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97.好きと言えないお年頃の落とし所
しおりを挟む「普通に無理ぃ?」
拍子抜けしたようなレイズ様の声。うわぁなんか腹立つ。
私は片耳を塞いだ。
「告白って相手に『好き』って伝えるあれですよね。好きでもないのにそんな言葉浮かばないんですが」
浮かばないでしょ普通。
「お前はどこの国のお姫様だよ」
レイズ様が冷ややかに言い放った。
「普段はあんだけペラペラと口先だけの言葉並べておいて、そこは言えないとかあるか普通」
「い、言えるわけないでしょう。告白なんて!」
富豪をヨイショするのとは違うんだよ!
「そんなこと言って、本当は誰かに好意を抱くことがないから、何言えばいいか分からないだけだろ」
うっ、コイツはまた痛い所を。
「あっ、あーりーまーすー!」
なんか小さい頃、白馬に乗った王子様とか信じてた気がするし。それで玉の輿になれるって思ってた気がするし。それでいいだろ。
「ふぅん」
あーあーその目はさては信用してないな?
「まあまあまあ二人とも」
見かねたベルさんが漸く会話に割って入ってきた。もっと早くてもよかったよ。
「ルセリナちゃん、台本は無くて申し訳ないけど、今回の場合『好き』の一言が言えれば優勝出来る段取りにしてあるから!」
「そうですか」
ならば最初からそう言ってくれ。
「お前みたいな人間でも最適解が導き出せるようになってるありがたい仕組みだよ」
こいつうるせえ。
「まーまーまーレイズ、止めよう。もう止めよう。いいじゃんルセリナちゃんみたいな子。俺はいいと思うな!」
「俺はそんな胡散臭いヤツ嫌だね」
「私もレイズ様みたいな人は嫌ですね」
「ストップ!」
「あーあ、ベルさんが領主でよかった」
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「ストップ!!!」
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「いや、俺はさすがに捨てたりは……」
「「外野は黙って(ろ)!」」
「えぇー……」
今まさに私の中で負けられない戦いが始まろうとしていた。
レイズ様め、覚えてろよ。絶対後悔させてやる……! 悪役令息が絶対に報われない悪の立場だってこと、はっきり教えてやろうじゃないか。
正義は我が手、異世界転生メイドのルセリナにあり!
そんなこんなで、いよいよ最終『告白審査』が始まるのだった。
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