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本編
デュランの治療
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お休み明け、また今日からよろしくお願いします!
ーーーー⭐︎
「怪我人はこちらですか!?」
アルディ王子付きの、ルルー魔法治療師が、バタバタン!と交流室に入ってきた。ミランがカメラをぶら下げて小走りに後ろから。撮影よりも、怪我人の手当てが出来る者探しを優先してくれたのだ。
普段ならルルーはいつもアルディ王子と一緒にいるのに、今日に限って、先ほどまで治療記録と日誌をワイルドウルフの父王宛に渡しに、かの国の連絡員と会っている所だった。
「ルルー!!この子だよ、デュラン!背中、いっぱい血!」
汗かき息整え、ピンクブラウンの長髪を乱して、丸メガネもズレたルルーは、たたっと迎えたアルディ王子に服を引っ張られて、竜樹が抱えたデュランの背中に周った。
「•••これは痛いでしょう。いい子だね、すぐ治療するからね。傷をよく見せて、服を脱いで。」
しゃがんで手を差し伸べようとしたルルーの言葉に、ビクン!とデュランは肩を揺らして、バッと振り返り、涙の溢れた瞳で。
「や、や!!」
ぐりんと背中を竜樹の腹に押し付けるように隠し、擦れた痛みにぐぐ、と口を噛み締めながらも、ルルーを真剣な顔でジッと見た。
「デュラン、治してもらお?大丈夫だよ?ルルーは、私のぜんそくもみてくれてるからね?」
「怖くないですよ。」
アルディ王子とルルー、そしてそれを見守る寮の皆とエフォールやピティエ達も、心配してハラハラ。
「デュラン、どうした?ルルーに治療してもらおうよ?それとも、何か、治療が嫌な理由ある?」
白い毛を纏ったお耳を、指で撫でて、竜樹がそっと内緒話のように聞く。
むぐ。
目を伏せ、唇を噛んだデュランは、ぽそ、と竜樹だけに聞こえるくらいの声で。
「•••ちりょう、してない。フロン。」
「フロン?フロンが治療してない?」
「うん。」
ん?
んん?あ!
「フロンは、デュランが怪我させちゃった人か!?」
うん。ぐしゅん、と鼻をすする。
「デュランは、怪我させちゃったフロンが治療してないから、自分も治療できない、って思ってるのか?」
傷に触らないよう肩をとんとんしてやりながら、そっと聞けば、声を上擦らせて。
「うん。だって、フロンち、ちりょうひ、ないから。フロンいっぱい血がでた、おれ、おれが、いっしょにあそべないからって、ぶんって、しちゃったから!」
話を聞かねば治療もできぬ。
フロンは、デュランの家の近所に住んでいた子で、良く遊んでいたのだという。
「よし!じゃあ、デュラン。ルルーも一緒に、この後、フロンを治療してもらいに行こう。デュラン、フロンの家まで案内してくれるかな?」
「•••ほんと?フロン治してくれる?」
竜樹とルルー、そして寮の皆を見回す。だから皆で。
「治すよ。だからね。」
「デュランもなおさなきゃ!」
「案内するの、元気じゃないと歩けないよ!」
「フロンもなおせるか、デュランたしかめなきゃだよ!」
「ルルーに治してもらおうよ!」
ルルーが優しい顔で、うんうん、ね?皆の言う通りだよ?とデュランを覗き込む。
竜樹のお腹に背中を押し付けたまま、デュランは思い悩むような顔で眉を顰めていたが。
「デュランが案内してくれないと、フロンの家、分からないよ。王宮から沢山歩くかも。デュラン、元気になっとかないと、フロンの家に着かないと困るよ?」
竜樹の言い聞かせに、俯いて、躊躇いながらもコクン、と頷いた。
「酷いな。鞭で打ったんですって?こんな小さな子を?」
痛むのを、血で背中に張り付いたボロ服を、水で湿らせながらゆっくり脱がせて、傷を顕にする。そうして、浄化してから、ルルーが手を傷に翳して。じわりじわじわ、傷がピンク色に淡くなって塞がって、肉が盛り上がっていく。
