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第109話
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必要なのは敵の意識の焦点を狙った位置に絞らせる事。
要するに自分がいる場所を特定の場所であると錯覚させるのが重要だ。
物量が違いすぎる以上、何とかこの状況をコントロールして少しでも優位に立ち回る必要がある。
ただ、片腕がやられたので状況はかなり不味い。
あちこちで戦闘の物と思われる衝撃や爆発は響いているので数は順調に減ってはいるはずだ。
問題はほぼ全滅しないとクリア条件を満たせないのでヨシナリを追いかけまわしている連中は可能であれば全滅させておきたい。 それにチームメイトの二人に何もしていないと思われるのも嫌だったので最低限の成果は上げたかった。
拳銃を抜きながら敵の数を確認。 そこそこ潰したのでもう半分以下になっている。
Ⅰ型が多く、まだ低ランクのプレイヤーのようで割と迂闊な動きをしてくれていたので狩り易かった。 その為、現在は見えている限りは十機。 Ⅰ型三機、Ⅱ型七機だ。
Ⅰ型はともかくⅡ型はエネミー系の武装を持っているので早めに数を減らしておきたい。
迂闊に撃って来ない程度に冷静なのも厄介だ。
『いたぞ!』
考えている間に見つかったようだ。 無数の銃声が炸裂し、隠れている大きな樹に次々と銃弾が突き刺さる。
ヤバいなと身を低くするとさっきまでホロスコープの胴体があった場所を光線が射抜く。
エネルギーライフルは派手にばら撒けない分、威力は凄まじい。 何よりも大抵の障害物は無視できるのはかなりの脅威だ。
閃光手榴弾を放り投げながらセンサーにフィルターをかけて焼かれないように備える。
爆発し、光が周囲を満たす。 まともに喰らったであろうⅠ型が突撃銃で碌に狙いを付けずに弾丸をばら撒いている。
見えなくなったのは明らかだったので移動するべく樹から飛び出し、銃声の方を見ると一機見えたので移動しながら数発撃ち込む。 動いている標的、動きながら標的を狙う訓練は散々やってきたので当てるのはそこまで難しくなかった。 問題は拳銃の火力で仕留められるかどうかだ。
胴体に一発撃ち込んで銃弾がしっかり食い込んだので二発、三発と喰らわせて撃破。
大口径にしておいてよかったと思いながら木々の間を縫うように移動し、閃光が収まる前に大きな樹を見つけて樹上へ。 片手でどうにか弾倉を交換しながら残り九と呟く。
閃光が収まったと同時にさっきまでヨシナリが居た場所にエネルギーライフルの光が通り過ぎる。
――あ、危ねぇ……。
樹の陰に隠れてなかったらヤバかった――いや、待て。 連中なんで撃った?
残弾を意識しての事もあっただろうが闇雲に撃つような真似をしてこなかったのに今になって吐き出すのは何故だ? 嫌な予感がしたので、隠れている樹から飛び出す。
どうやらその判断はそれは正しかった。
次々とエネルギーライフルが撃ち込まれヨシナリの隠れていた樹が穴だらけになる。
「居場所、バレてるじゃねぇか!」
不味い状況ではあるが撃ってきている位置から敵の居場所は分かる。
感じからして撃っているのは三機。 残りの六機はヨシナリを捕捉できていない?
敵が多すぎて個々でどう動いているのかが掴み辛い。
神経が磨り減る。 集中砲火を浴びていない以上は完全にバレていないはずだ。
恐らくは怪しい場所は多少絞り込めたといった認識。
それは正しく、近くの樹が次々と破壊されている事から怪しい場所を潰して炙り出そうとしている。
――まぁ、俺なら火でも点けて炙り出すが――
短機関銃の弾丸が飛んできた。
適当に撃たれた事もあって致命傷にはならなかったがあちこち弾丸が掠ったり当たったりした。
余計な事を考える物じゃないなと思いながらも動かない。
樹が耐え切れずにメキメキと音を立てて傾く。
ヨシナリはしっかりと身を低くして居場所を悟られないように耐える。
ズンと大きな衝撃音。 地面に埋もれているように隠れていたので見つかっていない――と信じたいがどうだろうか? ヨシナリは僅かに頭を上げて様子を窺うと突撃銃を持ったⅡ型がゆっくりと近寄ってくるのが見えたので射程に入るのを待って木々の隙間から銃撃。 全弾撃ち切って確実に仕留め、持ち替えている余裕がないので拳銃を捨てて最後の閃光手榴弾を投げる。
光が撒き散らされ視界が再び塞がるタイミングで飛び出し、最後の武器である短機関銃で弾丸をばら撒きながら背のブースターの推力を最大にして森を進む。
これ以上のかくれんぼは難しい。 それに機体のコンディションが悪すぎるので全力で離脱するのが最善だ。 逃げ切れるかは微妙だが、今の自分にしてはまずまずの結果だったのではないだろうか?
敵の視線や視野を意識し、誘導する立ち回り。 少しだけ何かが掴めたような気がした。
後はこれをどう戦いに組み込むかだ。 どちらかと言えば集団戦よりも個人戦で――
不意に背のブースターが爆散。 エネルギーライフルで撃ち抜かれた。
「クソ、射線通るのかよ!?」
姿勢を維持できずに地面に墜落。 当然、ただで落ちるつもりもなかったので短機関銃で応射。
それが良くなかったのかエネルギーライフルで左腕が撃ち抜かれる。
完全に使い物にならなくなったので排除。 残った腕で更に連射するがすぐに弾が切れた。
片手がないので弾倉の交換もできない。 ここまでか。
『ったく手こずらせやがって。 とどめを刺して次に――』
仕留める為に寄ってきた敵だったが、何かに襲われたのか木々の奥で戦闘が始まる。
どうやら誰かの横槍が入ったようだ。
――あれだけ派手に追いかけっこをしていたんだ。 漁夫の利を狙う奴が居ても不思議じゃない。
突撃銃やエネルギーライフルの発射音や光が木々の奥で瞬く。
途中、何かが噛み砕かれるような音とぐしゃりと潰れる音が何度も響き、敵の怒号と悲鳴が聞こえ――静かになった。 少し待つと木々の奥からユウヤのプルガトリオとアルフレッドが現れる。
「無事って訳じゃなさそうだな。 ――メインのブースターと片手か」
「えぇ、まぁ。 助けて貰っといて何ですが今回はこれ以上は厳しそうですね」
「みたいだな。 戦えないなら隠れてろ」
ユウヤはヨシナリには期待も失望もしていないのか言葉には感情は籠っていなかった。
その事を少し残念に思っていたが、今の自分の実力だとこんなものだろうといった諦めに近い物もあったのでまぁ妥当な扱いかと少しだけ自嘲する。
ユウヤはホロスコープの襟首を掴むと引き摺るように移動。 どこへ行く気だと思ったがさっきの戦闘で折れた樹があった場所だ。 何をするつもりなのかと訝しんでいるとユウヤはアルフレッドに小さく声をかけた。
要するに自分がいる場所を特定の場所であると錯覚させるのが重要だ。
物量が違いすぎる以上、何とかこの状況をコントロールして少しでも優位に立ち回る必要がある。
ただ、片腕がやられたので状況はかなり不味い。
あちこちで戦闘の物と思われる衝撃や爆発は響いているので数は順調に減ってはいるはずだ。
問題はほぼ全滅しないとクリア条件を満たせないのでヨシナリを追いかけまわしている連中は可能であれば全滅させておきたい。 それにチームメイトの二人に何もしていないと思われるのも嫌だったので最低限の成果は上げたかった。
拳銃を抜きながら敵の数を確認。 そこそこ潰したのでもう半分以下になっている。
Ⅰ型が多く、まだ低ランクのプレイヤーのようで割と迂闊な動きをしてくれていたので狩り易かった。 その為、現在は見えている限りは十機。 Ⅰ型三機、Ⅱ型七機だ。
Ⅰ型はともかくⅡ型はエネミー系の武装を持っているので早めに数を減らしておきたい。
迂闊に撃って来ない程度に冷静なのも厄介だ。
『いたぞ!』
考えている間に見つかったようだ。 無数の銃声が炸裂し、隠れている大きな樹に次々と銃弾が突き刺さる。
ヤバいなと身を低くするとさっきまでホロスコープの胴体があった場所を光線が射抜く。
エネルギーライフルは派手にばら撒けない分、威力は凄まじい。 何よりも大抵の障害物は無視できるのはかなりの脅威だ。
閃光手榴弾を放り投げながらセンサーにフィルターをかけて焼かれないように備える。
爆発し、光が周囲を満たす。 まともに喰らったであろうⅠ型が突撃銃で碌に狙いを付けずに弾丸をばら撒いている。
見えなくなったのは明らかだったので移動するべく樹から飛び出し、銃声の方を見ると一機見えたので移動しながら数発撃ち込む。 動いている標的、動きながら標的を狙う訓練は散々やってきたので当てるのはそこまで難しくなかった。 問題は拳銃の火力で仕留められるかどうかだ。
胴体に一発撃ち込んで銃弾がしっかり食い込んだので二発、三発と喰らわせて撃破。
大口径にしておいてよかったと思いながら木々の間を縫うように移動し、閃光が収まる前に大きな樹を見つけて樹上へ。 片手でどうにか弾倉を交換しながら残り九と呟く。
閃光が収まったと同時にさっきまでヨシナリが居た場所にエネルギーライフルの光が通り過ぎる。
――あ、危ねぇ……。
樹の陰に隠れてなかったらヤバかった――いや、待て。 連中なんで撃った?
残弾を意識しての事もあっただろうが闇雲に撃つような真似をしてこなかったのに今になって吐き出すのは何故だ? 嫌な予感がしたので、隠れている樹から飛び出す。
どうやらその判断はそれは正しかった。
次々とエネルギーライフルが撃ち込まれヨシナリの隠れていた樹が穴だらけになる。
「居場所、バレてるじゃねぇか!」
不味い状況ではあるが撃ってきている位置から敵の居場所は分かる。
感じからして撃っているのは三機。 残りの六機はヨシナリを捕捉できていない?
敵が多すぎて個々でどう動いているのかが掴み辛い。
神経が磨り減る。 集中砲火を浴びていない以上は完全にバレていないはずだ。
恐らくは怪しい場所は多少絞り込めたといった認識。
それは正しく、近くの樹が次々と破壊されている事から怪しい場所を潰して炙り出そうとしている。
――まぁ、俺なら火でも点けて炙り出すが――
短機関銃の弾丸が飛んできた。
適当に撃たれた事もあって致命傷にはならなかったがあちこち弾丸が掠ったり当たったりした。
余計な事を考える物じゃないなと思いながらも動かない。
樹が耐え切れずにメキメキと音を立てて傾く。
ヨシナリはしっかりと身を低くして居場所を悟られないように耐える。
ズンと大きな衝撃音。 地面に埋もれているように隠れていたので見つかっていない――と信じたいがどうだろうか? ヨシナリは僅かに頭を上げて様子を窺うと突撃銃を持ったⅡ型がゆっくりと近寄ってくるのが見えたので射程に入るのを待って木々の隙間から銃撃。 全弾撃ち切って確実に仕留め、持ち替えている余裕がないので拳銃を捨てて最後の閃光手榴弾を投げる。
光が撒き散らされ視界が再び塞がるタイミングで飛び出し、最後の武器である短機関銃で弾丸をばら撒きながら背のブースターの推力を最大にして森を進む。
これ以上のかくれんぼは難しい。 それに機体のコンディションが悪すぎるので全力で離脱するのが最善だ。 逃げ切れるかは微妙だが、今の自分にしてはまずまずの結果だったのではないだろうか?
敵の視線や視野を意識し、誘導する立ち回り。 少しだけ何かが掴めたような気がした。
後はこれをどう戦いに組み込むかだ。 どちらかと言えば集団戦よりも個人戦で――
不意に背のブースターが爆散。 エネルギーライフルで撃ち抜かれた。
「クソ、射線通るのかよ!?」
姿勢を維持できずに地面に墜落。 当然、ただで落ちるつもりもなかったので短機関銃で応射。
それが良くなかったのかエネルギーライフルで左腕が撃ち抜かれる。
完全に使い物にならなくなったので排除。 残った腕で更に連射するがすぐに弾が切れた。
片手がないので弾倉の交換もできない。 ここまでか。
『ったく手こずらせやがって。 とどめを刺して次に――』
仕留める為に寄ってきた敵だったが、何かに襲われたのか木々の奥で戦闘が始まる。
どうやら誰かの横槍が入ったようだ。
――あれだけ派手に追いかけっこをしていたんだ。 漁夫の利を狙う奴が居ても不思議じゃない。
突撃銃やエネルギーライフルの発射音や光が木々の奥で瞬く。
途中、何かが噛み砕かれるような音とぐしゃりと潰れる音が何度も響き、敵の怒号と悲鳴が聞こえ――静かになった。 少し待つと木々の奥からユウヤのプルガトリオとアルフレッドが現れる。
「無事って訳じゃなさそうだな。 ――メインのブースターと片手か」
「えぇ、まぁ。 助けて貰っといて何ですが今回はこれ以上は厳しそうですね」
「みたいだな。 戦えないなら隠れてろ」
ユウヤはヨシナリには期待も失望もしていないのか言葉には感情は籠っていなかった。
その事を少し残念に思っていたが、今の自分の実力だとこんなものだろうといった諦めに近い物もあったのでまぁ妥当な扱いかと少しだけ自嘲する。
ユウヤはホロスコープの襟首を掴むと引き摺るように移動。 どこへ行く気だと思ったがさっきの戦闘で折れた樹があった場所だ。 何をするつもりなのかと訝しんでいるとユウヤはアルフレッドに小さく声をかけた。
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