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26.フラグはすぐ折る

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「それじゃ、そろそろ教室に戻ろうか」
「ええ、そうね」

 私達は飼育小屋を後にして、自分のクラスへと戻ろうとしていた。

「そういえば」
「ん? なんだい」
 
 私が廊下で立ち止まると、ルドルフが首を傾げてこちらを振り返る。

「貴方、クラスメイトの女子達に囲まれてなかった?」

 私はふと思い出したように質問をした。
 すると彼は何食わぬ顔で答える。

「ああ、そうだったね」
「そうだったねって……」

 私は呆れた様子で溜息をついた。

「あれ、ダンスのお誘いでしょ? どうやって逃げてきたの」
「逃げたなんて人聞きが悪いな。僕はただ、会いたい人がいるからって言って抜けただけだよ」
「その会いたい人って」
「勿論フィーネさ」

 そう言ってルドルフは前方を見つめた。肝心のフィーネは浮かれたようにスキップをしながら前を歩いている。

「うん、いつ見ても僕の妹は可愛い」
「はあ……可哀想ね」
「可哀想? 誰が?」
「貴方を慕ってる女子達。だってダンスでペアになりたいほど憧れの男性が、実はとんでもないシスコンなのよ」

 私がそう言うと、ルドルフは考え込むように顎に手を当てた。そして一言。

「エレナ、それは間違ってる。実はじゃない。裏も表も無く僕はフィーネのことを愛している」
「……私が言いたいのはそこじゃ無いんだけど。はあ、呆れて言葉も出ないわ」
「お褒めに預かり光栄だ」

 褒めてないって。
 そんなやり取りを繰り返すうちに、私達は教室に辿り着いた。私はいつも通り扉を開けると、ちょうどそこに教室を出ようとする少女達の集団が待ち構えていた。

「やっぱりルドルフさんともう一度お話をするべきじゃない?」
「そうね、それにしても会いたい人って一体誰かしら」
「先生って感じでもな……あら?」

 そこで彼女達がこちらに気付いたのか、その表情は驚きに変わる。

「ルドルフさん……と、エレナさん」
「どうして二人……?」
 
 二人? 実際には三人だ。しかし当然ながら、彼女達に幽霊であるフィーネの姿が見えるはずはない。それどころか、私とルドルフ以外の誰にも見えていないのだ。だからこれは側から見たら、実質二人きりの状況だと言っていいだろう。

「まさか、ルドルフさんの言っていた会いたい人って」
 
 少女達が顔を見合わせる。そして何かを理解したように深く頷いた。

「つまりお二人はそういう関係で……」
「ルドルフさんは、エレナさんを誘いに行ったんですね」

 視線が一点に注がれる。
 だがしかし、それは誤解だ。

「あ、えっと」
「全く違うね」

 私が答えるよりも早く、ルドルフはハッキリと言い切った。清々するほどの言い切りっぷりだ。

「僕の会いたい人なんてフィーネに決まっているじゃないか」
「ちょっ……」

 この馬鹿。誰がフィーネの名前を出して信じるというのか。そんなの頭がおかしい人だと思われるに決まってる。

「フィーネ、さん?」

 思ったとおり、少女達はぽかんとしていた。
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