上 下
15 / 29

15.一位宣言

しおりを挟む
 
 銀杏並木を三人で歩く。
 仲直りをした私とフィーネ、そしてルドルフは自宅への帰路についていた。

「それにしても、レオンに変な風に思われちゃったわね」

 用事があるからと先抜けしたレオンを思い出し、深くため息が漏れる。
 教室での謎の懺悔。やはりどう考えても、彼にとっては違和感だっただろう。

「まあ、なんとかなるんじゃないかな?」

 能天気に答えたのはルドルフだった。

「どこから来るのよ、その自信」

 なんとなくだったらただじゃ済まさない。
 私は鋭くルドルフを睨んだ。

「テストの順位がどうとかいう話だろ? じゃあ僕も少しは関係がある」
「どの辺が?」
「エレナさん」
「何?」

 耳打ちしたのはフィーネだった。
 ちょっと気取った感じの兄を上目遣いで見ながら、再び話を続けた。

「あのテスト、お兄様が一位ですよ」
「え?」

 一位? ルドルフが?

「嘘でしょ?」
「本当です。どうして一緒に掲示板見てたのに覚えてないんですか」
「いや、だって、ねぇ?」

 自分が二位という怒りのあまり、その辺はもう眼中になかったというか。

「まあその話は一旦置いておくとして」

 私にはもう一つ、決定的に納得いかない点があった。

「ルドルフって普段、そんなに勉強出来るタイプじゃなかったわよね?」

 テストは今回に限らない。過去にいくらでもあった。けれど、フィーネの名前は見ることがあっても、ルドルフが一位はおろか上位に食い込んだ時なんて見たことも無かった。
 それが突然一位になることなんてありえるだろうか。

「ああそれ」

 ルドルフはぽんと手を叩いた。

「フィーネを一位に輝かせるためなら、自分は引き立て役になって当然だろ?」
「じゃあまさか」
「うん。敢えてその辺の成績に甘んじた」
「ちなみに私が一位だったのも、お兄様に教えて貰っていたからなんですよ?」
「それは違うよ。フィーネの努力の成果さ」
「なっ……」

 じゃあ私は二位ではなく、実質三位?
 翻弄されていたのか、この兄妹に。

「……許せないわね」
「許せない? 僕に勉強を教わっていたフィーネがかい?」
「違う」

 それは私の目でも確認した通り、彼女自身の努力の成果だ。私が言いたいのはそこじゃない。

「私が許せないのは、一位になれる実力を持っていながら、ずっと手を抜いていた貴方よ。ルドルフ」
「なるほど」

 彼は澄ました笑みを浮かべた。悪いと思ってないな、こいつ。

「決めた」
「ん?」
「私、意地でも一位になるわ」
「!」

 フィーネが嬉しそうな顔を浮かべた気がした。でも今はどうだっていい。

「一位になって、貴方が間違っているってこと証明してあげる!」
「まあ、頑張りなよ」

 陽が沈みかける夕暮れ時、私は声高らかに宣言したのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

追放済みの悪役令嬢に何故か元婚約者が求婚してきた。

見丘ユタ
恋愛
某有名乙女ゲームの悪役令嬢、イザベラに転生した主人公は、断罪イベントも終わり追放先で慎ましく暮らしていた。 そこへ元婚約者、クロードがやって来てイザベラに求婚したのだった。

処理中です...