うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

文字の大きさ
上 下
45 / 154

45.仲良し従者コンビ(仲良し度★)

しおりを挟む

「よしっ、それじゃ私はお咎めなしですね!」

 馬車を壊した件と未だに国外追放になってない件、なんとか回避したー! これから朝まで先輩にネチネチと説教されなくてよかった、ほんと。

「喜ぶのは構いませんが、そのガッツポーズはどうなんですかね。折角の素敵な恰好が台無しですよ」
「え、素敵な格好? ……ああこれか」

 パーティに行くために着替えたこの格好。誰もこの姿に何も言わないから完全に忘れてた。少女漫画なら、その変貌にドキッとして薔薇とか舞うのにさ。
 昔からそういうとこ細かいんだよなぁシュタイン先輩は。そこだけは尊敬するよ。

「どうです、先輩。私も上流階級の人間に見えません?」

 洋服ひらひら~っとお嬢様みたいにね。

「そうですね」
「滅茶苦茶高いらしいですよ、この服」

 試着してる時、お店の人がそんな事言ってた。ベルさんのお財布から出したから正確な値段は知らないけど。

「それは驚きですね」
「でしょう」

 我ながら今までパッとしない地味なメイド服しか着てこなかった自分が、よくもまあここ数日でこんなエレガントで気品溢れる服を身にまとう存在になったと思うよ。

「それで」
「それで?」

 まだ何か説明が必要で? うーん何かな。買ったお店の名前とか?

「その様な格好をするということは、きっとそれなりの事情があったのでしょう? そう言えば会話の前半で花嫁になるとか血迷った発言を聞いた気がしましたが」
「血迷ったって……」

 言葉選び酷いな。いや分かるけどさ。私も正直違和感は感じてるし。さすが鋭い。
 それでは教えてあげましょうか。

「えー」

 こほんこほん。よく聞いてくださいよ、シュタイン先輩。

「実はこのたび、私ルセリナは、領主コルトン様の花嫁候補に選ばれました。こちらの格好は彼に事前に会うために着替えたものなのでございます」

 おわかりいただけただろうか。
 だからこれは私の趣味ではないではないのだよ。こんな高そうな服、間違っても買わないし着ない。

「貴女が、花嫁に」
「候補ですけどね、候補。シュタイン先輩、知ってました? この街は月に一度、領主の花嫁を選び出すんですよ」
「知ってます」

 なんだ知ってたのか。

「レイズ様の付き添いで何度かこちらに足を運んだこともありますから」

 あーなるほど。じゃあ話が早い。

「そのレイズ様が花嫁選びに参戦するんですって。それで色々あって、私もさっき一緒にいた男の人と花嫁候補として参加することになったんですよ」
「さっきのって、ヒューベル様ですか」
「そう、ベルさん」
「……なるほど」
 
 ん。一瞬なんだか表情が変わったな。
 そう言えば、面識あったんだっけ。

「話は大体分かりました」

 分かってもらえて何より。

「それで」
「はい」
「肝心のレイズ様はどちらに?」

 レイズ様ねぇ。

「……」
「……」
「……さあ?」

 夜の街に消えていったとしか。

「…………」

 あ、もしかしてこれやばいやつです?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

処理中です...