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45.仲良し従者コンビ(仲良し度★)
しおりを挟む「よしっ、それじゃ私はお咎めなしですね!」
馬車を壊した件と未だに国外追放になってない件、なんとか回避したー! これから朝まで先輩にネチネチと説教されなくてよかった、ほんと。
「喜ぶのは構いませんが、そのガッツポーズはどうなんですかね。折角の素敵な恰好が台無しですよ」
「え、素敵な格好? ……ああこれか」
パーティに行くために着替えたこの格好。誰もこの姿に何も言わないから完全に忘れてた。少女漫画なら、その変貌にドキッとして薔薇とか舞うのにさ。
昔からそういうとこ細かいんだよなぁシュタイン先輩は。そこだけは尊敬するよ。
「どうです、先輩。私も上流階級の人間に見えません?」
洋服ひらひら~っとお嬢様みたいにね。
「そうですね」
「滅茶苦茶高いらしいですよ、この服」
試着してる時、お店の人がそんな事言ってた。ベルさんのお財布から出したから正確な値段は知らないけど。
「それは驚きですね」
「でしょう」
我ながら今までパッとしない地味なメイド服しか着てこなかった自分が、よくもまあここ数日でこんなエレガントで気品溢れる服を身にまとう存在になったと思うよ。
「それで」
「それで?」
まだ何か説明が必要で? うーん何かな。買ったお店の名前とか?
「その様な格好をするということは、きっとそれなりの事情があったのでしょう? そう言えば会話の前半で花嫁になるとか血迷った発言を聞いた気がしましたが」
「血迷ったって……」
言葉選び酷いな。いや分かるけどさ。私も正直違和感は感じてるし。さすが鋭い。
それでは教えてあげましょうか。
「えー」
こほんこほん。よく聞いてくださいよ、シュタイン先輩。
「実はこのたび、私ルセリナは、領主コルトン様の花嫁候補に選ばれました。こちらの格好は彼に事前に会うために着替えたものなのでございます」
おわかりいただけただろうか。
だからこれは私の趣味ではないではないのだよ。こんな高そうな服、間違っても買わないし着ない。
「貴女が、花嫁に」
「候補ですけどね、候補。シュタイン先輩、知ってました? この街は月に一度、領主の花嫁を選び出すんですよ」
「知ってます」
なんだ知ってたのか。
「レイズ様の付き添いで何度かこちらに足を運んだこともありますから」
あーなるほど。じゃあ話が早い。
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「さっきのって、ヒューベル様ですか」
「そう、ベルさん」
「……なるほど」
ん。一瞬なんだか表情が変わったな。
そう言えば、面識あったんだっけ。
「話は大体分かりました」
分かってもらえて何より。
「それで」
「はい」
「肝心のレイズ様はどちらに?」
レイズ様ねぇ。
「……」
「……」
「……さあ?」
夜の街に消えていったとしか。
「…………」
あ、もしかしてこれやばいやつです?
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