 俺達が気にするのは来れるか来れないかだけでいい」
 
 マルメルは少しだけドライだなと思ったが、これぐらいの距離感の方が逆に付き合い易いかと納得もしているのでそうだなと頷きで返す。

 「そういや、概要をちらっと見ただけなんだけど今回は侵攻戦なんだろ?」
 「みたいだな。 ステージのモデルはネプトゥヌスだろう」
 「あー、ここから一番遠い惑星で合ってる?」
 「合ってる合ってる。 惑星全域に散らばっている敵の基地を残らずぶっ壊すのがクリア条件だ」
 「全部って範囲が惑星丸ごとだと相当じゃないか?」
 「反応炉って書いてあったし相当な規模な基地が俯瞰で確認できるだけで五十はあるんだ。 実際、相当だぞ」
 「全部やるとか無理ゲーじゃないか?」
 「運営もその辺、理解しているらしく今回はランク毎の出撃制限はない。 ハイランカーが最初からいるから総力戦ができるのはありがたいな」

 マルメルはA、Sランクのハイランカーの姿を思い出し、確かにと頷いて見せる。
 
 「上位のプレイヤーがいれば大抵の事はどうにでもなるか」
 「裏を返すとハイランカーが最初からいても問題ない難易度とも取れるけどな」
 「うへ、嫌だなぁ……。 で、ウチはどう動く感じなんだ?」
 「あぁ、そう言えば言ってなかったな。 「大渦」と「栄光」から一緒にって誘われているから混ぜて貰うつもりだ」

 今回も明らかに頭数が必要なミッションな上、敵地なので他と組むのは必須と言っていい。
 
 「『大渦』? レラナイトの?」
 「そうだけど。 中身が入れ替わってるから完全に別物だよ。 今のトップとちょっと絡みがあってな。 その関係で組む事になった」

 その後『栄光』と引き合わせて連合軍の完成だ。 『栄光』は他にも声をかけているらしく結構な大所帯になる事は目に見えていた。

 「ふーん。 まぁ、ヨシナリが決めた事なら俺は文句ないけど、なら基本的に『栄光』にくっついていくだけの感じになるのか?」
 「基本はそうだが、どちらかというと今回は情報収集も兼ねているからな。 個人的に気になる事もあるから大所帯は何かと都合がいいんだよ」
 「気になる事?」

 ヨシナリはあぁと頷くとウインドウを操作してステージの俯瞰映像を出す。
 
 「これを見てくれ」

 ヨシナリが指さしたのは基地の物らしき明かりではなく、少し離れた位置にある穴のような何かだった。

 「なにこれ?」
 「この星のモデルになっているのはネプトゥヌスって惑星なのは話したよな? で、この穴みたいなのは大暗斑って呼ばれているもので渦ともオゾンホール――要は大気の薄い場所とも言われているんだ」
 「それがどうかしたのか?」

 マルメルからしたらどちらでもいい話だった。 どうせ基地からも離れた位置にあるのだからわざわざ気にする価値はないと考えていたからだ。
 精々、モデルを忠実に再現しているんだなといった感想が出る程度だった。

 「実際の大暗斑もそうだがいまいちはっきりしない所が多くてな」
 「あれ? 進んでないけど開拓船団は到着してるんだろ?」
 「その筈なんだが、調べてもそれ以上の情報が出てこないんだよ。 実は失敗したか事故か何かで全滅したとか色んな話はあるけどどうにもはっきりしない」
 「ふーん? で? それが何?」 
 
 良く分からない宇宙の神秘とやらなのは理解したがマルメルには興味のない話だった。

 「まさかとは思うけど見てみたいって感じ?」
 「あぁ、再現度が高いのは結構だが、大暗斑までわざわざ再現するのは気になる。 絶対に何かあるぞ」
 「つまり確認しときたいって事? 正直、無駄な行動じゃないか?」
 
 マルメルの言う通りではある。 無駄な行動は可能な限り取るべきではない。
 ヨシナリは勝つつもりではあったが、初見で勝利できるかは非常に怪しいとも思っているので可能な限り情報を集めておきたいとも思っていたのでこの手の怪しい場所は可能な限り調べておきたかった。

 「あの運営がわざわざ必要もないものを再現する訳がない。 だから何もないならそれでいいけど何もないって確証が欲しいんだよ。 ――それに」
 「それに?」
 「これな。 俺の見間違いじゃないなら動いてるっぽいんだよ」

 映像を確認する度に大暗斑は微妙にその位置を変えている。
 つまりこれは移動しているのだ。

 「そりゃ台風みたいなものなら動くんじゃないか?」 

 単なるステージギミックならそれでいい。 ただ、そうではないのなら攻略に関わる。
 
 「本当に自然現象だったらな」

 そこまで聞いてマルメルの脳裏に理解が広がった。

 「……まさかとは思うけどお前、これが自然現象のふりをしたボスか何かだと思ってるのか」
 
 ヨシナリは答えない。 マルメルは改めて映像に表示された大暗斑を一瞥。
 惑星の外から見てもはっきりと分かる大きな異物。 仮にそう、仮にこれがボスだった場合、大きさは下手をすれば一キロメートルに届く。 メートルではないキロメートルだ。

 前回のイベントで出て来た巨大なボス群ですらどれだけ大きめに見積もっても五百メートル前後。
 その倍以上。 想像しただけで頭が痛くなる。
 
 「確かに一回、見ておいた方が良いかもな」
 「取り合えず気休めかもしれないがレーダーをごまかすタイプのステルスコートやらの身を隠す装備は買っておいたから偵察に行くつもりだ」
 「一人でか?」
 「いや『栄光』からフカヤさんが手を貸してくれるって話だから最初は二人で見に行って、確認したら後で合流だな」

 大暗斑の事をツガルに相談したら彼は快くフカヤに同行を頼み、一緒に行くことになった。
 フカヤとは何度かミッションを一緒にこなした仲なので連携は問題なくとれる。
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