472 / 527
本編
遊びごころで、大人のお部屋
しおりを挟む歌バトルが終わって、新しい歌が沢山聴けて満足の、王兄バランも一緒に。竜樹と3王子プラスいつものメンバー、ウィズ何でも実現バーニー君は、新聞寮にホケホケ帰る。
「竜樹様は、面白いことを、沢山ご存知ですねぇ。らっぷばとる?あんなの、歌のようで言葉のようで、戦いのようで遊んでる、楽しかったですねぇ。」
最近撮影するばかり、あまり喋らない先輩侍従兼カメラマン、ミランが、顔にかかった水色の髪をビビ、と振って。カメラ回しながらも、何だか嬉しそう。
「竜樹様と、子供達や王子殿下達が遊んでいると、何だかホッとするんですよ。」
しみじみ、言葉を落とす。
「ん?そうなの?」
竜樹がショボ、と目を細める。
そうなんですよ。
ミランは、優しい光の瞳で、瞬きをゆっくり、ニコニコ。
「絵がもつ、っていうか、見てて、あぁ良いなあ、って。大人ってあまり、自分達だけだと、こんな風に遊ばないですけど、竜樹様みたいに自由がちょっとある大人や、面倒見なきゃいけない子供達がいれば、付き合って遊ぶでしょ。それって、仕事ばっかり柵ばっかりで固まってる大人も嬉しくて、気持ちが潤う感じかな。って、すごく。時々、こんな事やるの!?まだやるの!?アハ、なんて、竜樹様の発想や、子供の元気いっぱい繰り返しに、思う事もあるけれど。専属侍従でカメラマンな私は、他の仕事がある訳じゃないから、時間や制約に押されて、イライラもしないですしね。」
良いなあ、って、思いながら、見て撮ってるんですよね。
そうなんだ。
だからといって、今までミランが、もっと竜樹に、遊ばなきゃ!なんて言ってきた事はない。
基本的にミランというカメラマンは、そこにいる当事者でありながらも、様々な時間を切り取る目であり、傍観者である。
そのミランが、良いなぁ、と。
ずっと見てきて、ただ、しみじみ言うのだ。
竜樹も、まだ遊んでる気分イェ、イェ、とジグザグ蛇行してポテ、ポテ、と歩きながら首を振ってる3王子に笑って。
あー、お返事らぶれたで、ニリヤとも、もっと遊ばなきゃ、って言ってたのに。なかなか遊べてなかったんだよなあ。
今日は、どんけつに、ラップに、久々遊べて良かったなぁ。
「よし、俺も、もっと皆と遊ぶぞぅ~!」
イェ、イェ。3王子の真似して、わざとらしく下手なノリを披露して、歩いた。
うふ!キャハハ!と顔見合わせて、オランネージュ、ネクター、ニリヤが団子になって笑った。ミランに、お助け侍従タカラ、何でもバーニー君に護衛のマルサ王弟達、そして鼻歌イェ、イェ、と合わせてきたリズムバッチリなバラン王兄、みーんながニコニコのニッコリだった。
寮に入った途端に、小ちゃい子組3人サン、セリュー、ロンが。
「おふろはいるぅたつきとーさと、はいるぅ!」
なんて、たかたか走り寄ってきたので、竜樹は纏めてギュッギュしてやった。笑顔、笑顔。
ジェム達おっきい子組は、先に入って濡れ髪、拭き布ごしごし。湯上がりのほんわりした少年の匂い。
女の子組も、ラフィネかーさに、順番に髪の毛を梳かれて、お目々を瞑っておすまし顔、くい、くい、揺れている。
獣人国ワイルドウルフ組も、お耳とお尻尾ピルピル。お国から、お守りするために付いてきた従者達に、濡れた毛を丹念に拭いて貰って。ほこほこになってもう眠たそう。
さあ、入ってない子は、お風呂。
そして寝ましょう、だけれどね。
今夜は、大人だって甘えたい!番組の、緊急撮影をやっつけ本番でやるのだ!明日は歌の競演会だけど、だからこそやっちゃう。疲れた大人の遊びの時間。
生放送じゃない収録だから、不適切な発言も程よくマイルドに。
遊ばなきゃ、大人も子供も、頑張れないのだ。
黒い壁の四角いお部屋、ほわ、とランプの灯が温かい色に光を丸く、影を作って。
テーブルは猫足流麗な白。集まった甘えたい大人達は、皆、椅子に座って顔にお面を被っている。
服装から特定されては、と思ったかどうか、男性はそれぞれに似合う長袖、ズボンのパジャマにガウン。靴下にフカフカの室内履きは踵のないスリッパ型。
女性は体型を拾わない、たっぷりしたワンピース型の、首元までボタンが閉まった、防御力高そうな柔らかく厚い生地の寝巻きに、やっぱりガウンである。それぞれカラフルな靴下に、ピッタリの室内履きは、刺繍も可愛いスリッポン。
女性なら、なんて失礼、破廉恥な!と寝巻き姿を晒すに恥、か?
