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第152話
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――やるじゃねぇか。
ツガルは地上で狙撃を続けているヨシナリを見てそんな感想を抱く。
次々とⅠ型を沈め、余裕が出来たら空へ撃ち込んでツガルを囲もうとする敵機に対しての牽制まで行ってくれる。 射撃の腕も大したものだが、センドウとは違った方向性で巧みだった。
ツガルの所感だが、センドウは自分で仕留めたいタイプなので味方が作った隙を突く形で狙いに行くのに対してヨシナリは結果的に仕留められればいいといった考えなのか、敵の動きを制限、または誘導して仕留め易い位置に動かしている。 ヨシナリの狙撃を躱した敵機がツガルの射線に入った。
狙うまでもない位置だったのでそのまま突撃銃の引き金を引くと吸い込まれるように敵機を射抜く。
やり易いというのもあるが、華を持たせてくれているような気持になってやっていて楽しいのだ。
最初の模擬戦では特に見るべき点はなかったのでふわわの戦闘力頼みの雑魚といった印象。
大規模イベント戦では最終盤まで生き残った事で少しだけ興味を抱いた。
先日のユニオン対抗戦ではフカヤ、センドウを立て続けに撃破し、自分に対しても見事な牽制で動きを誘導されあっさり仕留められた。 それだけでも凄まじいが、Sランクのラーガスト、Aランクのユウヤと組んでいたこその戦績ではあったのだろうがあの二人と組んで埋もれなかった事もまた凄まじい。
スコア――撃墜数だけで見てもしっかりと成果は出しているので、気が付けばヨシナリに対しての印象が無関心から興味に移行した。 ちょうど手が空いた事もあって組んでみたいと思ったのだ。
フカヤに同じ話をすると彼もヨシナリに興味を抱いていたのか自分も行くという事になったのが、二人で誘った経緯となる。 下に余裕が出来たのか援護が飛んでくる頻度が上がり、空の敵が次々と減っていく。
元々、ソルジャータイプとキマイラタイプでは機動力に大きな開きがあるので囲まれなければまず負ける事はない。 その辺りを理解しているのかヨシナリの援護は敵の誘導以外にも包囲を妨害する意図も含まれているようだ。
「いいねぇ」
思わず呟く。 センドウはマルメルというプレイヤーを評価していたが、ツガルは断然ヨシナリだ。
他所のユニオン所属でなければ引き抜きたくなる。 是非とも仲間に欲しいと思うぐらいにツガルはヨシナリの事が気に入り始めていた。
「っし。 これでラスト」
最後の一機を撃墜し、下を見るとヨシナリが敵機を次々と撃ち抜いているがかなり接近されていた。
どうやら自分を守るよりもツガルへの援護を優先したようだ。
その行動にやや訝しむが、ツガルが見ている事に気が付いたのかヨシナリの機体が小さく手を振る。
通信を繋ぎ、ヨシナリの話を聞いてなるほどと納得した。
支援もそうだが案外指揮官向きかもしれないなと思いながら機体を変形させて急降下。
ヨシナリの下へと向かった。
打てば響くといった速さでツガルは機体を急降下させる。
対応の早さにヨシナリは内心で感謝しつつ飛び上がってツガルの機体に掴まり、そのまま背に乗せてもらう。
そのまま飛んでもいいが、ジェネレーター二基搭載のキマイラタイプの出力はホロスコープの比ではないのでスピードを出したいのであれば乗せて貰った方が速い。
アノマリーの射撃モードを実弾に切り替えて下へ弾丸をばら撒く。
「お客さんどちらまで?」
「そこの施設までお願いします」
「了解。 ついでにフカヤも拾いに行くか」
下を見るとⅠ型がまだまだ残っており、施設周辺には迎撃に出なかった戦力が控えている。
半分しか釣れなかったので最初のプラン通りに行くべきだ。 報酬が減るのは少々惜しい気もするが、欲張って負けても面白くない。 ここは確実に勝ちを拾いに行くべきだ。
このミッション攻略の肝はフカヤであり、ヨシナリ達の役割は敵の誘因――要は引っ張り出す事にある。 できれば七割ぐらいは引っ張りたかったが思ったよりも出てこなかったので、誘因から陽動に切り替えた。
