110 / 154
110.天国か地獄か
しおりを挟むレイズ様の言葉を受けて素直に喜びハッピーエンド……と、そうはいかないのがこの物語とルセリナさんである。
「レイズ様が私を救おうとしていたという話は理解しました」
腕を組んだ私はもっともらしく深く頷いた。
「確かに結婚したくないという感情を増幅された私は、あの会場にいるのはとても辛く、魔法が解ければ凄く助かったと思います」
魔法を解こうとした行為、それ自体は間違っていない。
「でもしかーし! 結局レイズ様がやった事といったら、マリアさんと談笑してただけですよね?」
忘れもしない。
私が必死に魔法に抗っている一方、観客席ではレイズ様がマリアさんと手ぇ握って談笑していたじゃありませんか。私は見ていたぞ。
「なんでそうなる」
「違うんですか」
むすっとした顔でこっちを見るレイズ様。あーはいはい、ご不満ですね。じゃあ否定できるもんなら否定してみろってんですよ。どうせ無理だから。
「……もういい」
はい、結果はご覧の通り。
ほらーやっぱりね。知ってたよ、知ってたけどね! 私なんて眼中になくて談笑してただけなんでしょきっと。
わーい、予想が当たって嬉しいー。でもなんかモヤモヤするなぁこんちくしょう。
「ふぅ」
さていつもの私なら、ここで終わりにしちゃうところだけど、なんか思ったよりもモヤっと感が酷いからもうちょっとイジってやるか。
この際、少しくらい罪悪感でも感じて貰おう。こうやって、顔を覆って泣くフリをしてと。
「はぁーやっぱり談笑してただけじゃないですか」
「……」
チク。
「救って欲しかったなぁー」
「…………」
チクチク。
「ちょっと期待したのにー」
「………………」
チクチクチク。
これでどうだ。これで少しくらいはレイズ様も後悔してくれたかな。
指の隙間からチラッとレイズ様の様子を確認したら、ベルさんがレイズ様の肩を揺さぶっているところだった。
「ねぇレイズ」
「……」
「レイズってば」
ベルさんいいんだよ。
多分何かフォロー入れようとしてるみたいだけど、この人はこれが本性なんだから。メイドなんて名のパシリの為に、身を挺して救ってくれるわけないんだって。どうせ談笑して私の存在も忘れてたに決まって……
「レイズ、君本当は」
「…………………ああもう五月蝿い! んなもん違うに決まってるだろ!」
「えっ」
違う? なんの事? まさか談笑してた件じゃないよね、違うよね?
「談笑なんてするか馬鹿」
……は? え?
私は落ち着いて首を左右にふった。一旦リセットしろ私。
「いっ、いやいやーレイズ様ともあろうお方が何をご冗談を。使えない三流メイドですよ? そんな奴の為にわざわざ尽力する? そんな馬鹿な」
ポテチ片手に高みの見物するタイプでしょ。
「ねえ?」
私は同意を求めた。
ベルさんとマリアさんを交互に見る。
あれ、なんだその顔。え、なんでみんなそんな目で私の方を見てるの?
「レイズはこう見えて意外と尽力するタイプだよ」
「そうね」
「え」
嘘でしょ?
「馬鹿はお前だ」
馬鹿は、私なの?
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。


婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。
ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって―――
生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話
※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。
※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。
※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる