28 / 29
28.一難さらずにまた一難
しおりを挟むこちらをご覧いただこう。
「ルドルフさんがエレナさんと一緒にいたのは、フィーネさんに面影を感じていたからなのね」
その一。私がルドルフと一緒にいた理由を曲解し、明らかな勘違いをする少女達。
「エレナさんっ! 私達似てるんですよ」
その二。私と似てるという外部からの評価により、大喜びではしゃぐフィーネ。
「……」
その三。妹が喜んでいる故に、否定しきれず沈黙してしまうルドルフ。
お分かりいただけただろうか。
三者三様どれを取っても正しい反応がどこにも無い。
私がフィーネに重なるなんてあり得ないのに。
フィーネのようだと持て囃された私は、教室の隅で居心地の悪さに身じろぎするしかなかった。
誰か早くこの状況を否定してくれ。
けれど、私の願いも虚しく事態はどんどん悪化していく。
「じゃあルドルフさんがダンスのペアに選ぶのは」
「やっぱりエレナさんじゃないかしら」
「そうね、きっとそうだわ」
いや、まず碌に踊ることすら出来ないんだってば。
「あの。違……」
「そうですよね、エレナさん!」
少女達は勢いよくこちらに振り向いた。
さながらフィーネを彷彿とさせる期待のこもった熱い眼差し。どうしてこう、少女達は皆、人の話を聞かないのだろう。君たち、ついさっきまでルドルフとペアになりたかったんじゃなかったのか……。
「ねえ」
「?」
「ル、ルドルフとペアにならなくていいの?」
私が恐る恐る訊ねると、少女達は次々に力強く頷いた。
「そういう理由なら私達の出る幕はありません。身をひいてお二人を応援します。ね、皆さん」
「ええ」
「そうね」
なんて凛々しい意見……じゃなくて、身をひかなくていいから。頼むからこっち側に戻ってきて欲しい。じゃないと、このまま私は意図せずルドルフとペアを組むことになってしまう。
「ねえルドルフ、早く拒否しなさいよ」
小声で彼に促した。
「無理だね」
ルドルフは自嘲気味に笑う。
「今ここで彼女達の言葉を否定することは、フィーネの喜びを否定することになる」
「それは分かってるけど」
じゃあこのまま、私とペアになってもいいのか。フィーネ以外の人間と。そんなの絶対嫌だろうに。
「っ」
私が頭を悩ませたその時だった。
「ちょっといい?」
一人の男が声をかける。軽やかな印象を与える男の声。
「レオン?」
それは学園の理事長の息子、レオン・ウェールズの声だった。両脇には彼を慕う取り巻きも何人か連れている。
「何の用」
「ちょっとお願いがあって」
彼が私に頼み事なんて珍しい。
「内容は」
「夜光祭、俺とペアを組まない?」
「……はい?」
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います


[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。



悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる