15 / 36
12周目①
しおりを挟む
……取りあえず東は駄目か。
バスの中へ死に戻った私は比較的ではあるけど冷静に前回起こった事を分析する。
流石に二桁に突入したので慣れもあったけど、光明が見えた事も大きい。
座間を仲間に引き入れるのはかなりのメリットだ。 話もそうだけどバイクという選択肢が増えた。
そして妖怪。 正体不明の怪物に名前が付いた。
本当にそうかは分からないけど類似点も多い事もあって、私の中ではその存在が固まりつつある。
少なくともそうだと分かれば多少は恐怖心を薄れされる効果もあった。
次に考えるのは前回の失敗理由だ。 まずは火車について。
これまでの経験だけど音に寄って来る可能性が高い。 自転車の時は大丈夫だった事を踏まえると傾向としては街中を巡回するように走り回っており、存在を察知した人間に襲いかかる?
バイクと自転車の違いで最も分かり易いのは音だ。 あの派手なエンジン音なら街のどこに居ても聞こえる。 次にハイキングコースまで追いかけて来なかった事を考えると市街地から出られないか、単に縄張りじゃないかのどちらか? ここはまだ不明な部分が多いので過信はできない。
それともう一点。 東のハイキングコースに現れる鎌鼬だ。
あいつらが早々に襲って来た事を考えるとバイクで入るのは危険かもしれない。
襲撃のタイミングが徒歩で入った時よりも明らかに早かった。 間違いなくバイクのエンジン音に反応したと見ていい。 移動手段としては便利だけど、音で引き寄せてしまう欠点があるので考える必要がある。
一時的な退避場所とバイクの鍵の在処も分かっている上、ある程度の事情も聞いているので余計な手間は省略できるのも大きい。 取りあえず、さっさと座間を仲間にして対策を練らないと……。
私は座間への説明内容を脳裏で纏めながらバスの到着を待った。
「――おい! いきなりなんだってんだ!」
私は下りてきた座間の腕を掴んでそのまま引っ張っている最中だ。
碌に説明もせずに来てと強引に連れ出したのでこの反応は当然だろうけど、余計な手間を省きたい私はそのまま説明を始める事にした。
「いいから聞いて。 この後、座間の思っている通りの事が起こる」
強引に私の手を振り解こうとしていた座間の動きが止まる。
「……どういう事だ? お前、何を知ってる?」
私は座間に前回と同じ話をすると例によって疑わしいといった表情を浮かべていた。
「ほー、だったらお前はゲームみたいに死んだらスタート地点に戻されてるって訳か?」
「そうよ。 もういい加減、このクソみたいな街にはうんざり、早く出たいから座間にも協力して欲しいの?」
「なんで俺なんだ? 協力を頼めそうな奴なら他に――まさかとは思うがこの件も前にやったのか?」
「この街に来たのはバイトの為でしょ? そうでなければサボっていた。 違う?」
「……なるほど。 その話は前の俺に聞いたって所か?」
頷いて見せると座間は沈黙した。
「まぁいい。 取りあえずコンビニまでの道すがら話を聞くとするか。 それで? 前の俺は他に何を喋ったんだ?」
「この街の曰くと妖怪について」
聞いた事の証明の為に座間に聞かされた話をざっくりと要約して話す。
この街の前身となる集落から続く、神隠しの伝説や今も失踪者が多い事。 私を襲った怪物の特徴から妖怪ではないかといった事。
「ははぁ、確かに周回してるって話はマジっぽいな。 調べて分からなくはないがお前がここに興味もつとは思えない。 ――了解だ。 信じるよ」
「話が早くて助かるわ」
そうこうしている内にコンビニに到着。 私が誰もいないから取り放題だと伝えると座間は躊躇なく品物を鞄に放り込む。
「それにしてもどうなってるんだこの街は? 人はいない癖に電気も物も揃ってる」
「何軒かの家に入ったけど場所によっては食事の準備がそのままだった場所もあったわ」
バイクの鍵を探している最中に見かけたのだけど、本当に特定のタイミングで人間だけが消えた感じだった。 ただ、街の人間が丸ごと消えて騒ぎにならない訳がないので、本当の意味で消えたのは私達だけだという事は何となく察している。
「荷物を纏めたら移動しましょう。 話は手か足を動かしながらで」
「ここに引き籠るのは――駄目そうだな」
