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第67話
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時間は流れる。
ヨシナリ達『星座盤』は連携の強化を行いつつ、ミッションで資金を稼ぎ、ランク戦で個人ランクを上げていく。 ふわわ、マルメルはⅡ型への機種転換を済ませているだけあってあっさりとFランクへと昇格。
ヨシナリもこの一戦でFランクへと昇格だ。
イベントも目前へと迫っているので仲間にランクは合わせておきたい。
加えてそろそろ資金も溜まるのでヨシナリもⅡ型への機種転換が可能になる。
『栄光』との戦いは非常に有用だった。 少なくとも今の自分に何が足りないのか明確になったからだ。
戦場へとダイブ。 今回は何もない荒野なので敵の姿はあっさりと見つけられた。
狙撃銃を構えてスコープを除きこむとはっきりとその姿が見える。
敵機はⅠ型、装備は突撃銃と大楯、両肩にミサイルポッドと腰にブレード。
準備時間が終わり、開始のカウントダウンが開始。 ゼロになったと同時に狙撃銃の引き金を引く。
狙いは頭。 流石に互いの姿を認識している状態で素直に当たってくれるほど敵は優しくなかった。
盾で防ぎながら背中のブースターを全開にして突っ込んで来る。
大楯で機体の大部分を隠しながら突撃銃で牽制しながら接近。 堅実だが非常に有効な手だった。
特に側面を突かれる心配のない一対一のランク戦では猶更だ。 まだ距離があるので何度か撃ち込んでみたものの盾を破壊するのは難しそうだった。
――ちょうどいい。 新しい戦い方を試してやる。
これまでヨシナリはスナイパーとして戦ってきた。
遠距離での戦いを選んだのは成り行きに近い。 トルーパーの脆さや武器との相性。
その後、マルメルと組んだ事によりその傾向は強くなった。
ヨシナリ自身も上手く行っているしこれでいいかと思考を停止していた部分があったのかもしれない。
その結果があの一戦だ。 確かにふわわの突出で崩れたのは否定できないが、彼女を当てにし過ぎていたヨシナリ達にも問題はあった。 何より、ヨシナリ自身があの戦いで何もできなかった事を気にしていたのだ。
センドウに完全に封殺されて何もできなかった。
表には出していないが、あの戦いで最も役に立たなかったのは自分だと思っている。
だから、戦い方を見直す必要があった。 ヨシナリは狙撃銃を捨てて、短機関銃へと持ち代える。
相手は盾を構え、ついている覗き穴からこちらを目視している。
突撃銃は盾に引っかけるようにしており、真っすぐに突っ込む分には非常に有用といえるが欠点も多い。 まずは視界が狭い事、それにより死角が多くなる。
次に射界だ。
盾と併用している関係で正面以外に弾をばら撒く場合は体ごと動かさなければならない。
当然ながら使っている本人がそれを一番理解しているだろう。 短機関銃をフルオートで射撃。
覗き穴を狙い、僅かに怯んだ隙に正面へと突撃。 その間に機体を左右に振る。
動きにつられるように銃口と盾が左右に揺れた。 恐らくどちらに抜けるのかを判断しようとしている。 ヨシナリはよしと相手の挙動から誘導に成功した手応えを感じた。
肩と足に被弾。 近づきすぎるとこうなるのは分かっていたので気にしない。
突撃銃一丁なら被弾はしても掻い潜るぐらいはどうにでもなる。
重要なのは相手の視界から消える事だ。 相手が旋回する必要のある距離まで近づいたところで地面を薙ぐように弾をばら撒く。 粉塵が舞って視界が塞がれる。
――どう動く?
敵機は右に左に銃口を彷徨わせた後、後退しようと減速。
読み通り。 接近した敵が視界から消えた場合どう動くか?
