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第76話
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上位の蟻型エネミーの出現により、徐々にだが戦況は悪化しつつあった。
確認されている中でも最強の量産エネミーだけあって槍持ち、ガトリング持ちは非常に強力で、特に前者はキマイラタイプでないと動きに付いていく事すら難しい。
「撃て撃て撃ちまくれ! ガトリングと火炎放射持ちは絶対に防壁に近づけるな! マジで削ぎ落されるぞ!」
防壁の上に陣取っている者達の大半は移動が困難なほどの重武装なので、射程に入れてしまうと逃げられない。 装備を放棄すれば撃破だけは防げるものの戦闘能力を喪失する事に等しく、実質リタイアしたようなものだ。 その為、彼等は逃げずに最後の瞬間まで攻撃を続けるだろう。
「もう少しでCランクの連中が来てくれる! それまで何とか耐えろ! また二か月後、復刻イベントとか俺はもう嫌だ! ここで意地でも勝ってやる!」
「俺もだ! もうこの地獄は見飽きた!」
「ここで勝って俺達を同じ地獄を好き好んで何度も味わっているマゾと思っている運営の鼻を明かしてやる!」
特に火炎放射器は射程内に入れてしまうと非常に不味い。
彼等とその護衛として配置されている者達、そして基地内から射程の長い武器で攻撃を続けている者。
その全てが心を一つにして敵と戦い続けていた。 彼等はただただ、勝利に向かって死力を尽くす。
――彼等には希望があった。 もう少し、もう少ししたら上位のランカーが助けに来てくれる。
それはカウントがゼロになった瞬間に成就する確かな希望だった。
時間は正確に残り時間を削り取り、カウンターがゼロになりリセットされる。
瞬間――
「待たせたな! 前回と違っているわいるわ」
無数の高ランク装備によるホーミングレーザー、多弾頭誘導弾、エネルギー式の機銃。
様々な高品質の武装によって敵が薙ぎ払われる。 希望が花開いたのだ。
プレイヤー達の間から歓声が爆発する。
「ひゅー、英雄扱いじゃん俺達」
「まぁ、待たせた分、しっかり働こうぜ」
「基地の損耗率はまだ半分も行ってない。 行けるぞ!」
「低ランクの連中が頑張ってくれたんだ。 俺達もいい所、見せないとなぁ!」
大量のキマイラタイプの機体が出現。 凄まじい速度で戦場を切り裂き、敵を薙ぎ払う。
「蟻野郎の相手はこっちで引き受ける。 ソルジャータイプは少し下がって防壁の連中の護衛を頼む!」
「それと例のカタツムリ対策の用意もだ」
本来ならBランクの到着を待って始める予定ではあったのだが、この様子だと予定より早く現れる事は目に見えていた。 一部のプレイヤーが持ち場を離れて移動を開始。 何かを取りに行ったようだ。
出番を待っていたCランクプレイヤー達の判断は非常に正しく、的確だった。
このゲームと運営の悪辣さに慣れているといってもいい。
「なーんかそろそろ来そうな感じじゃないか?」
一人のプレイヤーがそうぽつりと呟いた瞬間、それは起こった。
カウントがゼロになった瞬間が希望であるならその対極である絶望もまた存在する。
PhaseⅢ-Ⅳ以降が未実行により破棄。 PhaseⅣへ移行。
PhaseⅣ:『Type:fortress snails』投入(実行中――……完了)
――プレイヤー達を絶望の淵へと叩き落した存在が姿を現す。
敗北した彼等だからこそ、その危機を敏感に感じ取る事が出来たのかもしれない。
「来るぞ!」
敵の背後から巨大なシルエット。 あの特徴的な姿は忘れようがない。
巨大なカタツムリ型エネミー。 その威容が戦場に出現したのだ。
戦場に居た大半のプレイヤー達は戦意と怒り、憎悪に目を輝かせる。
特に上位のランカーからすれば二度も辛酸を舐めさせられた相手なのだ。
八つ裂きにしても飽き足らないと感じている者は非常に多かった。
「いよぉ、カタツムリ君。 今度こそぶち殺してやるからなぁ!」
「お前のスペックは前に見させてもらったからな。 三度目はねぇぞこのゴミ屑がよぉ!」
「カタツムリ君! カタツムリ君じゃないか! 久しぶり! 君の為に色々持ってきたよ!」
