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122.過去の男の記憶は頭の中からどころかこの世から消したい
しおりを挟む一瞬にして場が凍る。レイズ様もベルさんもシュタイン先輩も何も言わない。無言で私を見つめている。
そうか、そういう事なのか。被害者だと思っていた自分が、実は犯人だったのか。そんなミステリー小説みたいなオチ、誰が予想出来ただろう。少なくとも犯人である私は予想出来なかったよ。
これからどうする? とりあえず今は犯人らしく悪い笑みでも浮かべとくか? こう威圧感たっぷりに。
「ぐふふふふ。よくぞ気が付きましたね。そう、私こそが犯人で……」
「何馬鹿なこと言ってるんですか」
「あれ?」
シュタイン先輩に一言でばっさりと切り捨てられてしまった。馬鹿なこと? 折角みんなの空気を読んで悪役っぽい感じで振る舞ったのに。カッコいいポーズまで決めたのに。私、何か間違えてましたか?
「そ、それは……どういう事でしょう?」
私はそっと厨二病感満載の、片手で意味ありげに顔面を覆うポーズを解除して先輩に聞いた。わー、先輩の表情が全然変わってない。本心読めない。
「誰が貴女が犯人だなんて言ったんですか。私はただ『偽装魔法』が使われていると言っただけです」
そりゃあそうだけど。
「でも『偽装魔法』が使えるって言ったら私ぐらいなんじゃ」
「何故そんな風に思うんです。貴女くらいが使える魔法なら、他の人だって使えるはずでしょう?」
「私くらいって」
私の顔を見ると、シュタイン先輩は呆れたようにため息をついた。
「いいですか、これはルセリナさんの魔法じゃありません。フェリクス様の魔法です」
「ふぇり、くす、さま?」
私の聞き間違いだろうか。今、先輩、フェリクス様って言った? もしかしてフェリクス様ってあれ、あの私の大嫌いなクソガキ様か……?
それが何かの聞き間違いであることを切に願い、私は先輩を見つめ、それからレイズ様を見つめた。聞き間違い、なんだよね?
「なんで身に覚えがないみたいな顔してるんだよ。『あの』フェリクスだろうが。俺の弟の」
「はい、レイズ様の仰る通り、そのフェリクス様です」
「忘れてやるなよ。好かれてる癖に」
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「なんだ」
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「はあっ?」
私は本気だ。
「さて」
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「貴女が屋敷を出て行った後、私はある一つの異変に気が付いたのです」
「異変?」
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そう言うと、シュタイン先輩は私の手から例の誓約書を抜き取った。
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