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22.強火なオタク発言
しおりを挟むなんやかやと大騒ぎだった一日も終わって今は放課後。
学園の片隅にある飼育小屋、ウサギ達がぴょこぴょこ跳ねるその横で、私は再びこの美少女にお説教されていた。
「もう、絶対にあんな危険なことしないで下さいね……」
顔を覆って泣いている様子のフィーネ。
こんな美少女にそんな仕草で責められたら、男子生徒じゃなくても心が痛む。
「相手を助けるためとはいえ、エレナさんが怪我をしたらどうにもならないじゃないですか。私はエレナさんのことが大好きです。でも一緒に幽霊になって欲しいとは思っていませんよ」
「……ごめんなさい」
驚くくらい反論の余地はない。
私は静かに頭を下げた。
「次からは気をつけます」
「駄目です!」
「えっ」
突然、フィーネからの真っ向否定。泣いてたんじゃなかったのだろうか。
驚いて私は顔を上げた。
「駄目、なの?」
「はい!」
フィーネははっきりと頷いた。
「エレナさんは『次から』すらあっちゃいけません!」
「次から、すら?」
どういう事だろう。また同じようなことが起こった時に、防衛魔法で対処出来ればいいって話じゃないのだろうか。
「むむむ、分かっていないようですね」
フィーネが眉間に皺を寄せて私の顔をじっと見る。それからピンと人差し指を立てた。そして一言。
「つまりですね、エレナさんはあのような場面で、身を犠牲にして助けに行ってはいけないのです」
「……なんでよ」
あんな危ない状況、咄嗟に守りたくなるだろうに。
「それはヒーローの役目だからです」
「ヒーロー」
ヒーローって正義の味方とか主人公とかいうあれだろうか。
「しかしエレナさんは違います」
「私はなんだっていうの?」
「ヒロインです」
「ヒロっ……」
いやいやいや、それはどうだろう。
「突如爆発する薬品。吹き飛ばされるレオンさん。それを見て青ざめるエレナさん。教室にはエレナさんの美しくて甲高い声だけが響くのだった。完!」
「完って」
「これでいいんです」
「よくないでしょ。大体それじゃレオンは死んでるし」
「自業自得ですね」
「こら!」
生前私が見てきたフィーネってのは、もっとこうお淑やかで柔和で万人に対して慈悲深い、天使のような子だと思っていたんだけど、いつからこんな強火のオタクみたいな発言をする子になったんだろう。
「それは容認出来ません」
「えーなんでですか。いいじゃないですか、エレナさんの
身の安全が第一ですよ」
「寝覚め悪すぎでしょ」
「そうかなぁ……」
そうだろう。
この後私がフィーネを理解させるのに、小一時間ほど要したのであった。
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