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第123話
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コンシャスが戦闘を開始した頃、残りのメンバーはユウヤへの対処に向かっていた。
エンジェルタイプ四、キマイラタイプ一機。 割り当てとしてはエンジェルタイプ四機でユウヤのプルガトリオを残りのキマイラタイプがヨシナリを片付ける手筈となっている。
彼等の中ではソルジャータイプを使っているヨシナリはおまけでしかなかったので、さっさと片付けて厄介なAランクプレイヤーに集中したい。 そんな考えもあっての割り振りだ。
ユウヤ。 プレイヤーランクA、AI搭載の支援機を使っている有名なプレイヤーだ。
二対一で挑んで来る卑怯者といった印象を抱く者もいるが、このゲームをやり込んでいる者ほどそうは思わない。 何故なら彼等はAI搭載機運用のハードルの高さとリスクを知っているからだ。
だから、撃破して大損させてやろうといった気持ちでアルフレッドの撃破を狙う。
キマイラタイプが先行してヨシナリの下へと加速する。 狙撃が飛んでくるが慣れた挙動で回避。
任せて問題ないと判断しているので残りの四機はユウヤを捉えたと同時に散開。
プルガトリオという機体は近接寄りの機体だけあって射程の長い武器は持っていない。
無難な対処法としては射程外から包囲して削り取る事だ。
得意レンジで戦り合えばまず負けるので相手に全力を出させない事が重要だ。
特に格上であるなら猶更だった。 それともう一点、アルフレッドの動向に気を配る事。
この二点さえ押さえていたらユウヤを仕留める事はそう難しくない。
彼等はそう判断していた。 Aランクプレイヤーは確かに強いが、自分達もBランクまで至った自負がある。
たった一つのランク差程度、簡単に覆してやる。 そんな気持ちで各々武器を――
「いたぞ!」
包囲から少し離れた位置にアルフレッドが出現。 両肩に着いた機関砲を連射してくる。
明らかに意識を散らす為の牽制射撃だ。 対策はしっかり練っているので充分に想定内。
現れた場合、狙われた機体が対処するのが仲間内での決まりとなっていたので、攻撃対象になったエンジェルタイプが包囲から外れてアルフレッドの下へと向かう。 それでも三対一だ。
全機、エネルギーライフルを構えて射撃開始。 光弾がユウヤへと飛んでいくが、プルガトリオは操縦者の意図を完全に汲み取り加速。 足裏のローラーを用いたものではなく二本の足を用いた走行だ。
「速い、ってか、一歩一歩の移動範囲が広い!」
「遮蔽物なしでこれとかどうなってんだよ」
これは離れているからこその弊害だった。 ユウヤには全て視えている。 銃口の向き、敵機の様子。
そこから発射の兆候と狙いを読み取れば躱す事は容易。 言うには易いが、実行できるようになるには一定以上の技量が必要とされる。 ある意味、そんな高等なテクニックを自然とできるからこそ彼等はこのランクを維持できているとも言えた。
ユウヤは攻撃を躱しながら敵を観察。 兆候を見逃さないと言わんばかりにじっと見る。
包囲して削るのはユウヤを相手にするには悪くない手だ。 ユウヤだけが相手だった場合は。
「おい、もう二機やられたのかよ」
後ろで戦っているラーガストを仕留めに行った五機の内、二機が大破。
そうなるとここでダラダラと時間をかけるのは悪手と判断せざるを得ない。
結果、勝負を急ぐ事となる。 ユウヤが狙っているのは焦りによって生まれる変調。
飛び道具は当たらない。 どうしても当てたいのなら接近するかどうにかして足を止めるかの二択が最も成功率の高い手だ。 果たして焦った者達はどう動く?
一機が銃撃を止め、エネルギーブレードを展開。
「俺が足を止める。 最悪、俺ごとやれ!」
――ここだ。
接近する為に僅かに前のめりになった機体。 ユウヤは左手を向けてワイヤー――正確には鞭を射出。 エンジェルタイプの足を絡めとる。
自分の武器の間合いは正確に把握しているので、何処で使えばどうなるのかは目を瞑っててもこの程度は簡単だ。 各所に内蔵されているスラスターを全開にして跳躍、同時に鞭を巻き取る。
瞬く間にエンジェルタイプとの距離が埋まり、プルガトリオはその胴体に膝を叩きこんだ。
正確にコックピット部分へと叩きこまれた膝はそのまま内部を破壊し、一撃で戦闘不能へ。
空中で膝を叩きこんだ姿勢のまま右腕を手近な機体へと向ける。 内蔵された散弾砲が火を噴く。
装填されているのは一粒弾。 エンジェルタイプは咄嗟に腕に内蔵されているエネルギーシールドで受けるが威力を完全に殺しきる事は出来ずに腕が大きく跳ね上がる。
崩れた体勢を整えて反撃に転じようとした頃には既にユウヤは目の前で大剣を振りかぶっていた。
「っざけんなぁ!」
彼等もBランク。 相応の苦難を乗り越えて今の位置まで登ってきたプレイヤーだ。
簡単にやられる事は許容できない。 邪魔なライフルを投げ捨てながらブレードを抜いて一閃。
カウンターを狙ったのだがブレードごと機体が叩き潰された。 プルガトリオの大剣に剣としての切断能力はない。 切断の用途で扱うのなら内部のギミックを使うのだが、純粋な堅牢さに優れているとは言えないエンジェルタイプであるならこれで充分だった。
頭頂に叩きつけられた一撃は頭部を完全に粉砕し、胴体部分を破壊。
残りはの一機はユウヤの隙を突こうとしたが、遥か彼方から飛んできた狙撃によって胴体を撃ち抜かれた。 流石にこれは予想できなかったのか完全に虚を突かれた様子で飛んできた方向へと振り返ろうとしたが叶わずに爆散。
「やるな」
ユウヤはそう呟くとヨシナリの方を一瞥した後、アルフレッドが抑えている敵機の方へと向かった。
ラーガストの方は見ない。 見る必要がなかったからだ。
視界の片隅に存在するレーダー表示から敵機の反応が五つ消えているのも分かり切った結果だった。
向かってくる敵機をアルフレッドのセンサーシステムが無機質に捉える。
ノーマルのエンジェルタイプ。 武装はエネルギーライフル、ブレード、短機関銃。
武装から行動を予測。 アルフレッドはこれまでの戦闘経験の蓄積から最適な動きを参照し、自身に適応し、即座に行動に移るべく僅かに重心を傾けた。
エンジェルタイプ四、キマイラタイプ一機。 割り当てとしてはエンジェルタイプ四機でユウヤのプルガトリオを残りのキマイラタイプがヨシナリを片付ける手筈となっている。
彼等の中ではソルジャータイプを使っているヨシナリはおまけでしかなかったので、さっさと片付けて厄介なAランクプレイヤーに集中したい。 そんな考えもあっての割り振りだ。
ユウヤ。 プレイヤーランクA、AI搭載の支援機を使っている有名なプレイヤーだ。
二対一で挑んで来る卑怯者といった印象を抱く者もいるが、このゲームをやり込んでいる者ほどそうは思わない。 何故なら彼等はAI搭載機運用のハードルの高さとリスクを知っているからだ。
だから、撃破して大損させてやろうといった気持ちでアルフレッドの撃破を狙う。
キマイラタイプが先行してヨシナリの下へと加速する。 狙撃が飛んでくるが慣れた挙動で回避。
任せて問題ないと判断しているので残りの四機はユウヤを捉えたと同時に散開。
プルガトリオという機体は近接寄りの機体だけあって射程の長い武器は持っていない。
無難な対処法としては射程外から包囲して削り取る事だ。
得意レンジで戦り合えばまず負けるので相手に全力を出させない事が重要だ。
特に格上であるなら猶更だった。 それともう一点、アルフレッドの動向に気を配る事。
この二点さえ押さえていたらユウヤを仕留める事はそう難しくない。
彼等はそう判断していた。 Aランクプレイヤーは確かに強いが、自分達もBランクまで至った自負がある。
たった一つのランク差程度、簡単に覆してやる。 そんな気持ちで各々武器を――
「いたぞ!」
包囲から少し離れた位置にアルフレッドが出現。 両肩に着いた機関砲を連射してくる。
