Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第79話

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 蝦蛄型エネミーの飽和攻撃とも呼べる圧倒的な物量のミサイル攻撃をプレイヤー達は光学兵器を用いてどうにか凌いでいるがこのままいけば明らかに時間の問題だった。
 それを打開する為に上位のプレイヤーは未知の敵へと挑みかかるのだが――

 「どうだ?」
 
 空中でミサイルを撃墜しながらプレイヤーの一人が仲間に尋ねる。
 センサー系を徹底的に強化したソルジャータイプの機体を操るプレイヤーはじっと蝦蛄型エネミーを注視しながら分かった事を口にする。

 「まずは重装甲。 あれを貫きたいなら光学兵器がパイルバンカー、後は対物系の狙撃銃――は微妙だな。 問題は装甲表面にエネルギー兵器を弾くコーティングが施されている点だ。 当たっても効果がないが、前のカタツムリと違って無効化フィールドじゃないからしつこく喰らわせれば熱で剥がれると思うから撃ちこむ事自体は無駄にはならんと思う」
 「武装は?」
 「見えている範囲だと腹から無尽蔵に吐き出すミサイルだな。 アレは蛾の輸送機と同じで内蔵してるんじゃなくてどこぞから取り寄せている感じだな。 恐らく弾は無限に出てくる」
 「チートかよ」
 「まったくだ。 で、ミサイルは二種類。 腹から自動で吐き出すタイプ。 これは基地を殲滅する為の装備だろうな。 真っすぐ飛んでそのまま爆発するだけ、こっちはいい。 問題はもう一種類の方だ。 恐らくだが、一定距離に近づいた敵に対しての備えだろうが誘導性能を持ったホーミングミサイル。 これは撃墜しないとどこまでも追いかけてくる。 威力はそこまでじゃないが、機動力に振っている機体だと一発貰ったらもう終わりだな」
 「見方によっちゃカタツムリより酷いな」
 「そりゃ後から出てくるような奴なんだ。 強いに決まってるだろうが」
 「いい情報はないのか?」
 「今の所、ミサイルは真っ直ぐ飛ぶから敵も巻き添え喰らってることぐらいか」

 その証拠にエネミーもミサイルに巻き込まれて次々と爆散していた。
 
 「それにしてもあの連中、味方もお構いなしなんだな」
 「詳しくは知らんが設定的に異星人の送り込んだ無人兵器って話だから、代わりはいくらでもいるとかそんな理由じゃないか?」
 「なんとまぁ、使い捨てとは景気のいい話で。 それにしてもどう攻めたものかねぇ……」
 「ま、その辺は命知らずな連中が突破口を開いてくれるだろ」

 そういったプレイヤーの視線の先では数機のキマイラタイプがミサイルの弾幕を突破し、蝦蛄型エネミーの上を取っているところだった。


 「オラ、突破ぁ!」
 「キマイラタイプの機動性なら楽勝だぜ!」

 彼等はミサイルをほぼ無傷で突破し、空中で人型へと変形し、蝦蛄型エネミーの背に着地。
 
 「持ってきたのは良いが、使えるか分からんかったからツいてたぜぇ」
 「なら何で持ってきたんだよ」
 「いや、実は俺、前回これでやられたからさぁ……」
 「あぁ(察し)」
 「まぁ、そんな訳で焼き海老にしてやるよ!」

 キマイラタイプが構えた武器からは凄まじい炎が飛び出す。
 火炎放射器。 エネミーも使っている強力な代物でまともに喰らえばトルーパーですら焼き尽くす高熱の炎を吐き出す。 ただ、攻撃範囲や射程など欠点も多く、癖の強い武器として使用するプレイヤーは割と少ない。

 「少なくともコーティングは剥がれるだろ」

 高温の炎に晒され、見る見るうちに装甲の色が変わっていく。
 錆色からメタリックな銀へと。 これはいけるんじゃないかと思っているとアラート。
 ロックオン警告だ。 

 「なんだ。 火炙りはお気に召さなかったようだな」

 無数のホーミングミサイルが彼等に向かって飛来する。
 
 「マジで火炎放射器が効くとは思わなかったぞ。 取り合えず守るからもっと焼いてコーティングを剥がしまくれ!」

 火炎放射器を操る機体は燃料が尽きるまで吐き出してやると豪快に撒き散らし、一緒に来た僚機はひたすらにミサイルを叩き落とす。
 ミサイルは他の機体には目もくれず、執拗に火炎放射器を持った機体を狙う。
 
 「俺は無視かよ。 すっげぇ執着されてんな!」
 「それだけ嫌だって事だろ。 必死に仕留めにかかっている時点で大当たりだ」
 「ってか敵が使ってるのってそういう事じゃね?」
 「……あぁ、パクッて使えって事か」
 「前回、ちょっと試したんだけどよぉ、蟻型の武器は規格が違うから基地での補給はできないけど、一応は扱えるんだよ」
 「は、あの運営にも人の心はあったんだな」

 火炎放射器の燃料が切れたので投げ捨て、持ってきていたエネルギーライフルをコーティングが剥がれた位置に押し付ける。

 「喰らえ」
 
 連射。 収束されたエネルギーは蝦蛄型エネミーの頑丈な装甲を貫き、穴を穿つ。
 ただ、完全に貫通せずに中で止まったようだったが、効果自体は間違いなくあった。
 
 「っしゃぁぁ! おい、全方位の通信でこいつの弱点をばら撒け。 炎だ! こいつは焼けば食える!」
 「今回は割とあっさり弱点が見えたな。 ――このまま押し切ろうといいたいところだが悪い。 弾切れだ」

 執拗に襲い掛かるミサイルを迎撃し続けていた機体は弾が切れた武器をミサイルに投げつけて最後の盾としたが、打つ手がなくなってしまった。
 
 「はぁ、ここまでか。 まぁ、俺達にしては頑張ったんじゃないか?」
 「おい! 見てるか! この海老野郎は殺れる! 今回で絶対に勝つぞ!」
 「だから海老じゃなくて蝦蛄だってば……」

 同時に全方位から飛んできたミサイルを喰らって機体が爆散した。
 

 ――つまらない。

 その頃。 ふわわは地上で退屈していた。
 近接戦を主とする彼女からすればこの状況はあまり面白いものではなかった。
 一応はヨシナリ達のフォローに入れる位置にいる以外は好きにしていいとの事だったので今までは好き勝手に動いていたのだが、どうにもやれる事がない。 

 少し前までは蟻型のエネミーと遊んでいたのだが、ミサイル巻き込まれて勝手に死に出したのでまた暇になってしまったのだ。 やっている事と言えばミサイルから逃げ回る事ばかり。
 こんな事なら前線に突っ込んでいった方が面白かったのではないかと思ってしまう。
 
 実行しなかったのは前回のユニオン戦での敗北を多少なりとも引き摺っているからでもあった。
 協調性も大事なのは理解してはいるが、楽しくないのはあまり良くない。
 この祭りに楽しく混ざる方法は何かないだろうか? そんな事を考えながらキョロキョロと周囲を見回しながらミサイルを躱しているとあるものが目に入った。 
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