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第1話
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脳内に鳴り響くアラームで日和佐 嘉成の意識は覚醒した。
目を開き上体を起こし、ぐるりと周囲を見回すと机と椅子だけしかない殺風景な部屋が見える。
嘉成は意識を脳の奥へと向け、切っていた立体映像を起動させると殺風景な部屋が即座に装甲を思わせるメタリックな壁紙、宙には戦闘機が現れた。
一見すると凄まじい技術ではあるが、嘉成からすればありふれた代物だ。
この統一国家アメイジアでは十数年前から国民は出生と同時にナノマシン技術を応用した脳内チップを埋め込まれる。 注入されたナノサイズの有機機械は脳内で時間をかけてチップを形成し、それは端末として生活の全てを支えてくれるのだ。
嘉成も例に漏れずその恩恵を受けて生きている。
何せこれさえあれば何があっても困る事はないからだ。
買い物は勿論、スケジュール管理にリアルタイムで体調をモニターしてくれるので異常があれば即座に知らせてくれる。 随分昔――彼の曽祖父の時代では携帯端末を持ち歩かなければならなかったらしいが、彼の世代は手ぶらでない事、要は片手が塞がるような代物は扱い難い、不便と判断されるのだ。
当然ながら通信機能も備えているので学業もネットワーク上の教室でアバターを用いて出席するので、家から出る必要すらない。 実際、彼が最後に外出したのは二か月前だった。
暦は七月の後半。 今日から待ちに待った夏休みだ。
彼はこれから始める事に胸を躍らせていた。 両親に頼み込んで許可を貰った現在の流行を攫った大人気ゲーム『Intrusion Countermeasure:protective wall』略称『ICpw』。
大人気のVRゲームでサービス開始からたったの半年で数千万人のユーザーを虜にした。
ジャンルはロボットアクション。
自らがカスタマイズした機体を操って他のプレイヤーと腕を競い、時には協力して自らを高めるゲームだ。 プレイは基本無料だが、膨大な長さの契約書に同意する事と未成年は保護者の同意が必要となる。
たかがゲームに何で同意が必要なんだと両親は首を傾げたが、死ぬほど長い契約書を読み進めていく内に納得した。 どうやらこのゲームは規約違反を行うと凄まじい額の罰金を請求されるのだ。
未成年の場合は問題を起こした子供の親――要は同意した保護者が自動的に責任を取らされるらしい。
その為、嘉成の両親は難色を示したのだ。 罰金として提示された額は信じられない数字だったらしく「他のゲームで我慢しろ」と最初は言われた。
嘉成は何とか頼み込み、決して迷惑をかけないと約束をして同意させる事に成功したのだった。
万が一、罰金を請求されるような事態になれば勉強以外の事にネットワークを使用させないと言われたので嘉成としても気を付けようと心に決める。
昨日までの情報は集め、やってはいけない事は頭にしっかりと入れている。
基本的に外部から干渉するインチキや著しくモラルに欠いた行いをしない限りは大丈夫そうだったので純粋にゲームを楽しめば問題はない。
長い時間を確保できる夏休みになった所で満を持して開始だ。 たっぷり眠って脳もしっかりと休めた。 コンディションも問題なしだ。
全てのハードルをクリアして嘉成はアカウントを作成し、ログインする。
まずはアカウント名の設定だ。 ここは特に捻らずに『ヨシナリ』。
設定を済ませてチュートリアルの開始となる。
嘉成の意識はアバターに注入され、ゲームでの仮初の体――マネキン人形のようなのっぺりとした人型のキャラクターへと宿る。 試しにと手足を動かすと自分の体のようにスムーズに動く。
嘉成――ヨシナリが今いる場所はコックピットだ。 操作レバーやペダルの類はなく制御棒と呼ばれる四本の棒が突き出している。 この機体――トルーパーとカテゴライズされる兵器群はアバターの手の平と足の裏に開いている穴に制御棒を差し込んで起動するので、アニメや漫画で見たような複雑な操作は必要ない。 そうする事によって人機一体となってトルーパーを操れるのだ。
