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本編
閑話 花の兄5
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「ケーキ、そんないっぱいあるの!?」
「私たち、スポンジケーキ、クリームとベリーが乗ってるやつしか食べた事ない!」
「俺なんかけーき食べた事ねぇよ、それって美味いの?」
「美味しいよー!甘くって、粉で作ったふわふわのスポンジ生地や、フレッシュなクリームが、ふわっしゅわっとして絡まってたり、その中でフルーツがじゅわっとしてたり、チョコレートがこっくりと深い味だったり、チーズがあまじょっぱくて、ねっとり口の中でまろやかだったり。どれも、奇跡的なバランスで成り立ってる、繊細で、それでいてしっかりとした、天国みたいな美味しさよ!それぞれのケーキが、デザートの王様級だね!ケーキは誕生会の主役だよ!」
サチは、うっとりムフンと顔を緩ませながら、ふわふわと主張する。ケーキ食べたい欲満々である。ダイエット、辛いんじゃないのか。サチも食べ盛り、成長盛りである。
ふわわわわぁ!と子供達も、お口を開けてケーキを想像する。ゴクン、と唾を飲み込んで。
「あまいんだ•••!」
「ふわっとしてる!」
「まろやか•••!」
「深い味?!デザートの王様!?」
「てんごく•••ってなに?」
「とにかく、美味しそう!!」
「「「おいしそーう!!」」」
「わたし、たべられないの?ケーキ。」
王都教会孤児院の、スリーズがしょんぼり、言った。ケーキは主役、だけれども•••。
「え?」
サチは、目をパチ、パチ、した。
「わたし、こむぎこ、あれるぎ?なの。たべると、かゆかゆなるの。でも、たつきとーさのおたんじょうかい、ケーキ•••わたしだけ•••。さいきんは、こめこのパンとかたべれるけど、そのまえは、いつも、わたしだけ•••。」
ぐしゅん。ショボショボ。
スリーズは、小さなお鼻をすすって、目を伏せた。
自分だけ皆と同じものが食べられない。それは、同じ食べ物を分け合ったり、美味しいね、って言い合ったりして、仲を深め合う人々にとって、アレルギーで仕方がないとはいえ、寂しい思いがする事だろう。痒いよりまし、人によっては命にも関わるのだから、健康より大事なものはないだろう、と言ってしまえばそれまでだが、時に気持ちは、健康よりも傷つく。誰もが傷のない人生なんて送れなくて、それぞれの抱えたものを何とか宥めすかし、飼い慣らして、時にはジャンプ台にして、乗り越えて生きていくのではあるけれどーーー。
でも、乗り越えるの内に、我慢だけじゃない、力を合わせたアイデアや、優しい気遣いがあってもいい。傷つかない為の工夫があっても、良いじゃないか。人はそうやって、一歩一歩、進んで生きてきたのだから。
大丈夫、大丈夫だよ!米粉でケーキ、作れるよ!竜樹は、ソワソワして、今にも口を挟みそうだった。振り返りそうにチラチラなっているのを、タカラが、ダメダメ!と手を振って諌める。
「あ、アレルギー対応のケーキとかも、作れるから!!」
「そうそう!そうだよね、竜樹兄、米粉もそっちにあるって言ってたっけ!米粉のパンもあるんだから、ケーキも米粉で作れるから!きっと、料理人さんも、作ってくれるって!だって沢山子供がいるなら、小麦粉アレルギーの子、きっと1人だけじゃないでしょう?!」
サチとコウキが、焦って言い募る。
「それに、放送もするんだものね。これから、ケーキ、もしかしたら、どんなのかな?ってそちらに、広まるかもしれないわ。そうしたら、きっと、世の中にいるアレルギーの人も、食べてみたいな、って思うわよ。だから、アレルギーのあなた、1人ぼっちじゃないわ。他にもいる、アレルギーの人の為にも、きっと米粉の店で、ケーキの作り方だって習ってくれるわよ!食べられるに違いないわ!ねえ、ミランさん!」
マリコが言い添える。ニコニコと、でもお願いの気持ちを込めた目をして。
「ええ、ええ!1人だけケーキなし、なんてさせませんよ!竜樹様のお誕生会に、子供達をのけ者にして、子供達や竜樹様を悲しませるなんて、本末転倒です!ルリの店には、連絡しておきます。それに、ルリの店に、米粉のケーキを作る料理人を、新しく呼ぶ提案をしましょう!レシピも沢山、いただければと!こちらでも工夫します!」
頼んだぜ、ミラン、竜樹!
畠中家の一同は、うん、うん!と頷きながら竜樹の背中をじっと見た。竜樹は振り返らずに、ウムン、と大きく頷いたから、何か、あー伝わったんだな、と大人達は分かった。
「たまご、はいってる?ぼく、たまご、ボツボツなるの。」
祈る顔で、褐色のあちこち向いた短髪がくりくりとした男子、フィスキオが言う。
「ケーキはたまご入ってるけど、入ってないケーキもあるよ!レアチーズケーキとか!デコレーションしてフルーツも飾ったら、きっと綺麗だし美味しいよ!ふわふわじゃないけど、ねっとり、あまとろで、素敵だよ!」
サチは必死だ。ああっ茶碗蒸し!と頭を抱えてダメージを受けている。
「おれ、おちちがダメなの•••。」
ヴィーノも、心配そう。
うっ。乳製品。これも強敵。
「えーと、えーと、調べるね•••そう、豆乳クリームっていうのがある!デコレーションは、豆乳クリーム使えば、大丈夫じゃない?お豆も確か、あるんだもんね?他には、他の食べ物は、アレルギーの子いる?」
エビ!とか、青いおさかな!とか、ナッツ!とかはあったが、どうやら無事、配慮すれば皆、ケーキが食べられそうだ。
王都と地方教会孤児院の、お世話人達や司祭に助祭たちも、小さい子、自分でアレルギーを言えない子の事を申告してくれたが、アレルギーの子の分だけ別に作れば、何とかなりそう。
「これは、アレルギー対応専用のケーキ職人とか、必要かもですね•••。」
ミランの呟きに、そう、そう!竜樹は言いたい口をモゴモゴさせた。エルフの、あの人たち!
エルフの手に入る、植物の優しい食材を生かして、繊細な感覚、素朴なお菓子を作る陽気な姉おばエルフと、大胆にして計算された、めっちゃバランスの良いお菓子を作る、キリッとした弟オジエルフ!一度甘いお餅みたいなものと、中に粗い実がごろっとしたジャムが入った焼き菓子をご馳走になったけど、忘れられない!ああ、味は覚えてるのに、エルフ姉弟の名前なんてったっけ!
「よかったね!たべられて!」
ニリヤが、ニコニコしている。
「あい!ニリヤでんか!よかった、わたし、ケーキたべられるよぉ!」
「ぼくも!」
「おれも、たべられる!」
キャキャ!と。花咲いた子供の笑顔が見られるなら、このくらいお安いご用である。ミランもタカラも、ニコニコ!と、米粉やレアチーズケーキ、豆乳クリームを教えてくれた竜樹やコウキ、サチに、感謝なのである。
米粉?と、寮に勤めるお世話人のエルフ、逞しい細マッチョ、ベルジュお兄さんと、メガネで博識、優しいマレお姉さんも、ハッと顔を見合わせた。
それって、きっと、もっといっぱいお米が収穫したいってなるよね!
サパン公爵家の管轄の、ピエスドール地方で米作るって言ってる、エルフの農作物チームにも米粉のケーキ、食べさせてやりたい!
勿論、お菓子作り得意だった、あの姉弟オバオジエルフ、良く幼かった時のベルジュとマレにもお菓子を作ってくれた、フランとナップの2人も、脳裏に浮かんだ。
それに、確か、エルフの森に、たまごとお乳の代わりになる植物があるって、お菓子作ってくれなかったっけ?うーん、遠い記憶。
後で。後で聞こう。竜樹様と話をしよう!フランとナップとも!今は、お誕生会の打ち合わせがだいじ!と、子供達の笑顔を守るため、エルフお世話人の2人はムズムズするお口を、ムグッと締めて笑った。
「良かった!ーーーでも、ろうそく立たない、ってサチお姉様言ってたよね。ケーキって、ろうそく立てるの?祭壇みたいじゃない?」
オランネージュの頭の中では、ゴージャスな燭台が、曖昧なケーキに刺さっている。シュールな絵である。
「しょくだい、重いよね、きっと。ケーキつぶれちゃわない?」
ネクターも、はてな?になっている。
ブハッ!と吹き出して、サチは笑った。
「違うんだよ、細い、ちっちゃい蝋燭を、歳の数だけ。いっぱいになっちゃう時は、数字を形にした蝋燭を組み合わせて、バースデーケーキには刺すんだよ。それで、火を灯して、お歌を歌った後、主役のお誕生日の人が、一気に吹き消すの!」
「ヘェ~。どうゆう、意味があるの?」
ムグッ。意味とか、考えた事なかった。
「う~ん、盛り上がるから?」
「いい加減なこと言うなよ、サチ。広まっちゃうだろ!」
ペチ、と背中を柔く叩くコウキである。千沙ちゃんも、そいえばなんでかな~、なんて言っている。
「月の女神のお誕生日に、ケーキを焼いてお供えしていたらしいわよ。ろうそくは、月の光なんですって。一気に吹き消すと、願いが叶う、って言われてるのよ。」
文が、適切な情報をくれる。
「良く知ってるね!文さん!」
夫コウキの尊敬に、えへへ、と照れる文である。
「ドラマの台詞に、出てきたの•••。」
ヘェ~!!
納得した皆に、サチは。
「まぁとにかく!お歌を歌って~、ハッピーバースデー!って言って、ふーって吹き消せたら、わーっ!!って盛り上がるのよ!願いが叶うって、良いね!竜樹兄は、何を願うのかなぁ?」
「子供達みんなの健康と幸せじゃない?」
マリコが、ふふ、と言えば、子供達が、ふへ、と顔を綻ばす。
「あるある、ありうるね!自分の事じゃなさそう!」
アハ!とサチも笑った。
「ケーキも、ろうそくしよう!」
「色々の手配、ミランとタカラ、頼める?ろうそくも、小さいのできる?」
オランネージュが頼めば。
「「承ります。お任せください。」」
お助け侍従の2人は、自信をもって、トンと胸に手を当ててニッコリ承った。
それからは大変である。
子供達は、ロペラとバラン王兄を呼んで、歌を作ってもらって練習している。たつきとーさはダメなの、ひみつなの!あっち行ってて~!!と子供達に追いやられた竜樹は、分かった分かった出かけてくる、と言った後、大忙しで。
大人の、竜樹じゃないと分からない誕生会の事に、奔走した。
「私たち、スポンジケーキ、クリームとベリーが乗ってるやつしか食べた事ない!」
「俺なんかけーき食べた事ねぇよ、それって美味いの?」
「美味しいよー!甘くって、粉で作ったふわふわのスポンジ生地や、フレッシュなクリームが、ふわっしゅわっとして絡まってたり、その中でフルーツがじゅわっとしてたり、チョコレートがこっくりと深い味だったり、チーズがあまじょっぱくて、ねっとり口の中でまろやかだったり。どれも、奇跡的なバランスで成り立ってる、繊細で、それでいてしっかりとした、天国みたいな美味しさよ!それぞれのケーキが、デザートの王様級だね!ケーキは誕生会の主役だよ!」
サチは、うっとりムフンと顔を緩ませながら、ふわふわと主張する。ケーキ食べたい欲満々である。ダイエット、辛いんじゃないのか。サチも食べ盛り、成長盛りである。
ふわわわわぁ!と子供達も、お口を開けてケーキを想像する。ゴクン、と唾を飲み込んで。
「あまいんだ•••!」
「ふわっとしてる!」
「まろやか•••!」
「深い味?!デザートの王様!?」
「てんごく•••ってなに?」
「とにかく、美味しそう!!」
「「「おいしそーう!!」」」
「わたし、たべられないの?ケーキ。」
王都教会孤児院の、スリーズがしょんぼり、言った。ケーキは主役、だけれども•••。
「え?」
サチは、目をパチ、パチ、した。
「わたし、こむぎこ、あれるぎ?なの。たべると、かゆかゆなるの。でも、たつきとーさのおたんじょうかい、ケーキ•••わたしだけ•••。さいきんは、こめこのパンとかたべれるけど、そのまえは、いつも、わたしだけ•••。」
ぐしゅん。ショボショボ。
スリーズは、小さなお鼻をすすって、目を伏せた。
自分だけ皆と同じものが食べられない。それは、同じ食べ物を分け合ったり、美味しいね、って言い合ったりして、仲を深め合う人々にとって、アレルギーで仕方がないとはいえ、寂しい思いがする事だろう。痒いよりまし、人によっては命にも関わるのだから、健康より大事なものはないだろう、と言ってしまえばそれまでだが、時に気持ちは、健康よりも傷つく。誰もが傷のない人生なんて送れなくて、それぞれの抱えたものを何とか宥めすかし、飼い慣らして、時にはジャンプ台にして、乗り越えて生きていくのではあるけれどーーー。
でも、乗り越えるの内に、我慢だけじゃない、力を合わせたアイデアや、優しい気遣いがあってもいい。傷つかない為の工夫があっても、良いじゃないか。人はそうやって、一歩一歩、進んで生きてきたのだから。
