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第85話
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生き残ったプレイヤー達は施設の一部を放棄し、メンテナンス用のハンガーや武器の補給庫を中心に集まって抵抗を続けていた。
寄生トルーパーの脅威もそうだが、既存のエネミーも次から次へと湧いてきているのだ。
じりじりと押され始め、防壁の味方だけでなく防壁自体のダメージも蓄積している。
ヨシナリが案内された拠点ではユニオン『栄光』の面子が中心になって防備を築いていた。
「施設周辺の掃除は済んでるからもしよければハンガーで機体のメンテナンスをするといい」
振り返るといつの間にかさっきまで殿で残っていたイワモトというプレイヤーが戻ってきていた。
「あ、どうも。 助けてくれてありがとうございました」
「はは、気にしなくても構わないさ。 このイベント中は同じプレイヤー同士助け合わないとな」
小さく頭を下げるとイワモトは気にするなと手を振って見せる。
ハンガーを安全に使えるのはかなりありがたい。 ヨシナリもマルメルも酷使して来ただけあって機体はかなり消耗していたからだ。
その言葉に甘え、ヨシナリとマルメルは機体をハンガーに預け、アバター状態で近くに座ると既に機体を預けていたふわわが手を振って寄ってきた。
「おつかれ~。 いやぁ、大変だったねぇ」
「おつかれっす。 そっちも大変だったみたいですね」
「そうなんよ~。 蝦蛄がめっちゃ手強くてなぁ。 結構、きつかったけど何とか生き残れたからちょっとほっとしてるー」
「蝦蛄も大概だったけど、あのクラゲがマジできつい。 大破した機体をリサイクルして襲ってくるとかマジでありえんわ」
マルメルの言葉には大いに同意しているヨシナリだったが、それ以上にこの先が不安だった。
ここまで生き残ってきてこのイベントの概要は凡そではあるが見えてくる。
まず、制限時間十二時間。 つまり裏を返せば十二時間の間、敵が出現し続ける事に他ならない。
気づいている者も多いだろうが、どうにもならない事もまた悟っているのだろう。
恐らくだがカタツムリを筆頭に蝦蛄、クラゲといったボスエネミーは倒す度に補充される可能性が高い。 つまりは倒せば倒すほどに強力な個体が出現するのだ。
最も賢い攻略手段としては蝦蛄辺りを一体残して行動不能にしておいて制限時間まで粘る事だった。
少なくともあのエネミーなら無力化は難しいができなくはないはずだ。
カタツムリは撃破せざるを得ず、クラゲに至ってはトルーパーに寄生している上、手強いので残らず潰さざるを得ない。 識別が味方なのでレーダー表示を意識をし過ぎると下手をすれば後ろから撃たれかねない事を考えると全滅させなければならないだろう。
――確かに大破した機体をリサイクルしてくる能力は厄介だが、他に比べると地味な印象を受ける。
寄生トルーパーは撃破したらそのままで中身が他に寄生するようなことも起こらない事もヨシナリの中では引っかかっている部分でもあった。
映画やゲームなどのセオリーだとこの手の生物は寄生先を捨てて別の宿主を探すものだが、今回のクラゲ型エネミーにはそれは当てはまらない。
ちらりと経過時間を確認する。 Aランクの参戦まで残り十分を切っている。
イベントも七時間以上の経過を見せていた。 基地の被害は現在拡大中ではあるが、まだ半分に届いていない。 このまま粘れば勝てると思いたいが、このイベントのシステムが拭いきれない不安を植え付けてくる。
「――それでも今の所は抑えられているから時間まで粘れると思うけど、ヨシナリはどう思――」
マルメルはやや気楽に考えているのかそんな事を口にしかけていたが、ズシンと地面が縦に揺れた事で途切れる。 何だと外へ飛び出すと信じられない光景が広がっていた。
「おいおいおい、冗談だろ?」
「あ~、これは……」
マルメルは信じられないといった口調でふわわも驚いているのかやや引き攣った声を漏らす。
それもそのはずで撃破した寄生トルーパーやエネミーの残骸が何かに吸い寄せられて集まっているのだ。 さっきの衝撃は塊が地面に落ちた事によって発生したようだった。
残骸がその塊に吸い寄せられて何かを形作ろうとしている。
