124 / 154
124.年下というだけで可愛がられるはずがない。
しおりを挟む「これがフェリクスに繋がってるんだな」
「そういう事です」
先輩がぱちんと指を弾くと、今度はその光が霧のように消えた。いいな、その魔法カッコいい。
「ちょっとそれ貸して下さい」
私は先輩から誓約書を拝借した。先輩の魔法効果が切れた誓約書は、こうして見るとやっぱりただの紙切れだ。
「ところで、どうしてフェリクス様が犯人って事前に分かってたんですか」
誓約書はここにあるのに。
先輩の魔法を使って犯人が判明するなら、そのタイミングは今じゃなきゃおかしい。
先輩は間髪入れずに答えた。
「誓約書は二枚あります」
「二枚?」
なんで二枚も。私がそんな疑問を投げかけるまでも無く、その答えはすぐさま提示された。
「一つはここに。そしてもう一つはハスター様のお屋敷に。誓約を結ぶ際の常識ですよね……って、もしかしてそちらもお忘れですか」
「お忘れですね」
「……」
わー、もう、そんな目で見つめられると困っちゃうなぁ、私のメンタル的に。人間的価値がぐんぐん下がっていくのを感じるぞぉ。
「記憶力以前の問題だろお前」
「さすがにすみません」
レイズ様からも本気のダメ出しをされた。
「とにかく。あの日の夜、貴女に会って『違和感』が間違いなく貴女では無いことを確認した私は、急ぎハスター様の元に戻り誓約書を確認しました」
ああ、だからあの日の夜、フェリクス様がどうとか言ってたのか。
「で、フェリクスの奴は認めたのか? 自分が犯人だって」
「それは……」
そうだ、奴の事だからあっさりとは認めなかったんだろう。こうまたあの手この手汚い手を使って周囲を混乱させたに違いない。
「認めました」
「へ? 認めた?」
あいつが? あのクソガキお坊ちゃま様が? ……そうか、相手はシュタイン先輩だもんね。私とはわけが違うか。だとしても、被害者が一人や二人出たに違いない。
「フェリクス様はあっさりと認めましたよ。自分が犯人だ、と」
「あっさり、認めた……?」
ちょっと何言ってるか分からないな。自らこんな魔法を仕掛けておいて、ばれたらあっさり罪を認める。そんなのらしくないじゃん、フェリクス様よ。
「先輩」
「なんでしょう」
「でも、でも何かあるでしょう? そのタイミングで屋敷に猛獣が解き放たれたとか、フェリクス様が十人に分身して追いかけっこが始まったとか、屋敷の皆さんが一斉に集団幻覚を見始めたとか」
奴の引き起こすトラブルがそんなぬるい終わり方をするわけがない。
「はっ! さてはシュタイン先輩、フェリクス様に洗脳されてますね?」
「されていません」
ばっさりと切り捨てられた。
「じゃあ、じゃあ……」
あとはなんだ、何がある?
「フェリクス様は正直に認めましたよ」
待って止めて、そんなわけな……
「ルセリナさん、貴女が居なくて寂しくて、つい貴女のよく使っていた『偽装魔法』を使ってしまったんだ、とね」
「は?」
「そういう事です」
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。


子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる