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第59話
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以前の戦い――レラナイト戦では装甲をステルス素材、要はレーダーに引っかかり辛い物に変え、敵に気付かれる前にふわわが肉薄。 数を減らしつつ、焦って飛び出したレラナイトをヨシナリが可能であれば狙撃で仕留め、できなければマルメルが待ち伏せている場所へと誘導してとどめという流れだった。
今回も似た流れになるが通用するかは怪しい。
上位ユニオンだけあって装備の質も高いはずなのでセンサー類も良い物にアップグレードしていると見ていい。 つまり、隠れてもまず見つかる。
だったら正面から行って切り刻めばいい。
そう考えたふわわは隠れもせずに真っすぐに敵のいるであろう方向へと突っ込んでいった。
フィールドの中央を切り裂くように彼女の機体が縦断し、即座に敵を発見。
「みーつけた!」
オレンジ色のⅡ型で明るい機体色はこの戦場では良く目立つ。
片手には突撃銃。 残りの手には大楯、装甲はやや盛っているようで頑丈さに振っているイメージだった。
装備を確認したと同時にふわわは敵機をどう料理するのかを三通りほど脳裏でシミュレート。
どの方法が最も効率良く、そして確実に処理できるかを吟味して実行。
敵機がこちらを認識したと判断したと同時にビルの陰に入る。 同時に発砲音。
一瞬まで彼女の機体が居た空間を無数の銃弾が通り過ぎる。
後を追うように銃弾がビル越しに飛んでくるが、ふわわはビルを蹴って上昇。
そのまま飛び越えて太陽を背負う。 これは天候が晴れだったからこそ使える手ではあるが効果は高い。 敵機は彼女の姿を捕捉しきれず照準がブレる。
彼女はその間隙を見逃さずにビルを蹴って急降下。 背のブースターを吹かして加速しつつ、エネルギーブレードの刃を出現させる。
あの程度の装甲であるならダガーでも充分に仕留められるが、相手は格上なので確実を期す為にも殺傷力が高いこちらを選択したのだ。 狙いはセンサー類の集中している頭部。
仮に仕留めそこなったとしても頭部を破壊すれば相手の視界と索敵能力はほぼ死ぬので今後、大きく有利になる。 加えて急所である胴体は慣れたプレイヤーほど反射的に守る部位でもあるので、頭部から胴体は彼女の中では最も効率の良い切り刻み方だった。
敵の弾幕を掻い潜り、間合いに捉え――
『いや、怖ぇよ』
――!?
ふわわは空中で身を捻って機体を横に回転。
僅かに遅れて何かがその機体を僅かに掠めて飛んでいく。
飛んできた物の正体はトルーパー用にスケールアップした矢で、ふわわの背後にあったビルに半ばまで食い込んでいる所を見ると当たればただでは済まないだろう。
『嘘だろ。 あれ躱すのかよ』
そう言って現れたのは灰色のⅡ型だ。 機体は背景に溶け込んで――違う。
「迷彩機能だったっけ?」
ふわわはバク転しながらビルの壁面に着地し、別のビルへと飛び移り即座に敵機の死角へと移動。
それを応用に突撃銃による追撃が飛んでくるが器用に躱してその姿を消した。
「すみません。 ツガルさん、仕留めそこないました」
そう言ったのは灰色のⅡ型に乗ったプレイヤー『フカヤ』だ。
「いや、あれを躱されちゃ文句なんて言えねえよ」
ツガルと呼ばれたプレイヤーはそう返す。
彼らはユニオン『栄光』のメンバーで今回、ヨシナリ達『星座盤』の相手をするに当たって下調べはしておいた。 同時にハンディキャップマッチでもある。 本来、ツガルと他の二人の個人ランクはC。
ツガルの本当の愛機はキマイラタイプだ。
性能差で勝っても意味がないという事で全員、わざわざⅡ型を用意してこの戦闘に臨んでいた。
模擬戦はリーダーがあちこちに営業をかけて組んでくれる試合なので、リスクなしに腕を磨くチャンスだ。 好成績を残せばユニオン内でも一目置かれる。 つまり勝てばいい事しかないのだ。 全力で臨むのは当然だった。
『星座盤』メンバー三人の弱小ユニオンだと思っていたが、自分達よりも規模の大きいユニオンとの総力戦で危なげなく完勝した実績を見れば侮っていい相手ではなかった。
だからこそカナタは模擬戦の相手にと選んだのだろう。 ツガルは軽い調子の男ではあったが、戦闘においては真面目に取り組んでいた。
その為、見えている範囲ではあるが『星座盤』のメンバーに付いてもある程度のデータは頭に入っており、それぞれに対する対抗策も考えてはいた。
一番厄介で仕留めるのに苦労しそうなふわわをここで仕留められなかったのはかなり厳しい。
実際、さっきの奇襲は仕留めるに当たっての最大のチャンスだったはずだ。
ふわわ。 名前と裏腹にその攻めは苛烈で、このゲームで近接一本という狂ったビルドも相まって異様な雰囲気を醸し出しているプレイヤーだった。 人体に近い動きができるトルーパーの特徴を最大限に利用したその動きは常軌を逸しており、目の当たりにしたツガルはこいつは早めに仕留めないと不味いと心の底から思わせるほどだ。 映像で見るのと目の当たりにするのとでは違うという事を痛感させられた。
こちらが視認したと同時にビルの陰に入って捕捉を困難にし、ビルを蹴って跳躍からの太陽を背負っての頭上からの強襲。 これを一瞬の判断で行える技量は凄まじい。
何よりツガルが危険と思ったのはその後だ。 実際、肉薄される所までは読んでいたので自身を囮に釣りだす所までは上手く行っていた。 ギリギリまで引き付けて隠れていたフカヤがクロスボウで仕留める。 それが対ふわわとして用意していた策の一つだった。
実際、これは彼女を仕留めるに当たってはかなり有効な策でもある。
ふわわは真っ先にツガル達の下へと突っ込んできた。 それは味方を置き去りにして突出している事と同義なので仕留めるタイミングとしては最上。 可能であれば奇襲をかけて来た所を逆に仕留めてやろうと目論み、迷彩機能を備えたフカヤを伏せていたのだが――
「いや、思った以上にヤベー奴だったなぁ。 アレに反応できるとかどうなってるんだよ」
「追いますか?」
「いや、深追いは止めといた方がいい。 逃げ方に迷いもなかったし、何処に誘い込まれるか分かったものじゃねーぞ」
完全に死角からの一撃。 フカヤの動きにミスはなかった。
――にもかかわらずギリギリで察知して空中で身を捻って回避。 正直、躱される瞬間まで、仕留めたと確信していただけにショックは大きかった。 その後、即座に不利を悟って後退。
あれでGランクとか何の冗談だと言いたくなる。
「取り合えず、俺達も動くぞ。 敵のスナイパーはセンドウさんが抑えててくれてるけど、居場所を晒し続けてもいい事ないし、一度下がって仕切り直そう」
好機を逃したと少し落ち込んでいるフカヤの背を気にするなと軽く叩いてツガル達はその場から移動した。
今回も似た流れになるが通用するかは怪しい。
上位ユニオンだけあって装備の質も高いはずなのでセンサー類も良い物にアップグレードしていると見ていい。 つまり、隠れてもまず見つかる。
だったら正面から行って切り刻めばいい。
そう考えたふわわは隠れもせずに真っすぐに敵のいるであろう方向へと突っ込んでいった。
フィールドの中央を切り裂くように彼女の機体が縦断し、即座に敵を発見。
「みーつけた!」
オレンジ色のⅡ型で明るい機体色はこの戦場では良く目立つ。
片手には突撃銃。 残りの手には大楯、装甲はやや盛っているようで頑丈さに振っているイメージだった。
装備を確認したと同時にふわわは敵機をどう料理するのかを三通りほど脳裏でシミュレート。
どの方法が最も効率良く、そして確実に処理できるかを吟味して実行。
敵機がこちらを認識したと判断したと同時にビルの陰に入る。 同時に発砲音。
一瞬まで彼女の機体が居た空間を無数の銃弾が通り過ぎる。
後を追うように銃弾がビル越しに飛んでくるが、ふわわはビルを蹴って上昇。
そのまま飛び越えて太陽を背負う。 これは天候が晴れだったからこそ使える手ではあるが効果は高い。 敵機は彼女の姿を捕捉しきれず照準がブレる。
彼女はその間隙を見逃さずにビルを蹴って急降下。 背のブースターを吹かして加速しつつ、エネルギーブレードの刃を出現させる。
あの程度の装甲であるならダガーでも充分に仕留められるが、相手は格上なので確実を期す為にも殺傷力が高いこちらを選択したのだ。 狙いはセンサー類の集中している頭部。
仮に仕留めそこなったとしても頭部を破壊すれば相手の視界と索敵能力はほぼ死ぬので今後、大きく有利になる。 加えて急所である胴体は慣れたプレイヤーほど反射的に守る部位でもあるので、頭部から胴体は彼女の中では最も効率の良い切り刻み方だった。
敵の弾幕を掻い潜り、間合いに捉え――
『いや、怖ぇよ』
――!?
ふわわは空中で身を捻って機体を横に回転。
僅かに遅れて何かがその機体を僅かに掠めて飛んでいく。
飛んできた物の正体はトルーパー用にスケールアップした矢で、ふわわの背後にあったビルに半ばまで食い込んでいる所を見ると当たればただでは済まないだろう。
『嘘だろ。 あれ躱すのかよ』
そう言って現れたのは灰色のⅡ型だ。 機体は背景に溶け込んで――違う。
「迷彩機能だったっけ?」
ふわわはバク転しながらビルの壁面に着地し、別のビルへと飛び移り即座に敵機の死角へと移動。
それを応用に突撃銃による追撃が飛んでくるが器用に躱してその姿を消した。
「すみません。 ツガルさん、仕留めそこないました」
そう言ったのは灰色のⅡ型に乗ったプレイヤー『フカヤ』だ。
「いや、あれを躱されちゃ文句なんて言えねえよ」
ツガルと呼ばれたプレイヤーはそう返す。
彼らはユニオン『栄光』のメンバーで今回、ヨシナリ達『星座盤』の相手をするに当たって下調べはしておいた。 同時にハンディキャップマッチでもある。 本来、ツガルと他の二人の個人ランクはC。
ツガルの本当の愛機はキマイラタイプだ。
性能差で勝っても意味がないという事で全員、わざわざⅡ型を用意してこの戦闘に臨んでいた。
模擬戦はリーダーがあちこちに営業をかけて組んでくれる試合なので、リスクなしに腕を磨くチャンスだ。 好成績を残せばユニオン内でも一目置かれる。 つまり勝てばいい事しかないのだ。 全力で臨むのは当然だった。
『星座盤』メンバー三人の弱小ユニオンだと思っていたが、自分達よりも規模の大きいユニオンとの総力戦で危なげなく完勝した実績を見れば侮っていい相手ではなかった。
だからこそカナタは模擬戦の相手にと選んだのだろう。 ツガルは軽い調子の男ではあったが、戦闘においては真面目に取り組んでいた。
その為、見えている範囲ではあるが『星座盤』のメンバーに付いてもある程度のデータは頭に入っており、それぞれに対する対抗策も考えてはいた。
一番厄介で仕留めるのに苦労しそうなふわわをここで仕留められなかったのはかなり厳しい。
実際、さっきの奇襲は仕留めるに当たっての最大のチャンスだったはずだ。
ふわわ。 名前と裏腹にその攻めは苛烈で、このゲームで近接一本という狂ったビルドも相まって異様な雰囲気を醸し出しているプレイヤーだった。 人体に近い動きができるトルーパーの特徴を最大限に利用したその動きは常軌を逸しており、目の当たりにしたツガルはこいつは早めに仕留めないと不味いと心の底から思わせるほどだ。 映像で見るのと目の当たりにするのとでは違うという事を痛感させられた。
こちらが視認したと同時にビルの陰に入って捕捉を困難にし、ビルを蹴って跳躍からの太陽を背負っての頭上からの強襲。 これを一瞬の判断で行える技量は凄まじい。
何よりツガルが危険と思ったのはその後だ。 実際、肉薄される所までは読んでいたので自身を囮に釣りだす所までは上手く行っていた。 ギリギリまで引き付けて隠れていたフカヤがクロスボウで仕留める。 それが対ふわわとして用意していた策の一つだった。
実際、これは彼女を仕留めるに当たってはかなり有効な策でもある。
ふわわは真っ先にツガル達の下へと突っ込んできた。 それは味方を置き去りにして突出している事と同義なので仕留めるタイミングとしては最上。 可能であれば奇襲をかけて来た所を逆に仕留めてやろうと目論み、迷彩機能を備えたフカヤを伏せていたのだが――
「いや、思った以上にヤベー奴だったなぁ。 アレに反応できるとかどうなってるんだよ」
「追いますか?」
「いや、深追いは止めといた方がいい。 逃げ方に迷いもなかったし、何処に誘い込まれるか分かったものじゃねーぞ」
完全に死角からの一撃。 フカヤの動きにミスはなかった。
――にもかかわらずギリギリで察知して空中で身を捻って回避。 正直、躱される瞬間まで、仕留めたと確信していただけにショックは大きかった。 その後、即座に不利を悟って後退。
あれでGランクとか何の冗談だと言いたくなる。
「取り合えず、俺達も動くぞ。 敵のスナイパーはセンドウさんが抑えててくれてるけど、居場所を晒し続けてもいい事ないし、一度下がって仕切り直そう」
好機を逃したと少し落ち込んでいるフカヤの背を気にするなと軽く叩いてツガル達はその場から移動した。
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