施設に接近した事で防衛の為に残っていた敵の全てが動き出す。
フカヤはかなり高性能なステルス装備で固めているのでかなり強化したホロスコープのセンサーでも捕捉するのは難しい。 だが、味方であるならレーダー表示に映るので何をしているかはっきりと見える。
現在は施設内に侵入し、位置的に作業に入った所だろう。
見つかったら囲まれるのでこうして陽動を買って出たわけだ。 最初からこうしなかったのは陽動を読まれてしまう事を避ける意味合いもあった。 最初に誘因を行って数を減らしてから突っ込めば多少なりともカモフラージュにはなるだろう。 実際、フカヤは見つかっていないので成功と言える。
『終わりました。 爆発まで二十秒なので早めに離脱を!』
「了解です。 拾うんでそのまま飛び出してください」
『あれ? ここで爆死するつもりでしたが?」
「間に合いそうなので全機健在でクリアしましょう」
『……了解です。 ピックアップをよろしくお願いします』
「――という訳なんでツガルさん。 よろしく」
ヨシナリはツガルの機体の背から飛び降り、爆発の範囲外へと離脱を開始。
「お前、微妙に人使い荒いな」
そう言いつつもツガルは既に向かっていた。 施設から飛び出したフカヤの機体を拾うと急上昇。
僅かに遅れて施設内で爆発。 発電施設そのものが大爆発を起こし、敵機の大半を飲み込んでいく。
衝撃で地面が縦に揺れ、ヨシナリは全力でブースターと姿勢制御用のスラスターを噴かして吹き飛ばされないように踏ん張る。 衝撃をやり過ごしつつレーダーと目視で生き残った敵を確認。
地上に居たⅠ型はヨシナリ達を追って戻ってきた機体を含めて全滅していたが、Ⅱ型は空中に居ただけあって大半が健在だが衝撃に対応できた機体はいなかったので全機墜落していた。
半壊している機体も多いが生き残っている事には変わりないので万が一がないように空中から銃弾を撃ち込んでとどめを刺していく。 途中でツガルとフカヤが参加し、瞬く間に残敵の掃討を完了。
フカヤが最後の一機にボルトを撃ち込んで仕留めた所でミッションクリアとなった。
リザルトが表示される。 施設が全壊したので報酬は大きく減ったが、推奨人数が多いのでヨシナリからすれば充分な額だった。
ツガルは地上で狙撃を続けているヨシナリを見てそんな感想を抱く。
次々とⅠ型を沈め、余裕が出来たら空へ撃ち込んでツガルを囲もうとする敵機に対しての牽制まで行ってくれる。 射撃の腕も大したものだが、センドウとは違った方向性で巧みだった。
ツガルの所感だが、センドウは自分で仕留めたいタイプなので味方が作った隙を突く形で狙いに行くのに対してヨシナリは結果的に仕留められればいいといった考えなのか、敵の動きを制限、または誘導して仕留め易い位置に動かしている。 ヨシナリの狙撃を躱した敵機がツガルの射線に入った。
狙うまでもない位置だったのでそのまま突撃銃の引き金を引くと吸い込まれるように敵機を射抜く。
やり易いというのもあるが、華を持たせてくれているような気持になってやっていて楽しいのだ。
最初の模擬戦では特に見るべき点はなかったのでふわわの戦闘力頼みの雑魚といった印象。
大規模イベント戦では最終盤まで生き残った事で少しだけ興味を抱いた。
先日のユニオン対抗戦ではフカヤ、センドウを立て続けに撃破し、自分に対しても見事な牽制で動きを誘導されあっさり仕留められた。 それだけでも凄まじいが、Sランクのラーガスト、Aランクのユウヤと組んでいたこその戦績ではあったのだろうがあの二人と組んで埋もれなかった事もまた凄まじい。
スコア――撃墜数だけで見てもしっかりと成果は出しているので、気が付けばヨシナリに対しての印象が無関心から興味に移行した。 ちょうど手が空いた事もあって組んでみたいと思ったのだ。
フカヤに同じ話をすると彼もヨシナリに興味を抱いていたのか自分も行くという事になったのが、二人で誘った経緯となる。 下に余裕が出来たのか援護が飛んでくる頻度が上がり、空の敵が次々と減っていく。
元々、ソルジャータイプとキマイラタイプでは機動力に大きな開きがあるので囲まれなければまず負ける事はない。 その辺りを理解しているのかヨシナリの援護は敵の誘導以外にも包囲を妨害する意図も含まれているようだ。