「Bランクの連中が来る前に片ぁ付けてやるぜ!」
カタツムリ型エネミーは前回、前々回と同様に定位置で停止。
砲を展開してエネルギーの充填を開始。 当然ながら黙って見ているプレイヤー達ではない。
前回、そのスペックを余すところなく見た彼らが何の対策もないままこの戦場に立つなどあり得なかった。
一度基地に戻ったソルジャータイプの機体が両肩に四角い何かを装備して戻ってきたのを確認するとキマイラタイプはソルジャータイプの護衛に付く。
「意地でも有効範囲まで連れて行くぞ! 一応、二十も居れば行けるって話だから突破さえできりゃ行ける!」
「っしゃぁ! 行くぜ!」
カタツムリ型のエネミーに突っ込んでいく一団をヨシナリはスコープ越しに見ていた。
「アレが対カタツムリ用の切り札って事か。 実際、どうなんだ?」
「俺も軽く調べたけど、行けると思う。 流石にあれが通用しないのはやりすぎだろう」
マルメルの質問にそう返しながらヨシナリは動きの遅いガトリングと火炎放射器持ちのエネミーを撃ち落としていく。
視点を移動させてカタツムリ型エネミーを見る。 重装甲に幾重に重なった防御システム。
前回、データ収集に徹したプレイヤーが独自に纏めて公開したデータは非常に有用だった。
少なくとも前回、前々回で明らかになった武装、スペックはほぼほぼ網羅されているといっていい。
あの巨大エネミーは砲を撃つ要塞だ。 その為、主砲が目を引くが、撃破するに当たっての障害はそれ以外となる。 大抵の物理攻撃を弾く強固な装甲にエネルギー兵器を無効化するフィールド、表面に張り巡らされた衝撃波のようなものを発射する対空兵器。 死角のない完璧な要塞といえる。
少なくとも並の装備では前に立つ事すら敵わない。
だが、だからと言って無敵であるかと聞かれれば疑問符が付く。
一応ではあるが、付け入る隙はあるのだ。 まず、あのエネミーは砲を撃つ事を目的としているので、それ以外の武装は身を守る為だけに存在する。
例の衝撃波の発生装置は射程が短く、近接戦でも仕掛けない限り届きはしない。
フィールドもエネルギー兵器のみを対象としており、実体弾には無力だ。
そして装甲は実体弾に対しては無敵でもエネルギー兵器には弱い。
つまり、どちらかを無力化すれば充分に撃破は可能なのだ。
確認されている中でも最強の量産エネミーだけあって槍持ち、ガトリング持ちは非常に強力で、特に前者はキマイラタイプでないと動きに付いていく事すら難しい。
「撃て撃て撃ちまくれ! ガトリングと火炎放射持ちは絶対に防壁に近づけるな! マジで削ぎ落されるぞ!」
防壁の上に陣取っている者達の大半は移動が困難なほどの重武装なので、射程に入れてしまうと逃げられない。 装備を放棄すれば撃破だけは防げるものの戦闘能力を喪失する事に等しく、実質リタイアしたようなものだ。 その為、彼等は逃げずに最後の瞬間まで攻撃を続けるだろう。
「もう少しでCランクの連中が来てくれる! それまで何とか耐えろ! また二か月後、復刻イベントとか俺はもう嫌だ! ここで意地でも勝ってやる!」
「俺もだ! もうこの地獄は見飽きた!」
「ここで勝って俺達を同じ地獄を好き好んで何度も味わっているマゾと思っている運営の鼻を明かしてやる!」
特に火炎放射器は射程内に入れてしまうと非常に不味い。
彼等とその護衛として配置されている者達、そして基地内から射程の長い武器で攻撃を続けている者。
その全てが心を一つにして敵と戦い続けていた。 彼等はただただ、勝利に向かって死力を尽くす。
――彼等には希望があった。 もう少し、もう少ししたら上位のランカーが助けに来てくれる。
それはカウントがゼロになった瞬間に成就する確かな希望だった。
時間は正確に残り時間を削り取り、カウンターがゼロになりリセットされる。
瞬間――
「待たせたな! 前回と違っているわいるわ」
無数の高ランク装備によるホーミングレーザー、多弾頭誘導弾、エネルギー式の機銃。
様々な高品質の武装によって敵が薙ぎ払われる。 希望が花開いたのだ。
プレイヤー達の間から歓声が爆発する。
「ひゅー、英雄扱いじゃん俺達」
「まぁ、待たせた分、しっかり働こうぜ」
「基地の損耗率はまだ半分も行ってない。 行けるぞ!」
