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4.愛は偽装できないがそれ以外なら割となんとかなる
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パタン
うん、よし出て行ったな。
扉に耳をしっかりつけてレイズ様の足音が遠ざかるのを確認した私は、ようやく部屋のソファーに腰を下ろした。
「疲れた」
実際は何もしてないけれど。
「しかしまあ珍しい品ねえ……」
レイズ様から渡されたそれをつまみ上げ光に当てるとキラリと赤い宝石が輝いた。細かい細工の施されたネックレスのようだ。
「こんなの私も持っていた気がするんだけど」
どこで手に入れたっけ。えーと確か私がこの世界に来て最初の方……あ、思い出した。
体を沈めていたソファーからがばっと起き上がる。
「これこれ、これだ」
何も無い空間に手をかざすと、ぽこんとその場に浮かぶようにして細かい細工の施された赤い宝石のネックレスが現れた。
「魔法を習得した時のおまけにそっくり!」
見比べてみても例のネックレスと何一つ差異がない。
まさかこんなおまけごときに価値があるなんて。
ちなみにこの『魔法を習得した時のおまけ』というのは、言葉そのまま魔法を習得した時のおまけである。
この世界では魔法が当たり前のように存在している。ただ、当たり前すぎて一般的には極める人は少ない。私の場合、魔法自体が珍しかったので、異世界転生後、ひたすら魔法を使い遂には極めてしまったのである。その時に何故かゲットしたのがこのネックレス。
私は今『防腐処理魔法』と『異空間の収納魔法』、『偽装魔法』を習得しているけど、これは多分『偽装魔法』を習得した時のものだろう。
「これ、すり替えてもばれないような」
見るからに同じネックレス。いや、もしかすると本当に同じものなのかもしれない。これに念のため私の偽装魔法をかければ……
「いけるな」
これは99%、いや99.999%同一のもの。じゃあこれを。
「おっといけないー手が滑ったー」
落として、拾う。
「どっちか分からなくなっちゃったけど、たぶんこっちだろうー」
これでよし。
私は盗んだのではない。これは不幸な事故だ。
質屋に行って、価値を調べて、それが分かったら元に戻そう。ちょっと値段が気になっただけ。それだけなんだ。
「ルセリナ先輩ー」
おおっと、扉の向こうからアリスちゃんの声が。
「開けて下さいー」
んん、色々あって準備が出来てなかった。手伝うと言った手前これはまずいな。
「おっけー今開けるね」
地面に手をかざし強く念じる。
部屋に乱雑に積み上げられた景品たちは一瞬にして消えた。消えた後、一秒くらいの間を置いて再度それが現れる。
「よし、上出来!」
カチャリ
扉を開けると荷物をいっぱいに抱えたアリスちゃんが立っていた。
「ありがとうございます」
「お疲れ様」
持ってきた荷物はポトポトと開いたテーブルの上に重ねた。
「さすが先輩すごいですね。もう部屋が片付いてる」
「ははっありがとう」
そこには綺麗に整頓された部屋が広がっていた。
うん、よし出て行ったな。
扉に耳をしっかりつけてレイズ様の足音が遠ざかるのを確認した私は、ようやく部屋のソファーに腰を下ろした。
「疲れた」
実際は何もしてないけれど。
「しかしまあ珍しい品ねえ……」
レイズ様から渡されたそれをつまみ上げ光に当てるとキラリと赤い宝石が輝いた。細かい細工の施されたネックレスのようだ。
「こんなの私も持っていた気がするんだけど」
どこで手に入れたっけ。えーと確か私がこの世界に来て最初の方……あ、思い出した。
体を沈めていたソファーからがばっと起き上がる。
「これこれ、これだ」
何も無い空間に手をかざすと、ぽこんとその場に浮かぶようにして細かい細工の施された赤い宝石のネックレスが現れた。
「魔法を習得した時のおまけにそっくり!」
見比べてみても例のネックレスと何一つ差異がない。
まさかこんなおまけごときに価値があるなんて。
ちなみにこの『魔法を習得した時のおまけ』というのは、言葉そのまま魔法を習得した時のおまけである。
この世界では魔法が当たり前のように存在している。ただ、当たり前すぎて一般的には極める人は少ない。私の場合、魔法自体が珍しかったので、異世界転生後、ひたすら魔法を使い遂には極めてしまったのである。その時に何故かゲットしたのがこのネックレス。
私は今『防腐処理魔法』と『異空間の収納魔法』、『偽装魔法』を習得しているけど、これは多分『偽装魔法』を習得した時のものだろう。
「これ、すり替えてもばれないような」
見るからに同じネックレス。いや、もしかすると本当に同じものなのかもしれない。これに念のため私の偽装魔法をかければ……
「いけるな」
これは99%、いや99.999%同一のもの。じゃあこれを。
「おっといけないー手が滑ったー」
落として、拾う。
「どっちか分からなくなっちゃったけど、たぶんこっちだろうー」
これでよし。
私は盗んだのではない。これは不幸な事故だ。
質屋に行って、価値を調べて、それが分かったら元に戻そう。ちょっと値段が気になっただけ。それだけなんだ。
「ルセリナ先輩ー」
おおっと、扉の向こうからアリスちゃんの声が。
「開けて下さいー」
んん、色々あって準備が出来てなかった。手伝うと言った手前これはまずいな。
「おっけー今開けるね」
地面に手をかざし強く念じる。
部屋に乱雑に積み上げられた景品たちは一瞬にして消えた。消えた後、一秒くらいの間を置いて再度それが現れる。
「よし、上出来!」
カチャリ
扉を開けると荷物をいっぱいに抱えたアリスちゃんが立っていた。
「ありがとうございます」
「お疲れ様」
持ってきた荷物はポトポトと開いたテーブルの上に重ねた。
「さすが先輩すごいですね。もう部屋が片付いてる」
「ははっありがとう」
そこには綺麗に整頓された部屋が広がっていた。
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