うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

文字の大きさ
上 下
97 / 154

97.好きと言えないお年頃の落とし所

しおりを挟む

「普通に無理ぃ?」

 拍子抜けしたようなレイズ様の声。うわぁなんか腹立つ。
 私は片耳を塞いだ。

「告白って相手に『好き』って伝えるあれですよね。好きでもないのにそんな言葉浮かばないんですが」

 浮かばないでしょ普通。

「お前はどこの国のお姫様だよ」

 レイズ様が冷ややかに言い放った。

「普段はあんだけペラペラと口先だけの言葉並べておいて、そこは言えないとかあるか普通」
「い、言えるわけないでしょう。告白なんて!」

 富豪をヨイショするのとは違うんだよ!

「そんなこと言って、本当は誰かに好意を抱くことがないから、何言えばいいか分からないだけだろ」

 うっ、コイツはまた痛い所を。

「あっ、あーりーまーすー!」

 なんか小さい頃、白馬に乗った王子様とか信じてた気がするし。それで玉の輿になれるって思ってた気がするし。それでいいだろ。

「ふぅん」

 あーあーその目はさては信用してないな?

「まあまあまあ二人とも」

 見かねたベルさんが漸く会話に割って入ってきた。もっと早くてもよかったよ。

「ルセリナちゃん、台本は無くて申し訳ないけど、今回の場合『好き』の一言が言えれば優勝出来る段取りにしてあるから!」
「そうですか」

 ならば最初からそう言ってくれ。

「お前みたいな人間でも最適解が導き出せるようになってるありがたい仕組みだよ」

 こいつうるせえ。

「まーまーまーレイズ、止めよう。もう止めよう。いいじゃんルセリナちゃんみたいな子。俺はいいと思うな!」
「俺はそんな胡散臭いヤツ嫌だね」
「私もレイズ様みたいな人は嫌ですね」

「ストップ!」

「あーあ、ベルさんが領主でよかった」
「じゃあそのまま本当に結婚しろ」

「ストップ!!!」

 私達二人に巻き込まれてベルさんは相当困ってるようだったけど、すまんね、この男だけは許せないんですわ。

「いいですよ。そしたらレイズ様は完全一人、ぼっち追放確定ですね。身の回りの事なんて何一つ出来ずに餓死する姿が目に浮かびますご愁傷様」
「はっはっは、お前がまともに花嫁に選ばれたらな。花嫁になったところでお前の人間性の低さが明るみになった挙句捨てられるのがオチだろうけど」
「いや、俺はさすがに捨てたりは……」

「「外野は黙って(ろ)!」」

「えぇー……」

 今まさに私の中で負けられない戦いが始まろうとしていた。

 レイズ様め、覚えてろよ。絶対後悔させてやる……! 悪役令息が絶対に報われない悪の立場だってこと、はっきり教えてやろうじゃないか。
 正義は我が手、異世界転生メイドのルセリナにあり!

 そんなこんなで、いよいよ最終『告白審査』が始まるのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって――― 生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話 ※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。 ※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。 ※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。

五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」 婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。 愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー? それって最高じゃないですか。 ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。 この作品は 「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。 どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

処理中です...