「低ランクの連中が頑張ってくれたんだ。 俺達もいい所、見せないとなぁ!」
大量のキマイラタイプの機体が出現。 凄まじい速度で戦場を切り裂き、敵を薙ぎ払う。
「蟻野郎の相手はこっちで引き受ける。 ソルジャータイプは少し下がって防壁の連中の護衛を頼む!」
「それと例のカタツムリ対策の用意もだ」
本来ならBランクの到着を待って始める予定ではあったのだが、この様子だと予定より早く現れる事は目に見えていた。 一部のプレイヤーが持ち場を離れて移動を開始。 何かを取りに行ったようだ。
出番を待っていたCランクプレイヤー達の判断は非常に正しく、的確だった。
このゲームと運営の悪辣さに慣れているといってもいい。
「なーんかそろそろ来そうな感じじゃないか?」
一人のプレイヤーがそうぽつりと呟いた瞬間、それは起こった。
カウントがゼロになった瞬間が希望であるならその対極である絶望もまた存在する。
PhaseⅢ-Ⅳ以降が未実行により破棄。 PhaseⅣへ移行。
PhaseⅣ:『Type:fortress snails』投入(実行中――……完了)
――プレイヤー達を絶望の淵へと叩き落した存在が姿を現す。
敗北した彼等だからこそ、その危機を敏感に感じ取る事が出来たのかもしれない。
「来るぞ!」
敵の背後から巨大なシルエット。 あの特徴的な姿は忘れようがない。
巨大なカタツムリ型エネミー。 その威容が戦場に出現したのだ。
戦場に居た大半のプレイヤー達は戦意と怒り、憎悪に目を輝かせる。
特に上位のランカーからすれば二度も辛酸を舐めさせられた相手なのだ。
八つ裂きにしても飽き足らないと感じている者は非常に多かった。
「いよぉ、カタツムリ君。 今度こそぶち殺してやるからなぁ!」
「お前のスペックは前に見させてもらったからな。 三度目はねぇぞこのゴミ屑がよぉ!」
「カタツムリ君! カタツムリ君じゃないか! 久しぶり! 君の為に色々持ってきたよ!」
「Bランクの連中が来る前に片ぁ付けてやるぜ!」
カタツムリ型エネミーは前回、前々回と同様に定位置で停止。
砲を展開してエネルギーの充填を開始。 当然ながら黙って見ているプレイヤー達ではない。
前回、そのスペックを余すところなく見た彼らが何の対策もないままこの戦場に立つなどあり得なかった。
一度基地に戻ったソルジャータイプの機体が両肩に四角い何かを装備して戻ってきたのを確認するとキマイラタイプはソルジャータイプの護衛に付く。
「意地でも有効範囲まで連れて行くぞ! 一応、二十も居れば行けるって話だから突破さえできりゃ行ける!」
「っしゃぁ! 行くぜ!」
カタツムリ型のエネミーに突っ込んでいく一団をヨシナリはスコープ越しに見ていた。
「アレが対カタツムリ用の切り札って事か。 実際、どうなんだ?」
「俺も軽く調べたけど、行けると思う。 流石にあれが通用しないのはやりすぎだろう」
マルメルの質問にそう返しながらヨシナリは動きの遅いガトリングと火炎放射器持ちのエネミーを撃ち落としていく。
視点を移動させてカタツムリ型エネミーを見る。 重装甲に幾重に重なった防御システム。
前回、データ収集に徹したプレイヤーが独自に纏めて公開したデータは非常に有用だった。
少なくとも前回、前々回で明らかになった武装、スペックはほぼほぼ網羅されているといっていい。
あの巨大エネミーは砲を撃つ要塞だ。 その為、主砲が目を引くが、撃破するに当たっての障害はそれ以外となる。 大抵の物理攻撃を弾く強固な装甲にエネルギー兵器を無効化するフィールド、表面に張り巡らされた衝撃波のようなものを発射する対空兵器。 死角のない完璧な要塞といえる。
少なくとも並の装備では前に立つ事すら敵わない。
だが、だからと言って無敵であるかと聞かれれば疑問符が付く。
一応ではあるが、付け入る隙はあるのだ。 まず、あのエネミーは砲を撃つ事を目的としているので、それ以外の武装は身を守る為だけに存在する。
例の衝撃波の発生装置は射程が短く、近接戦でも仕掛けない限り届きはしない。
フィールドもエネルギー兵器のみを対象としており、実体弾には無力だ。
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