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17.聖女不在につき物語が停滞しております
しおりを挟む「う、嘘だろ! ……俺だってこんなゴミみたいなメイドを馬車に泊めてやったのに」
ゴミ。ゴミって、今ゴミって言った。
いや分かる、気持ちは分かるよ。目の前で一人だけご飯食べちゃあね。でもさ。
「じゃあその毛布、少しは貸してくれてもいいんじゃないですか。五枚もあるんです、一枚くらい」
「は? 何故お前に」
ほらね! ほぉーらね!
ここでさ、聖女のようなヒロインだったら自分が虐げられてても食料をシェアしたと思うよ? でも私は嫌だね。絶対嫌だ。毛布五枚って馬鹿じゃない?
こちらをご覧いただこう。
「枕用、体にかける用、足元にかける用、下に敷く用、ほら一枚余ってるじゃないですか! だから一枚」
「嫌だね。それよりもそっちの食料を寄越せ。どうせそんなに食べられないだろ」
「余裕ですね。アリスちゃんのご飯は最強に美味しいので。最近レイズ様だって屋敷のご飯が美味しくなったって喜んでいたじゃないですか。あれだって全部アリスちゃんの手作りで……」
「全部アリスの手作り? お前、まさかメイドの癖に自分は何もしないで、全部アイツにやらせて……」
「はははっ『証拠』はありませんけどね!」
「コイツ」
いけないいけない。屋敷を追い出された今となっては関係ないとはいえ、つい余計なことまで口にしそうになった。
「大体、寝床の馬車は俺が提供してるだろ」
「その馬車を見かけ上維持しているのは私の魔法ですよ」
偽装魔法様様である。これがなければ馬車が魔力切れの今、形を維持することさえ難しいだろう。
「という訳で馬車の条件はイーブン。いいえ、私がメイドに甘んじているということは私の方が少し優位かもしれませんね」
「まさかここまで礼儀知らずの最低のメイドだったとは……」
「いやいや、レイズ様ったら何をご謙遜を。私なんてレイズ様には到底及びませんよ」
「……」
「……」
コンコン
「ん?」
誰かが馬車のドアを叩いてる?
いや、気のせいか。こんなところに人なんかいる訳ないだろうし、風か何かかな。
コンコンコン
んんん? やっぱり聞こえるな。
「メイド」
「はい」
「確認しろ」
「え」
「早く」
私が確認するのか。
コンコン
風の音だと思うけどなんとなく嫌だな。
「ちょ、ちょっと怖いかなぁなんて……」
「お前が俺より優位に立っているのは『メイド』だからなんだろ?」
「ぐっ……」
ちっ、余計なこと言うんじゃなかった。
「わ、分かりましたよ」
「分かったらさっさとやれ」
「はいはい」
自分は安全だと思って笑ってるの腹立つわぁ。
「どちらさまですかぁ~?」
そして私が見たものとは。
「女の子?」
「あ、あのこんばんは」
7歳くらいのおさげの女の子がちょこんとそこに立っていた。
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