明らかに意識を散らす為の牽制射撃だ。 対策はしっかり練っているので充分に想定内。
現れた場合、狙われた機体が対処するのが仲間内での決まりとなっていたので、攻撃対象になったエンジェルタイプが包囲から外れてアルフレッドの下へと向かう。 それでも三対一だ。
全機、エネルギーライフルを構えて射撃開始。 光弾がユウヤへと飛んでいくが、プルガトリオは操縦者の意図を完全に汲み取り加速。 足裏のローラーを用いたものではなく二本の足を用いた走行だ。
「速い、ってか、一歩一歩の移動範囲が広い!」
「遮蔽物なしでこれとかどうなってんだよ」
これは離れているからこその弊害だった。 ユウヤには全て視えている。 銃口の向き、敵機の様子。
そこから発射の兆候と狙いを読み取れば躱す事は容易。 言うには易いが、実行できるようになるには一定以上の技量が必要とされる。 ある意味、そんな高等なテクニックを自然とできるからこそ彼等はこのランクを維持できているとも言えた。
ユウヤは攻撃を躱しながら敵を観察。 兆候を見逃さないと言わんばかりにじっと見る。
包囲して削るのはユウヤを相手にするには悪くない手だ。 ユウヤだけが相手だった場合は。
「おい、もう二機やられたのかよ」
後ろで戦っているラーガストを仕留めに行った五機の内、二機が大破。
そうなるとここでダラダラと時間をかけるのは悪手と判断せざるを得ない。
結果、勝負を急ぐ事となる。 ユウヤが狙っているのは焦りによって生まれる変調。
飛び道具は当たらない。 どうしても当てたいのなら接近するかどうにかして足を止めるかの二択が最も成功率の高い手だ。 果たして焦った者達はどう動く?
一機が銃撃を止め、エネルギーブレードを展開。
「俺が足を止める。 最悪、俺ごとやれ!」
――ここだ。
接近する為に僅かに前のめりになった機体。 ユウヤは左手を向けてワイヤー――正確には鞭を射出。 エンジェルタイプの足を絡めとる。
自分の武器の間合いは正確に把握しているので、何処で使えばどうなるのかは目を瞑っててもこの程度は簡単だ。 各所に内蔵されているスラスターを全開にして跳躍、同時に鞭を巻き取る。
瞬く間にエンジェルタイプとの距離が埋まり、プルガトリオはその胴体に膝を叩きこんだ。
正確にコックピット部分へと叩きこまれた膝はそのまま内部を破壊し、一撃で戦闘不能へ。
空中で膝を叩きこんだ姿勢のまま右腕を手近な機体へと向ける。 内蔵された散弾砲が火を噴く。
装填されているのは一粒弾。 エンジェルタイプは咄嗟に腕に内蔵されているエネルギーシールドで受けるが威力を完全に殺しきる事は出来ずに腕が大きく跳ね上がる。
崩れた体勢を整えて反撃に転じようとした頃には既にユウヤは目の前で大剣を振りかぶっていた。
「っざけんなぁ!」
彼等もBランク。 相応の苦難を乗り越えて今の位置まで登ってきたプレイヤーだ。
簡単にやられる事は許容できない。 邪魔なライフルを投げ捨てながらブレードを抜いて一閃。
カウンターを狙ったのだがブレードごと機体が叩き潰された。 プルガトリオの大剣に剣としての切断能力はない。 切断の用途で扱うのなら内部のギミックを使うのだが、純粋な堅牢さに優れているとは言えないエンジェルタイプであるならこれで充分だった。
頭頂に叩きつけられた一撃は頭部を完全に粉砕し、胴体部分を破壊。
残りはの一機はユウヤの隙を突こうとしたが、遥か彼方から飛んできた狙撃によって胴体を撃ち抜かれた。 流石にこれは予想できなかったのか完全に虚を突かれた様子で飛んできた方向へと振り返ろうとしたが叶わずに爆散。
「やるな」
ユウヤはそう呟くとヨシナリの方を一瞥した後、アルフレッドが抑えている敵機の方へと向かった。
ラーガストの方は見ない。 見る必要がなかったからだ。
視界の片隅に存在するレーダー表示から敵機の反応が五つ消えているのも分かり切った結果だった。
向かってくる敵機をアルフレッドのセンサーシステムが無機質に捉える。
ノーマルのエンジェルタイプ。 武装はエネルギーライフル、ブレード、短機関銃。
武装から行動を予測。 アルフレッドはこれまでの戦闘経験の蓄積から最適な動きを参照し、自身に適応し、即座に行動に移るべく僅かに重心を傾けた。
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