一か八かで左右どちらかに振って銃弾をばら撒く、動きを止める、視界を確保する為に後退する。
ヨシナリはそのどれかだと思っており、想定内であれば対処可能。
後退、または停止した場合の対処は一番楽だ。 何故ならそのまま突っ込んでしまえばいいのだから。
ヨシナリは機体を地面に接触させてスライディング。 盾ごと相手の足を刈り取る。
ここで注意するべきポイントは片足を刈るようにして相手の転倒に巻き込まれないようにすることだ。
特に減速は足のスラスターでバランスを取るので足の位置が大きく変われば勝手に崩れて倒れる。
ヨシナリの狙い通り後退しようとしていたので左右の足を前にした状態で脛と足裏のスラスターを噴かしていた。
そんな状態で片足の位置を意図しない方へと動かされればバランスを崩すに決まっている。
結果、敵は片足だけ後ろに流されその場でぐるりと一回転。 想定外の出来事に盾と突撃銃を取り落とす。 それでもブレードを抜いて立て直そうとしたがもう遅い。
背後に回っていたヨシナリの短機関銃がその胴体をハチの巣にした。
口径も小さく、威力に難があるが至近距離であるなら仕留めるには充分。
敵機の動力とコックピット部分を完全に破壊して試合終了となった。
ヨシナリの出した答えはポジションの変更だ。 スナイパーからオールラウンダーへ。
普段は狙撃で援護に徹し、必要に応じてポジションを変える。
そうすれば少なくとも封殺される事はなくなるはずだ。 単独であるなら一人でも戦えるように、チームであるなら味方の穴を埋め続ける存在に。
それに伴い、機体の強化プランも変更。 より高いバランスの取れた構成に。
器用貧乏なのかもしれないが、極めれば万能となる。
――俺は万能選手になって更に上を目指す。
どちらにせよ味方ありきの戦い方ではランクが上がれば上がるほどに通用しなくなる。
そう考え、いい機会だと割り切ったのだ。 これでヨシナリのランクはF。
資金も溜まるのでホロスコープもⅡ型へと進化する。 日程的にも次のイベントには間違いなく間に合う。
――新生した力で今度こそあのイベントのエンディングまで生き残ってやる。
ヨシナリは勝利の高揚とイベントへの期待、そして手に入るであろう新しい力を一刻も早く試したい。 そんな気持ちが胸中で渦を巻き、仮想の拳を強く握った。
「いや、お見事。 すっげースムーズに勝ったな」
「お前が特訓に付き合ってくれたお陰だよ」
ホームに戻るとマルメルがやったなと背中をバシバシと叩いてくる。
ふわわは用事があるとかでログインしていない。
「見てたけどあの動きは秀逸だったわ。 射界の穴を利用して接近、目潰しからのスライディング。 あんなの決められたら俺も負けたって思っちまうぜ」
「相手がタイミングよく後退しようとしてたのもついてたな」
「左右に振ってたらどうするつもりだったんだ?」
「空いた方――要はがら空きになった方に突っ込んでダガーで一撃する予定だった」
一通り話をした後、二人は顔を見合わせる。
「さて、金も溜まったし買いに行きますか」
「あぁ、これで全員Ⅱ型だ。 次のイベント頑張ろうぜ!」
今日のお楽しみはこれからだった。
ヨシナリ達『星座盤』は連携の強化を行いつつ、ミッションで資金を稼ぎ、ランク戦で個人ランクを上げていく。 ふわわ、マルメルはⅡ型への機種転換を済ませているだけあってあっさりとFランクへと昇格。
ヨシナリもこの一戦でFランクへと昇格だ。
イベントも目前へと迫っているので仲間にランクは合わせておきたい。
加えてそろそろ資金も溜まるのでヨシナリもⅡ型への機種転換が可能になる。
『栄光』との戦いは非常に有用だった。 少なくとも今の自分に何が足りないのか明確になったからだ。
戦場へとダイブ。 今回は何もない荒野なので敵の姿はあっさりと見つけられた。
狙撃銃を構えてスコープを除きこむとはっきりとその姿が見える。
敵機はⅠ型、装備は突撃銃と大楯、両肩にミサイルポッドと腰にブレード。
準備時間が終わり、開始のカウントダウンが開始。 ゼロになったと同時に狙撃銃の引き金を引く。
狙いは頭。 流石に互いの姿を認識している状態で素直に当たってくれるほど敵は優しくなかった。
盾で防ぎながら背中のブースターを全開にして突っ込んで来る。
大楯で機体の大部分を隠しながら突撃銃で牽制しながら接近。 堅実だが非常に有効な手だった。
特に側面を突かれる心配のない一対一のランク戦では猶更だ。 まだ距離があるので何度か撃ち込んでみたものの盾を破壊するのは難しそうだった。
――ちょうどいい。 新しい戦い方を試してやる。
これまでヨシナリはスナイパーとして戦ってきた。
遠距離での戦いを選んだのは成り行きに近い。 トルーパーの脆さや武器との相性。
その後、マルメルと組んだ事によりその傾向は強くなった。
ヨシナリ自身も上手く行っているしこれでいいかと思考を停止していた部分があったのかもしれない。
その結果があの一戦だ。 確かにふわわの突出で崩れたのは否定できないが、彼女を当てにし過ぎていたヨシナリ達にも問題はあった。 何より、ヨシナリ自身があの戦いで何もできなかった事を気にしていたのだ。
センドウに完全に封殺されて何もできなかった。
表には出していないが、あの戦いで最も役に立たなかったのは自分だと思っている。
だから、戦い方を見直す必要があった。 ヨシナリは狙撃銃を捨てて、短機関銃へと持ち代える。
相手は盾を構え、ついている覗き穴からこちらを目視している。
突撃銃は盾に引っかけるようにしており、真っすぐに突っ込む分には非常に有用といえるが欠点も多い。 まずは視界が狭い事、それにより死角が多くなる。
次に射界だ。
盾と併用している関係で正面以外に弾をばら撒く場合は体ごと動かさなければならない。
当然ながら使っている本人がそれを一番理解しているだろう。 短機関銃をフルオートで射撃。
覗き穴を狙い、僅かに怯んだ隙に正面へと突撃。 その間に機体を左右に振る。
動きにつられるように銃口と盾が左右に揺れた。 恐らくどちらに抜けるのかを判断しようとしている。 ヨシナリはよしと相手の挙動から誘導に成功した手応えを感じた。
肩と足に被弾。 近づきすぎるとこうなるのは分かっていたので気にしない。
突撃銃一丁なら被弾はしても掻い潜るぐらいはどうにでもなる。
重要なのは相手の視界から消える事だ。 相手が旋回する必要のある距離まで近づいたところで地面を薙ぐように弾をばら撒く。 粉塵が舞って視界が塞がれる。
――どう動く?
