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第133話

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 戦力の振り分けも分かり易く、ラーガストに隊長機であるAランク。
 ユウヤにエンジェルタイプ四機とパンツァータイプ二機。
 そして残ったヨシナリには残りのパンツァータイプ三機が割り当てられていた。

 ラーガストに関してはかなりの高速戦闘になるので下手な援護は却って邪魔になるとの判断だろう。
 そしてユウヤに集中し、ヨシナリに関しては余った後衛。 軽く見ているようにも見えるが、これまでの戦いを勝ち上がってきた相手に対して油断はしていない。 

 仕留めるには充分と判断しての振り分けだ。
 実際、ヨシナリを抑え込むという目的はしっかりと達成している。
 三機のパンツァータイプが代わる代わるミサイルや砲弾を撃ち込んで動きを封じつつ仕留めるべく砲弾で狙う。 元々、このチームの後衛は攪乱と索敵が主な仕事で全機、熱と動体系に強いセンサーを積んでいるのでこの環境との相性も良かった。 

 ばら撒いたミサイルは着弾後に小さく燃え上がり、真っ白な風景の中にしっかりと存在を主張している。
 そんな中、近くを移動する機体があればすぐに分かるのでそこを狙って砲弾を叩きこむ。
 当たってはいないが完全に頭を押さえる事には成功している。 彼等の仕事は可能であれば撃破だが、難しいならこのまま押さえておくだけでも問題ない。

 この攻撃での本命はユウヤとアルフレッドだ。 ユウヤを仕留めれば付属品であるアルフレッドは戦場に留まれずに撤退する。 彼等は事前に相手の事をしっかりと調べてはいた。
 ラーガストに関しては調べる必要もない相手だ。 何せ、Aランク以上で彼に負けた事がないプレイヤーはまずいない。 それほどまでに強いのだ。

 だが、当たれば確実に負けるかと言われると答えは否。
 あの超が付く高速起動に対応できるなら充分に戦える。
 彼等のリーダーはその条件を充分に満たしていた。 事実、雪の向こうでは凄まじい挙動で攻撃を繰り出すエイコサテトラの猛攻を六本の腕で見事に凌いでいる。

 僅かでも油断すれば容易く持って行かれる綱渡りのような攻防ではあるが彼の力は最強に通用しているのだ。 リーダーが頑張っている以上、自分達も負けて居られない。
 彼等の士気は非常に高く、勝利への執着心も強い。 相手は最強のSランク擁するチーム。

 人数は三人と少ないが、油断、慢心は一切しない。 全身全霊を持って叩き潰す。
 だからヨシナリの事も格下と侮らずに徹底的に攻め、確実に撃破を狙う。
 彼等の執念はしっかりとヨシナリを追いつめていた。 逃げ場を減らし、徐々に命中精度も上がっている。 このままいけば捉えるのは時間の問題だ。 抑えるだけでいいとの事ではあるが、早めに仕留めるに越した事はない。 そうすれば他に戦力を回せるのだ。

 この地形は見え辛いが大きな湖を中心としてぐるりと取り囲むように丘陵地帯が広がっており、いくつか背の高い山があるので彼等はそこに陣取りやや高い位置から砲撃や爆撃を繰り返している。
 弾はたっぷりと持ってきているのでそうなくなる事はない。 このまま撃ちまくって焙り出す。

 繰り返しになるが彼等の戦い方は非常にシンプルだ。
 今回も背負った発射管によるミサイルを用いた爆撃と両肩に装備された砲を用いての射撃の二種類。
 それによって敵機――ヨシナリは彼等の居場所に気が付くだろう。 この吹雪の中では狙撃は難しい。
  
 ――となると取れる手はそう多くない。 

 ならばどうするのか? 当たる距離まで接近するのだ。
 そうなった場合、彼等の機体両腕に搭載されたガトリング砲による斉射が待っている。
 近寄らなければ砲撃で嬲り殺し、近寄ればガトリング砲でハチの巣になるか。

 このまま行けばヨシナリに用意されたのはこのどちらかの未来しかない。
 居場所も割れている。 どうやら彼等の位置に気が付いて真っすぐに向かってきていた。
 砲撃、爆撃で接近を拒むように見せつつ、ガトリング砲を準備。 射程に入ったと同時に片付けてやる。 さぁ来いと意識を視線の先に集中。

 熱源の移動はしっかり感知できている。 もう少し、そろそろ来――ない?
 熱源は近くまで来ている。 足踏み? だったら砲撃を集中すれば仕留められる。
 ミサイルが殺到し過剰ともいえる爆発が発生。 タイミング的に直撃だ。

 仕留め――光がパンツァータイプの急所であるコックピット部分を射抜く。
 咄嗟に残りの二機が一気に後退して距離を取る。 
 どこから撃ったとは思わない。 問題はどうやって撃ち返したかだ。
 
 あの猛攻の中、どうやって――


 ――一機。 ようやく、まともに当てられる距離まで接近できた。

 ヨシナリは撃破した機体には目もくれず次の標的を撃ち抜くべくアノマリーを構える。
 この吹雪で視界は完全にゼロ。 敵はヨシナリの位置を動体と熱源のどちらか、あるいは両方で捕捉していたとみていい。 位置は分かるが見えている訳ではないのだ。

 ヨシナリはそこを突く事にした。 割と博打ではあったが充分に勝てる勝負でもあった。
 彼が取った手段は非常にシンプルで、氷の下――要は湖の中を進んだのだ。
 足は鈍るが攻撃は水と氷が防いでくれるので被弾率はかなり落ちる。

 ついでにセンサー越しでしか見ていないので上手く勘違いしてくれれば真っすぐに突っ込んで来ているように見えただろう。 よくよく見れば足の遅さで怪しいと思うのだろうが、視界がない状況は優勢であっても視野を狭めたようだ。 読まれた上での待ち伏せの可能性もあったが、これしか手がなかったので行くしかなかった。 後は湖の淵で止まり、氷が剥がれたタイミングで一撃。

 アノマリーの出力を最大にすればパンツァータイプの装甲でも充分に抜けると判断しての事だ。 
 エネルギー式のフィールド発生装置を積んでいた場合、終わりだがミサイルポッド、ミサイル発射管、砲弾を吐き出す為の砲は両肩に積むタイプだろう。 そんな重装備では防御兵装を積む場所がない。

 ミサイルも多弾頭に加え、短、長二種類が飛んできていた事からフル装備であろう事は分かり切っている。
 つまり自前の装甲で防がなければならない。 フィールドがなければ通りはするが仕留められるのかは怪しいが、アノマリーの出力を最大――要は本来は数発分のエネルギーを一発に込める使い方なら可能なはず。

 本来は長距離狙撃に使用する機能で一発撃てば数秒のチャージが必要なので簡単に撃ち返される距離で使いたくはなかったが、現状で思いつく中で最も確率の高い博打だった。
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