Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第69話

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 ふわわは良くも悪くも感覚派だ。 
 敵の攻撃に対する反応は異常と言っていいほど速く、鋭い。
 反面、間接的な攻撃に対しての反応はあまり良くない。 前回の敗北時はそれが顕著に表れた形だ。
 
 もしかすると漫画などでよくある殺気の類を感知しているのかもしれない。
 仮に殺気を読み取る技能があったと仮定すればそれが発生しない攻撃を仕掛ければ虚を突くぐらいは可能なはずだった。 今回、使用したのは遠隔で発射する為の仕掛けで、最初の数発は自分で撃ったが途中で遠隔操作に切り替えた。 最初に自分で撃っておけば殺気を探知した彼女はヨシナリがそこに居ると疑わない。

 罠は対ふわわ戦略として早い段階で選択肢に上がっていたが、効果があるかは何とも言えない状態だった。
 しかし、前回の戦闘でセンドウが彼女をあっさりと仕留めたのを見て使えると判断したのだ。
 正面から彼女の得意レンジで戦り合うのは自殺行為。 なら彼女の強みを完全に殺した状態で戦いの主導権を握り、勝負を制する。

 今の自分と進化したホロスコープならそれが可能。 
 
 ――いつかの借りを返させてもらう。 

 ヨシナリは事前に用意しておいた無数のパターンを脳裏に描き、ふわわの動きから最適なものを実行するべく移動を開始。 ビルを沈めた程度で彼女を仕留められるとは思っていないので次の策だ。
 必勝の誓いを胸に彼はこの勝負に死力を尽くす。


 「――うー、やってくれるなぁ……」

 瓦礫を突き破るようにふわわの機体が飛び出す。
 気配がしたので真っすぐに向かったのが良くなかった。 罠に関しては警戒していたつもりだったが、まだまだだったと思い知らされる。 恐らく最初だけ自分で撃って後は遠隔操作で狙撃銃を操作していたのだろう。 それにまんまと釣られて罠に引っかかった訳だ。

 かなり真剣に殺しに来ているヨシナリにふわわは少しだけ笑う。
 ここ最近は連携訓練ばかりで割と本気での勝負は少なかった。
 だからふわわからすればこの適度な緊張感を得られる戦いは悪い物ではなく、寧ろ好ましく感じていたのだ。 

 だから――
 
 「新品の機体。 ウチが切り刻んであげる」

 そう呟き、全身を脱力。 それは普段の彼女からは想像もできないほどの隙だらけの姿だった。


 「うわ、エッグいなぁ……」
 
 観戦していたマルメルは思わずそう呟いた。
 ふわわには散々、センサー系のトラップを警戒させておいて別種の罠に引っ掛ける辺り、ヨシナリの本気が伝わっている。 あいつは本気でふわわを叩き潰すつもりだ。

 マルメルはそう確信していた。 
 両者の動きは俯瞰で見れるマルメルからは全て見えていたが、どちらの動きも秀逸だ。
 ヨシナリの狙撃に即座に反応して狙撃地点に向かうふわわとそれを読んだヨシナリが、罠を仕掛けて誘い込みビルごと爆破。 最初の数発は自分で撃っていたのはふわわがプレイヤーの攻撃に対して異常なほどに反応が良い事を理解していたからだろう。

 そのふわわも咄嗟の判断でブレードで壁の一部を切って安全地帯を作ったのは凄まじい。
 瓦礫の山からほぼ無傷で這い出した彼女の機体はだらりと脱力している。
 それはマルメルにも見た事のなう動きだった。 もしかて機体に何か不具合でも出たのか?

 そんな疑問を抱きたくなるぐらいに無防備に見えた。
 何かを待っているのかそれとも誘っているのか……。
 傍から見れば無防備に見える状態の敵を放置する程、ヨシナリは甘くない。
 
 軽快な銃声が連続で響く。 銃声の感じから突撃銃。
 それが二か所から同時に発生し、銃弾がふわわに襲い掛かるが、彼女はぬるりと流れるような動きで身を低くして走り出した。 
 
 ――銃弾の飛んできていない方へと。

 さっきのヨシナリの仕掛けた罠を見た後だと流石に引っかからないかとマルメルは小さく頷く。
 当然、彼女を襲った突撃銃は両方ともヨシナリが遠隔操作して発射したものでどちらにも本人はいない。 それを即座に見切った彼女は無視して別の方向――それもヨシナリがいる方向へと向かう。

 「は? 何でわかったんだ」

 マルメルは思わず呟く。 ふわわの向かう先には隠れていたヨシナリの機体が居たからだ。
 ヨシナリも動揺したのか機体が微かに揺れるが、まだ想定内だったのか手に持っている突撃銃――新しく買ったエネルギー弾と通常弾の撃ち分けができる代物を構え、隠れているビル越しに発射。

 高熱のエネルギー弾がビルを貫通して真っすぐにふわわへと襲い掛かるが。
 近くのビルを蹴って跳躍して回避。 叩き落さなかったのはスピードが落ちる事を嫌がっての事だろう。 ふわわはビルを踏み台に大きく跳躍し、ヨシナリは着地点を読んで撃ち込むが、スラスターを噴かして着地のタイミングをずらして躱す。 ワンテンポ遅れた事でエネルギー弾は虚空を貫き、ふわわの機体は無傷で着地。 僅かな間も置かずに走り出す。

 距離が瞬く間に詰まる。 ヨシナリは不味いと判断したのかビルの陰から身を乗り出して突撃銃を実体弾に切り替えて連射。 ビルを蹴って跳ね回りながら三次元的な挙動で回避しながら肉薄する。
 
 ――あの変態じみた動きはどうやっているんだ?

 同じⅡ型なのに彼女の挙動は真似できる気がしないとマルメルはやや引き気味に神がかったふわわの動きを注視する。 自由に走らせたら本当に速い。
 かなりの距離があったにもかかわらずあっという間に彼女の間合いに入ってしまった。

 同時に弾が切れたのかヨシナリの銃からガチンと虚しい金属音が響く。
 チャージの関係でエネルギー弾は発射まで僅かにタイムラグがある。
 この状態ではふわわの方が早い。 これは決まったかとマルメルは思ったが、ヨシナリが取った行動はマルメルにもそしてふわわにも想像できないものだった。

 ヨシナリの機体はその場で蹲ったのだ。 そんな事をしても何も変わらな――
 電子音。 それを聞いたマルメルはまたかよと呟き、いつの間に仕掛けたと内心で呟いた。
 ヨシナリとふわわを取り囲むように仕掛けられたクレイモア指向性地雷。

 対人ではなくトルーパー用にスケールアップしたそれは巨大な鉄球をばら撒いて対象を粉々にする代物だ。 四方から襲い掛かってる鉄球がビルなどに命中し次々と破壊。
 大量の粉塵が舞い上がり、僅かな時間ではあるが視界が完全に塞がる。

 ――ど、どうなったんだ?

 マルメルは意味もないのに思わず身を乗り出した。
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