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第147話

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 後はトラップやグレネードなどは状況に合わせて持ち込めばいい。
 継戦能力はやや落ちるが今のヨシナリのイメージに合った動きができる機体構成だ。
 後は都市戦を想定し、見つかり難いように灰色に塗装して完了。

 「いいんじゃないか?」

 出来上がった機体に大きく頷く。
 後はトレーニングルームで軽く慣らしてランク戦で実戦投入だ。
 本当は対応力が求められるユニオン戦に出たかったが、マルメル達が帰ってくるのはまだ先なので個人戦で頑張るしかない。 さてとランク戦に参加し、早速マッチング開始。

 早々に相手が見つかり試合開始となった。
 以前に当たった事がある相手なので装備が見える。
 機種はⅡ型。 重装甲、装備は大型の機関銃とエネルギーライフル。
 重さを推進力で捻じ伏せる重戦車タイプだ。 最初の相手としては悪くない。
 
 ヨシナリは気合を入れて挑む。 新生したホロスコープの初陣だ。
 ここは勝って順調な滑り出しを見せておきたい。 フィールドは散々練習した市街地エリア。
 条件としては最高といえるだろう。 かなりの軽量化に成功したホロスコープは軽快にビルからビルへと飛び移り、敵機との距離を詰めていく。 目視できる距離まで接近した所で改めて装備を確認。

 エネルギーライフルの射程は脅威だが機関銃は問題ない。
 ヨシナリは即座に狙撃体勢に移行し、即座に撃ち込む。
 アノマリーから放たれるエネルギー弾は装甲を盛ったお陰で足の遅い機体を簡単に捉える。

 ただ、着地から即座に狙撃へと移行したので照準が少し甘く、命中したのは肩。
 対エネルギー兵器対策をしているのか貫通はせず熔解させただけに留まっている。
 それでも直撃だったので相手の片腕は不自然にだらりと垂れていた。 恐らく動かなくなったのだろう。 一撃で仕留められばスマートだったが、まだまだ改善の余地ありと前向きに考えて逸れた狙いを修正。 その間に相手もヨシナリの位置に気付きエネルギーライフルを構える。

 ヨシナリは相手と向けている銃口を注視。 確かにこちらを向いているが狙いは正確か?
 装甲を削ぎ落した今のホロスコープでは当たれば即死だが、ヨシナリは構わずに引き金に指をかけて小さく息を吸って止めた。 同時にエネルギー弾の出力を上げる。 半端な威力では貫通しないので一撃で仕留めに行くつもりだ。

 ――こういう時、ビビったら負ける。

 発射。 互いの銃口から収束させたエネルギーの弾が吐き出され空中で交差。
 敵機の放った一撃はヨシナリから大きく逸れ、背後にあったビルの屋上をかすめ、ヨシナリの放った弾は敵機の中心――コックピット部分を正確に撃ち抜いていた。 

 ヨシナリはふうと小さく息を吐くと同時に敵機が爆散。 リザルトが表示される。
 危なげなく勝利した事に手応えを感じたヨシナリは内心で小さく拳を握った。
 モチベーションがかつてないほどに上がっているのでこの調子で次へ行こうと休みなしで再度マッチング。 ステージは森林、初見の相手なので装備、機種共に不明。

 試合開始。 まずは相手の情報を得る為にその場でじっと留まる。
 少しするとレーダー表示に敵機を示す反応出た。 移動速度から空中戦メインの速度特化。
 最大望遠にすると背中に巨大なブースターを背負ったⅡ型が見える。

 装備はマガジン式のエネルギーライフルと腰に大型のリボルバー。
 マガジン式はヨシナリの使っているチャージ式と違ってエネルギー切れになってもマガジン交換によって即座に再使用が可能となる利点がある。 その為、攻撃の回転速度が早く、短期戦向きの武装だ。

 速攻をかけるのならいい装備といえる。 拳銃がオートマチックではなくリボルバーなのは口径が大きいので一撃の威力が大きく、少ない手数で相手を仕留める事ができるからだろう。 後、安い。
 ヨシナリはマルメルに聞いた「同じ威力のオートマチックとリボルバーだと値段が三割は違う」と言っていた事と、安価で取り回しも良く高火力を出せるのでお財布の味方と絶賛していた事をふと思い出した。

 反面、リロードの遅さなど戦闘時の不便もまた存在するが折り合いがつくなら採用の価値はあるだろう。 ヘッドパーツの形状からいいセンサーを積んでいる事が分かるが、ヨシナリもステルスにはそこそこ力を入れているので今の所は見つかっていない可能性が高い。
 
 この状況をどう利用するか? アノマリーに後付けした三脚を利用し、同じく後付けした遠隔での発射装置――要は任意のタイミングで引き金を引く為の代物だ。 通常の銃なら安価なのだが、エネルギー兵器は互換性の問題で高額な物が必要だったりする。

 今のヨシナリに必要なのは情報。 敵の装備、機体のパーツ構成、何ができてできないのか。
 そこから行動を予測し、その裏を突く。 可能であれば相手の行動を誘導できれば言う事なしだ。
 アノマリーから少し距離を取り、周囲を旋回している敵機に向けて遠隔発射。
 
 エネルギー弾が敵機へ真っすぐに飛ぶが、碌に狙いを付けていないので狙いは大きく逸れる。
 気が付いた敵機は即座に発射地点を割り出すと頭部を地上に向けて急降下。
 ヨシナリは遠隔操作を続けて二発、三発と発射。 敵機は機体を左右に振って回避する。

 上手い。 かなり空中戦になれた動きだ。
 四発目で弾切れ。 アノマリーのエネルギー弾は四発まで発射可能でチャージした高威力の弾は二発分、または四発分のエネルギーを消費する。 エネルギー残量ゼロの状態で一発撃てるようになるまで五秒必要だ。 五秒はかなり大きな隙ではあるが、実体弾の使用も可能なので使い方次第で弱点は消せる。

 ――今回に限っては気を引ければいいので何の問題もない。
 
 切り替えて今度は実弾を吐き出す。 流石に射線が一切動かない、つまり移動を一切していない事に疑問を抱いたのか敵機が突っ込むのを止めようと減速。

 ――ここだ。 

 同時にヨシナリは機体に備わった全ての推進装置を全開にして急上昇。
 減速した敵機は咄嗟に再度加速しようとブースターを噴かしたが僅かに遅い。
 背後を取ったヨシナリは短機関銃で背のブースターを片方破壊。 バランスを崩して錐揉みしている機体に更に銃撃、機動性に振っている機体は対弾性能が低いので短機関銃でも充分に装甲は貫ける。

 背から火を噴いた機体は追い打ちの銃弾を大量に喰らって爆散。 
 ヨシナリはの勝利となった。
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