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11.くはははは、お前に力を授けよう!

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 くはははは、お前にこの世界の半分と強大な力を授けよう。
 もしそんな風に言われたら、私は絶対に断るだろう。だって、厄介すぎる。
 でも、聖女の力だったら話は別だ。


「……では、もう一度確認します。クロム様、あなたはご自身の聖女としての力を、この何の変哲もない一般人に継承してしまったのですね?」

 クロム様に聖女の力が無いことが判明した私達は、一時祈りを中断。情報の再確認を行っていた。
 あと何の変哲の無い一般人は余計だ。

「ええ、正確には加護を与えたのですけど」
「そうですか……」

 フリードそう言って、呆然と空を見上げた。完全に心が死んでいる。
 気持ちは分からないでもない。私も彼の立場だったら、そこの柱で頭をぶつけているだろうから。

 よりにもよって一般市民。
 そんなどこにでもいる存在に、聖女の加護を全振りするなんて、ヤギに札束食べさせているようなもんだろう。いや、ヤギの方がまだ今後の活躍の場があるかもしれない。

「しかし、いつの間に私にそんな力が」

 聖女の力が宿った感じはしない。
 試しに手を握ったり開いたりしてみるけれど、力の熱を感じるとか、右目がうずくとか、特に変わった兆候は見当たらなかった。

「私が瓦礫に埋まって、もう死にそうって時ですね」
「あー……あの時か」

 なんとなく覚えている。確かにあの時、彼女はうわごとのように聖女の加護がどうとか言っていたっけ。
 あんな言葉、あの手の場面で使う常套句だと思っていたから全然眼中になかった。普通思わないでしょ、あの一言で聖女の力が与えられるとか。その辺に聖女ってジャンルの人間が転がっているとも思えないし。

「まさかそんなタイミングでとは……くっ、あの時デレイがいなかったり、ニコロが暴走したり、レディアルがちゃんと仕事すればこんな事態は防げたはずなのに、そんな馬鹿なことが……ぶつぶつ……」

 可哀想に。後悔してるなぁ、彼。
 あともう一歩救助が早ければ、こんな事にならなかったもんね。

「どんまい」
「うるさい!」

 残念。聖女の力だけ持っていても、優しくはしてくれないらしい。

 あっそうだ、ついでにこれも聞いておこう。

「ちなみにですけど」
「なんでしょう?」
「私に与えられた加護。これってどんな力があるんです?」

 もしかしたらこれを機に私にも、彼女に代わる凄い力が備わった可能性がある。土地を浄化させるとか、他人の怪我を治してしまうとか。
 よーし、夢が膨らんできたぞ。さあさあ、偉大なる特別な力よ……来い!

「うーん……。病気にかかりにくくなったり……する、かな?」
「病気にかかりにくくなったり、ですか」

 それじゃちょっとインパクト弱いな。語尾にも疑問符付いてたし。
 元の世界じゃ無欠席の健康優良児だったし、もう一つくらい何かないかな。

「ほ、他には?」
「え? えーっと……美味しいものを食べて幸せな気持ちになれる……とか」
「それって」

 それって、別に加護に限った話じゃないような。
 美味しいものを食べて幸せになれるのは、万人の共通事項だ。たぶん。

 これが一般市民の限界なのか?

 いやいや、私はまだ諦めないぞ。
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