うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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46.仲良し従者コンビ(仲良し度★★)

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 一瞬の沈黙。
 そんでもって先輩は、笑顔。

「ルセリナさん」
「はっ、はい」
「貴女、自分の役割分かってます?」
「わわわ、分かってますよ!」

 分かってないなんて言ったら殺される。

「レイズ様と、一緒に、この国を出て行くことです!」
「そうですね。よく出来ました」
「ありがとうございます!」

 わあ、なんて素敵な笑顔。さっきから表情全部同じだけど。

「つまり」
「?」

 あれ、先輩いつの間にか右手に何か……って、もしかしてそれ、私の今月の給料袋? そうか、まだ支給されてなかったから届けに来てくれたんだ。それを左手のライターで……えっ、まさか燃やす!?

「駄目です、待って! ストップ、ストーップ!!」

 先輩の左手を持ち上げるようにして無理矢理押さえ込んだ。ライターはまだ着火前だったようだ。

「貴女達がやるべきことは、この街で花嫁を選ぶことでも、ましてや花嫁になることでもありませんよね?」
「勿論! 勿論でございます!」

 なんなんだ、この男。至近距離で見ても感情が一切読めないぞ。優しい系お兄さんのまんまだ。
 でもこれは、怒ってる、絶対。下手な答えは間違いなく……死!(私の給料の)

「それを踏まえて一言どうぞ」
「はい。この度は、皆様のご期待に沿えず、大変申し訳ございませんでした!」

 ここが外じゃなければ、間違いなく土下座をしていただろう。そのぐらい誠心誠意謝罪をしたつもりだ。

「ああ、そんなに丁寧に謝罪を。深く反省したんですね」

 うるせえ。その手に握ってるのがライターじゃなかったら、もう少し態度違かったわ。
 でもとりあえず今はお給料を、私が汗水垂らして働いた今月の給料を手元に避難させねば。

「は、反省したので、その右手に持ってる袋いただいても宜しいでしょうか?」
「ああ、これですか」
「そうそれです」

 さあ、早くそれをこちらへ。

「てっきり私は、貴女がスキンシップを取るためにこんな体勢を選んでいるのかと思いましたよ」
「ははっご冗談を」

 ドキドキの種類が違うんだよ、ドキドキの種類がさ。

「これが欲しいのであれば、お得意の魔法を使えばいいのに」

 あっ、その手があったか。気付かなかった畜生。魔法魔法っと。
 よし、これで大丈夫。うん? なんか妙に薄いな。

「ちなみに中身は今回の追放が完了してからのお渡しになります」
「騙された!?」
「騙してはいないでしょう。失礼ですね。貴女だって理解しているはずです。明日この国を出て漸く――」

「あ、そうだ。明日だ」

「? 明日がどうかしましたか」
「いえ、明日が花嫁選びの本番の日なんですよね。だから出来ればあと一日ずらして……ひっ!?」

 満面の笑み。怖い。何、この状況。意図しない返しが来たら速攻赤色に塗れてバットエンド? 燃やされる? 私ごと消し炭になっちゃう? 怖い。人間って怖い。

「まさか、参加されるおつもりではありませんよね?」
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