接続を完了するとズシリと機体の重みが全身に伝わる。
同時にヨシナリが操縦する機体の情報が脳裏に展開。
通常骨格、武装はメインに汎用突撃銃とマガジンが三つ。
サブにハンドガンと飛び出し式のナイフ。
マガジンと残弾表示は存在するが、チュートリアルは使用に制限がない。
装甲の類は存在しないので内部機構が剥き出しのナチュラルな状態だ。
あくまで操作を覚える為の練習なので装甲の類は存在しない。
――はは、すっげぇリアル。 マジでVRかよ。
どんなトンデモ技術でここまでリアルに再現しているのかは不明だが、彼が求めていたのはこのリアルさだ。
場所は真っ白い空間で周囲にはビルのような形状の障害物がある。
ヨシナリは機体を動かすと重厚感のある動きで彼の操るトルーパーは一歩を踏み出した。
歩いた時に伝わる衝撃と地面を踏みしめる感覚に感動しつつ、視界の隅に指示が出る。
内容は標的を破壊しろだ。 表示された後、少し離れたビルの上に真っ赤な丸い的が現れる。
周囲が真っ白なだけあって非常に良く目立つ。
ヨシナリは突撃銃の射程を確認しながら接近し、狙いを定める。
FPSゲームでの経験を活かして弾道を意識し、小刻みに連射。
重たい射撃音が響き、巨大な薬莢が突撃銃から排出され放たれた弾丸が僅かに放物線を描いて飛ぶ。
狙いがずれてビルの一部を吹き飛ばすが、的にはしっかりと当たった。
「よし」
結果にヨシナリは内心でグッと手を握った。 ターゲットの破壊に成功した事で次が現れる。
ヨシナリは順番に銃撃して破壊していく。 今までやってきたゲームよりもリアル指向なのか、ロックオンしてからのエイムが遅い。 オフにして手動で狙った方が早いが、命中精度がかなり落ちる。
逆にオンにした状態だと自動で照準を合わせてくれるのでかなり当てやすい。
「うーん。 これちょっとコツを掴むまでかかりそうだなぁ」
止まっている的だとオンにした状態の方がいいかもしれないが、実戦だと切った方が素早く反応出来そうだった。
これはオフの状態でも当てられるように慣れろって事なのだろうか?
オフの状態で三連射。 掠るだけで当たらない。 何度か試してようやく命中する。
「こりゃしばらく練習だな」
そう呟いて次の的へと狙いを付けた。
目を開き上体を起こし、ぐるりと周囲を見回すと机と椅子だけしかない殺風景な部屋が見える。
嘉成は意識を脳の奥へと向け、切っていた立体映像を起動させると殺風景な部屋が即座に装甲を思わせるメタリックな壁紙、宙には戦闘機が現れた。
一見すると凄まじい技術ではあるが、嘉成からすればありふれた代物だ。
この統一国家アメイジアでは十数年前から国民は出生と同時にナノマシン技術を応用した脳内チップを埋め込まれる。 注入されたナノサイズの有機機械は脳内で時間をかけてチップを形成し、それは端末として生活の全てを支えてくれるのだ。
嘉成も例に漏れずその恩恵を受けて生きている。
何せこれさえあれば何があっても困る事はないからだ。
買い物は勿論、スケジュール管理にリアルタイムで体調をモニターしてくれるので異常があれば即座に知らせてくれる。 随分昔――彼の曽祖父の時代では携帯端末を持ち歩かなければならなかったらしいが、彼の世代は手ぶらでない事、要は片手が塞がるような代物は扱い難い、不便と判断されるのだ。
当然ながら通信機能も備えているので学業もネットワーク上の教室でアバターを用いて出席するので、家から出る必要すらない。 実際、彼が最後に外出したのは二か月前だった。
暦は七月の後半。 今日から待ちに待った夏休みだ。
彼はこれから始める事に胸を躍らせていた。 両親に頼み込んで許可を貰った現在の流行を攫った大人気ゲーム『Intrusion Countermeasure:protective wall』略称『ICpw』。
大人気のVRゲームでサービス開始からたったの半年で数千万人のユーザーを虜にした。
ジャンルはロボットアクション。
自らがカスタマイズした機体を操って他のプレイヤーと腕を競い、時には協力して自らを高めるゲームだ。 プレイは基本無料だが、膨大な長さの契約書に同意する事と未成年は保護者の同意が必要となる。
たかがゲームに何で同意が必要なんだと両親は首を傾げたが、死ぬほど長い契約書を読み進めていく内に納得した。 どうやらこのゲームは規約違反を行うと凄まじい額の罰金を請求されるのだ。
未成年の場合は問題を起こした子供の親――要は同意した保護者が自動的に責任を取らされるらしい。
その為、嘉成の両親は難色を示したのだ。 罰金として提示された額は信じられない数字だったらしく「他のゲームで我慢しろ」と最初は言われた。
嘉成は何とか頼み込み、決して迷惑をかけないと約束をして同意させる事に成功したのだった。
万が一、罰金を請求されるような事態になれば勉強以外の事にネットワークを使用させないと言われたので嘉成としても気を付けようと心に決める。
昨日までの情報は集め、やってはいけない事は頭にしっかりと入れている。
基本的に外部から干渉するインチキや著しくモラルに欠いた行いをしない限りは大丈夫そうだったので純粋にゲームを楽しめば問題はない。
長い時間を確保できる夏休みになった所で満を持して開始だ。 たっぷり眠って脳もしっかりと休めた。 コンディションも問題なしだ。
全てのハードルをクリアして嘉成はアカウントを作成し、ログインする。
まずはアカウント名の設定だ。 ここは特に捻らずに『ヨシナリ』。
設定を済ませてチュートリアルの開始となる。
嘉成の意識はアバターに注入され、ゲームでの仮初の体――マネキン人形のようなのっぺりとした人型のキャラクターへと宿る。 試しにと手足を動かすと自分の体のようにスムーズに動く。
嘉成――ヨシナリが今いる場所はコックピットだ。 操作レバーやペダルの類はなく制御棒と呼ばれる四本の棒が突き出している。 この機体――トルーパーとカテゴライズされる兵器群はアバターの手の平と足の裏に開いている穴に制御棒を差し込んで起動するので、アニメや漫画で見たような複雑な操作は必要ない。 そうする事によって人機一体となってトルーパーを操れるのだ。
接続を完了するとズシリと機体の重みが全身に伝わる。
同時にヨシナリが操縦する機体の情報が脳裏に展開。
通常骨格、武装はメインに汎用突撃銃とマガジンが三つ。
サブにハンドガンと飛び出し式のナイフ。
マガジンと残弾表示は存在するが、チュートリアルは使用に制限がない。
装甲の類は存在しないので内部機構が剥き出しのナチュラルな状態だ。
あくまで操作を覚える為の練習なので装甲の類は存在しない。
――はは、すっげぇリアル。 マジでVRかよ。
どんなトンデモ技術でここまでリアルに再現しているのかは不明だが、彼が求めていたのはこのリアルさだ。
場所は真っ白い空間で周囲にはビルのような形状の障害物がある。
ヨシナリは機体を動かすと重厚感のある動きで彼の操るトルーパーは一歩を踏み出した。
歩いた時に伝わる衝撃と地面を踏みしめる感覚に感動しつつ、視界の隅に指示が出る。
内容は標的を破壊しろだ。 表示された後、少し離れたビルの上に真っ赤な丸い的が現れる。
周囲が真っ白なだけあって非常に良く目立つ。
ヨシナリは突撃銃の射程を確認しながら接近し、狙いを定める。
FPSゲームでの経験を活かして弾道を意識し、小刻みに連射。
重たい射撃音が響き、巨大な薬莢が突撃銃から排出され放たれた弾丸が僅かに放物線を描いて飛ぶ。
狙いがずれてビルの一部を吹き飛ばすが、的にはしっかりと当たった。
「よし」
結果にヨシナリは内心でグッと手を握った。 ターゲットの破壊に成功した事で次が現れる。
ヨシナリは順番に銃撃して破壊していく。 今までやってきたゲームよりもリアル指向なのか、ロックオンしてからのエイムが遅い。 オフにして手動で狙った方が早いが、命中精度がかなり落ちる。
逆にオンにした状態だと自動で照準を合わせてくれるのでかなり当てやすい。
「うーん。 これちょっとコツを掴むまでかかりそうだなぁ」
止まっている的だとオンにした状態の方がいいかもしれないが、実戦だと切った方が素早く反応出来そうだった。
これはオフの状態でも当てられるように慣れろって事なのだろうか?
オフの状態で三連射。 掠るだけで当たらない。 何度か試してようやく命中する。
「こりゃしばらく練習だな」
そう呟いて次の的へと狙いを付けた。
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