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107.幸せはみんなで分かち合うものと見せかけて蹴落としたもん勝ち
しおりを挟む「あ、ちょっと待って下さい」
ベルさんが万人と結婚するという非常にトンチキな結末を迎え、ついつい話をスルーしてしまいそうだったけど、まだ話は終わっていない。
「じゃあ、どうして私が花嫁じゃないんですか?」
確かに彼は私に言った、『ルセリナちゃんは、花嫁じゃないんだ』って。
ベルさんが万人と結婚するって話なら、私だってその例外じゃないはずだ。勿論レイズ様だって。
「あーそれは」
「お前はなんでここにいるんだよ」
ベルさんの会話を遮って、レイズ様が口を挟んだ。
相変わらず上から目線の口調。
もうこの人には、私の疑問は解けているものらしい。
「え、なんでここにいるってそりゃあ……」
息をするように馬鹿にされちゃ堪らないので、私はすぐさま答えを返す。
「ベルさんと結婚した、から?」
「じゃないだろ。もっと前。そもそもなんでこの街にいる」
「レイズ様が行きたいって言ったから」
本当はさっさと国外追放されなきゃいけないのに、我儘レイズ様が自分の娯楽の為にこの街に寄り道なんてしたから……あ。
「分かった、追放されたからだ」
ポンと手を打ち納得のポーズで答えた。
「じゃあ追放されたってことは?」
物分かりの悪い部下を見るように、レイズ様はイライラした様子で答えを促す。
はいはい、分かりました。分かりましたって。流石のルセリナさんだって、そのくらいは答えられますよっと。
「私はこの街の、それどころかこの国の人間ではない。つまりそのベルさんの『みんな仲良く結婚』ルールが適用されない、とそういう事ですかね」
「そういう事だ」
よっし、ここは花丸正解。
うーんでも、私は先に告白したわけだし、そこはそこで受け入れられてもいい気がするけど。
「なんだ文句でもあるのか」
「いえ、別に」
何故か死ぬほど機嫌が悪いからこれ以上言うのはやめておこう。
「ふふふ。実はね、ルセリナちゃん、レイズったら……」
「おいベル」
「はい」
「余計なこと言うなよ」
「はいはい」
「?」
意味深な二人の会話。なんだろう、私が寝ている間に何かあったのか。
「……大体、こいつ一人で幸せになんてさせるかよ」
「!」
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「え。そ、それはもしかして、俺がお前を幸せにしてやんよ的な発言……ですか?」
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いいよ、それならそれで。本格派として優しくしてくれるレイズ様がいるなら。
「そ、ん、な、わ、け、あ、る、か」
レイズ様のフォークがお皿のお肉にぶっすり刺さる。
お坊ちゃまともあろうお方がそんなお下品な。軽い冗談言っただけだったのに……ねぇ?
残念ながら、優しいレイズ様は何処にもいないようで。
一部始終を見ていたベルさんは、肩を震わせて静かに笑っていた。
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