凄く言いそう、と竜樹は思っていたのだが、厚い生地で肌見せを防御したデザインのそれならば、遊びの場として付き合うのは大丈夫、と判断されるらしい。特にテレビ、ラジオの収録だもの。大勢が見ていて開かれて、いかがわしくなりようもない。
だけど、ここには顔を隠した秘密の、そして何となく親密な空気感があった。
同じように顔を隠したパジャマの竜樹が、声を変えるボタン型の魔道具を襟に付けて、ポワポワ声で。
『こんばんは。私、名乗るほどの者ではございません、Tとお呼び下さい。今夜は、秘密の大人だけのパジャマパーティ。何でも、そう、うっかり心の奥底にある、あんな事やこんな事、昼間公には言っちゃいけないあれこれを、そっと語り合う真夜中のお部屋。サル・デ・ラ・ヌーヴェル・リュンヌ。語り合うテーマは、大人だって甘えたい•••です。』
参加者を。ランプのほんのりした光と影で判別し難い上に、顔の下半分からしか映さないアングルで、ゆっくりカメラを動かして視点を流していく。音楽もない、静かな、静かな。
『さあ、ミルクの入ったお茶を一口。喉を湿らせて、皆様、自己紹介から。では、こちらのご婦人から。』
竜樹•••Tの差し出す手を前に、大きくも小さくもない女性、白い仮面、口元だけが露わになっていると、どうして色を感じるのだろう?艶っぽい雰囲気と共に。
マルグリット王妃。そう、ノリノリで来ちゃったマルグリット王妃が、パクリ、と口を開く。
『こんばんは。私、Mとお呼び下さいな。一応身分ある人の奥さんをしておりますの。女主人のお仕事も任されておりまして、既婚者ならではの、甘えたい!がありますのよ、それをお話できたら。』
ニッコリ、口元が笑む。
次々と。
眠りの呪いにかけられたタイラスの母親、ミモザ夫人はIM。
音楽だけじゃないのか!?バラン王兄は、B。
タイラスの婚約者、キリッとした美人騎士だけど、どこかズレてるポムドゥテール嬢は、P。
竜樹をお父さん的にラブ、男娼あがりのヴィフアートは色々闇を持ってそう、V。
そして、何で来ちゃったんだ、パシフィストの王様、3王子の父親、ハルサ王は、H。
私を引き込まないで下さいッと抵抗したけど、明日のおやつに釣られて渋々参加、何でも実現バーニー君はBN。
『参加者はこの7名でお送りします。身分ある方もいますが、問わぬが花、このお部屋では、ざっくばらんにお話しましょう。さて、大人だって甘えたい、ですけれども。まずこのお話のキッカケになったのが、P嬢の、寝る前にご自分のお胸をふにふにして、安らがないと眠れない、って事からだったんですよね。まぁ、ありますよね!そんな事、誰にも言えないそんな癖や、甘えた。』
P(ポムドゥテール)
『はい•••お恥ずかしいですが、そう言ってもらえて、ホッと致します。母が病気で寝込んでおりまして、幼い頃から、なかなか触れ合いが少なかった、多分そんな原因かと思うのですが。私、いつまで経っても、その幼い甘えと大人の何か欲望的なものも、ちょっと混ざった不埒な、そんな事が、やめられないんです。』
恥ずかしいと言いつつ、ポムドゥテール嬢は、このお部屋に出てくれる良い人である。
V(ヴィフアート)
『だから、そういうの誰にでもある、って俺も言ったんだ。性癖っていうかさ、可愛いもんだろ。殴られないと気持ちよくなれない、とかじゃないんだし。胸をふにふにするくらい。』
竜樹の依頼なら二つ返事、ヴィフアートがお茶のカップを両手で包んできゅむきゅむと揉みながら。すす、とミルキーな中身を飲んだ。
T(竜樹)
『うん、可愛いもんだよねぇ。俺はね、小さい頃、養母のマリ•••ウ、ゥン!母の髪を、口でハミハミするのが、やめられなかったの。甘えたい時にね。そのせいか知らんけど、今でも疲れた時とか、癒されたいなぁ、って時、無意識に養ってる子供達の髪をサラサラ撫で撫でしてたりします。それから、その、え~と、す、好きな女性の髪を唇で感じたいなぁ、って。チュッてしたいな!って、おもいます!何か髪が好きよ、俺は。あ~照れる!恥ずかしい!』
ヴィフアート、無言で竜樹に頭を差し出す。くりくり、照れ隠しもあって盛んに撫でる竜樹である。嬉しそうに撫でられているヴィフアートことアー兄ちゃんは、ブレずに竜樹ラブだ。
B(バラン王兄)
『クックック、クク。T殿にそんな好みがあったとはね!そうだよなぁ、何となく、甘えたいっていうほんわりした気持ちは、幼い頃の触れ合いの記憶と、無関係ではないのかも。私だって勿論甘えたいので、婚約者に、甘えまくっている!音楽の話を聞いてもらったり、一緒に聴いたり、演奏を聴いて貰ったり、とにかく、私の好きな音楽の事を一緒に体験してくれる、これって凄く私が飢えていた事なんだ。成長過程で、家族からは、音楽好きなのだね、へー、くらいの平熱な感じだったのでねぇ。』
バラン王兄は身バレだろ、な話だが、この人が話すと音楽からは離れられないのだろう。やっぱし。
そして婚約者のパージュさん、ウンザリはしてないのだろうか。
M(マルグリット王妃)
『甘えたい。凄く分かりますわぁ。私も頑張って仕事したりするのって、自分のためにでもありますけど、誰かの為に、って所だって勿論、ありますわ。そして、だからこそ、問題が起これば矢継ぎ早に、あれが終わったらこれ!これが終わったらこっち!って•••たまには、本当に、疲れ切ってしまうんですの。ちゃんと信じられる人以外に弱味を見せては、侮られる。だけど、そんな時、あぁ、誰かが、背中を、ぽん、ぽん。撫で、撫で、してくれて。頑張ったね、良くやったね、良い子、良い子。•••ってしてくれないかしらねぇ~、って痛切に思うんですのよ。夢想しますわ。寧ろ、想像して糧にしてますわ!自分で満たしてやらないと、本当、切羽詰まった状態に、なりかねないんですもの。そうして、だから勿論、私って、あったかい掌に、弱いんですの。』
うう、身につまされる。
バーニー君が呻いた。そしてこの仮面、どうしてウサ耳、付いているんだ。
ーーーー
世間では連休でしたのですね!
どうりで、アクセス増えた訳でした。
気に入ったら本作、読んでやってねえ。
あと1日、惜しみながらゆっくりされて下さい。
良き休日を!!
誤字報告も幾つかいただきました、ありがとうございます。
ポロポロりすがどんぐりを落とすように間違っとる。感謝です。
(^o^)
84
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる