13 / 154
13.使用人三人組と身分違いの恋
しおりを挟むいやあ凄い。実に凄い。
国外追放と言われたその翌日、早速家を追い出されることになろうとは。
「いやぁこの事務手続きの速さ、もっと他に活かしてもらいたいね」
「本当、貴女はそういうところ最後まで何も変わらないですね」
すっかり綺麗になってしまった私の部屋。そこにはただ四角い空間が広がっていた。
昨日まで誰かがここで生活していたなんて誰も思わないだろう。
「さてと。アリスちゃんこれありがとうね!」
「いえ私に出来るのはこのくらいで」
アリスちゃんから貰ったバスケット。中には彼女の作ったミートパイやサラダが入っている。朝から早起きして用意してくれたらしい。散々迷惑をかけたのに最後まで彼女はいい子だ。
それに比べてこの人は。
「シュタイン先輩も餞別をご用意してくださってもいいんですよ?」
「選別? つまらない冗談ですね。むしろ貴女が私に感謝の贈り物をする場面でしょう」
「ははは、感謝? 贈り物? 先輩ったらご冗談を。誰のせいでこうなったと思ってるんですか」
「自分のせいでしょう」
最後まで容赦がない。
「確か門の前に馬車が止まってるんですよね」
「ええ。魔法である程度までは指示を出せば移動出来るようにしてあります」
「魔力いらずの空飛ぶ絨毯でも用意してくれればよかったのに」
どうせ追放するんだからそのくらい高価な品の一つや二つくれたっていいだろうに。
「馬車がご不満なら自分の魔法で移動なさいますか? 途中で魔力切れでお亡くなりになるかもしれませんが」
「そうなったら先輩の元に化けて出ますね」
「ルセリナさん……そんなに私のことが忘れられないんですね。嬉しい限りです」
「そんなに嬉しいのでしたら、再雇用してもいいのですよ?」
「ははは、ご冗談を」
私、攻撃的な魔法一つくらい何か覚えてたかな。即死するやつ。
「仕方ないので私から先輩に最後に一つプレゼントを――」
「シュタイン! 貴方こんなところにいたのね!!」
「アリーゼ様」
アリーゼ様? 珍しいな、そんなに息を切らして。普段はあれだけ上品を心がけていたのに。よっぽど急ぎの用事でもあったか。
「探したのよシュタイン!」
「お嬢様」
「お嬢様はおやめになって。前にも言ったでしょ、私は貴方と婚約することに決めたって」
おやまあ。
「今日はそれをお父様に報告する日だとあれほど言ったじゃない」
なるほど。どーりで今日はハスター様やローザ様を見かけない訳だ。
「二人とも別室でお待ちだわ。早くいらして! そうだわ、アリスちゃんも一緒にいらっしゃいな」
「えっと、でもレイズ様とルセリナ先輩のお見送りが……」
「見送り? ああ、そんな事もあったわね。別にいいのに」
あったわねってアンタ、よくないだろう。私はともかく片方は自分の実の弟なのに。
大体なんだ、私に対する態度と他の二人に対する態度が随分別だな、おい。
「じゃあそれササッと済ませて終わったらすぐ私の部屋にいらしてね。三分以内でお願い」
三分って。そんなんじゃカップラーメンもまともに食べられないんだけど。
そんなこんなで、嵐のようにやって来たアリーゼ様は、これまた嵐のように去っていった。
「……行っちゃいましたね」
アリスちゃんがポツリとそう呟いて、何とも言えない微妙な沈黙が流れた。
「……」
「……」
「……シュタイン先輩」
「なんでしょう」
「結婚、するんですか」
「貴女には関係ない話でしょう」
「……ま、そうですね」
アリーゼ様と結婚かぁー玉の輿だなぁー
身分違いの恋ってやつになるのかな。最近流行りだなぁ。
もし相手がアリスちゃんだったら全力で止めたけど、相手はあのアリーゼ様。
人間性的にはどっちもどっちって感じでいいんじゃない。
「とてもお似合いですよ」
「……ありがとうございます。そういえば、私に何かプレゼントがあったのでは?」
即死魔法のことか。
「ああ、いえ別に大したものじゃ無いんで」
「そうですか」
これから貴族になるかもしれない人殺したら後で偉い目に合いそうだもんな。
そうこうしているうちに私達はやがて正門へとたどり着いた。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。


何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。
ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって―――
生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話
※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。
※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。
※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる