うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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112.悪者達の美学

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 この物語のオチに私は薄々気付いてしまった。
 
「えっとつまり」

 いやー答えたくないな。
 そんな風に思っても、答え合わせの時間はやってくる。
 うっすら冷や汗をかきながら、恐る恐る私はその答えを口にした。

「魔法を解けるかどうかを賭けていて、結局解く前に私が解決しちゃったのなら、それは『解けなかった』ってことになるの……かなぁ」

 つまりこの賭け、魔法を『解けなかった』レイズ様の負けである。

「そういう事」

 嬉しくないけど大正解。

「賭けに勝利した私は、その対価に彼のこの街での財産権を貰ったの」
「財産権ですか」

 強そうな権力出てきたな。

「要は財産を所有する権利。彼の手にする財産は、自動的に全て私の物になる」
「ひぇ」

 何その全自動財産没収システム。財産の四次元ポケットじゃないか。未来の猫型ロボットでも出してこないぞ、そんなゲスい道具。

「ちょっと賭けの報酬として大きすぎやしないですか?」
「そんな事無いわ。私が貰えたのは彼がこれまでにこの街で所有していた財産だけ」

 っていっても相当の額だろ。

「今後一切、彼はこの街で財産を手にしないそうだから、これ以上私は何も手に入らないわ」
「いや、半永久的に搾取するつもりでいたんですか」

 賭けの代償が大きすぎる。私より悪人だなこの人……というか。

「だからレイズ様は私に買い物を命じたんですね。お金持てないから」

 仮にベルさんからお金貰っても、彼女の手元に渡るだけだもんね。ようやく最初の会話に戻ってきた気がする。

「そういう事」
「ははは、なるほど。そうですか、そーですか……」

 レイズ様は賭けに負けた。魔法を解けなかった。解く前に、私が全てを終了させてしまったから。
 私は決して悪くない。悪くはないんだけどさぁ。

「レイズ様」
「……なんだよ」
「なんで最初からそう言ってくれなかったんですか」

 言ってくれれば大人しく買い物でも何でもしたのに。
 
「結局、分かったんだからいいだろ」
「よくないですよ」

 いいわけあるか。

「別に俺が勝手にやったことだ、お前には関係無いこ……」
「あーはいはいはいはい、いいんです、そういうのほんっっっといいんです!」

 テンプレ文章を跳ね除けて、私は言葉を遮った。
 不機嫌な表情のレイズ様に向けて、私はその目を見つめ返す。

「人知れず報われないけどそれでよかった? そんな訳ないでしょう? 私が欲しいのは、ざまぁ最強勝ち組人生なんですよ!」

 喜劇は呼んでも悲劇はお呼びじゃないのよ。

「大体ここにいるのはレイズ様と私ですからね。どうせ酷い結末迎えるなら、私達らしく最低な方の結末にしましょうよ!」
「私達らしくってお前と一緒にす……」

「私はそれが嫌いじゃないです」

「……っ」
「どうするの、レイズ。告白受けてるよ?」

 告白じゃないけどね。

「……何かあるんだな?」
「レイズ様が受けて入れてくれるなら」

 その目を見て私は答えた。
 あれ、本当に告白みたいに聞こえるな。

「そうか分かった」

 レイズ様は小さく一つ頷いた。
 そして一言。

「ルセリナ…………やれ」
「了解致しました、ご主人様」 

 丁寧にお辞儀を済ませると、私は大きく手を挙げた。
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