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第89話
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「守っても無駄だ。 全員で突っ込め!」
あの馬鹿げた威力の砲を見てしまった以上、次を撃たせただけで終わるので突っ込む以外の選択肢はなかった。 他のエネミーが引っ込んでいるので敵はイソギンチャクのみだった事もその選択を後押しした。
もしかするとイソギンチャクは囮でプレイヤー達を釣りだした後、リポップして基地を襲うかもしれない。
可能性としては有り得る話ではあるが、ランカーの大半はそれはないと考えていた。
何故なら、そんな手段を使うぐらいなら回復を待つなんて真似はしないからだ。
目の前のイソギンチャク型エネミーはプレイヤーとの正面からの対決を望んでいる。
だからこそそれを理解した者達は真っ先に突っ込んでいったのだ。
空中はAランクプレイヤーの特殊機を筆頭にエンジェルタイプやキマイラタイプ。
陸上はそれ以外の機体がエネミーのいなくなった無人の荒野を突き進む。
障害物のない空間をトルーパー達は瞬く間に踏破し、後僅かで敵を射程内へ捉える。
その時だった。 イソギンチャク型エネミーに動きがあったのは。
口が大きく開き、大量の何かを吐き出した。
「何だ? 鉄球?」
戦闘を行くプレイヤーの一人が目を凝らして吐き出した物を注視する。
それは確かに鉄の玉に見える。 高速でぶつければトルーパーを破壊できるだろう。
だが、そう言った用途に使用される訳ではなさそうだ。
何故ならばら撒かれた鉄球はイソギンチャク型エネミーの周囲を浮遊しているからだ。
防御? それともEMPのような電磁パルスを発するタイプの兵装?
判断に迷うが迂闊に突っ込む訳にも行かないので即座に攻撃を選択。
一番足の速いキマイラタイプが射程内に入ったと同時に変形し、武器を構えるが敵の動きの方が僅かに早かった。 口を上に向けたまま発光。
さっきの高出力のレーザー砲なのは察しがつく。 だが、上を向いたままなのは何故だ?
歴戦のプレイヤー達は嫌な予感を覚え、攻撃ではなく回避行動を取る。
そしてその判断は正しくはあったが、事態は彼等の想像を超えてもいた。
イソギンチャク型エネミーから放たれたのは無数の細い光線。 真上に放たれたそれは空中に散らばっている鉄球に触れた瞬間、空一面に星座のような光のパターンが刻まれ――光の雨が大地に降り注いだ。
「そんなのアリかよ!?」
それはほぼ運だった。 嫌な予感を感じて早めに回避行動を取っていた者の大半は躱せたが、反応が遅れた者、判断が遅れた者は全て射抜かれ爆散。 レーダー表示からごっそりと味方の反応が消え失せる。
「反射兵器。 また、厄介な代物が出てきやがったな。」
攻撃の正体は即座に判明した。
あのイソギンチャク型エネミーは周囲にばら撒いた鉄球に光線を当てて反射させているのだ。
「クソ、先にあの球を――」
プレイヤー達が対応を決めるよりも早く、イソギンチャク型エネミーは次の行動に移る。
胴体部分のあちこちが開き無数のミサイルが発射された。
「今度はミサイルかよしゃらくせえ!」
光線はともかくミサイル程度で簡単に撃墜される彼等ではない。
慣れた挙動で引き付けて手持ちの武器でミサイルを叩き落とすが、爆発したミサイルは内部に溜め込んでいたであろう何かを撒き散らした。 キラキラと輝いているそれは金属の板にも見える。
「チャフ?」
電波などを反射する使い捨てのパッシプ・デコイが一番近かったのだが、このエネミーがそんな事をする必要はない。 ならば、別の用途があるはずなのだが、今しがた光線を反射させるのを見たばかりだ。
これから何が起こるかは考えるまでもない。 光線を発射。
空には星座のような幾何学模様。 そして空域には光でできた迷路のようなパターンが刻まれ。
先陣を切った機体の八割が光に射抜かれて撃墜された。
空域にばら撒かれたチャフを無数の光が反射し、想像もできない角度から襲い掛かった光線が彼らの機体を射抜いたからだ。 まるで花火のように空中で無数の爆発が連続して発生し、残骸は何もできずに墜落していく。 イソギンチャク型エネミーは油断なく、そして無慈悲に再度ミサイルを発射した。
「うわ、冗談だろ? 瞬殺されたぞ」
「あぁ、見てた」
マルメルがやや引き攣った声を上げ、ヨシナリも動揺しているのか声が微かに震える。
流石にソルジャーⅡ型でキマイラタイプに付いていけないので、敵の出方を見る意味でも少し後方から進んでいたのだがそれによって命拾いした。
ヨシナリは改めてイソギンチャク型エネミーを観察する。
重装甲にほぼ移動していない点からも動けないか動きが遅いかのどちらかだろう。
――いや、動く必要がないのか。
コンセプトとしては拠点防衛用の兵器といった感じだが、問題はその武装だ。
見えている範囲では光学兵器と周囲に展開した鉄球。 恐らくアレはドローンの類だろう。
光線を任意の方向に反射する機能を備えており、本体が放った攻撃を拡散させている。
空から降ってきた攻撃の正体だ。
ただ、狙いが正確すぎるので即座に回避行動を取れば回避は難しいが不可能ではない。
そして最も厄介なのは周囲にばら撒かれたチャフだ。 空から放たれた光線を乱反射させて、空域を光線で埋め尽くす飽和攻撃。 こちらはドローンと違って規則性のない反射なので軌道はランダムなのだが、空から放った光線をそのまま利用しているので文字通りの二の矢だ。
あのイソギンチャクの攻撃パターンとしては第一にドローンの展開、チャフの散布でフィールドを整え、上空からドローンの反射による精密射撃、躱されても散布されたチャフによる乱反射で敵を射抜く。
非常に無駄のない合理的な攻撃だった。 躱されても攻撃は生きる点はかなり厄介だ。
――打開するにはまずはこの状況を崩す事が必要だ。
ヨシナリは狙撃銃を空に向かって構える。
撃ち込む前に周囲から無数の銃声。 ヨシナリと同じ結論に至ったプレイヤー達が遠距離武器を用いて上空のドローンを潰しにかかったのだ。
そうこのイソギンチャク型エネミーの攻撃はドローンを介して成立しているので、裏を返せばドローンさえいなければ最初の精密射撃は来ない。
火力に自身のない者達は本体への攻撃よりもドローンの排除を優先。 生き残ったキマイラタイプや戦闘空域に入ったエンジェルタイプも役割を分担し、本体を狙う者はそのまま直進し、残りは急上昇。
判断の早さは流石だなと思いながらヨシナリは空に向かって狙撃を開始した。
あの馬鹿げた威力の砲を見てしまった以上、次を撃たせただけで終わるので突っ込む以外の選択肢はなかった。 他のエネミーが引っ込んでいるので敵はイソギンチャクのみだった事もその選択を後押しした。
もしかするとイソギンチャクは囮でプレイヤー達を釣りだした後、リポップして基地を襲うかもしれない。
可能性としては有り得る話ではあるが、ランカーの大半はそれはないと考えていた。
何故なら、そんな手段を使うぐらいなら回復を待つなんて真似はしないからだ。
目の前のイソギンチャク型エネミーはプレイヤーとの正面からの対決を望んでいる。
だからこそそれを理解した者達は真っ先に突っ込んでいったのだ。
空中はAランクプレイヤーの特殊機を筆頭にエンジェルタイプやキマイラタイプ。
陸上はそれ以外の機体がエネミーのいなくなった無人の荒野を突き進む。
障害物のない空間をトルーパー達は瞬く間に踏破し、後僅かで敵を射程内へ捉える。
その時だった。 イソギンチャク型エネミーに動きがあったのは。
口が大きく開き、大量の何かを吐き出した。
「何だ? 鉄球?」
戦闘を行くプレイヤーの一人が目を凝らして吐き出した物を注視する。
それは確かに鉄の玉に見える。 高速でぶつければトルーパーを破壊できるだろう。
だが、そう言った用途に使用される訳ではなさそうだ。
何故ならばら撒かれた鉄球はイソギンチャク型エネミーの周囲を浮遊しているからだ。
防御? それともEMPのような電磁パルスを発するタイプの兵装?
判断に迷うが迂闊に突っ込む訳にも行かないので即座に攻撃を選択。
一番足の速いキマイラタイプが射程内に入ったと同時に変形し、武器を構えるが敵の動きの方が僅かに早かった。 口を上に向けたまま発光。
さっきの高出力のレーザー砲なのは察しがつく。 だが、上を向いたままなのは何故だ?