大丈夫、大丈夫だよ!米粉でケーキ、作れるよ!竜樹は、ソワソワして、今にも口を挟みそうだった。振り返りそうにチラチラなっているのを、タカラが、ダメダメ!と手を振って諌める。
「あ、アレルギー対応のケーキとかも、作れるから!!」
「そうそう!そうだよね、竜樹兄、米粉もそっちにあるって言ってたっけ!米粉のパンもあるんだから、ケーキも米粉で作れるから!きっと、料理人さんも、作ってくれるって!だって沢山子供がいるなら、小麦粉アレルギーの子、きっと1人だけじゃないでしょう?!」
サチとコウキが、焦って言い募る。
「それに、放送もするんだものね。これから、ケーキ、もしかしたら、どんなのかな?ってそちらに、広まるかもしれないわ。そうしたら、きっと、世の中にいるアレルギーの人も、食べてみたいな、って思うわよ。だから、アレルギーのあなた、1人ぼっちじゃないわ。他にもいる、アレルギーの人の為にも、きっと米粉の店で、ケーキの作り方だって習ってくれるわよ!食べられるに違いないわ!ねえ、ミランさん!」
マリコが言い添える。ニコニコと、でもお願いの気持ちを込めた目をして。
「ええ、ええ!1人だけケーキなし、なんてさせませんよ!竜樹様のお誕生会に、子供達をのけ者にして、子供達や竜樹様を悲しませるなんて、本末転倒です!ルリの店には、連絡しておきます。それに、ルリの店に、米粉のケーキを作る料理人を、新しく呼ぶ提案をしましょう!レシピも沢山、いただければと!こちらでも工夫します!」
頼んだぜ、ミラン、竜樹!
畠中家の一同は、うん、うん!と頷きながら竜樹の背中をじっと見た。竜樹は振り返らずに、ウムン、と大きく頷いたから、何か、あー伝わったんだな、と大人達は分かった。
「たまご、はいってる?ぼく、たまご、ボツボツなるの。」
祈る顔で、褐色のあちこち向いた短髪がくりくりとした男子、フィスキオが言う。
「ケーキはたまご入ってるけど、入ってないケーキもあるよ!レアチーズケーキとか!デコレーションしてフルーツも飾ったら、きっと綺麗だし美味しいよ!ふわふわじゃないけど、ねっとり、あまとろで、素敵だよ!」
サチは必死だ。ああっ茶碗蒸し!と頭を抱えてダメージを受けている。
「おれ、おちちがダメなの•••。」
ヴィーノも、心配そう。
うっ。乳製品。これも強敵。
「えーと、えーと、調べるね•••そう、豆乳クリームっていうのがある!デコレーションは、豆乳クリーム使えば、大丈夫じゃない?お豆も確か、あるんだもんね?他には、他の食べ物は、アレルギーの子いる?」
エビ!とか、青いおさかな!とか、ナッツ!とかはあったが、どうやら無事、配慮すれば皆、ケーキが食べられそうだ。
王都と地方教会孤児院の、お世話人達や司祭に助祭たちも、小さい子、自分でアレルギーを言えない子の事を申告してくれたが、アレルギーの子の分だけ別に作れば、何とかなりそう。
「これは、アレルギー対応専用のケーキ職人とか、必要かもですね•••。」
ミランの呟きに、そう、そう!竜樹は言いたい口をモゴモゴさせた。エルフの、あの人たち!
エルフの手に入る、植物の優しい食材を生かして、繊細な感覚、素朴なお菓子を作る陽気な姉おばエルフと、大胆にして計算された、めっちゃバランスの良いお菓子を作る、キリッとした弟オジエルフ!一度甘いお餅みたいなものと、中に粗い実がごろっとしたジャムが入った焼き菓子をご馳走になったけど、忘れられない!ああ、味は覚えてるのに、エルフ姉弟の名前なんてったっけ!
「よかったね!たべられて!」
ニリヤが、ニコニコしている。
「あい!ニリヤでんか!よかった、わたし、ケーキたべられるよぉ!」
「ぼくも!」
「おれも、たべられる!」
キャキャ!と。花咲いた子供の笑顔が見られるなら、このくらいお安いご用である。ミランもタカラも、ニコニコ!と、米粉やレアチーズケーキ、豆乳クリームを教えてくれた竜樹やコウキ、サチに、感謝なのである。
米粉?と、寮に勤めるお世話人のエルフ、逞しい細マッチョ、ベルジュお兄さんと、メガネで博識、優しいマレお姉さんも、ハッと顔を見合わせた。
それって、きっと、もっといっぱいお米が収穫したいってなるよね!
サパン公爵家の管轄の、ピエスドール地方で米作るって言ってる、エルフの農作物チームにも米粉のケーキ、食べさせてやりたい!
勿論、お菓子作り得意だった、あの姉弟オバオジエルフ、良く幼かった時のベルジュとマレにもお菓子を作ってくれた、フランとナップの2人も、脳裏に浮かんだ。
それに、確か、エルフの森に、たまごとお乳の代わりになる植物があるって、お菓子作ってくれなかったっけ?うーん、遠い記憶。
後で。後で聞こう。竜樹様と話をしよう!フランとナップとも!今は、お誕生会の打ち合わせがだいじ!と、子供達の笑顔を守るため、エルフお世話人の2人はムズムズするお口を、ムグッと締めて笑った。
「良かった!ーーーでも、ろうそく立たない、ってサチお姉様言ってたよね。ケーキって、ろうそく立てるの?祭壇みたいじゃない?」
オランネージュの頭の中では、ゴージャスな燭台が、曖昧なケーキに刺さっている。シュールな絵である。
「しょくだい、重いよね、きっと。ケーキつぶれちゃわない?」
ネクターも、はてな?になっている。
ブハッ!と吹き出して、サチは笑った。
「違うんだよ、細い、ちっちゃい蝋燭を、歳の数だけ。いっぱいになっちゃう時は、数字を形にした蝋燭を組み合わせて、バースデーケーキには刺すんだよ。それで、火を灯して、お歌を歌った後、主役のお誕生日の人が、一気に吹き消すの!」
「ヘェ~。どうゆう、意味があるの?」
ムグッ。意味とか、考えた事なかった。
「う~ん、盛り上がるから?」
「いい加減なこと言うなよ、サチ。広まっちゃうだろ!」
ペチ、と背中を柔く叩くコウキである。千沙ちゃんも、そいえばなんでかな~、なんて言っている。
「月の女神のお誕生日に、ケーキを焼いてお供えしていたらしいわよ。ろうそくは、月の光なんですって。一気に吹き消すと、願いが叶う、って言われてるのよ。」
文が、適切な情報をくれる。
「良く知ってるね!文さん!」
夫コウキの尊敬に、えへへ、と照れる文である。
「ドラマの台詞に、出てきたの•••。」
ヘェ~!!
納得した皆に、サチは。
「まぁとにかく!お歌を歌って~、ハッピーバースデー!って言って、ふーって吹き消せたら、わーっ!!って盛り上がるのよ!願いが叶うって、良いね!竜樹兄は、何を願うのかなぁ?」
「子供達みんなの健康と幸せじゃない?」
マリコが、ふふ、と言えば、子供達が、ふへ、と顔を綻ばす。
「あるある、ありうるね!自分の事じゃなさそう!」
アハ!とサチも笑った。
「ケーキも、ろうそくしよう!」
「色々の手配、ミランとタカラ、頼める?ろうそくも、小さいのできる?」
オランネージュが頼めば。
「「承ります。お任せください。」」
お助け侍従の2人は、自信をもって、トンと胸に手を当ててニッコリ承った。
それからは大変である。
子供達は、ロペラとバラン王兄を呼んで、歌を作ってもらって練習している。たつきとーさはダメなの、ひみつなの!あっち行ってて~!!と子供達に追いやられた竜樹は、分かった分かった出かけてくる、と言った後、大忙しで。
大人の、竜樹じゃないと分からない誕生会の事に、奔走した。
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