「兒玉の連れて来た訳の分からない奴に頭を叩き割られたくないならついて来た方がいいよ」
「マジかよ。 ってか、アイツそんな事やってたのか。 いや、これからやるのか」
今思い出しただけでもイライラする。 冷静に考えればどちらにせよ時間の問題であった事は分かるけど、実際に連れて来た事実があって私の頭が叩き割れた結果が存在するので兒玉に対してはかなり苛立っていた。 一通りの物色を終えるとコンビニを後にして前回、利用したマンションへ向かう。
「で? これからどうするんだ?」
「ひとまずだけど前に使ったマンションに行く。 今は足音を抑えて付いて来てくれればいいから」
「具体的な話はそのマンションに着いてからってか? このタイミングで話さないのは?」
「街には火車がいる。 多分だけど音に寄って来るからできれば話は落ち着ける場所でしたいから」
「……火車ときたか。 それマジな話か?」
「嘘だと思うなら商店街辺りを叫びながら走ってみたら? 多分、気付かれたら早々に轢き殺されと思うけど」
「は、マジかよ……ってか俺、さっきからおんなじ事ばっかり言ってんな」
確かにさっきからマジかよしかいってない。
道は覚えている上、火車に襲われない事も把握できているのでそこまで警戒しなくていい。
ただ、その過程で結構な回数死んでいる事を思えば素直に喜べないけど……。
不安そうにしている座間を引き連れたままマンションへ。
部屋も前回と同じ場所を使用。 荷物を置いて座間はソファ、私は椅子へ腰を下ろす。
「取りあえずだけど今までの経緯を簡単にだけど話す。 できるだけ落ち着いて聞いて」
落ち着いた所で話を切り出す。 座間はどうぞと聞く姿勢を取ったので、私はこれまでの経緯をかいつまんで話す。 座間に対しては二回目なので前回よりはスムーズに話せたと思う。
取りあえず死んで戻っている経緯とどこで死んだか、最後には前回に座間と組んで脱出を図って失敗した所で締めた。
座間は聞き終わった後、マジかよと溜息を吐いて俯く。
「質問あるなら受け付けるけど?」
「取りあえず前回、どうしくじったのかを詳しく聞かせてくれ」
バスの中へ死に戻った私は比較的ではあるけど冷静に前回起こった事を分析する。
流石に二桁に突入したので慣れもあったけど、光明が見えた事も大きい。
座間を仲間に引き入れるのはかなりのメリットだ。 話もそうだけどバイクという選択肢が増えた。
そして妖怪。 正体不明の怪物に名前が付いた。
本当にそうかは分からないけど類似点も多い事もあって、私の中ではその存在が固まりつつある。
少なくともそうだと分かれば多少は恐怖心を薄れされる効果もあった。
次に考えるのは前回の失敗理由だ。 まずは火車について。
これまでの経験だけど音に寄って来る可能性が高い。 自転車の時は大丈夫だった事を踏まえると傾向としては街中を巡回するように走り回っており、存在を察知した人間に襲いかかる?
バイクと自転車の違いで最も分かり易いのは音だ。 あの派手なエンジン音なら街のどこに居ても聞こえる。 次にハイキングコースまで追いかけて来なかった事を考えると市街地から出られないか、単に縄張りじゃないかのどちらか? ここはまだ不明な部分が多いので過信はできない。
それともう一点。 東のハイキングコースに現れる鎌鼬だ。
あいつらが早々に襲って来た事を考えるとバイクで入るのは危険かもしれない。
襲撃のタイミングが徒歩で入った時よりも明らかに早かった。 間違いなくバイクのエンジン音に反応したと見ていい。 移動手段としては便利だけど、音で引き寄せてしまう欠点があるので考える必要がある。
一時的な退避場所とバイクの鍵の在処も分かっている上、ある程度の事情も聞いているので余計な手間は省略できるのも大きい。 取りあえず、さっさと座間を仲間にして対策を練らないと……。
私は座間への説明内容を脳裏で纏めながらバスの到着を待った。
「――おい! いきなりなんだってんだ!」
私は下りてきた座間の腕を掴んでそのまま引っ張っている最中だ。
碌に説明もせずに来てと強引に連れ出したのでこの反応は当然だろうけど、余計な手間を省きたい私はそのまま説明を始める事にした。
「いいから聞いて。 この後、座間の思っている通りの事が起こる」
