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110.天国か地獄か
しおりを挟むレイズ様の言葉を受けて素直に喜びハッピーエンド……と、そうはいかないのがこの物語とルセリナさんである。
「レイズ様が私を救おうとしていたという話は理解しました」
腕を組んだ私はもっともらしく深く頷いた。
「確かに結婚したくないという感情を増幅された私は、あの会場にいるのはとても辛く、魔法が解ければ凄く助かったと思います」
魔法を解こうとした行為、それ自体は間違っていない。
「でもしかーし! 結局レイズ様がやった事といったら、マリアさんと談笑してただけですよね?」
忘れもしない。
私が必死に魔法に抗っている一方、観客席ではレイズ様がマリアさんと手ぇ握って談笑していたじゃありませんか。私は見ていたぞ。
「なんでそうなる」
「違うんですか」
むすっとした顔でこっちを見るレイズ様。あーはいはい、ご不満ですね。じゃあ否定できるもんなら否定してみろってんですよ。どうせ無理だから。
「……もういい」
はい、結果はご覧の通り。
ほらーやっぱりね。知ってたよ、知ってたけどね! 私なんて眼中になくて談笑してただけなんでしょきっと。
わーい、予想が当たって嬉しいー。でもなんかモヤモヤするなぁこんちくしょう。
「ふぅ」
さていつもの私なら、ここで終わりにしちゃうところだけど、なんか思ったよりもモヤっと感が酷いからもうちょっとイジってやるか。
この際、少しくらい罪悪感でも感じて貰おう。こうやって、顔を覆って泣くフリをしてと。
「はぁーやっぱり談笑してただけじゃないですか」
「……」
チク。
「救って欲しかったなぁー」
「…………」
チクチク。
「ちょっと期待したのにー」
「………………」
チクチクチク。
これでどうだ。これで少しくらいはレイズ様も後悔してくれたかな。
指の隙間からチラッとレイズ様の様子を確認したら、ベルさんがレイズ様の肩を揺さぶっているところだった。
「ねぇレイズ」
「……」
「レイズってば」
ベルさんいいんだよ。
多分何かフォロー入れようとしてるみたいだけど、この人はこれが本性なんだから。メイドなんて名のパシリの為に、身を挺して救ってくれるわけないんだって。どうせ談笑して私の存在も忘れてたに決まって……
「レイズ、君本当は」
「…………………ああもう五月蝿い! んなもん違うに決まってるだろ!」
「えっ」
違う? なんの事? まさか談笑してた件じゃないよね、違うよね?
「談笑なんてするか馬鹿」
……は? え?
私は落ち着いて首を左右にふった。一旦リセットしろ私。
「いっ、いやいやーレイズ様ともあろうお方が何をご冗談を。使えない三流メイドですよ? そんな奴の為にわざわざ尽力する? そんな馬鹿な」
ポテチ片手に高みの見物するタイプでしょ。
「ねえ?」
私は同意を求めた。
ベルさんとマリアさんを交互に見る。
あれ、なんだその顔。え、なんでみんなそんな目で私の方を見てるの?
「レイズはこう見えて意外と尽力するタイプだよ」
「そうね」
「え」
嘘でしょ?
「馬鹿はお前だ」
馬鹿は、私なの?
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