歴戦のプレイヤー達は嫌な予感を覚え、攻撃ではなく回避行動を取る。
そしてその判断は正しくはあったが、事態は彼等の想像を超えてもいた。
イソギンチャク型エネミーから放たれたのは無数の細い光線。 真上に放たれたそれは空中に散らばっている鉄球に触れた瞬間、空一面に星座のような光のパターンが刻まれ――光の雨が大地に降り注いだ。
「そんなのアリかよ!?」
それはほぼ運だった。 嫌な予感を感じて早めに回避行動を取っていた者の大半は躱せたが、反応が遅れた者、判断が遅れた者は全て射抜かれ爆散。 レーダー表示からごっそりと味方の反応が消え失せる。
「反射兵器。 また、厄介な代物が出てきやがったな。」
攻撃の正体は即座に判明した。
あのイソギンチャク型エネミーは周囲にばら撒いた鉄球に光線を当てて反射させているのだ。
「クソ、先にあの球を――」
プレイヤー達が対応を決めるよりも早く、イソギンチャク型エネミーは次の行動に移る。
胴体部分のあちこちが開き無数のミサイルが発射された。
「今度はミサイルかよしゃらくせえ!」
光線はともかくミサイル程度で簡単に撃墜される彼等ではない。
慣れた挙動で引き付けて手持ちの武器でミサイルを叩き落とすが、爆発したミサイルは内部に溜め込んでいたであろう何かを撒き散らした。 キラキラと輝いているそれは金属の板にも見える。
「チャフ?」
電波などを反射する使い捨てのパッシプ・デコイが一番近かったのだが、このエネミーがそんな事をする必要はない。 ならば、別の用途があるはずなのだが、今しがた光線を反射させるのを見たばかりだ。
これから何が起こるかは考えるまでもない。 光線を発射。
空には星座のような幾何学模様。 そして空域には光でできた迷路のようなパターンが刻まれ。
先陣を切った機体の八割が光に射抜かれて撃墜された。
空域にばら撒かれたチャフを無数の光が反射し、想像もできない角度から襲い掛かった光線が彼らの機体を射抜いたからだ。 まるで花火のように空中で無数の爆発が連続して発生し、残骸は何もできずに墜落していく。 イソギンチャク型エネミーは油断なく、そして無慈悲に再度ミサイルを発射した。
「うわ、冗談だろ? 瞬殺されたぞ」
「あぁ、見てた」
マルメルがやや引き攣った声を上げ、ヨシナリも動揺しているのか声が微かに震える。
流石にソルジャーⅡ型でキマイラタイプに付いていけないので、敵の出方を見る意味でも少し後方から進んでいたのだがそれによって命拾いした。
ヨシナリは改めてイソギンチャク型エネミーを観察する。
重装甲にほぼ移動していない点からも動けないか動きが遅いかのどちらかだろう。
――いや、動く必要がないのか。
コンセプトとしては拠点防衛用の兵器といった感じだが、問題はその武装だ。
見えている範囲では光学兵器と周囲に展開した鉄球。 恐らくアレはドローンの類だろう。
光線を任意の方向に反射する機能を備えており、本体が放った攻撃を拡散させている。
空から降ってきた攻撃の正体だ。
ただ、狙いが正確すぎるので即座に回避行動を取れば回避は難しいが不可能ではない。
そして最も厄介なのは周囲にばら撒かれたチャフだ。 空から放たれた光線を乱反射させて、空域を光線で埋め尽くす飽和攻撃。 こちらはドローンと違って規則性のない反射なので軌道はランダムなのだが、空から放った光線をそのまま利用しているので文字通りの二の矢だ。
あのイソギンチャクの攻撃パターンとしては第一にドローンの展開、チャフの散布でフィールドを整え、上空からドローンの反射による精密射撃、躱されても散布されたチャフによる乱反射で敵を射抜く。
非常に無駄のない合理的な攻撃だった。 躱されても攻撃は生きる点はかなり厄介だ。
――打開するにはまずはこの状況を崩す事が必要だ。
ヨシナリは狙撃銃を空に向かって構える。
撃ち込む前に周囲から無数の銃声。 ヨシナリと同じ結論に至ったプレイヤー達が遠距離武器を用いて上空のドローンを潰しにかかったのだ。
そうこのイソギンチャク型エネミーの攻撃はドローンを介して成立しているので、裏を返せばドローンさえいなければ最初の精密射撃は来ない。
火力に自身のない者達は本体への攻撃よりもドローンの排除を優先。 生き残ったキマイラタイプや戦闘空域に入ったエンジェルタイプも役割を分担し、本体を狙う者はそのまま直進し、残りは急上昇。
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