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第45話
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「ふわわさんはどうでしょう?」
そう口にしたのはレラナイトだ。 その態度を見てヨシナリはアバターの奥で僅かに目を細めた。
このプレイヤーは非常に露骨でアバター越しでも最初からふわわしか見ていなかった事が分かる。
過去にプレイしたゲームでも似たような輩は何人も見てきたので、こういった行動を取る者にはいくつかのパターンがあった。
まずは他のプレイヤーを自己の装飾品とみなして横柄に振舞う者。
常に良い物を追い求めるといえば聞こえはいいが、勧誘した後は便利に使い、更に使い勝手の良い存在が現れればあっさり捨てる自分本位な傾向にある。 こう言って相手の都合を無視して話を進めようとする点からもこの二人にはその傾向があった。
「どうってなにが?」
「こちらのメンバーとの戦闘を見せてもらいました。 非常に素晴らしい。 三対三で撃破数二、あの近接戦闘能力は同ランク帯では抜きんでているといえます!」
「はぁ」
「ただ、残念なのはその弱小ユニオンではその力を最大限に活かす事が出来ない事です。 我々のサポートがあればふわわさんはもっと輝ける! 俺達と一緒に戦いましょう。 ――あぁ、そちらの二人に悪いというのなら一緒に入れてあげてもいいです」
ふわわが首を傾げるとレラナイトは気を良くしたのかペラペラと勢いよく話し始めた。
ヨシナリとマルメルは表面上黙っていたが、ユニオンの専用通信では鼻で笑っている。
『こいつくっそ失礼な奴だな。 入れてあげてもいいってさ』
『俺としてはあの思考回路でこのゲームを続けられている事が驚きだよ』
ヨシナリはマルメルの言葉に全面同意した。
最初にそっちに入る気はないと結論を出しているにも関わらずこれだ。
そもそもまともに会話が成立しているかすら怪しい。
話している間にウインドウを不可視モードにして二人について軽く調べておいた。
参加する際の参考にする為か全てのユニオンはランク、構成人数、構成人員とその個人ランクが閲覧できるようになっている。
まずは五宝剣。 構成人数は七十五名。
リーダーのグリュックがCランクだけあって構成人数が多い。
上位のプレイヤーが居ればそれだけ共同ミッションが安定するので自分の腕に自信のない奴ほどあっさりと食いつくだろう。 それに次のイベントの復刻も予見されているので生存率を上げる意味でも誰かの下に付いておく事は悪い判断ではない。 ざっとメンバーを確認すると大半がG~Iの低ランクだが、グリュックを含めてCランクも数名存在する。 何よりも驚きなのはBランクが一人いる事だろう。
次に大渦。 構成人数は十名。
リーダーのレラナイトのランクはE。
ヨシナリの見立てではDに上がったはいいが通用しなくて落ちたといったところだろう。
メンバーはFが一人と後はHランク以下。 取り合えず集めたといった感じだった。
『五宝剣の方が待遇としてはマシだな』
『そうかもな。 俺としてはいきなり押しかけてくる時点でアウトだけど』
『はは、たしかに。 相手によっては効果あるかもしれないけどちょっとないな』
ヨシナリの返しにマルメルが笑う。
『ちょっと二人とも助けてくれないかな? ウチさっきからナンパされて困ってるんだけど~』
『いや、そのタイプは多分はっきり言わないと無理だと思うんで……』
ヨシナリが結論を出した上で食い下がってきている以上は本人がきっぱりと断らないと効果がないだろう。 ふわわは嫌そうに小さく溜息を吐いた。
「え~と? レラナイトさん? でしたっけ?」
「えぇ! 分かってくれましたか!?」
「うん。 ウチはヨシナリ君達とやっていくって決めたからそっちには行かない」
「そこを何とか。 絶対、俺達と一緒の方が楽しいって!」
その後も無理とそこを何とかといった何の生産性のないやり取りを行っていたが、不意にグリュックが立ち上がる。
「あー、えーっと、ヨシナリさん達の気持ちは分かったんで、俺達はこれで失礼させてもらいます。 気が変わったらいつでも連絡してください。 それじゃあ」
グリュックはレラナイトを一瞥すると仲間を連れて去っていった。
