うちの悪役令息が追放されたので、今日から共闘して一発逆転狙うことにしました

椿谷あずる

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18.問題児しかいないってタグにもそう書いてある

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 突如、私たちの馬車にやってきた女の子。
 うーん女の子、女の子ねぇ……。

「もしかして、迷子さんですか?」

 このたどたどしくて愛くるしい感じ。どう見ても子供なんだけどさぁ。

「もし何か困っているなら、私のおうちに来ませんか?」

 ほら、首をこてんって横に倒す仕草もすごく愛くるしいし。
 でもさ――

「あ、えーっと……」

 怪しい。滅茶苦茶怪しい。
 なんでこんな夜更けに女の子が一人で出歩いてるの? 百歩譲ってこの近くに家があったとして、だからってこんな見知らぬ馬車に声かけたりする? どうすんの、半裸の変なおっさんとか出てきたら。親とかどういう教育してるの。それとも何か、ファンタジーだから? この世界は夢あるファンタジーの世界だから、そんな悪いことする奴いないって?

 …………………………いや、いるし!

 レイズ様とかいうそこにおわします悪役令息をはじめ、アリーゼ様にシュタイン先輩、フェリクス様までありとあらゆる悪意を取り揃えてますってぐらいいるでしょ悪人。
 そうと分かればこれはあれだな。警戒するに越したことはないやつ。よし、断ろう!

「ごめんね、気持ちは嬉しいんだけど大丈――」
「よく分かっているな、子供」
「!?」

 レ、レイズ様!?
 きゅ、急に出しゃばりだして……はっ、まさかまた余計なことを!

「どうもメイドよりも気が利くと見た」

 余計なお世話だ。
 っていやいやそうじゃない。今はそんな些細な暴言より、この後の発言を止めないと。

「レイズ様、ちょっとストッ……」
「いいだろう。行ってやる案内しろ」

 間 に 合 わ な か っ た !
 あーもうだから軽率に誘いに乗るなってのが分からないのかねこの男は。

「いいの? わーい」

 女の子も女の子で喜んでるし。
 大体、こんな高圧的な態度だったら絶対引くだろ普通。ますます怪しいって。

「……レイズ様」
「ん、なんだ」
「やめたほうがいいですよ。怪しいですって、色々と。私が悪人だったら油断させて背後からブスッといきますよ」
「人の善意をどうしてそこまで悪意に変換出来るんだお前は……」
「フェリクス様の例もありますし」

 餞別に爆弾を渡されたんだ。そこで学習しなかったら脳内お花畑のバカだろう。
 ほらレイズ様だってさすがにためらってるためらってる。

「っ……だとしてもだ。この状況が二人じゃどうにもならないことは分かってるだろ」
「そ、そうなんですけどね」

 RPGで言ったらダンジョンで脱出アイテムもMPも枯渇して動けなくなった完全に手詰まりの状態なのは間違いない。

「その状況が少しでも変わるなら俺は行く」

 確かにそれは一理あるといえばある。

「そもそも」
「うん?」

 なんだこっち向いて。学校で人に指を刺すなって言われなかったか。

「お前達みたいな悪人はそうそういないから安心しろ」
「ははは……」

 もう知らねえ。この先これが罠だったとしても、お前は絶対助けねー。なんせ私は悪人だからな。

「? お姉ちゃん達こっちだよ」

 無垢な瞳の少女に導かれるようにして、私たちは森のさらに奥へと足を運んだ。
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