Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
上 下
147 / 476

第147話

しおりを挟む
 後はトラップやグレネードなどは状況に合わせて持ち込めばいい。
 継戦能力はやや落ちるが今のヨシナリのイメージに合った動きができる機体構成だ。
 後は都市戦を想定し、見つかり難いように灰色に塗装して完了。

 「いいんじゃないか?」

 出来上がった機体に大きく頷く。
 後はトレーニングルームで軽く慣らしてランク戦で実戦投入だ。
 本当は対応力が求められるユニオン戦に出たかったが、マルメル達が帰ってくるのはまだ先なので個人戦で頑張るしかない。 さてとランク戦に参加し、早速マッチング開始。

 早々に相手が見つかり試合開始となった。
 以前に当たった事がある相手なので装備が見える。
 機種はⅡ型。 重装甲、装備は大型の機関銃とエネルギーライフル。
 重さを推進力で捻じ伏せる重戦車タイプだ。 最初の相手としては悪くない。
 
 ヨシナリは気合を入れて挑む。 新生したホロスコープの初陣だ。
 ここは勝って順調な滑り出しを見せておきたい。 フィールドは散々練習した市街地エリア。
 条件としては最高といえるだろう。 かなりの軽量化に成功したホロスコープは軽快にビルからビルへと飛び移り、敵機との距離を詰めていく。 目視できる距離まで接近した所で改めて装備を確認。

 エネルギーライフルの射程は脅威だが機関銃は問題ない。
 ヨシナリは即座に狙撃体勢に移行し、即座に撃ち込む。
 アノマリーから放たれるエネルギー弾は装甲を盛ったお陰で足の遅い機体を簡単に捉える。

 ただ、着地から即座に狙撃へと移行したので照準が少し甘く、命中したのは肩。
 対エネルギー兵器対策をしているのか貫通はせず熔解させただけに留まっている。
 それでも直撃だったので相手の片腕は不自然にだらりと垂れていた。 恐らく動かなくなったのだろう。 一撃で仕留められばスマートだったが、まだまだ改善の余地ありと前向きに考えて逸れた狙いを修正。 その間に相手もヨシナリの位置に気付きエネルギーライフルを構える。

 ヨシナリは相手と向けている銃口を注視。 確かにこちらを向いているが狙いは正確か?
 装甲を削ぎ落した今のホロスコープでは当たれば即死だが、ヨシナリは構わずに引き金に指をかけて小さく息を吸って止めた。 同時にエネルギー弾の出力を上げる。 半端な威力では貫通しないので一撃で仕留めに行くつもりだ。

 ――こういう時、ビビったら負ける。

 発射。 互いの銃口から収束させたエネルギーの弾が吐き出され空中で交差。
 敵機の放った一撃はヨシナリから大きく逸れ、背後にあったビルの屋上をかすめ、ヨシナリの放った弾は敵機の中心――コックピット部分を正確に撃ち抜いていた。 

 ヨシナリはふうと小さく息を吐くと同時に敵機が爆散。 リザルトが表示される。
 危なげなく勝利した事に手応えを感じたヨシナリは内心で小さく拳を握った。
 モチベーションがかつてないほどに上がっているのでこの調子で次へ行こうと休みなしで再度マッチング。 ステージは森林、初見の相手なので装備、機種共に不明。

 試合開始。 まずは相手の情報を得る為にその場でじっと留まる。
 少しするとレーダー表示に敵機を示す反応出た。 移動速度から空中戦メインの速度特化。
 最大望遠にすると背中に巨大なブースターを背負ったⅡ型が見える。

 装備はマガジン式のエネルギーライフルと腰に大型のリボルバー。
 マガジン式はヨシナリの使っているチャージ式と違ってエネルギー切れになってもマガジン交換によって即座に再使用が可能となる利点がある。 その為、攻撃の回転速度が早く、短期戦向きの武装だ。

 速攻をかけるのならいい装備といえる。 拳銃がオートマチックではなくリボルバーなのは口径が大きいので一撃の威力が大きく、少ない手数で相手を仕留める事ができるからだろう。 後、安い。
 ヨシナリはマルメルに聞いた「同じ威力のオートマチックとリボルバーだと値段が三割は違う」と言っていた事と、安価で取り回しも良く高火力を出せるのでお財布の味方と絶賛していた事をふと思い出した。

 反面、リロードの遅さなど戦闘時の不便もまた存在するが折り合いがつくなら採用の価値はあるだろう。 ヘッドパーツの形状からいいセンサーを積んでいる事が分かるが、ヨシナリもステルスにはそこそこ力を入れているので今の所は見つかっていない可能性が高い。
 
 この状況をどう利用するか? アノマリーに後付けした三脚を利用し、同じく後付けした遠隔での発射装置――要は任意のタイミングで引き金を引く為の代物だ。 通常の銃なら安価なのだが、エネルギー兵器は互換性の問題で高額な物が必要だったりする。

 今のヨシナリに必要なのは情報。 敵の装備、機体のパーツ構成、何ができてできないのか。
 そこから行動を予測し、その裏を突く。 可能であれば相手の行動を誘導できれば言う事なしだ。
 アノマリーから少し距離を取り、周囲を旋回している敵機に向けて遠隔発射。
 
 エネルギー弾が敵機へ真っすぐに飛ぶが、碌に狙いを付けていないので狙いは大きく逸れる。
 気が付いた敵機は即座に発射地点を割り出すと頭部を地上に向けて急降下。
 ヨシナリは遠隔操作を続けて二発、三発と発射。 敵機は機体を左右に振って回避する。

 上手い。 かなり空中戦になれた動きだ。
 四発目で弾切れ。 アノマリーのエネルギー弾は四発まで発射可能でチャージした高威力の弾は二発分、または四発分のエネルギーを消費する。 エネルギー残量ゼロの状態で一発撃てるようになるまで五秒必要だ。 五秒はかなり大きな隙ではあるが、実体弾の使用も可能なので使い方次第で弱点は消せる。

 ――今回に限っては気を引ければいいので何の問題もない。
 
 切り替えて今度は実弾を吐き出す。 流石に射線が一切動かない、つまり移動を一切していない事に疑問を抱いたのか敵機が突っ込むのを止めようと減速。

 ――ここだ。 

 同時にヨシナリは機体に備わった全ての推進装置を全開にして急上昇。
 減速した敵機は咄嗟に再度加速しようとブースターを噴かしたが僅かに遅い。
 背後を取ったヨシナリは短機関銃で背のブースターを片方破壊。 バランスを崩して錐揉みしている機体に更に銃撃、機動性に振っている機体は対弾性能が低いので短機関銃でも充分に装甲は貫ける。

 背から火を噴いた機体は追い打ちの銃弾を大量に喰らって爆散。 
 ヨシナリはの勝利となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...