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28.一難さらずにまた一難
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「ルドルフさんがエレナさんと一緒にいたのは、フィーネさんに面影を感じていたからなのね」
その一。私がルドルフと一緒にいた理由を曲解し、明らかな勘違いをする少女達。
「エレナさんっ! 私達似てるんですよ」
その二。私と似てるという外部からの評価により、大喜びではしゃぐフィーネ。
「……」
その三。妹が喜んでいる故に、否定しきれず沈黙してしまうルドルフ。
お分かりいただけただろうか。
三者三様どれを取っても正しい反応がどこにも無い。
私がフィーネに重なるなんてあり得ないのに。
フィーネのようだと持て囃された私は、教室の隅で居心地の悪さに身じろぎするしかなかった。
誰か早くこの状況を否定してくれ。
けれど、私の願いも虚しく事態はどんどん悪化していく。
「じゃあルドルフさんがダンスのペアに選ぶのは」
「やっぱりエレナさんじゃないかしら」
「そうね、きっとそうだわ」
いや、まず碌に踊ることすら出来ないんだってば。
「あの。違……」
「そうですよね、エレナさん!」
少女達は勢いよくこちらに振り向いた。
さながらフィーネを彷彿とさせる期待のこもった熱い眼差し。どうしてこう、少女達は皆、人の話を聞かないのだろう。君たち、ついさっきまでルドルフとペアになりたかったんじゃなかったのか……。
「ねえ」
「?」
「ル、ルドルフとペアにならなくていいの?」
私が恐る恐る訊ねると、少女達は次々に力強く頷いた。
「そういう理由なら私達の出る幕はありません。身をひいてお二人を応援します。ね、皆さん」
「ええ」
「そうね」
なんて凛々しい意見……じゃなくて、身をひかなくていいから。頼むからこっち側に戻ってきて欲しい。じゃないと、このまま私は意図せずルドルフとペアを組むことになってしまう。
「ねえルドルフ、早く拒否しなさいよ」
小声で彼に促した。
「無理だね」
ルドルフは自嘲気味に笑う。
「今ここで彼女達の言葉を否定することは、フィーネの喜びを否定することになる」
「それは分かってるけど」
じゃあこのまま、私とペアになってもいいのか。フィーネ以外の人間と。そんなの絶対嫌だろうに。
「っ」
私が頭を悩ませたその時だった。
「ちょっといい?」
一人の男が声をかける。軽やかな印象を与える男の声。
「レオン?」
それは学園の理事長の息子、レオン・ウェールズの声だった。両脇には彼を慕う取り巻きも何人か連れている。
「何の用」
「ちょっとお願いがあって」
彼が私に頼み事なんて珍しい。
「内容は」
「夜光祭、俺とペアを組まない?」
「……はい?」
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