最後に小さく「俺ってあんな感じだった?」と仲間に尋ねていたので、彼なりに思う所があったのかもしれない。 その間にもふわわとレラナイトの不毛なやり取りは続いており、段々とふわわの口調から穏やかさが消えつつあったが、レラナイト気づいていない。
『なぁ、俺、ちょっと外出てていいかな?』
嫌な予感を感じたのかマルメルが離脱しようとしてたのでヨシナリは自然に肩を組む振りをして拘束。
『おいおい、仲間だろ。 見捨てるなんて悲しい事しないでくれよ』
『いや、お前。 あれ、見てみろよ! ふわわさんキレかけてるぞ! 巻き込まれたくねぇよ!』
『だから、居てくれって頼んでるんだよ。 俺一人じゃどうにもならないかもしれないだろ!?』
ヨシナリから見てもふわわという女性は何処かズレた印象はあるが、基本的には穏やかな性格だ。
そんな彼女が怒る場面は上手く想像できず、そうなった場合に何が起こるのか分からない所が恐ろしかった。 ふわわの変化に全く気が付いていなのか段々と上手く話が進まない事にイラつき始めたレラナイトが致命的な言葉を口にする。
「ってかそんな少人数の弱小じゃ、上に行けないって言ってるんですよ。 放っておけない優しさは分かりましたがそんな寄生の雑魚と組んでないで見合ったランクと付き合いましょうよ。 彼等も彼等に見合った相手と付き合えばいいんですって」
流石に我慢の限界だった。 ヨシナリはぷっと吹き出し、マルメルはふっと鼻で笑う。
中でもふわわの反応が特に顕著で彼女は完全に沈黙した。
「ふーん? 分かった。 ならこうしよっか、ユニオン戦しよ。 三対三でそっちが勝ったら入ってあげる。 どう?」
「いいですよ。 こちらが勝ったらふわわさんは大渦に入ってくれるんですね」
「うん。 で? そっちは負けたらどうする? こちらが条件を出すんだからそっちも何か出してよ」
「は? あー、じゃあ二度と勧誘しないとかどうです?」
「それは当然だけど、レラナイトさんって機体Ⅱ型だよね?」
関係のない話に飛んだ事にレラナイトはやや訝しむように首を傾げたが、そうですと頷いた。
ヨシナリはふわわの意図に気が付いてうわと内心で表情を歪める。
「だったらそっちが負けたらⅡ型のパーツ一式頂戴」
彼女はそう言い放った。 予想通りになった事でヨシナリはあぁと内心で頭を抱える。
そう口にしたのはレラナイトだ。 その態度を見てヨシナリはアバターの奥で僅かに目を細めた。
このプレイヤーは非常に露骨でアバター越しでも最初からふわわしか見ていなかった事が分かる。
過去にプレイしたゲームでも似たような輩は何人も見てきたので、こういった行動を取る者にはいくつかのパターンがあった。
まずは他のプレイヤーを自己の装飾品とみなして横柄に振舞う者。
常に良い物を追い求めるといえば聞こえはいいが、勧誘した後は便利に使い、更に使い勝手の良い存在が現れればあっさり捨てる自分本位な傾向にある。 こう言って相手の都合を無視して話を進めようとする点からもこの二人にはその傾向があった。
「どうってなにが?」
「こちらのメンバーとの戦闘を見せてもらいました。 非常に素晴らしい。 三対三で撃破数二、あの近接戦闘能力は同ランク帯では抜きんでているといえます!」
「はぁ」
「ただ、残念なのはその弱小ユニオンではその力を最大限に活かす事が出来ない事です。 我々のサポートがあればふわわさんはもっと輝ける! 俺達と一緒に戦いましょう。 ――あぁ、そちらの二人に悪いというのなら一緒に入れてあげてもいいです」
ふわわが首を傾げるとレラナイトは気を良くしたのかペラペラと勢いよく話し始めた。
ヨシナリとマルメルは表面上黙っていたが、ユニオンの専用通信では鼻で笑っている。
『こいつくっそ失礼な奴だな。 入れてあげてもいいってさ』
『俺としてはあの思考回路でこのゲームを続けられている事が驚きだよ』
ヨシナリはマルメルの言葉に全面同意した。
最初にそっちに入る気はないと結論を出しているにも関わらずこれだ。
そもそもまともに会話が成立しているかすら怪しい。
話している間にウインドウを不可視モードにして二人について軽く調べておいた。
参加する際の参考にする為か全てのユニオンはランク、構成人数、構成人員とその個人ランクが閲覧できるようになっている。
まずは五宝剣。 構成人数は七十五名。
リーダーのグリュックがCランクだけあって構成人数が多い。
上位のプレイヤーが居ればそれだけ共同ミッションが安定するので自分の腕に自信のない奴ほどあっさりと食いつくだろう。 それに次のイベントの復刻も予見されているので生存率を上げる意味でも誰かの下に付いておく事は悪い判断ではない。 ざっとメンバーを確認すると大半がG~Iの低ランクだが、グリュックを含めてCランクも数名存在する。 何よりも驚きなのはBランクが一人いる事だろう。
次に大渦。 構成人数は十名。
リーダーのレラナイトのランクはE。
ヨシナリの見立てではDに上がったはいいが通用しなくて落ちたといったところだろう。
メンバーはFが一人と後はHランク以下。 取り合えず集めたといった感じだった。
『五宝剣の方が待遇としてはマシだな』
『そうかもな。 俺としてはいきなり押しかけてくる時点でアウトだけど』
『はは、たしかに。 相手によっては効果あるかもしれないけどちょっとないな』
ヨシナリの返しにマルメルが笑う。
『ちょっと二人とも助けてくれないかな? ウチさっきからナンパされて困ってるんだけど~』
『いや、そのタイプは多分はっきり言わないと無理だと思うんで……』
ヨシナリが結論を出した上で食い下がってきている以上は本人がきっぱりと断らないと効果がないだろう。 ふわわは嫌そうに小さく溜息を吐いた。
「え~と? レラナイトさん? でしたっけ?」
「えぇ! 分かってくれましたか!?」
「うん。 ウチはヨシナリ君達とやっていくって決めたからそっちには行かない」
「そこを何とか。 絶対、俺達と一緒の方が楽しいって!」
その後も無理とそこを何とかといった何の生産性のないやり取りを行っていたが、不意にグリュックが立ち上がる。
「あー、えーっと、ヨシナリさん達の気持ちは分かったんで、俺達はこれで失礼させてもらいます。 気が変わったらいつでも連絡してください。 それじゃあ」
グリュックはレラナイトを一瞥すると仲間を連れて去っていった。
最後に小さく「俺ってあんな感じだった?」と仲間に尋ねていたので、彼なりに思う所があったのかもしれない。 その間にもふわわとレラナイトの不毛なやり取りは続いており、段々とふわわの口調から穏やかさが消えつつあったが、レラナイト気づいていない。
『なぁ、俺、ちょっと外出てていいかな?』
嫌な予感を感じたのかマルメルが離脱しようとしてたのでヨシナリは自然に肩を組む振りをして拘束。
『おいおい、仲間だろ。 見捨てるなんて悲しい事しないでくれよ』
『いや、お前。 あれ、見てみろよ! ふわわさんキレかけてるぞ! 巻き込まれたくねぇよ!』
『だから、居てくれって頼んでるんだよ。 俺一人じゃどうにもならないかもしれないだろ!?』
ヨシナリから見てもふわわという女性は何処かズレた印象はあるが、基本的には穏やかな性格だ。
そんな彼女が怒る場面は上手く想像できず、そうなった場合に何が起こるのか分からない所が恐ろしかった。 ふわわの変化に全く気が付いていなのか段々と上手く話が進まない事にイラつき始めたレラナイトが致命的な言葉を口にする。
「ってかそんな少人数の弱小じゃ、上に行けないって言ってるんですよ。 放っておけない優しさは分かりましたがそんな寄生の雑魚と組んでないで見合ったランクと付き合いましょうよ。 彼等も彼等に見合った相手と付き合えばいいんですって」
流石に我慢の限界だった。 ヨシナリはぷっと吹き出し、マルメルはふっと鼻で笑う。
中でもふわわの反応が特に顕著で彼女は完全に沈黙した。
「ふーん? 分かった。 ならこうしよっか、ユニオン戦しよ。 三対三でそっちが勝ったら入ってあげる。 どう?」
「いいですよ。 こちらが勝ったらふわわさんは大渦に入ってくれるんですね」
「うん。 で? そっちは負けたらどうする? こちらが条件を出すんだからそっちも何か出してよ」
「は? あー、じゃあ二度と勧誘しないとかどうです?」
「それは当然だけど、レラナイトさんって機体Ⅱ型だよね?」
関係のない話に飛んだ事にレラナイトはやや訝しむように首を傾げたが、そうですと頷いた。
ヨシナリはふわわの意図に気が付いてうわと内心で表情を歪める。
「だったらそっちが負けたらⅡ型のパーツ一式頂戴」
彼女はそう言い放った。 予想通りになった事でヨシナリはあぁと内心で頭を抱える。
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