基地の残骸、トルーパーの残骸、エネミーの残骸、ありとあらゆる残骸を吸い上げてそれは形を成していく。 いや、残骸だけではなかった。
未だに起動しているエネミーの一部も謎の引力に引き寄せられ取り込まれていく。
「なぁ、これってまさか合体してるのか?」
「……そう見えるな」
「これだけの数で?」
マルメルの感想は実に的を射たもので、ヨシナリは同意を示したがふわわの質問には絶句で応えるしかなかった。 そうこれまでに破壊された機体は敵味方合わせれば百万では利かない。
しかも防壁の外にいたエネミーの残骸まで引き寄せている。
それにヨシナリは非常に嫌な予感がしたが、それは数秒後に現実となった。
巨大な塊が防壁を飛び越えて基地内に侵入。 破壊されても原型を留めているそれはカタツムリ型エネミーの残骸だ。
「これ、無理なんじゃないか?」
思わずヨシナリはそう呟いてしまった。
基地とその周辺に存在した意志なき物体を取り込みながらそれは形を作り花開く。
鋼の傘が開き、重力を振り切って空へと舞い上がる。
その形状は最初に現れた時と酷似していたが、半透明の何かではなくその全てが構成されていた。
全てのプレイヤーはその光景を呆然と眺めていたが、ここまで戦い抜いてきた猛者だ。
同様に硬直していたのは刹那。 即座に行動を開始する。
「合体とかふざけやがって! 上等だ! 何回でもぶち殺してやるよ!」
「基地の上空に陣取られるのは不味い。 さっさと叩き落せ!」
エンジェルタイプや光学兵器を装備したトルーパーによる一斉射撃がクラゲ型エネミーを襲う。
攻撃は一部を破壊するが、周辺の残骸を取り込んだクラゲ型エネミーはあまりにも巨大すぎて大した損傷を与えられていない。
「クソが! デカすぎて効いているのかも分からねえ!」
「まだ完成してないっぽしとにかく削れ! 黙って見ていたら何をしてくるか分からんぞ!」
クラゲ型エネミーは破壊されながらもそれ以上の早さで形を構成し――不意にそれが止まった。
プレイヤー達の攻撃はその身を破壊しているが形は出来上がったようだ。
クラゲの形はしているが傘の部分にはカタツムリ型の殻のパターンが浮かんでおり、それを囲むように蝦蛄型のミサイル発射口。
「ここに来て全部乗せとかマジでふざけんな!」
誰かがそう叫び、戦場に居た大半のプレイヤーはそれに同意した。
寄生トルーパーの脅威もそうだが、既存のエネミーも次から次へと湧いてきているのだ。
じりじりと押され始め、防壁の味方だけでなく防壁自体のダメージも蓄積している。
ヨシナリが案内された拠点ではユニオン『栄光』の面子が中心になって防備を築いていた。
「施設周辺の掃除は済んでるからもしよければハンガーで機体のメンテナンスをするといい」
振り返るといつの間にかさっきまで殿で残っていたイワモトというプレイヤーが戻ってきていた。
「あ、どうも。 助けてくれてありがとうございました」
「はは、気にしなくても構わないさ。 このイベント中は同じプレイヤー同士助け合わないとな」
小さく頭を下げるとイワモトは気にするなと手を振って見せる。
ハンガーを安全に使えるのはかなりありがたい。 ヨシナリもマルメルも酷使して来ただけあって機体はかなり消耗していたからだ。
その言葉に甘え、ヨシナリとマルメルは機体をハンガーに預け、アバター状態で近くに座ると既に機体を預けていたふわわが手を振って寄ってきた。
「おつかれ~。 いやぁ、大変だったねぇ」
「おつかれっす。 そっちも大変だったみたいですね」
「そうなんよ~。 蝦蛄がめっちゃ手強くてなぁ。 結構、きつかったけど何とか生き残れたからちょっとほっとしてるー」
「蝦蛄も大概だったけど、あのクラゲがマジできつい。 大破した機体をリサイクルして襲ってくるとかマジでありえんわ」
マルメルの言葉には大いに同意しているヨシナリだったが、それ以上にこの先が不安だった。
ここまで生き残ってきてこのイベントの概要は凡そではあるが見えてくる。
まず、制限時間十二時間。 つまり裏を返せば十二時間の間、敵が出現し続ける事に他ならない。
気づいている者も多いだろうが、どうにもならない事もまた悟っているのだろう。
恐らくだがカタツムリを筆頭に蝦蛄、クラゲといったボスエネミーは倒す度に補充される可能性が高い。 つまりは倒せば倒すほどに強力な個体が出現するのだ。
最も賢い攻略手段としては蝦蛄辺りを一体残して行動不能にしておいて制限時間まで粘る事だった。
少なくともあのエネミーなら無力化は難しいができなくはないはずだ。
カタツムリは撃破せざるを得ず、クラゲに至ってはトルーパーに寄生している上、手強いので残らず潰さざるを得ない。 識別が味方なのでレーダー表示を意識をし過ぎると下手をすれば後ろから撃たれかねない事を考えると全滅させなければならないだろう。
――確かに大破した機体をリサイクルしてくる能力は厄介だが、他に比べると地味な印象を受ける。
寄生トルーパーは撃破したらそのままで中身が他に寄生するようなことも起こらない事もヨシナリの中では引っかかっている部分でもあった。
映画やゲームなどのセオリーだとこの手の生物は寄生先を捨てて別の宿主を探すものだが、今回のクラゲ型エネミーにはそれは当てはまらない。
ちらりと経過時間を確認する。 Aランクの参戦まで残り十分を切っている。
イベントも七時間以上の経過を見せていた。 基地の被害は現在拡大中ではあるが、まだ半分に届いていない。 このまま粘れば勝てると思いたいが、このイベントのシステムが拭いきれない不安を植え付けてくる。
「――それでも今の所は抑えられているから時間まで粘れると思うけど、ヨシナリはどう思――」
マルメルはやや気楽に考えているのかそんな事を口にしかけていたが、ズシンと地面が縦に揺れた事で途切れる。 何だと外へ飛び出すと信じられない光景が広がっていた。
「おいおいおい、冗談だろ?」
「あ~、これは……」
マルメルは信じられないといった口調でふわわも驚いているのかやや引き攣った声を漏らす。
それもそのはずで撃破した寄生トルーパーやエネミーの残骸が何かに吸い寄せられて集まっているのだ。 さっきの衝撃は塊が地面に落ちた事によって発生したようだった。
残骸がその塊に吸い寄せられて何かを形作ろうとしている。
基地の残骸、トルーパーの残骸、エネミーの残骸、ありとあらゆる残骸を吸い上げてそれは形を成していく。 いや、残骸だけではなかった。
未だに起動しているエネミーの一部も謎の引力に引き寄せられ取り込まれていく。
「なぁ、これってまさか合体してるのか?」
「……そう見えるな」
「これだけの数で?」
マルメルの感想は実に的を射たもので、ヨシナリは同意を示したがふわわの質問には絶句で応えるしかなかった。 そうこれまでに破壊された機体は敵味方合わせれば百万では利かない。
しかも防壁の外にいたエネミーの残骸まで引き寄せている。
それにヨシナリは非常に嫌な予感がしたが、それは数秒後に現実となった。
巨大な塊が防壁を飛び越えて基地内に侵入。 破壊されても原型を留めているそれはカタツムリ型エネミーの残骸だ。
「これ、無理なんじゃないか?」
思わずヨシナリはそう呟いてしまった。
基地とその周辺に存在した意志なき物体を取り込みながらそれは形を作り花開く。
鋼の傘が開き、重力を振り切って空へと舞い上がる。
その形状は最初に現れた時と酷似していたが、半透明の何かではなくその全てが構成されていた。
全てのプレイヤーはその光景を呆然と眺めていたが、ここまで戦い抜いてきた猛者だ。
同様に硬直していたのは刹那。 即座に行動を開始する。
「合体とかふざけやがって! 上等だ! 何回でもぶち殺してやるよ!」
「基地の上空に陣取られるのは不味い。 さっさと叩き落せ!」
エンジェルタイプや光学兵器を装備したトルーパーによる一斉射撃がクラゲ型エネミーを襲う。
攻撃は一部を破壊するが、周辺の残骸を取り込んだクラゲ型エネミーはあまりにも巨大すぎて大した損傷を与えられていない。
「クソが! デカすぎて効いているのかも分からねえ!」
「まだ完成してないっぽしとにかく削れ! 黙って見ていたら何をしてくるか分からんぞ!」
クラゲ型エネミーは破壊されながらもそれ以上の早さで形を構成し――不意にそれが止まった。
プレイヤー達の攻撃はその身を破壊しているが形は出来上がったようだ。
クラゲの形はしているが傘の部分にはカタツムリ型の殻のパターンが浮かんでおり、それを囲むように蝦蛄型のミサイル発射口。
「ここに来て全部乗せとかマジでふざけんな!」
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