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第135話

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 攻撃と補給の繰り返しによる弾幕の維持。 これを崩すのは難しい。
 狙うのは攻撃役を入れ替えるタイミング。 ほんの僅か――時間にして一、二秒。
 正直、隙というには厳しい時間だが、ヨシナリに付け込めるのはそこしかない。
 
 爆発音を数える。 一、二、三――
 水中で炸裂する衝撃波がホロスコープを襲い、機体にダメージが蓄積されていく。
 こればかりはどうにもならないので耐えてくれと祈るばかりだ。
 
 ――五、六、七。 後三発。

 小型、中型を交互に撃ち込み、最も威力のある大型は七発目から十発目。
 八、九――ズンと大きな爆発が発生。 センサーにノイズが走る。
 駆動系にいくつかのエラー。 どこかの関節がやられたようだ。

 動作効率がダウンしたといったメッセージがポップアップ。
 機体の簡易図と損傷個所が赤く点滅。 左腕が上がりにくくなった。
 移動に支障がないだけマシだ。 十、今だ。

 ヨシナリはホロスコープのメインのブースター、各所に着いたスラスターを全開。
 推進力の全てを開放。 水中から飛び出す。
 大きく弧を描くような形で敵の側面へと移動。 流石にこの距離で飛び出せば気付かれる。
 
 吹雪のヴェールに覆われて目視は出来ないが、位置は問題ない。
 反応した敵機は即座にミサイルを発射。 発射の際に吹き上がる小さな炎で位置も距離も完全に分かった。 行ける。 後はランダムに動いてミサイルを回避しつつ一発で一機を仕留めて残りと一対一だ。
 
 これまでの使い方から精密誘導弾――要は追尾システムを積んだホーミングミサイルはない。
 恐らくは弾を増やしている関係で単純な構造のミサイルしか積めなかったのだろう。
 なら機動で振り切れる。 ヨシナリはアノマリーをフルチャージで構えて狙う。
 じっくり狙う時間はないのでそのまま発射。 エネルギー弾は吸い込まれるように狙った位置を突き抜けていく。 ズンと地面が揺れるほどの大きな爆発。

 明らかにミサイルの誘爆だ。 仕留めた。 
 これで二機。 ラスト一機、こいつを仕留めればここにいる敵機は全滅だ。
 ただ、アノマリーをチャージしている余裕はないので投げ捨てる。 パンツァータイプの装甲を抜きたいのなら今のホロスコープで可能なのは接近戦。 ダガーで直接コックピットを狙う。

 さっきまで撃ちまくっていた方を狙って仕留めた。 残りの機体にミサイルはそこまで残されていない。 そうなると敵に残されたのは腕についているであろうガトリング砲だ。
 ヨシナリの考えを裏付けるかのように無数の弾丸が吹雪の向こうから飛んでくる。

 下半身が無限軌道である以上、下がった所で追いつかれるのは目に見えているのだ。
 ついでに小回りも利かない。 側面から仕掛けてくる敵に対していちいち旋回していたら間に合わない。 ならどうするのか?
  
 上半身だけをこちらに向けての射撃。 その体勢だと左右にしか動けない。
 それはトレーニングルームで散々撃ち抜いてきた的とまったく同じ動きだ。
 余裕で肉薄できる。 これで――
 
 「終わり――」

 ――不意に無数の弾丸が全く想像もしていない場所から飛んできた。
 咄嗟に機体を捻って致命傷は回避したが背中のブースターをやられたようで背で大きな爆発。
 スピードが維持できずに墜落。 機体が積もった雪を彫起こりながら地面を擦る。

 ――一体、何処から!?

 伏兵? 隠れていた? 一体どこに?
 無数の疑問が脳裏に溢れるがそれよりも先に現状の打開が先だ。 
 とはいっても完全に思惑から外れた上、メインの推進装置を失ったので敵の攻撃を回避する術がない。

 せめてもの抵抗にと拳銃を抜いて構えるが飛んできた無数のミサイルをいくつか撃ち落とすだけのささやかな抵抗に終わった。 ヨシナリとホロスコープはガトリング砲から吐き出される無数の銃弾と大量のミサイルを喰らってバラバラになって大破。 そのまま脱落となった。

 
 脱落につき、待機室へと戻されたヨシナリは観戦モードで戦場を俯瞰する。
 全体的な戦況の把握は後回しにしてまずは答え合わせだ。
 観戦モードでは吹雪の影響を無視できるので全ての機体の位置と動きが丸見えとなる。

 ヨシナリは自分がやられた辺りに視点を移動させ、そこにあった物を見て思わず顔を手で覆う。
  
 「あ~、畜生。 そういう事か」

 予想外な攻撃はヨシナリが撃破したと思っていた機体からの攻撃だった。
 何をやったのかと言うとヨシナリの攻撃に合わせて大破した味方の機体にミサイルを撃ち込んだのだ。
 大破はしたがミサイルポッドにはまだミサイルが残っていたので、上手い事誘爆させれば撃破を装う事ができる。 ヨシナリが仕留めたと勘違いして通り過ぎた所で死角から一撃。

 しかも位置から察するにヨシナリの一撃も残骸を盾にして防いだようだ。
 そうとも知らずにヨシナリは仕留めたといい気になってアノマリーを投げ捨てて突っ込んだと。
 考えると凄まじく間抜けな絵面だった。 敵からすれば笑えるほどのピエロだろう。

 逆の立場だったらちょっと馬鹿にするかもしれない。 ヨシナリは自分の間抜け振りに死にたくなったが、取り合えずは反省は後で戦況の確認を行う。
 味方の損耗はヨシナリのみでラーガストもユウヤも健在だ。 敵は――

 「うわ、マジかよ……」

 敵のAランク機体は既に撃破済みでもうエンジェルタイプも最後の一機しか残ってない。
 それも見ている間に手の空いたエイコサテトラに両断されて撃破。 全滅となった。
 これでユウヤの方に行っていた敵は全滅しており、残りはヨシナリを撃破したパンツァータイプが一機残っているだけでその一機も最後の抵抗とばかりにミサイルをばら撒いていたが、凄まじい機動力――ホバーではなく二本の足で走って掻い潜っている。 改めて見るととんでもない速さだ。

 一歩で進む距離が大きく小刻みに移動する事で敵に狙いを絞らせない。
 この吹雪の中で動きに一切迷いがないのはアルフレッドとデータをリンクしているからだろう。
 とんでもない速さで肉薄し、内蔵された散弾砲で一撃。 肩のミサイルポッドに当てる事で誘爆し、機体が大きく損壊した。 それでも流石は重装甲のパンツァータイプでまだ動いているがそれだけだった。

 ユウヤの大剣がギミックを展開しハンマーに変形。 コンパクトに振り抜かれたハンマーヘッドがコックピットを正確に打ち抜て叩き潰す。 それでとどめだ。
 戦闘終了。 リザルトを見るとラーガストはほぼ無傷、ユウヤも多少の損傷はあるが動きに支障が出るほどではない。 相変わらず凄まじい戦果だ。
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