「いいねぇ」
思わず呟く。 センドウはマルメルというプレイヤーを評価していたが、ツガルは断然ヨシナリだ。
他所のユニオン所属でなければ引き抜きたくなる。 是非とも仲間に欲しいと思うぐらいにツガルはヨシナリの事が気に入り始めていた。
「っし。 これでラスト」
最後の一機を撃墜し、下を見るとヨシナリが敵機を次々と撃ち抜いているがかなり接近されていた。
どうやら自分を守るよりもツガルへの援護を優先したようだ。
その行動にやや訝しむが、ツガルが見ている事に気が付いたのかヨシナリの機体が小さく手を振る。
通信を繋ぎ、ヨシナリの話を聞いてなるほどと納得した。
支援もそうだが案外指揮官向きかもしれないなと思いながら機体を変形させて急降下。
ヨシナリの下へと向かった。
打てば響くといった速さでツガルは機体を急降下させる。
対応の早さにヨシナリは内心で感謝しつつ飛び上がってツガルの機体に掴まり、そのまま背に乗せてもらう。
そのまま飛んでもいいが、ジェネレーター二基搭載のキマイラタイプの出力はホロスコープの比ではないのでスピードを出したいのであれば乗せて貰った方が速い。
アノマリーの射撃モードを実弾に切り替えて下へ弾丸をばら撒く。
「お客さんどちらまで?」
「そこの施設までお願いします」
「了解。 ついでにフカヤも拾いに行くか」
下を見るとⅠ型がまだまだ残っており、施設周辺には迎撃に出なかった戦力が控えている。
半分しか釣れなかったので最初のプラン通りに行くべきだ。 報酬が減るのは少々惜しい気もするが、欲張って負けても面白くない。 ここは確実に勝ちを拾いに行くべきだ。
このミッション攻略の肝はフカヤであり、ヨシナリ達の役割は敵の誘因――要は引っ張り出す事にある。 できれば七割ぐらいは引っ張りたかったが思ったよりも出てこなかったので、誘因から陽動に切り替えた。
施設に接近した事で防衛の為に残っていた敵の全てが動き出す。
フカヤはかなり高性能なステルス装備で固めているのでかなり強化したホロスコープのセンサーでも捕捉するのは難しい。 だが、味方であるならレーダー表示に映るので何をしているかはっきりと見える。
現在は施設内に侵入し、位置的に作業に入った所だろう。
見つかったら囲まれるのでこうして陽動を買って出たわけだ。 最初からこうしなかったのは陽動を読まれてしまう事を避ける意味合いもあった。 最初に誘因を行って数を減らしてから突っ込めば多少なりともカモフラージュにはなるだろう。 実際、フカヤは見つかっていないので成功と言える。
『終わりました。 爆発まで二十秒なので早めに離脱を!』
「了解です。 拾うんでそのまま飛び出してください」
『あれ? ここで爆死するつもりでしたが?」
「間に合いそうなので全機健在でクリアしましょう」
『……了解です。 ピックアップをよろしくお願いします』
「――という訳なんでツガルさん。 よろしく」
ヨシナリはツガルの機体の背から飛び降り、爆発の範囲外へと離脱を開始。
「お前、微妙に人使い荒いな」
そう言いつつもツガルは既に向かっていた。 施設から飛び出したフカヤの機体を拾うと急上昇。
僅かに遅れて施設内で爆発。 発電施設そのものが大爆発を起こし、敵機の大半を飲み込んでいく。
衝撃で地面が縦に揺れ、ヨシナリは全力でブースターと姿勢制御用のスラスターを噴かして吹き飛ばされないように踏ん張る。 衝撃をやり過ごしつつレーダーと目視で生き残った敵を確認。
地上に居たⅠ型はヨシナリ達を追って戻ってきた機体を含めて全滅していたが、Ⅱ型は空中に居ただけあって大半が健在だが衝撃に対応できた機体はいなかったので全機墜落していた。
半壊している機体も多いが生き残っている事には変わりないので万が一がないように空中から銃弾を撃ち込んでとどめを刺していく。 途中でツガルとフカヤが参加し、瞬く間に残敵の掃討を完了。
フカヤが最後の一機にボルトを撃ち込んで仕留めた所でミッションクリアとなった。
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