強引に私の手を振り解こうとしていた座間の動きが止まる。
「……どういう事だ? お前、何を知ってる?」
私は座間に前回と同じ話をすると例によって疑わしいといった表情を浮かべていた。
「ほー、だったらお前はゲームみたいに死んだらスタート地点に戻されてるって訳か?」
「そうよ。 もういい加減、このクソみたいな街にはうんざり、早く出たいから座間にも協力して欲しいの?」
「なんで俺なんだ? 協力を頼めそうな奴なら他に――まさかとは思うがこの件も前にやったのか?」
「この街に来たのはバイトの為でしょ? そうでなければサボっていた。 違う?」
「……なるほど。 その話は前の俺に聞いたって所か?」
頷いて見せると座間は沈黙した。
「まぁいい。 取りあえずコンビニまでの道すがら話を聞くとするか。 それで? 前の俺は他に何を喋ったんだ?」
「この街の曰くと妖怪について」
聞いた事の証明の為に座間に聞かされた話をざっくりと要約して話す。
この街の前身となる集落から続く、神隠しの伝説や今も失踪者が多い事。 私を襲った怪物の特徴から妖怪ではないかといった事。
「ははぁ、確かに周回してるって話はマジっぽいな。 調べて分からなくはないがお前がここに興味もつとは思えない。 ――了解だ。 信じるよ」
「話が早くて助かるわ」
そうこうしている内にコンビニに到着。 私が誰もいないから取り放題だと伝えると座間は躊躇なく品物を鞄に放り込む。
「それにしてもどうなってるんだこの街は? 人はいない癖に電気も物も揃ってる」
「何軒かの家に入ったけど場所によっては食事の準備がそのままだった場所もあったわ」
バイクの鍵を探している最中に見かけたのだけど、本当に特定のタイミングで人間だけが消えた感じだった。 ただ、街の人間が丸ごと消えて騒ぎにならない訳がないので、本当の意味で消えたのは私達だけだという事は何となく察している。
「荷物を纏めたら移動しましょう。 話は手か足を動かしながらで」
「ここに引き籠るのは――駄目そうだな」
「兒玉の連れて来た訳の分からない奴に頭を叩き割られたくないならついて来た方がいいよ」
「マジかよ。 ってか、アイツそんな事やってたのか。 いや、これからやるのか」
今思い出しただけでもイライラする。 冷静に考えればどちらにせよ時間の問題であった事は分かるけど、実際に連れて来た事実があって私の頭が叩き割れた結果が存在するので兒玉に対してはかなり苛立っていた。 一通りの物色を終えるとコンビニを後にして前回、利用したマンションへ向かう。
「で? これからどうするんだ?」
「ひとまずだけど前に使ったマンションに行く。 今は足音を抑えて付いて来てくれればいいから」
「具体的な話はそのマンションに着いてからってか? このタイミングで話さないのは?」
「街には火車がいる。 多分だけど音に寄って来るからできれば話は落ち着ける場所でしたいから」
「……火車ときたか。 それマジな話か?」
「嘘だと思うなら商店街辺りを叫びながら走ってみたら? 多分、気付かれたら早々に轢き殺されと思うけど」
「は、マジかよ……ってか俺、さっきからおんなじ事ばっかり言ってんな」
確かにさっきからマジかよしかいってない。
道は覚えている上、火車に襲われない事も把握できているのでそこまで警戒しなくていい。
ただ、その過程で結構な回数死んでいる事を思えば素直に喜べないけど……。
不安そうにしている座間を引き連れたままマンションへ。
部屋も前回と同じ場所を使用。 荷物を置いて座間はソファ、私は椅子へ腰を下ろす。
「取りあえずだけど今までの経緯を簡単にだけど話す。 できるだけ落ち着いて聞いて」
落ち着いた所で話を切り出す。 座間はどうぞと聞く姿勢を取ったので、私はこれまでの経緯をかいつまんで話す。 座間に対しては二回目なので前回よりはスムーズに話せたと思う。
取りあえず死んで戻っている経緯とどこで死んだか、最後には前回に座間と組んで脱出を図って失敗した所で締めた。
座間は聞き終わった後、マジかよと溜息を吐いて俯く。
「質問あるなら受け付けるけど?」
「取りあえず前回、どうしくじったのかを詳しく聞かせてくれ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる