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62.本編の都合により二地点からの実況でお送りしております
しおりを挟む「さて、鍋に蓋をしてっと」
人参とジャガイモと玉ねぎと豚肉、これを炒めて煮込んでルーを入れる。
いやはや我ながら見事な手際の良さだ。
『さあ、間もなく終了になります!』
アナウンスの声。
時間も丁度いい感じ。後はこれを綺麗に盛りつければ完成する、っと。
レイズ様の期待に添えず悪いけど、今回の審査は楽々通過させて貰いますよ。
===
~一方、観覧席~
椅子に座りながら料理を作るルセリナを見守るレイズとヒューベル。
レイズの方は理解出来ない物を見るように呆れた表情を浮かべている。
「本当に、最後の最後までカレーを……何の捻りも無く、普通のカレーを。あいつは」
「完成したみたいだね」
鍋の蓋を開けようとするルセリナを二人はそれぞれ違った心境で見つめていた。
===
鍋から聞こえるコトコトという小気味よい音。
材料よし、時間よし、気合よし。
「……よし、やるぞ!」
大丈夫だ私、これまでの自分の力を信じるんだ。さあ蓋を開けるぞ。手をかけて、せーの。
パカッ
「出来たっ……!」
フワッとジューシーないい匂いが漂う。
鍋の中には、しっかりと煮込まれた牛肉、よく分からないおしゃれなソース、謎の葉っぱのようなものが。
完成!
良いところのシェフが作った凄く美味しい料理!
お値段据え置きなんと9,999,999マニー、なんちゃって。
===
~一方、観覧席~
得体の知れない生き物を見るようにルセリナの行動を観察するレイズ。
「……俺には、どうしてあいつがこの期に及んでカレーなんてものを作ったのか、意味が分から……はぁ!?」
ガタンという椅子の音が二人の間で音を立てた。
「ちょっとレイズ、いきなり立ち上がると他の人に迷惑だよ!」
そう言ってレイズの服の裾をつまむヒューベル。彼の注意を聞いてか聞かずか、よろよろとレイズは目頭を押さえてゆっくりと椅子にかけなおした。
「いやだってあれ、どう見てもカレーじゃないだろ。俺には今出てきたあれが、全然別の料理に見えるんだけど」
「いやーどうしてかな。俺にも別の料理に見えるよ」
二人にはカレーなど一つも見えていなかった。
===
そう、これはカレーではない。全くの別料理なのである。
題して、どこかの一流シェフが作った凄く美味しい料理。名前はよく知らない。
「ふぅ、今回は成功してよかった……」
料理に必要なもの、それはカレールーだと言ったがあれは嘘だ。
本当に必要なもの、それは我が力。
異空間の収納魔法。
これさえあれば、あらかじめ収納しておいた『一流シェフの美味しい料理』と『私の作った庶民的ポークカレー』を一瞬にしてすり替えることが可能なのである。
収納して、出す。たったこれだけで私の料理はあっという間に生まれ変わる。
お屋敷でのアリスちゃん事件の時は失敗して自分の首を絞めたけど、今回は上手くいった。
ちなみに一流シェフの美味しい料理は、審査開始前にベルさんに用意して貰った。レイズ様が何やら勘ぐっていたけど、上手いことスルー出来てよかった。協力してくれたベルさんありがとう!
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