うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

文字の大きさ
上 下
88 / 154

88.急募、結婚をお断りする方法

しおりを挟む


 適当なこと言って上手いこと撤退しようとしたのに、むしろ逆に自分の首を絞めている。
 このままじゃ逃げ場がない。かくなる上は。

「あ!」
「あ?」

 声に反応したレイズ様からさっと目を逸らす。
 そして私は場の空気から逃げるように視線を宙へと泳がせた。

「あー……ほ、ほら、よく考えたら、領主ってお爺ちゃん、お爺ちゃんですよね!」

 人差し指をピンと立て、大事なことを忘れていた感じを装う。

「ああ」

 割とどうでもいいと思っていそうなレイズ様の生返事。
 しかしいちいちそんなことに気を使っている場合ではない。微妙な感じの空気を強引に覆うように、私は言葉を並べ立てた。

「私、お爺ちゃんと結婚とか、やっぱりどうかと思うんですよね」
「……」
「このイベントの勝者になったとして、最終的にはその方の花嫁になる訳でしょ? 流石に私、それは嫌かなーなんて……」

 好みの点での否定、これでどうだ。
 勝者になるところまでは強制出来るとしても、その後の人生を左右する結婚までは強制出来ないだろう。
 一通り言い終えた私はそこでようやく息を整えて言葉を待った。

「なるほど」
「!」

 お、今度は上手くいきそうか?
 レイズ様にしては珍しく落ち着いた声色だ。言葉もなんだか理解してるような感じだし、計画通りか。
 私は天井に向けていた視線を前に戻し、そっとレイズ様の顔色を伺った。

「領主と歳が離れてるから嫌なんだな」
「そうです」

 力強く首を縦に振る。
 やはり今回は私の言い分を理解してくれたのかもしれない。

「他に嫌な理由は?」
「特には」

 今度は首を横に。
 余計なことは付け足すまい。年齢がネック、その一本でいこう。その方が信憑性がある。
 それにこれ以上に強力な要素は浮かばない。だって財力や性格とは違って、年齢だけはどうこう手を加えて改善出来るもんじゃないんだから。

「……」

 なんとも言えないほんの少しの間が開く。

「だそうだ、ベル」
「みたいだね、レイズ」

 結論を噛み締めるような二人のやりとり。
 同じような口調で語り合うその様子は、本当お前ら仲良いなとしか言いようがない。
 まあそんな仲良し二人組には悪いけど、私は私なりの正論を以てこのイベントを辞退し――。

「安心しろ、メイド」
「へ?」

 不敵に笑う口元。

「ここの領主は言うほど高齢じゃない」
「は??」

 この男は一体何を言っているんだろうか。
 領主はどう見ても80歳はいってそうなコッテコテの白髭のお爺ちゃんだっただろうに。

「レイズ様、いったい何を冗談」
「冗談? 違うな」
「???」

 妙に余裕のある表情。なんなんだ、何が言いたい。

「領主はな、コイツだよ」
「はーい、領主でーす」

「なっ」

 なんだってーーーーーー!?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって――― 生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話 ※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。 ※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。 ※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...