王子様を放送します

竹 美津

文字の大きさ
上 下
383 / 585
本編

打たれたその子

しおりを挟む


竜樹はお茶をゆっくりいただき、歓談の後、皆とそれぞれ挨拶をして辞した。その会議直後から歓談の様子は、テレビで『会議の後で~溢れ話のお茶会~』として、王様の提案があってから編集なしで放送された。

「俺は、成人向け、水着くれぇなら良いと思うんだけどさ。それ以上は、何か、見なくても良いんじゃねえかって気がするぜ。」
「花街もあるしなぁ。」
(俺はいっぱいすごいの見たいな。)
(な、色っぽいの見たいよね!)
(ギフトの竜樹様、良いじゃん良いじゃん!やってくれた~!!)
「彼氏にお金使って花街に行かれるより良いかなぁ。」
「私、シエル元王女の気持ち、分かるわ!」
「絶対成人向けなんてヤダ!竜樹様にしては愚策と思う!!」
「けどさ、特に手に職もつけてないのにお金に困ってるなんて時は、出演して稼ぎたいってのも、ありだと思うじゃん。」
「一時稼いで、足抜けして、お店を出す資金にしたりとか?」
「お前!出演しようだなんて思ってんのか!?」
「違うよ父ちゃん、たとえばだよ、例えばの話!」
「母ちゃんはあんまり良いとは思わないけど、男どもは仕方ないからねえ。」
「裏の悪人達と手を結ぶって、どうなのかなあ。」


やいやい、わいのわいの。
大画面広場でも家庭でも、貴族も平民も。会議について皆、それぞれの意見を話し合う。
番組の最後に、皆さんの意見をお待ちしています!それらは参考にさせていただき、これからの成人向け商品事業に反映させていただきます!とアナウンスした事もあって、それは文字の書ける者だけではなく、代書屋を使って投書となって、後日沢山集まった。
因みに大多数は、写真集では水着など、映像ではちょっとお色気のある綺麗でソフトなものが好ましい、と思っている事が分かった。
大体どれくらいまでを公認のものとするかについて、それを参考に倫理委員会で規範を作っていく事となる。


「あ~。勇気を出して帰ろう。寮に。」
竜樹がトボトボ、王宮の庭を新聞寮に向かう。
ラフィネは、くすっと笑いながら息を吐いて、ぽん!と竜樹の背中を叩き、肩に手を乗せてグイグイ押していく。
元王女シエルは、「女の子達に嫌われても、自業自得ってやつよ!」ツンツン!と得意げにしたし、元王女エクレは、「私もあんまり成人向け商品、好ましくないけど、コクリコさんをしつこい落とし屋から助けるには、他に良い考えが浮かばないわ•••。」と頬に手を当てた。

男子のお助け侍従タカラや、王弟で護衛のマルサは、覚悟の竜樹の案ならば、支持して何かあれば護る、という決心で、後ろと前を歩いている。

「あれ、皆出待ちしてるよ。おーい、皆、ただいま~。」

ニリヤ、そしてジェムが、トコトコ!走ってきて竜樹の手を左右取る。引っ張って、早く早く!と焦っている。オランネージュとネクター、そして寮の大っきい子小ちゃい子達が、早く~!竜樹!竜樹とーさ!とぴょんぴょん飛んで、来い来い呼ぶ。寮のエルフのお世話人、マレお姉さんも、小ちゃい子と手を繋いで、たかたか足踏みして焦り待ち遠しく。

「何だ何だ、どうしたどうした?」
引っ張られ歩調を合わせて大股歩きに、竜樹が聞けば。

「けがしてるの!」
「ぶたれたんだよ!」
「見てやってよ、竜樹父さん!テレビ見てて、竜樹父さんになら話するって!」
「触らせてくれなくて、手当も出来ないんです!」

んんん!?
怪我とは聞き捨てならない!

ニリヤをグイッと抱き上げて、ジェムと並んで、子供達にまみれながら入り口、靴を忙しなく脱ぎ寮の廊下に上がる。

ダダダ、ダダ!

交流室では。エフォール達と、アルディ王子が。真っ白な髪の、ちょんもり座ったその子を、俯くその顔を、しゃがんで心配気に覗き込んでいた。
はた、暗い目と合う。

ああ。
金の瞳が開いているのに、まるで痛く眩しいかのように半分押し下げられて、三角に鋭く。下から窺う。ギュッと圧をかけられ、心を潰されて、虐げられた者の目だ。

ひゅ、と竜樹は息を吸って。
腹に力を込めた。

白い丸いふさふさの毛がある獣耳。獣人の子だ。
着ている服は、ボロボロの褐色で、所々破けて、擦ったような血のポツポツが滲んでいる。

「背中がすごく血があるの!」
アルディ王子が悲しみの声を出す。

竜樹は腕を広げて、前に座って、ん?と視線を合わせた。

「•••ほんと?」
「んん?」

わ、悪いのでも、子供に、してくれるって、ほんと?

震えながらの、言葉に。
ああ、思った事は言っておくもんだ!

「うん。悪い子でも、俺の子だ!」
目を合わせたまま、ジリジリ近づいて、ゆっくり、腕の中に。
躊躇っていたが、柔らかく頭を撫でて、ポフ、と胸に顔を寄せさせると、じわじわ、じわ、と熱いものが沁みてきた。
ひっ、ひっ、ひくっ、と泣く、段々と力強くしがみついてくるのをそのままに、背中の様子を見る。服に血が、縦横斜めと滲む。酷い状態だった。

「どうしたどうした。どんな悪い事しちゃった?誰にぶたれた?俺は畠中竜樹っていうんだけど、名前教えて欲しいなあ。」

返事は期待しないで、ゆっくり喋る。
エルフのベルジュお兄さんが、小声で説明する。
「この子、王宮の門番の所で、保護者らしき男性に連れて来られて、背中を鞭で打たれていたんですって。この子が誰かに怪我をさせてしまった、その治療費を払えないから、寮に、引き取ってくれって。門番が困って連絡をくれたんです。急いで行ったら、もう保護者はいなくて、血だらけでこの子が。何も話してくれなくて、触るのも嫌がって。私もマレも治癒魔法は使えなくて。」

うんうん。
「うん、分かった。」
「保護者といっても、獣人じゃなかったらしいから、血の繋がりはないのかも。」

うん。
何も言えないよな。そんな風に打たれたりしちゃあ。自分の事を悪いという子だ。きっと怪我させた相手に、罪悪感もあるのかも。
なで、なで。
頭を撫でてやる。白い柔らかい毛の耳が伏せて、うっく、ひっく、と泣き、グイグイ擦り付ける顔が服を濡らしていく。
アルディ王子が、同じ獣人だからか、余計に何とも言えない、心配気な表情で肩に手を置きかけて、また、す、と躊躇い手を離す。

「怪我させちゃったのか?じゃあ、一緒にお菓子と治療費を持って、謝りに行かなきゃな。もう俺の子だ。俺も頭を下げるから、元気出せ?その前に、背中の怪我も手当てしなきゃな?」
「•••う、うん。ひっ、ひくっ、うん。」

シロクマ獣人、打たれたその子の名前は、デュランという。



ーーーー⭐︎

キリの良い所で短めご容赦。
そして子供達の会議の感想まで、到達しませんでした。

また、4月9日まで更新お休みいたします。
近況報告にチョコっと詳細書いておりますので、よろしかったらご覧下さい。
また9日からよろしくお願いします。m(_ _)m

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜

楠ノ木雫
ファンタジー
 孤児院で暮らしていた女の子リンティの元へ、とある男達が訪ねてきた。その者達が所持していたものには、この国の紋章が刻まれていた。そう、この国の皇城から来た者達だった。その者達は、この国の皇女を捜しに来ていたようで、リンティを見た瞬間間違いなく彼女が皇女だと言い出した。  言い合いになってしまったが、リンティは皇城に行く事に。だが、この国の皇帝の二つ名が〝冷血の最強皇帝〟。そして、タイミング悪く首を撥ねている瞬間を目の当たりに。  こんな無慈悲の皇帝が自分の父。そんな事実が信じられないリンティ。だけど、あれ? 皇帝が、ぬいぐるみをプレゼントしてくれた?  リンティがこの城に来てから、どんどん皇帝がおかしくなっていく姿を目の当たりにする周りの者達も困惑。一体どうなっているのだろうか?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

処理中です...