「そうなんですって。門番さんが見ていたそうなんだけれど。」
大人達も子供達も、目の当たりにした傷に、憤りを覚える。
ひどい、ひどいね、とニリヤも鼻息をふす!とする。
「お、おれがフロンにけが、させちゃったから。モルトゥにムチされても、しかたない。」
しょぼ、と肩を落とす。
仕方ない訳あるか!と言いたい所だが、今それを言っても。ルルーが傷痕がまだ残るくらいで治療をやめた。急に治しすぎると凄くお腹が空いて、治す力が活発になりすぎて熱が出たりもするから、と。
クルル、とデュランのお腹が鳴って。
「フロンも治したらお腹空くだろうね。料理長に食事を用意してもらってから行こう。タンパク質かな?鳥の照り焼きとたまごサンドとかどうかな?」
さあ、デュランもちゃんと元気になっておかなきゃ、と竜樹がタカラに目配せすれば、頷くのももどかしげに駆け出して、食べさせる軽食と持って行く料理を頼みに。
「さあ、準備する間に、デュランの事を沢山教えてくれるかい?」
竜樹が言えば。
「俺たちの兄弟になるんだからな!よろしくな!」
とジェムが、デュランの手を取ってギュッと握った。その上にアルディ王子もパッと手を置いて。
「私とも友達になってね。同じ獣人どうし、だもんね。」
ニッコリとした。
友達、ともだち、兄弟、にいちゃんだぞ、よろしくね、とわやわや集まって。皆で質問して。
デュランの拙いお話を、統合するに。
デュランはお父さんが工事現場の事故で死んでしまった。お父さんはシロクマ獣人で、パシフィストに来て肉体労働していたようだ。
お母さんは、デュランを産んだ時に死んでしまっていた。出稼ぎするにも預ける人のないお父さんは、デュランを連れてこの国に来ていたのだ。
両親が亡くなって、引き取る人は、となった時、近所にいた、身寄りのない子供を引き取っては虐めて働かせていた、モルトゥという隻腕の男が。腹を空かせたデュランを、僅かな食べ物をチラつかせて家に引っ張り込んだ。そして他の子供達と同じように働かせ始めた。
「モルトゥ、たくさんムチ、する。はたらかないとごはんくれない、から、だから。」
デュランはモルトゥに言いつけられて外の水場で汚れた服を洗っていた。工事をする人の服の洗濯を請け負って、モルトゥはそれを子供達にさせ、幾らかお金を得ていたのだそうである。
今までよく遊んでいた近所の小さな子、フロンが遊ぼうよ、とデュランにくっついてグイグイしたから、本当は遊びたいけど仕事しなきゃ、お腹もずっと減ってるしで、イライラして、ダメなの!と乱暴に、振り払ってしまった。
アルディ王子の後ろに控える、護衛の狐獣人クルーが。シロクマ獣人なら、かなり力が強いから、子供同士でも獣人と人、加減を間違えると、結構危ないと補足をいう。大人の方が加減は慣れて出来やすい、と。
運悪く、フロンが振り払われて転んだ後ろに、尖った石があった。
肩が切り裂かれて。
「フロン、いたいのに。ないてたのに。あそぼってしただけなのに。おれ、悪いこになった。ごめんなさい•••。父ちゃん、シロクマはつよいから、よわいこいじめちゃダメって、いってたのに、いってたのに!」
まん丸のお耳が伏せて、ふるふる震える。
うんうん。デュランは良い子。
「わざとじゃないじゃない?フロンに謝ろうね。ね?」
「う、う、でも、でも、おれ、まただれかいじめちゃうかも!ブンってしちゃうかも!だって、そんなに強くしたつもり、な、なかったのに、それなのに•••。」
クルーが、力の強い獣人が子供の頃から加減を覚えるには、同じく力の強い丈夫な獣人同士で遊び合ったりして、痛かったりして覚えてゆくのだ、と。ならば、このパシフィストでは、周りが比べて弱い子ばかり。デュランは嘆く。どうしたらいいのだろう?
「おれ、悪いこ!だれかに、ケガさせたくない!だからおれに、近寄らないで!」
ひんひん、と竜樹の胸に顔を埋める。
確かにしがみつくその手の力は、めっぽう痛い。が、竜樹は眉をちょっと顰め我慢しつつ、それに手を重ねて、ぽんぽん、と宥め、治った背中をゆるりと撫でた。
「それについては、ワイルドウルフのアルディ王子のお父さん、ブレイブ王様に、何か方法がないか、ちょっと聞いてみよう。獣人だって、コーディネーターが作られた時みたいに、周りに強い獣人ばっかりな訳じゃないものね?きっと何か良い方法があるんじゃない?」
「うん!お父様に聞いてみよう!ワイルドウルフと繋がってるテレビ電話、私とってくる!」
タタッと駆け出す。クルーも小走りに付いて、皆が、頼むよアルディ王子!と声かけて。
たまごサンドと照り焼きサンドが届く頃には、アルディ王子が寝起きする客室からテレビ電話を持ってきて。遠慮がちなデュランに皆でまた、元気になっとかないと!と勧めてモグモグさせ、食べ始めたら止まらなく、必死でパクつくままに、電話を繋げる。
モグモグ、ゴクン。お茶も飲みなされ。
トゥルルルル。トゥルルルル。プチ
『アルディ?どうしたの、いつもの時間じゃないわね?』
何かあった?と心配気なのはラーヴ王妃。アルディ王子のお母さん。侍女さんが、テレビ電話が鳴ってます、と連れてきてくれたらしい。
「お母様!お父様にお話があって。今、お仕事ちゅう?」
『ええ、そうね。休憩できるかどうか、聞いてみるわね。ちょっと待っててね。その間に、お母様にも、急にお電話のお話をしてちょうだい?アルディの事だから、きっとお仕事中でも聞かなきゃいけないような、大事なことがあったんでしょう?』
ひこひこ、と狼耳を横に広げて、尻尾をブン!と振って、ラーヴ王妃は竜樹達に挨拶しながら、心配顔を崩さなかった。
「それがね•••。」
『アルディ!どうしたの!?』
駆け寄るファング王太子。アルディ王子のお兄さん。金黒の目が、クリリッと大きく見開かれている。
『急に電話だって聞いて。お父様はもう少しで休憩にいらっしゃるよ。』
デュランがサンドイッチを食べ終わる頃、ブレイブ王様はバン!と扉を勢いよく開けて、テレビ電話でデュランの話をしていたラーヴ王妃とファング王太子の所に大股でやってきた。お耳と尻尾の毛が、ビビ、と立っている。
「お父様!デュランを助けてあげて!」
『あなた。』
『お父様!』
ふうむ、と話を聞いて手を唇の側に、トントン、と叩いて考え、ブレイブ王は。
『アルディ、よく分かった。竜樹様、我ら獣人の子供、身寄りのないデュランを子供としてくれて、ありがとう。こちらのワイルドウルフで引き取るという手もあるけれど•••。』
ギギュウ!と竜樹に抱きついて離れないデュランを、優しい目で見ながら。
『それは止めておいた方が良さそうだ。両親が居ない所、せっかく信用ができた竜樹様と離して連れ回しては、どんなに心細かろう。それに、クマ種族の里に、母がいないからと言っても、デュランを預けなかったなら、父親は里から距離を置く理由があったのかもしれない。ならば、デュランをこちらで引き取るのは、蟠りがあったりしそうだな。』
「父ちゃんが、母ちゃんとけっこんするとき、反対されてたって。ふたりで、かけおちしたんだって。」
それで、獣人の出産に詳しくない人間のお産婆さんの所で、とても難産でデュランを産んだ母親は、亡くなってしまったのだ。
「父ちゃん、帰れない、デュランをさびしくさせてごめんな、って良くいってた。」
ふむふむ。
『そうだな、クマ種族の所の纏め役の家で、婚約者のいた娘が何年か前に、後ろ盾のない孤児のシロクマ獣人と駆け落ちした話を、私も聞いている。となれば、デュランの祖父や祖母もいようが、会うのはまた後でにしよう。差し当たっての困り事は、力の制御だな?』
「そうです、ブレイブ王様。何か良い方法ないですかね。」
「デュラン、いいこなの。ケガさせたくないんだよ。」
ニリヤがデュランの頭を撫でこしつつ。
「わざとじゃないんだよ!」
「俺たち、デュランと仲良くしたいよ!王様!」
「私も!仲良くしたい!お父様!助けてほしいの!」
アルディ王子の必死のお願いを、うむ!と頷いて受けたブレイブ王は、話を続ける。
『私達は住処は大体似たような獣人種族毎に纏まっているのだけど、強い獣人と弱い獣人で婚姻する事もあるし、街中では混ざり合って交流しているから、時々トラブルも起こる。大体は強い獣人の子が、力加減が出来ずに、悪気なく力を振るってしまう事が多い。だから、強い種族の子が他の種族の子供達がいる場所に混ざっている時は、力を一定以上は制御する腕輪を付けさせていたりするんだ。魔法の力のあまりない獣人でも、それくらいの魔道具を作れる者は結構いて、沢山種類もある。付け外しは可能で、綺麗で拘束されるような物でもないから、安心しておくれ。悪用すれば、獣人を拘束する手段に使われかねないから、使用は届出制にしてある。腕輪があれば、デュランも安心して皆と触れ合えるのではないか?早速手続き、用意して、そちらに送ろうと•••。』
『お父様!』
キラキラ!と瞳を光らせ、お耳をピン!と立てたファング王太子が。
『私が腕輪を、アルディとデュランの所に届けます!』
ん?
ブレイブ王とラーヴ王妃が、息子をはたと見る。
『だって、だって、大事な物でしょう!国外に持ち出して、悪用されないようにしないと!だったら私が届けます!アルディがいる所が、どんな所か、知りたいし•••転移魔法陣も使ってみたいし、私も国外で、色々と見聞きしてみたいです!』
『あら!ずるいわファング。お母様だってアルディに会いに行きたいわよ?』
クス!と笑う王妃は、ファング王太子に顔を寄せて、お耳をハタハタと倒しては立てた。
『うーん。まぁ、良いだろう。ファング、腕輪を届けてやりなさい。お知らせもなく行けないから、パシフィスト王様達への連絡は、こちらからしておくからね、アルディ。準備に何日か、時間を少し、頂こう。待ってておくれ、アルディ、デュラン。ファングの事だから大丈夫とは思うが、よそのお国へお邪魔するのだから、気配りして良い子にするのだぞ、ファング。』
『はい!お父様!』
「ありがとう!お父様!兄様!」
「ありがとうございます、ブレイブ王様!ファング王太子様も、お待ちしてますよ!それに、その、力を制御する腕輪、ついさっき会議した話で出た、力の制御ができないで裏社会に行く事になってる人たちや、予備軍の悩んでる子や親達に、とっても良いものかも?」
『うむ、興味があって先程の会議、ワイルドウルフの皆と仕事をしながらテレビを見させてもらっていたよ、竜樹殿。しかしその、なんだ、成人向け商品とは、大胆な、コホン。いやいや、今は腕輪の話か。確かに良き物にもなろうが、悪用されないようにハルサ王様とも話をせねば!』
成人向け?とハテナになっているラーヴ王妃の方をチラリと見て、慌てて話の方向転換をするブレイブ王様であった。
電話を切ると、わっと皆がデュランに集まる。
「良かったね!デュラン、なんとかなるよ!」
「なかよく、できる!」
「ウ、ウン。」
デュランも戸惑いながら、頷いて。
裏社会のボス、ミニュイに腕輪の話をするべきか。
考えながら、さて。
「デュラン。フロンの所に、さあ、行ってみようか。」
胸の中のデュランは、もう三角の目をしていない。少しだけふっくらと、濡れたお目々を揺らして見上げて、ウン、と素直にお返事。
「モルトゥに虐められて使われている子供達の事も、何とかしなければね。」
腹に溜まった力を、そのままに。
フロンの家は、下町にあるのだという。
ーーーー⭐︎
「怪我人はこちらですか!?」
アルディ王子付きの、ルルー魔法治療師が、バタバタン!と交流室に入ってきた。ミランがカメラをぶら下げて小走りに後ろから。撮影よりも、怪我人の手当てが出来る者探しを優先してくれたのだ。
普段ならルルーはいつもアルディ王子と一緒にいるのに、今日に限って、先ほどまで治療記録と日誌をワイルドウルフの父王宛に渡しに、かの国の連絡員と会っている所だった。
「ルルー!!この子だよ、デュラン!背中、いっぱい血!」
汗かき息整え、ピンクブラウンの長髪を乱して、丸メガネもズレたルルーは、たたっと迎えたアルディ王子に服を引っ張られて、竜樹が抱えたデュランの背中に周った。
「•••これは痛いでしょう。いい子だね、すぐ治療するからね。傷をよく見せて、服を脱いで。」
しゃがんで手を差し伸べようとしたルルーの言葉に、ビクン!とデュランは肩を揺らして、バッと振り返り、涙の溢れた瞳で。
「や、や!!」
ぐりんと背中を竜樹の腹に押し付けるように隠し、擦れた痛みにぐぐ、と口を噛み締めながらも、ルルーを真剣な顔でジッと見た。
「デュラン、治してもらお?大丈夫だよ?ルルーは、私のぜんそくもみてくれてるからね?」
「怖くないですよ。」
アルディ王子とルルー、そしてそれを見守る寮の皆とエフォールやピティエ達も、心配してハラハラ。
「デュラン、どうした?ルルーに治療してもらおうよ?それとも、何か、治療が嫌な理由ある?」
白い毛を纏ったお耳を、指で撫でて、竜樹がそっと内緒話のように聞く。
むぐ。
目を伏せ、唇を噛んだデュランは、ぽそ、と竜樹だけに聞こえるくらいの声で。
「•••ちりょう、してない。フロン。」
「フロン?フロンが治療してない?」
「うん。」
ん?
んん?あ!
「フロンは、デュランが怪我させちゃった人か!?」
うん。ぐしゅん、と鼻をすする。
「デュランは、怪我させちゃったフロンが治療してないから、自分も治療できない、って思ってるのか?」
傷に触らないよう肩をとんとんしてやりながら、そっと聞けば、声を上擦らせて。
「うん。だって、フロンち、ちりょうひ、ないから。フロンいっぱい血がでた、おれ、おれが、いっしょにあそべないからって、ぶんって、しちゃったから!」
話を聞かねば治療もできぬ。
フロンは、デュランの家の近所に住んでいた子で、良く遊んでいたのだという。
「よし!じゃあ、デュラン。ルルーも一緒に、この後、フロンを治療してもらいに行こう。デュラン、フロンの家まで案内してくれるかな?」
「•••ほんと?フロン治してくれる?」
竜樹とルルー、そして寮の皆を見回す。だから皆で。
「治すよ。だからね。」
「デュランもなおさなきゃ!」
「案内するの、元気じゃないと歩けないよ!」
「フロンもなおせるか、デュランたしかめなきゃだよ!」
「ルルーに治してもらおうよ!」
ルルーが優しい顔で、うんうん、ね?皆の言う通りだよ?とデュランを覗き込む。
竜樹のお腹に背中を押し付けたまま、デュランは思い悩むような顔で眉を顰めていたが。
「デュランが案内してくれないと、フロンの家、分からないよ。王宮から沢山歩くかも。デュラン、元気になっとかないと、フロンの家に着かないと困るよ?」
竜樹の言い聞かせに、俯いて、躊躇いながらもコクン、と頷いた。
「酷いな。鞭で打ったんですって?こんな小さな子を?」
痛むのを、血で背中に張り付いたボロ服を、水で湿らせながらゆっくり脱がせて、傷を顕にする。そうして、浄化してから、ルルーが手を傷に翳して。じわりじわじわ、傷がピンク色に淡くなって塞がって、肉が盛り上がっていく。
