王子様を放送します

竹 美津

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本編

無法図より制御して

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成人向け商品についての案を竜樹が述べています。
苦手な方は飛ばしてね。
近況ボードに本編内で触れる成人向け商品の話題についての言い訳書いてます。気になる方は、よろしければ一読を。

ーーーー⭐︎

「それでは、まず商品の見本例をこちらのモニターに映しますね。最初は、俺の世界では年齢制限がなかった水着の写真集です。こちらでは、ちょっと、刺激的な感じかな?」

竜樹が、会議室の皆から見える壁の一辺にかけられたモニターに、手のひらを指す。
それを見た白髪混じり緑髪、イケオジのホロウ宰相が、慌てて。
「竜樹様、注意喚起をば。」
おっとと。
「はい、お願いします。」

え~、こほん。
ホロウ宰相が咳払いの後、竜樹からのメモをまじまじと見て、ふと顔を上げて、テレビでも良く伝わる良い声で。真面目に。

「これから、少し成人向けの画像が流れます。会議の内容に関わるため、ご容赦ください。本当に際どい部分は、カメラを会議モニターが映る範囲から下にずらして、映さない事とします。参加者は参考に見ていただく形です。テレビをご覧の皆様、未成年にも大丈夫な部分しか映像では流しませんが、ご一緒にいる子供達への影響をお気にされる方は、視聴をご遠慮下さい。後日新聞でも経過を報告致します。」

竜樹も、ホロウ宰相も。
深く頭を下げて。
「そして、この会議は全般、成人向けの商品の扱いについて話していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。」

広場の大画面テレビの前にいる、人々が、はた、と止まって見上げている。
郵便局や、冒険者組合、ご飯どころなどのテレビ前でも、各家庭でも。ピタリ、と動きを止め、従業員もお客さんも、画面に釘付け。
このひと時だけ、時間が止まった。

寮では。
「オランネージュ、ネクター、ニリヤには重要任務だよ!今日、寮で、みんなと会議がテレビにどう映るか見ていて、後で俺に教えてね!意見も言ってね!」
と竜樹に言われて、鼻息フンと意気込んでジェム達とテレビを見ていた王子達は。

「せいじんむけ?ってなに?」
ニリヤが、はてな?と首を傾げる。
オランネージュが、ぽぽぽ、と頬を赤らめて。
「お、大人の人向けの~、その~。」
「むつかしい本とかなのかな?でも、みずぎの写真集って言ったよね?川遊びしたのかな?」
ネクターも、??とニリヤを抱えて違う方向に首を傾げる。
あぁ~、と何となく分かったジェム達は、はふ、とテレビ前、交流室の床にしゃがんで、胡座をかいて頬杖をつき、竜樹とーさの仕事を見守った。だって、写真ができる前から大人達が、秘密の絵画だとかいって裸のお姉ちゃんの絵を嬉しそうに隠れて見ていたり買っていたりしたのを、知ってるし。

コクリコは、驚いて口がパッカンと開いていた。子供達のお世話人、エルフのベルジュお兄さんと、マレお姉さんは、あら~、と子供達の背中に手を当てて、のんびり抱っこして、成り行きを鷹揚に見ていて。

「では、水着の写真集です。」

パッ モニターに、際どいビキニの、腕を脇にギュッと引きつけ、胸を寄せ、爆弾な巨乳に明るい蠱惑的な笑顔を見せる女性の上半身が映る。谷間!

「俺のいた世界の写真集からなんですけれども。こちらでは平民基準で、二の腕より上が見えていたら、煽情的なのでしたかね。ドレスになるとまた違うそうですが、きっとこの、下胸ちょいはみ出しの水着姿は、若い男の子が、こそこそっと秘密で買ったりするような商品になるかと思います。」

ぽわ、と頬染めて画面を見る恋人に、う、ううん!と眉を寄せて咳払いをする彼女。大画面広場、男性は目をキョロキョロさせて、ち、違う、違うから!と言い訳模様。

「おっパイ!ぱいよ!」
地方教会孤児院のラマン、アンクル地方の子。よちよちな、ぽっこりお腹の赤ちゃんラマンも、すやすやお昼寝の小ちゃい子達に混じっていたのを、何故だか今日は、ねむねむほわほわ起きてきて。なかなか寝ないでお世話人のエルフ、サンティエお姉ちゃんによいよいされていたのだが。
画面を見て、お目々をパッチリして、短い指さし、パイよパイよと興奮した。そして指をちむちむ吸う。
「うんうん。おっパイだね~。」
何とも無邪気である。


竜樹は続ける。
「それではカメラを下げてください。成人向けの写真になっていきます。これから、乳首が映ります。局部は、俺のいた国では、成人向けでもはっきりとは映されなかったので、露わになりません。ご安心を。」

パッ
パッ
パパッ

女豹のポーズ。
ミルクを口元に汚して、指を咥えて挑むように見る瞳。長い髪が、腕に絡んで。
白い透ける布一枚を巻きつけた半裸の女体が、際どい乱れた足元で野原に座り込む。

「え~、皆さん、お静かですけど、大丈夫でしょうか。これから映像になっていきます。音声は、テレビで流れてしまうとまずいので、消音しますが、本来なら喘ぎ声とか入ってます。」

若い女性が、男性に取り縋る。
雨、制服、倉庫。濡れて張り付き、キスシーン。積極的な女性に、たじたじの男性だが、次第に熱が乗ってきて•••。乱暴になってゆくが、女性は悦び媚びる表情。

「ちょっと!最低!!」
ガタン!と椅子を蹴たてて立ち上がった元王女シエルは、顔を真っ赤に、モニターで激しく交わる男女から目を逸らしながら、モニターの近くの竜樹を睨み指を突きつけるという、難しい事をやって叫んだ。
「最近はちょっと見直してたのに!ギフトの竜樹め!女性を何だと思ってるのよ!こんな商品、ダメダメだめに決まってる!破廉恥よ!!!映像止めて!!」
隣にいる姉元王女エクレは、もはや画面を見もしていない。顔を手で覆って俯いて、湯気がたつほど赤黒い。

お母さんズ、コリエにリオン夫人、ラフィネは、流石に、あらあら、と頬に手を当てるくらいである。
ニハーと笑う王様に王妃様、真面目な顔のチリ魔法院長とバーニー君。ニシシシと面白そうな顔のマルサ。ロテュス王子は、眉をピクンとさせたが、真剣に黙って見ていて、まだまだ口をぱっかり開いているビッシュ親父さんが、カクン、と下顎を戻した所だ。


「まぁ待ちなさいお嬢さん。私はこの商品を売り込まれている立場なんだがね。取り扱う商品を確認するのは、当然の権利だろう?」

ミニュイが、手を顎の下で組み合わせて、ニコニコと話しかけた。竜樹以外には、男とも女ともつかない、不思議な声で言葉が響く。成人向け映像位で、裏社会のボスがたじろぐはずもない。

「なっ!?好きに見れば良いじゃない!やってられないわ!こんな屈辱、許せますか!私はこんな会議、ごめんです!帰ります!!」
バン!と机を叩いて、タン!と勢いよく片足踏み出したシエルに。

「おや、お嬢さん。自分の屈辱以外はどうなっても良いとみえる。これから、こういった商品の扱いについて話し合うのだろう?見たくないからと去るのは勝手だが、ギフトの御方様が欲しかったのは、そんな簡単な罵りだけなのかね?貴女はそれなりに彼に認められてこの場にいるのでは?」
ニヤリ。
ミニュイにしてみれば、シエルなど手の上の子リスくらいなものだ。居なくても良いが、ギフトの竜樹が呼んだのだから、それなりに役割があるだろう。それを見たい。

むぐ。
期待されている、のは分かるけれども、こんな!

「いや、これも当然の意見ですよ。そろそろ映像を止めましょう、見本はこれくらいで。普通の、この位の年齢の女の子が、嫌悪感を持つんだ、って事も、商品を買う立場の男性に知っておいて欲しかったから参加してもらったんです。もう映像止めたから、帰ってはほしくないけど、思った事を言ってね、シエル。」

ふ、普通の、女の子。
シエルは怒りと屈辱がすっ、と抜けて。腰から砕けて、ストンと椅子に座った。
特別なんじゃ、ないの?

宰相ホロウが、進行をする。
「竜樹様。それでは、何故竜樹様が、このような商品を売ろうと思ったか、お話になって下さい。シエル元王女も、それを聞けば納得される事があるのでは?未だに驚きを隠せない、私もですが、参加者の皆さんも。」
どうですか、どうですかな?
右左に意見を聞けば、ええ、是非、知りたいです、と口々に同意が得られた。
竜樹は一つ頷き、位置を戻したカメラに向き直って、説明を。

「俺がこの成人向けの商品を売ろうと思ったのには、幾つか理由があります。」
目を閉じて、むん、と口を閉じたと思えば、じっくり、とつとつと、話し出す。

「多分、今までもこういう商品て、あったと思います。需要がありますものね。それが、写真や、動画を映せるカメラが発達すれば、今はまだ個々に普及していないから商品としては出ていなくても、いずれ出てくるのは決まっています。人の欲望は、どこでも似たようなものですもんね。それを、誰も制御しないままに、発展するに任せたら、どうなるでしょうか。」

ミニュイは、ふむ、と口角を上げたまま、相槌を打つ。シャトゥの見立ては、正しかったようだぞ、とほくそ笑む。

「きっと裏社会の人達が、貴族の世間知らずの娘さんを落とし屋で花街に落とすように、成人向け映像や写真に出たくないのに出させられる人がいるに違いない、と思います。見目の麗しい人が狙われそうですよね。お金がない人なんかも?脅されて?幼い子供なんかも?••••••それは、良くない状況だと思います。」

ふん、ふん。確かに。
各人、一つずつ腑に落ち始めた説明に、真剣に耳を傾ける。

「作るな、と言って止まるものでもないですよね。需要があるんですからね。花街か妻か、後はなし、って訳にもいかない男の生理ってやつもあります。女性を貶める訳ではないけれど••••••男って仕方ない生き物なのです。勿論、成人向けに、性の対象として出演する男性もいると思いますよ。女性向けの商品もあるかな。」

な!? と、またシエルが立ち上がりかけたが、お母さんズが、ええ、ええ、うんうん、と聞いているのをチラリと見て、大人しくまた座った。

「無法図に裏社会で作られるより、制御して作った方がいい。そして裏社会からそれを取り上げるより、こちらで基準を作って、違反しないものを公の商品として認めて、売ってもらった方が良い。合法に、って事ですから、こちらにも利益があって、そちらにも利益があるようにしたい。きっと、表の社会では馴染めずに、でも裏社会にも染まりきれていない、そんな人も多いんじゃないですかね。そんな人達に、公の仕事をしてもらう事で、大きく外れていくのを防ぐ事もできないかな、って思います。」

ふん、ふん。

ああ、ミニュイのお父様は、今日本当にご機嫌だな。シャトゥは、頬に指をトントン当てて聞いているミニュイの、上がった口角を覗き見て、ふ、と笑った。
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