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第143話
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カナタは冷静にそして冷徹に目的の為に機体を操り続ける。
全てはユウヤを自身の庇護下に置く為に。 彼女にとってユウヤは物心つく前からそこに居た身近な存在だ。 ユウヤという少年はカナタから見れば頼りない存在で彼の両親からも息子を頼むと言われており、その言葉を真に受けた彼女は姉代わりとしてユウヤに接して来た。
同時に姉としてふさわしい自分であれと自己を高めて来たのだ。
勉学、スポーツあらゆる努力は惜しまなかった。 同時に外から見た完璧な自分を形成する事も忘れない。
結果、周囲の彼女に対する評価はどんな事でも平均以上にこなす優れた人間と認識されるまでに自己の社会的地位を築いたのだ。
才覚もあったが何よりも努力家という面が大きな要因であった。 その才はICpwとゲームでも遺憾なく発揮され、彼女は早々にゲーム内でも上位に位置する規模のユニオンのトップに収まる事となる。
やれば何でもできる。 いや、できるようになるまでやる。
それが彼女――カナタの本質ともいえるものだった。 どんな物、どんな事でも手を伸ばす努力を怠らなければ手が届く。 カナタがこれまでの人生で得た哲学に近いものだが、そんな彼女にもどうにもならないものがあった。
ユウヤだ。 彼だけは中々思い通りに行かなかった。
学業の成績は並、運動に至っては並以下。 はっきり言ってどうしようもない。
高成績を維持しているカナタからすればできない奴は努力が足りないと思っているので、それができない奴はどう足掻いてもそこで頭打ちになる。 要はやる気次第で大抵の事はどうにでもなるといった根性論に近い考えだ。 裏を返せばやる気のない奴は何をやっても上手く行くわけがないと思っているので他人であるならそんな人間は早々に見切りを付ける。 これまでもカナタはそうやって来た。
だが、ユウヤにだけはそれは出来ない。 身内としてどこに出しても恥ずかしくないようにしなければ。
そんな気持ちでユウヤに接してきたのだが、皮肉な事に彼女がユウヤに対して何かすればするほどに彼の心は彼女から離れていく。 カナタにはさっぱり分からなかった。
普通に考えれば自分の行動は全てユウヤにとってプラスのはずなのだ。
それをどうして理解できない? しようとしない? カナタには分からなかった。
だからと言って分からないままではいつまで経っても望む結果には辿り着けない。
ユウヤを従えるにはユウヤを理解しなければならない。 そうすれば自分の問題点も見えてくるのではないか? そう考えたからこそカナタはこのゲームを始めたのだ。
最初は何が面白いのかさっぱり理解できなかったのだが、プレイしていく内に気が付けばAランクに上がるまでにのめり込んでいた。 確かにこのゲームは面白い。
ユウヤがのめり込むのも理解できる。 だからこそ彼女はその楽しさを共有する為にユウヤを誘ったのだがそれも拒絶された。 カナタは自分なりに歩み寄ったつもりなのだが、それすらも拒絶された事で力づくで理解させようといった結論に至る。 単にムキになっただけではあるのだが、彼女の中では聞き分けのないユウヤに分からせるといった考えの下、彼を自身のユニオンへと取り込もうと動き出したのだ。
できるまでやる。 努力を怠らないと言えば聞こえはいいが、対人関係でそれをやれば粘着と呼ばれる事を彼女は失念していた。 自覚はなかったが彼女はユウヤの事になると周囲が見え辛くなるようだ。
周囲はそれをよく理解しており、やんわりと指摘した者もいたが、一切効果がなかった点からもユウヤを引き入れない事には解消されないと判断せざるを得なかった。 だからユニオンの仲間達はこうして全力で協力したのだが――
――ぶっ潰す。
ユウヤの心は怒りで満ちていたが、機体の操作に関しては冷静そのものだった。
粉塵で視界はゼロだが、戻ってきたアルフレッドの情報支援が受けられるようになったのでカナタの居る位置は手に取るように分かる。 これでようやく、ようやく解放されるのだ。
ユウヤはカナタという女が死ぬほど嫌いだった。
いちいち行動に干渉してくる事もそうだが、あの女は「自分の求める完璧なユウヤ」を現実のユウヤに求め、それに近づくように強要してくるのだ。 それが彼にとって非常に不愉快だった。
カナタは傍から見れば容姿、能力とどれをとっても非常に優れているといえる。
その点だけはユウヤも認めているが、傍に居たいかと尋ねられれば答えはノーだ。
カナタの矯正行為はユウヤの自尊心を踏み躙る事を前提とし、彼女はそれを正しいと心の底から信じている。 それがユウヤにとってたまらなく不快だった。 だからそんな彼女から逃げ出す場所として選んだこのゲームはある意味、彼にとって聖域とも呼べる場所だったのだ。
そんな聖域にカナタは土足で踏み込み。 荒らしまわった。
これは断じて許される事ではない。 皮肉な事にカナタが歩み寄った結果、ユウヤの中で彼女に対するスタンスが明確に決まったのだ。 ユウヤにとってカナタは不快な存在以上に『敵』であると。
自身と自身の安らぎの地であるこのゲームでの生活を守る為、彼は敵を全力で排除する事を決めた。
だから、彼女の戦い方を徹底的に研究し、性格を利用してこの状態へと持って行ったのだ。
あの女は自分のルールに厳しい。 要は自分で決めた事を貫徹する事に執着する。
ユウヤに執着する事もその一環なので、裏を返せば一度約束させてしまえばそれはまず守るだろう。
同時に不特定多数が見ている場で条件を満たせばうやむやにする事もできない。
だからこそイベント戦というセッティングが難しい場を選んだ。 ユウヤにとってもリスクの高い戦いではあるが、このゲームからあの女を排除できるなら充分な見返りのある賭けだった。
カナタの機体は分類として近接特化ではあるが、間合いが広いので下手な飛び道具よりも攻撃範囲が広い。 対処法としては最大威力の出る間合いを常に外し続ける事だ。
自身に対して厳格であるが故に勝ち方に対する拘りも強い。 最高の間合いで最大の一撃。
それがカナタというプレイヤーが持つ勝利へと至る為に必要な不変の方程式。
完璧に決まればその時点で終わるのだ。 柔軟性に欠けはするが、これまで勝利をもぎ取ってきた実力は本物であると認めざるを得ない。 勝利の鍵は彼女が頼みを置く大剣を攻略する事にあるが――
全てはユウヤを自身の庇護下に置く為に。 彼女にとってユウヤは物心つく前からそこに居た身近な存在だ。 ユウヤという少年はカナタから見れば頼りない存在で彼の両親からも息子を頼むと言われており、その言葉を真に受けた彼女は姉代わりとしてユウヤに接して来た。
同時に姉としてふさわしい自分であれと自己を高めて来たのだ。
勉学、スポーツあらゆる努力は惜しまなかった。 同時に外から見た完璧な自分を形成する事も忘れない。
結果、周囲の彼女に対する評価はどんな事でも平均以上にこなす優れた人間と認識されるまでに自己の社会的地位を築いたのだ。
才覚もあったが何よりも努力家という面が大きな要因であった。 その才はICpwとゲームでも遺憾なく発揮され、彼女は早々にゲーム内でも上位に位置する規模のユニオンのトップに収まる事となる。
やれば何でもできる。 いや、できるようになるまでやる。
それが彼女――カナタの本質ともいえるものだった。 どんな物、どんな事でも手を伸ばす努力を怠らなければ手が届く。 カナタがこれまでの人生で得た哲学に近いものだが、そんな彼女にもどうにもならないものがあった。
ユウヤだ。 彼だけは中々思い通りに行かなかった。
学業の成績は並、運動に至っては並以下。 はっきり言ってどうしようもない。
高成績を維持しているカナタからすればできない奴は努力が足りないと思っているので、それができない奴はどう足掻いてもそこで頭打ちになる。 要はやる気次第で大抵の事はどうにでもなるといった根性論に近い考えだ。 裏を返せばやる気のない奴は何をやっても上手く行くわけがないと思っているので他人であるならそんな人間は早々に見切りを付ける。 これまでもカナタはそうやって来た。
だが、ユウヤにだけはそれは出来ない。 身内としてどこに出しても恥ずかしくないようにしなければ。
そんな気持ちでユウヤに接してきたのだが、皮肉な事に彼女がユウヤに対して何かすればするほどに彼の心は彼女から離れていく。 カナタにはさっぱり分からなかった。
普通に考えれば自分の行動は全てユウヤにとってプラスのはずなのだ。
それをどうして理解できない? しようとしない? カナタには分からなかった。
だからと言って分からないままではいつまで経っても望む結果には辿り着けない。
ユウヤを従えるにはユウヤを理解しなければならない。 そうすれば自分の問題点も見えてくるのではないか? そう考えたからこそカナタはこのゲームを始めたのだ。
最初は何が面白いのかさっぱり理解できなかったのだが、プレイしていく内に気が付けばAランクに上がるまでにのめり込んでいた。 確かにこのゲームは面白い。
ユウヤがのめり込むのも理解できる。 だからこそ彼女はその楽しさを共有する為にユウヤを誘ったのだがそれも拒絶された。 カナタは自分なりに歩み寄ったつもりなのだが、それすらも拒絶された事で力づくで理解させようといった結論に至る。 単にムキになっただけではあるのだが、彼女の中では聞き分けのないユウヤに分からせるといった考えの下、彼を自身のユニオンへと取り込もうと動き出したのだ。
できるまでやる。 努力を怠らないと言えば聞こえはいいが、対人関係でそれをやれば粘着と呼ばれる事を彼女は失念していた。 自覚はなかったが彼女はユウヤの事になると周囲が見え辛くなるようだ。
周囲はそれをよく理解しており、やんわりと指摘した者もいたが、一切効果がなかった点からもユウヤを引き入れない事には解消されないと判断せざるを得なかった。 だからユニオンの仲間達はこうして全力で協力したのだが――
――ぶっ潰す。
ユウヤの心は怒りで満ちていたが、機体の操作に関しては冷静そのものだった。
粉塵で視界はゼロだが、戻ってきたアルフレッドの情報支援が受けられるようになったのでカナタの居る位置は手に取るように分かる。 これでようやく、ようやく解放されるのだ。
ユウヤはカナタという女が死ぬほど嫌いだった。
いちいち行動に干渉してくる事もそうだが、あの女は「自分の求める完璧なユウヤ」を現実のユウヤに求め、それに近づくように強要してくるのだ。 それが彼にとって非常に不愉快だった。
カナタは傍から見れば容姿、能力とどれをとっても非常に優れているといえる。
その点だけはユウヤも認めているが、傍に居たいかと尋ねられれば答えはノーだ。
カナタの矯正行為はユウヤの自尊心を踏み躙る事を前提とし、彼女はそれを正しいと心の底から信じている。 それがユウヤにとってたまらなく不快だった。 だからそんな彼女から逃げ出す場所として選んだこのゲームはある意味、彼にとって聖域とも呼べる場所だったのだ。
そんな聖域にカナタは土足で踏み込み。 荒らしまわった。
これは断じて許される事ではない。 皮肉な事にカナタが歩み寄った結果、ユウヤの中で彼女に対するスタンスが明確に決まったのだ。 ユウヤにとってカナタは不快な存在以上に『敵』であると。
自身と自身の安らぎの地であるこのゲームでの生活を守る為、彼は敵を全力で排除する事を決めた。
だから、彼女の戦い方を徹底的に研究し、性格を利用してこの状態へと持って行ったのだ。
あの女は自分のルールに厳しい。 要は自分で決めた事を貫徹する事に執着する。
ユウヤに執着する事もその一環なので、裏を返せば一度約束させてしまえばそれはまず守るだろう。
同時に不特定多数が見ている場で条件を満たせばうやむやにする事もできない。
だからこそイベント戦というセッティングが難しい場を選んだ。 ユウヤにとってもリスクの高い戦いではあるが、このゲームからあの女を排除できるなら充分な見返りのある賭けだった。
カナタの機体は分類として近接特化ではあるが、間合いが広いので下手な飛び道具よりも攻撃範囲が広い。 対処法としては最大威力の出る間合いを常に外し続ける事だ。
自身に対して厳格であるが故に勝ち方に対する拘りも強い。 最高の間合いで最大の一撃。
それがカナタというプレイヤーが持つ勝利へと至る為に必要な不変の方程式。
完璧に決まればその時点で終わるのだ。 柔軟性に欠けはするが、これまで勝利をもぎ取ってきた実力は本物であると認めざるを得ない。 勝利の鍵は彼女が頼みを置く大剣を攻略する事にあるが――
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