「そうなんですって。門番さんが見ていたそうなんだけれど。」
大人達も子供達も、目の当たりにした傷に、憤りを覚える。
ひどい、ひどいね、とニリヤも鼻息をふす!とする。
「お、おれがフロンにけが、させちゃったから。モルトゥにムチされても、しかたない。」
しょぼ、と肩を落とす。
仕方ない訳あるか!と言いたい所だが、今それを言っても。ルルーが傷痕がまだ残るくらいで治療をやめた。急に治しすぎると凄くお腹が空いて、治す力が活発になりすぎて熱が出たりもするから、と。
クルル、とデュランのお腹が鳴って。
「フロンも治したらお腹空くだろうね。料理長に食事を用意してもらってから行こう。タンパク質かな?鳥の照り焼きとたまごサンドとかどうかな?」
さあ、デュランもちゃんと元気になっておかなきゃ、と竜樹がタカラに目配せすれば、頷くのももどかしげに駆け出して、食べさせる軽食と持って行く料理を頼みに。
「さあ、準備する間に、デュランの事を沢山教えてくれるかい?」
竜樹が言えば。
「俺たちの兄弟になるんだからな!よろしくな!」
とジェムが、デュランの手を取ってギュッと握った。その上にアルディ王子もパッと手を置いて。
「私とも友達になってね。同じ獣人どうし、だもんね。」
ニッコリとした。
友達、ともだち、兄弟、にいちゃんだぞ、よろしくね、とわやわや集まって。皆で質問して。
デュランの拙いお話を、統合するに。
デュランはお父さんが工事現場の事故で死んでしまった。お父さんはシロクマ獣人で、パシフィストに来て肉体労働していたようだ。
お母さんは、デュランを産んだ時に死んでしまっていた。出稼ぎするにも預ける人のないお父さんは、デュランを連れてこの国に来ていたのだ。
両親が亡くなって、引き取る人は、となった時、近所にいた、身寄りのない子供を引き取っては虐めて働かせていた、モルトゥという隻腕の男が。腹を空かせたデュランを、僅かな食べ物をチラつかせて家に引っ張り込んだ。そして他の子供達と同じように働かせ始めた。
「モルトゥ、たくさんムチ、する。はたらかないとごはんくれない、から、だから。」
デュランはモルトゥに言いつけられて外の水場で汚れた服を洗っていた。工事をする人の服の洗濯を請け負って、モルトゥはそれを子供達にさせ、幾らかお金を得ていたのだそうである。
今までよく遊んでいた近所の小さな子、フロンが遊ぼうよ、とデュランにくっついてグイグイしたから、本当は遊びたいけど仕事しなきゃ、お腹もずっと減ってるしで、イライラして、ダメなの!と乱暴に、振り払ってしまった。
アルディ王子の後ろに控える、護衛の狐獣人クルーが。シロクマ獣人なら、かなり力が強いから、子供同士でも獣人と人、加減を間違えると、結構危ないと補足をいう。大人の方が加減は慣れて出来やすい、と。
運悪く、フロンが振り払われて転んだ後ろに、尖った石があった。
肩が切り裂かれて。
「フロン、いたいのに。ないてたのに。あそぼってしただけなのに。おれ、悪いこになった。ごめんなさい•••。父ちゃん、シロクマはつよいから、よわいこいじめちゃダメって、いってたのに、いってたのに!」
まん丸のお耳が伏せて、ふるふる震える。
うんうん。デュランは良い子。
「わざとじゃないじゃない?フロンに謝ろうね。ね?」
「う、う、でも、でも、おれ、まただれかいじめちゃうかも!ブンってしちゃうかも!だって、そんなに強くしたつもり、な、なかったのに、それなのに•••。」
クルーが、力の強い獣人が子供の頃から加減を覚えるには、同じく力の強い丈夫な獣人同士で遊び合ったりして、痛かったりして覚えてゆくのだ、と。ならば、このパシフィストでは、周りが比べて弱い子ばかり。デュランは嘆く。どうしたらいいのだろう?
「おれ、悪いこ!だれかに、ケガさせたくない!だからおれに、近寄らないで!」
ひんひん、と竜樹の胸に顔を埋める。
確かにしがみつくその手の力は、めっぽう痛い。が、竜樹は眉をちょっと顰め我慢しつつ、それに手を重ねて、ぽんぽん、と宥め、治った背中をゆるりと撫でた。
「それについては、ワイルドウルフのアルディ王子のお父さん、ブレイブ王様に、何か方法がないか、ちょっと聞いてみよう。獣人だって、コーディネーターが作られた時みたいに、周りに強い獣人ばっかりな訳じゃないものね?きっと何か良い方法があるんじゃない?」
「うん!お父様に聞いてみよう!ワイルドウルフと繋がってるテレビ電話、私とってくる!」
タタッと駆け出す。クルーも小走りに付いて、皆が、頼むよアルディ王子!と声かけて。
たまごサンドと照り焼きサンドが届く頃には、アルディ王子が寝起きする客室からテレビ電話を持ってきて。遠慮がちなデュランに皆でまた、元気になっとかないと!と勧めてモグモグさせ、食べ始めたら止まらなく、必死でパクつくままに、電話を繋げる。
モグモグ、ゴクン。お茶も飲みなされ。
トゥルルルル。トゥルルルル。プチ
『アルディ?どうしたの、いつもの時間じゃないわね?』
何かあった?と心配気なのはラーヴ王妃。アルディ王子のお母さん。侍女さんが、テレビ電話が鳴ってます、と連れてきてくれたらしい。
「お母様!お父様にお話があって。今、お仕事ちゅう?」
『ええ、そうね。休憩できるかどうか、聞いてみるわね。ちょっと待っててね。その間に、お母様にも、急にお電話のお話をしてちょうだい?アルディの事だから、きっとお仕事中でも聞かなきゃいけないような、大事なことがあったんでしょう?』
ひこひこ、と狼耳を横に広げて、尻尾をブン!と振って、ラーヴ王妃は竜樹達に挨拶しながら、心配顔を崩さなかった。
「それがね•••。」
『アルディ!どうしたの!?』
駆け寄るファング王太子。アルディ王子のお兄さん。金黒の目が、クリリッと大きく見開かれている。
『急に電話だって聞いて。お父様はもう少しで休憩にいらっしゃるよ。』
デュランがサンドイッチを食べ終わる頃、ブレイブ王様はバン!と扉を勢いよく開けて、テレビ電話でデュランの話をしていたラーヴ王妃とファング王太子の所に大股でやってきた。お耳と尻尾の毛が、ビビ、と立っている。
「お父様!デュランを助けてあげて!」
『あなた。』
『お父様!』
ふうむ、と話を聞いて手を唇の側に、トントン、と叩いて考え、ブレイブ王は。
『アルディ、よく分かった。竜樹様、我ら獣人の子供、身寄りのないデュランを子供としてくれて、ありがとう。こちらのワイルドウルフで引き取るという手もあるけれど•••。』
ギギュウ!と竜樹に抱きついて離れないデュランを、優しい目で見ながら。
『それは止めておいた方が良さそうだ。両親が居ない所、せっかく信用ができた竜樹様と離して連れ回しては、どんなに心細かろう。それに、クマ種族の里に、母がいないからと言っても、デュランを預けなかったなら、父親は里から距離を置く理由があったのかもしれない。ならば、デュランをこちらで引き取るのは、蟠りがあったりしそうだな。』
「父ちゃんが、母ちゃんとけっこんするとき、反対されてたって。ふたりで、かけおちしたんだって。」
それで、獣人の出産に詳しくない人間のお産婆さんの所で、とても難産でデュランを産んだ母親は、亡くなってしまったのだ。
「父ちゃん、帰れない、デュランをさびしくさせてごめんな、って良くいってた。」
ふむふむ。
『そうだな、クマ種族の所の纏め役の家で、婚約者のいた娘が何年か前に、後ろ盾のない孤児のシロクマ獣人と駆け落ちした話を、私も聞いている。となれば、デュランの祖父や祖母もいようが、会うのはまた後でにしよう。差し当たっての困り事は、力の制御だな?』
「そうです、ブレイブ王様。何か良い方法ないですかね。」
「デュラン、いいこなの。ケガさせたくないんだよ。」
ニリヤがデュランの頭を撫でこしつつ。
「わざとじゃないんだよ!」
「俺たち、デュランと仲良くしたいよ!王様!」
「私も!仲良くしたい!お父様!助けてほしいの!」
アルディ王子の必死のお願いを、うむ!と頷いて受けたブレイブ王は、話を続ける。
『私達は住処は大体似たような獣人種族毎に纏まっているのだけど、強い獣人と弱い獣人で婚姻する事もあるし、街中では混ざり合って交流しているから、時々トラブルも起こる。大体は強い獣人の子が、力加減が出来ずに、悪気なく力を振るってしまう事が多い。だから、強い種族の子が他の種族の子供達がいる場所に混ざっている時は、力を一定以上は制御する腕輪を付けさせていたりするんだ。魔法の力のあまりない獣人でも、それくらいの魔道具を作れる者は結構いて、沢山種類もある。付け外しは可能で、綺麗で拘束されるような物でもないから、安心しておくれ。悪用すれば、獣人を拘束する手段に使われかねないから、使用は届出制にしてある。腕輪があれば、デュランも安心して皆と触れ合えるのではないか?早速手続き、用意して、そちらに送ろうと•••。』
『お父様!』
キラキラ!と瞳を光らせ、お耳をピン!と立てたファング王太子が。
『私が腕輪を、アルディとデュランの所に届けます!』
ん?
ブレイブ王とラーヴ王妃が、息子をはたと見る。
『だって、だって、大事な物でしょう!国外に持ち出して、悪用されないようにしないと!だったら私が届けます!アルディがいる所が、どんな所か、知りたいし•••転移魔法陣も使ってみたいし、私も国外で、色々と見聞きしてみたいです!』
『あら!ずるいわファング。お母様だってアルディに会いに行きたいわよ?』
クス!と笑う王妃は、ファング王太子に顔を寄せて、お耳をハタハタと倒しては立てた。
『うーん。まぁ、良いだろう。ファング、腕輪を届けてやりなさい。お知らせもなく行けないから、パシフィスト王様達への連絡は、こちらからしておくからね、アルディ。準備に何日か、時間を少し、頂こう。待ってておくれ、アルディ、デュラン。ファングの事だから大丈夫とは思うが、よそのお国へお邪魔するのだから、気配りして良い子にするのだぞ、ファング。』
『はい!お父様!』
「ありがとう!お父様!兄様!」
「ありがとうございます、ブレイブ王様!ファング王太子様も、お待ちしてますよ!それに、その、力を制御する腕輪、ついさっき会議した話で出た、力の制御ができないで裏社会に行く事になってる人たちや、予備軍の悩んでる子や親達に、とっても良いものかも?」
『うむ、興味があって先程の会議、ワイルドウルフの皆と仕事をしながらテレビを見させてもらっていたよ、竜樹殿。しかしその、なんだ、成人向け商品とは、大胆な、コホン。いやいや、今は腕輪の話か。確かに良き物にもなろうが、悪用されないようにハルサ王様とも話をせねば!』
成人向け?とハテナになっているラーヴ王妃の方をチラリと見て、慌てて話の方向転換をするブレイブ王様であった。
電話を切ると、わっと皆がデュランに集まる。
「良かったね!デュラン、なんとかなるよ!」
「なかよく、できる!」
「ウ、ウン。」
デュランも戸惑いながら、頷いて。
裏社会のボス、ミニュイに腕輪の話をするべきか。
考えながら、さて。
「デュラン。フロンの所に、さあ、行ってみようか。」
胸の中のデュランは、もう三角の目をしていない。少しだけふっくらと、濡れたお目々を揺らして見上げて、ウン、と素直にお返事。
「モルトゥに虐められて使われている子供達の事も、何とかしなければね。」
腹に溜まった力を、そのままに。
フロンの家は、下町にあるのだという。
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