王子様を放送します

竹 美津

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本編

石化

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ジャスミン嬢は、え?何だって?みたいな、キョトンとした顔を。次第に、ムーッと怒らせて、罵り始めた。

「貴方がそんな愚かな女性だったなんて思いもよらなかったわ、ミモザ夫人!これだから甘っちょろいママンは嫌よ!ヘリオトロープ様!男性の貴方ならば、分かるでしょう?劣ったポムドゥテール嬢なんかより、私の方が優れてるって!」

「いいや。」
タイラスの父、ヘリオトロープも、ポムドゥテール嬢の空いた方の片手を、ギュッと握って、彼女に優しく穏やかに微笑みかけると。
「何か自分に利があれば、身内にまで呪いをかけて思いを成し遂げようとする、そんな寝首をかかれそうな怖い女性より。素直で、少し幼い所もあろうが、頑張り屋で、自分の恥より他人を慮ってくれる、愛せるお嫁さんの方が良いに決まっている。伸び代だってあるし、中々良いお嫁さんだと思うよ。」

タイラスも、私達、親より、見る目があったんだね。

狂ったように。
というのを体現して、ジャスミン嬢は暴れまくった。抑えている兵達は必死に。竜樹の護衛のマルサがススッと近寄って、ジャスミン嬢の首の後ろに手をかざす。ぽわ、ビリビリ、と何か光って、ビクン!としたジャスミン嬢は、ガクン!と意識を失って、ズルズルと椅子まで引っ張って来られてドサっと座らせられた。

「手間がかかるのは、全くどっちだ、っつうんだよ。誰が見てもお嫁さんは、ポムドゥテール嬢一択だろ。はぁ、まあこの睡眠というか麻痺の魔法は、大体半日続くから、安心してくれ。起きてうるさかったらまたビリビリさせれば良いよ。」
頼もしいマルサである。

「その•••私、私を、本当に、選んで下さると?私などで、良いのだろうか?ミモザ夫人、ヘリオトロープ様、私•••。」
おずおずと。可愛げとは、こういう事だ、と思える、少し上気した、すべすべほっぺの赤ちゃんのような顔で、ポムドゥテール嬢がマーブル伯爵家夫妻に、自分の義母義父となろうかという2人に。

「良いのよ。今まで意地悪して、ごめんなさいね。お願いよ、私の娘になってちょうだい。どうか、ミモザお義母様って、呼んでね。」
「私からも頼むよ。優しい君のような子が娘になるなら、私達も幸せなんだ。」

スッキリすっかり諦めたのに。
そうしたら、コロンと結婚が、お義父様とお義母様が、転がり落ちてきた。

「ポムドゥテールお姉様!ぼく、弟になるね!嬉しいです!へへ。」
コリブリも、ととと、と側に寄って、ポムドゥテール嬢に抱きついた。
タイラスは車椅子で、赤くなったまま、ムーッとした顔で寝ている。全てを聞いているのだから、きっとこれは、「俺を差し置いて皆で!!ううう、起きたいよ!!」って所なのだろう。
「うふふ、タイラス、何だか嫉妬してるみたいよ。あなたのお嫁さんは、私の娘なんだから、女性同士のお話は私にお任せよ!ふふ、嬉しいわ!これからが楽しみ、楽しみね!」
あははは!と皆して笑って、和やかに。

「よかったね。これで、明日、呪いが解ければいう事ないね。吟遊詩人や音楽家の皆に頑張ってもらわないと。それにしても、ポムドゥテール嬢のお母様の石化は、かわいそうにね。竜樹、竜樹の世界で、石化ってないの?」
オランネージュが、纏めて一言いえば、子供達が、キラン!と期待を込めた眼差しで竜樹を。
いや、さすがに。
「物語では石化ってあるけど•••あー、あー、物語からでも何か手掛かりがないか•••スマホで検索してみよっか。ポムドゥテール嬢、石化について、詳しく教えてくれますか?」
竜樹は、即断で、できない、と言ってしまいたくなかった。期待をさせてがっかり、もあるけれど、何が「良い」になるか、今までもひょんな事から発想が形になってきたのだから。

子供達は、たつきとーさ、しらべてくれう!とこちゃこちゃ集まって、紙にメモをとる姿勢をとった竜樹に手をかけ身体をくっつけ、ポムドゥテール嬢のお手てを引っ張って、側の床に座らせた。マーブル伯爵家の皆も、心配そうに寄ってきて、皆で円座、自分の事として気にかける。
ラフィネは、うんうん、と頷きながら、お茶を淹れに行った。

ジャスミン嬢は椅子に縛りつけられて、ガックリ首を落として、何だか恐ろしいような顔をしている。性格も含めて、正体が顕に。起きたとしても何も出来ない状態である。今後、呪いをしようとしないように誓約させよう、とマルサが兵に話している。

「石化は、特定の魔獣に噛まれる事で起こります。どうやら、魔獣の口に住む、小さな、小さな、生き物ーー目に見えない大きさのものーーが、身体の中で増えて、それが、身体の栄養を食べて、石化の成分を吐き出している、という事のようです。生き物が増えると、身体を眠らせてしまうし、また、振動などでも、動かすと痛いので、そーっとしておかなければならないのです。身体の全てが石化するには、20年位かかります。私の母はーーもう、15年は眠っていますか。治癒の魔法をかけると、進行が遅くなるので、家では3日毎に、治癒魔法をかけてもらっています。父が。」

ポムドゥテール嬢は、目を伏せると、悲しそうに。
「父が、石化していたとしても、私がお嫁に行くのを、伝えてあげたい、見せてあげたいと。それまで生きながらえさせてやりたいと、言って•••。」
治癒魔法を3日毎にかけるのも、きっと経済的になかなか地味に負担がかかる事だろう。ポムドゥテール嬢が、おしゃれをしないのは、もしかしたらその余裕が、お家にないからかもしれない。ミモザ夫人は思い至り、私は何も分かってなかった!と、心を痛ませた。

「治癒って、身体の免疫機能を活発にさせる、って鑑定とかルルー治療師の知識で教えてもらったけど。免疫で進行が食い止められる、って、病原菌や、ウイルスみたいなもの、って事なのかな。免疫上げる方法調べるか。あぁ~、体内も浄化で、菌が殺菌出来ればいいのにね!まぁ、腸内細菌とか、色々あるから、それに限ってって無理かなぁ。分離で、生きてる者から、病原菌だけ取り出す、なんて出来ないだろうしねえ•••。それが出来たら分離魔法のできる人は、随分便利でなんでもできるーーー。」
「竜樹様。」

カメラを回していたミランが、ニコニコニッコリ、として。
「それ以上は、ルルー治療師を交えてやりましょう。」

ん?
と振り返って、交流室の隅っこで、アルディ王子の担当で控えていたはずの、ルルー治療師が、ずずい、とメモを持ち瞳をキラキラ輝かせて寄ってきていた。

「ねえねえ?眠ってる、って、かふぇいんじゃ、起きないの?」
ネクターが、疑問を口にする。
「いやいや、カフェインって、眠くはならないけど、そこまで強くはないだろうよね?」
竜樹は、自分の常識に則りそう応えるが。
「分かりませんよ。竜樹様の世界にない、石化なのです。何が効くか、少し、飲ませて差し上げる位、患者さんを苦しませずに試す事は出来るのですから、やってみませんか!」
ルルー治療師は、ふん!と鼻息を吹いて、興奮。

「浄化、分離をそんな風に使う事は、考えもしませんでした!!鑑定で安全を確かめてから、実験をしましょう、浄化、分離も人によるのですから、何人か使える人を呼んで練習をしてもらってね!すぐに結果は出るでしょう!ところで、めんえき?人が自分で治ってゆく力の事ですよね、その、めんえき力を上げる方法、教えて下さい!!」

「え~っと、待ってね。」

1つ、適度に活動する。休養もする。朝起きて夜寝る。夜の方が免疫下がる。夜ちゃんと寝る

1つ、身体を温める。体温が高いと免疫も上がる。しょうがを食事に取り入れて温めたり。お風呂で湯船に浸かるのも良い。

1つ、ストレスを減らすこと。ストレスがかかると、交感神経と副交感神経、つまり自律神経の興奮と抑制のバランスが崩れて、これらの神経が免疫細胞の働きに関わってるので低下するらしい

1つ、腸内環境を整えること。腸は免疫関係の細胞が沢山集まっていて、腸内細菌のバランスが良い状態だと、免疫細胞が活性化され、抗体も良くでき、調整機能も良くなる
ヨーグルトとか良い

「他にも、笑うと免疫上がるって言われたりしてる。となると、眠ってる、っていう状況は、いかにも良くないね。」

石化をスマホで調べていると、竜樹は、石灰化、という項目に引っ掛かった。カルシウム摂りすぎや、骨から溶けて、身体にカルシウムが溜まってしまうらしい。カルシウム、骨化している、とも言えるのか?

