うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

文字の大きさ
上 下
54 / 154

54.だがしかし、そいつは目の前にいる

しおりを挟む

 謎の異国の美少女ト・イレニここに爆誕。
 はっはっは、まさか本当にバレないなんてレイズ様の目は本当に節穴だなー。そりゃそうか、普段の私を薄汚いメイドとか言っちゃうんだもん、そりゃ節穴だ。はっはっは。

「レイズサン ノ メイドサンダッテ ウスギタナクアリマセンヨ キット」
「いえいえ、イレニさんに比べたら月とミジンコですよ」

 微生物扱いか、このやろう……眼科に行け、眼科に。

「で、ベル。そのミジンコはどこに?」

 げっ。忘れたと思ったのに。いないいない、ここにはいない。

「え? ああ、ルセリナちゃんか」

 ベルさんあとは任せた。

「彼女なら気分転換に外の空気を吸いに行ってるよ」
「ふーん」

 よし、ナイスフォロー。

「どうせアイツの事だから、一発目の審査内容聞いてビビッてるんだろ。外見審査なんて一番苦手そうだもんな、そういうの。柄じゃないだろ、あのメイドには」

 くっそう、よくご存じで。

「あはは、すごい自信だね。でもさ、案外そういう子が、見違えるように変身して驚くことになるかもよ? まあそんな事しなくても、彼女は元々可愛いと思うけど」

 ベルさん……!
 その軽い感じはいかがなものかと思うけど、それでもこの男よりは百万倍マシなご意見ありがとうございます。
 まあ予想外に綺麗に生まれ変わるっていう漫画みたいな展開は無かったので、そこは大変申し訳ないところだけど。

「あー無理無理。子供に読み聞かせするおとぎ話でもあるまいし、そんな奇跡起きるわけないだろ。カボチャを馬車に変える方がよっぽど現実的だわ」

 こいつ。
 カボチャを大量に送りつけてやろうか。

「手厳しいなぁ」
「手厳しい? こういうのは現実って言うんだ。大体アイツは……」

 なんだよ。

「……」
「ん、どうかした?」
「いや、この話はもういいだろ」
「なんでさ」

 そうだよ、続きが気になるじゃないか。

「イレニさんが退屈そうにしてる」

 ……えっ、私?

「イレニさん」
「ハ、ハイ」
「貴女の前でつまらない話をすみません。今のは耳にするのも不快な話でした、どうぞ忘れて下さい」

 私の話題は呪詛かなんかか。
 あとそのクソみたいな本性出しておきながら急に丁寧に語り出すの気持ち悪いからやめてくれ。

「ワ、ワタシノ コトハ オキニナサラズ」
「いえいえ、とんでもない。ベル、彼女もこのイベントに?」
「ああ、参加するって」
「そうか」

 嘘は言ってない。

「こんなに美しい貴女のことです。次の審査も間違いなく通るでしょう」

 なんだそのベタベタな台詞は。どっかの翻訳サイトで翻訳でもしたのか。それともあいさつ構文のテンプレ文章でもコピペしたのか?

「ア、アリガトウゴザイマス。レイズサンモ ソノ…… ステキナカタダト、オモイマスヨ? ソノ ヒトミモ オホシサマミタイ」

 性格は間違っても褒められないからな。

「……」
「レイズサン?」

 え、あれ、無言? やば。変なこと言ったか?

「ありがとう。その言葉、久しぶりに聞きました」
「!?」

 何そのなんとも言えない表情は。泣きそうな、それでいて無理に笑ったような。

「貴女のパートナーになれなかったこと、本当に残念に思います」
「ソレハ……コチラコソ」

 なんか調子狂うなぁ。

「ベル」
「はいはい」
「俺は行くから」
「うん、また後でねー」

 なんなんだ、本当に。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって――― 生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話 ※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。 ※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。 ※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...