敵機は右に左に銃口を彷徨わせた後、後退しようと減速。
読み通り。 接近した敵が視界から消えた場合どう動くか?
一か八かで左右どちらかに振って銃弾をばら撒く、動きを止める、視界を確保する為に後退する。
ヨシナリはそのどれかだと思っており、想定内であれば対処可能。
後退、または停止した場合の対処は一番楽だ。 何故ならそのまま突っ込んでしまえばいいのだから。
ヨシナリは機体を地面に接触させてスライディング。 盾ごと相手の足を刈り取る。
ここで注意するべきポイントは片足を刈るようにして相手の転倒に巻き込まれないようにすることだ。
特に減速は足のスラスターでバランスを取るので足の位置が大きく変われば勝手に崩れて倒れる。
ヨシナリの狙い通り後退しようとしていたので左右の足を前にした状態で脛と足裏のスラスターを噴かしていた。
そんな状態で片足の位置を意図しない方へと動かされればバランスを崩すに決まっている。
結果、敵は片足だけ後ろに流されその場でぐるりと一回転。 想定外の出来事に盾と突撃銃を取り落とす。 それでもブレードを抜いて立て直そうとしたがもう遅い。
背後に回っていたヨシナリの短機関銃がその胴体をハチの巣にした。
口径も小さく、威力に難があるが至近距離であるなら仕留めるには充分。
敵機の動力とコックピット部分を完全に破壊して試合終了となった。
ヨシナリの出した答えはポジションの変更だ。 スナイパーからオールラウンダーへ。
普段は狙撃で援護に徹し、必要に応じてポジションを変える。
そうすれば少なくとも封殺される事はなくなるはずだ。 単独であるなら一人でも戦えるように、チームであるなら味方の穴を埋め続ける存在に。
それに伴い、機体の強化プランも変更。 より高いバランスの取れた構成に。
器用貧乏なのかもしれないが、極めれば万能となる。
――俺は万能選手になって更に上を目指す。
どちらにせよ味方ありきの戦い方ではランクが上がれば上がるほどに通用しなくなる。
そう考え、いい機会だと割り切ったのだ。 これでヨシナリのランクはF。
資金も溜まるのでホロスコープもⅡ型へと進化する。 日程的にも次のイベントには間違いなく間に合う。
――新生した力で今度こそあのイベントのエンディングまで生き残ってやる。
ヨシナリは勝利の高揚とイベントへの期待、そして手に入るであろう新しい力を一刻も早く試したい。 そんな気持ちが胸中で渦を巻き、仮想の拳を強く握った。
「いや、お見事。 すっげースムーズに勝ったな」
「お前が特訓に付き合ってくれたお陰だよ」
ホームに戻るとマルメルがやったなと背中をバシバシと叩いてくる。
ふわわは用事があるとかでログインしていない。
「見てたけどあの動きは秀逸だったわ。 射界の穴を利用して接近、目潰しからのスライディング。 あんなの決められたら俺も負けたって思っちまうぜ」
「相手がタイミングよく後退しようとしてたのもついてたな」
「左右に振ってたらどうするつもりだったんだ?」
「空いた方――要はがら空きになった方に突っ込んでダガーで一撃する予定だった」
一通り話をした後、二人は顔を見合わせる。
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