「石灰化•••石化の石の成分まで気にした事はなかったですね。それは、即急に調べなければ!石灰化を何とかする方法は、あるんですか?」
「うーん、炎症を起こすと痛いから、痛み止めして、自然に吸収される事が多いらしいんだけど、吸い取ったり、削ったりもあるらしい。砕けば身体に自然に吸収されるって方法もあるみたい。ステロイド、とかは炎症を抑えてんのかな。癒しで効くかね。でもさ、やっぱり、眠って静かに石化していく、って、病原菌が働くに都合の良い身体の状態な気がするね。鑑定でそこの所、調べてみたいね。」

「あ、あの、あの。」
ポムドゥテール嬢は、手をミモザお義母様とヘリオトロープお義父様に片方ずつ取られ、肩に後ろから、義理の弟コリブリ君に手を置かれて、周りに子供達、ふわ、ふわ、と喋った。
「お、お母様は、他に何も出来る事はないと、治癒師の方にも、仕方ないと、あ、諦められて。あの、父に、父に、知らせてやりたく!!」

うん、うん。
「まだ、試してみる、って段階ですよ。良くなるかどうかは、分からない。それでも、という事ならば、ポムドゥテール嬢、お父さんに教えてあげて下さい。そして、良かったら話を聞きにこちらへいらしてもらえば。その•••ご婚約の事や、呪いの事を、説明できるでしょう?明日も、一緒に、会場にいてもらったら?」
「それは良いです!私達も、ちゃんと謝罪とご挨拶がしたいですわ!」
「うんうん、ご挨拶を、改めてちゃんとしたいね。呼んでいただいて、というのも失礼かもしれないが、良い機会だから。」

という事で、ポムドゥテール嬢がメッセージを書いて、お父さんを呼ぶ事になった。

「ポムドゥテールじょう。あのね、ぼくも、すこし、ラフィネかーさのおむねや、マレおねえさんのおむねや、コクリコおかあさんの、おむねや、まるぐりっとかあさまのおむねを、さわりたくなるとき、あるの。なかまだね。」

うん。子供だから許されるんだゾ。
マルサが、ニン、と笑ったが、ニリヤがそんな事を照れ照れ言い、子供達は、ひそひそとひみつの会話を始めた。

「おれ、竜樹とーさのひじのしわしわを、さわさわしたいんだ。触るとなんか、安らぐの。」
「俺、なんかさみしいとき、口をちゅっ、ちゅっ、てならしちゃう。」
「つめをがじがじ、かじっちゃうんだ。」
「まん丸くならないと、ねむれないの。」

うんうん、と見守りつつも、ルルー治療師と石化について色々考えていた竜樹は、パッと振り返り、ふんす、と子供達に宣言した。

「皆、甘えたいとき、あるよね。男の子の部屋と、女の子の部屋、テレビでやるって言っただろ?」

言ったね。言った。まさか。
子供達が、?となり、ミランがカメラを構えたまま、ニハッとして。

「大人だって甘えたい。深夜の大きな男の子大きな女の子合同、ひみつのお話部屋を、今夜、生放送しちゃおう!!」

みんなは、昼間にアーカイブから観てね。

えーっ!?とブーブー。
ぼくもでたいよ、おれも!となって、こどものへやも、後日やる事になった。

ーーーーー

竹美津です。いつもご覧になって下さり、ありがとうございます。
急なお知らせで失礼します。
物語を面白く続けられたら、との気持ちがあり、最近お話が薄いかな?大分資料を読んだり、練る時間が足りてないな、と思うので。

明日から8月いっぱいまで、更新をお休みしたいと思います。

夏のおやすみに、沢山お話に盛り込める色々を取り込んで、また書きます。
少し時間は開いちゃいますが、どうか、良かったらまた9月1日から、更新しますので、見てやって下さい。
よろしくお願いします。
m(_ _)m

次は、大きな男の子と女の子のひみつのお部屋の放送から!できたらいいな、と思っています。
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